
「とうきょう」は手拍子で4つ、英語の辞書では3音節。俳句の5・7・5が数えるのは「拍」
俳句の5・7・5は、手拍子1回で区切る「拍(モーラ)」の数。「とうきょう」は4拍だが、音節で数えると「とう・きょう」の2つ、英語の辞書の発音では3音節になる。日本語話者は聞くときも拍で区切っていることが、1993年の実験で示された。
原田英語のマジか!?ことば 特設コーナー
「はしご」は「なわばしご」でにごるのに、「とかげ」は「おおとかげ」でにごらない。奈良時代には「神(かみ)」と「上(かみ)」が別の音だった。英語の father とラテン語の pater をつなぐ法則を表にまとめたのは、グリム兄弟の兄だった——。言語学は、ことばのしくみ・歴史・世界のちがいを調べる学問です。専門家が読んでも引っかからない正確さで、はじめての人が一読で楽しめる言葉にかみ砕きました。
言語学は、ことばを「音」「世界のちがい」「歴史」「日本語」「脳とこども」「数」など、いろいろな方向から調べます。気になる問いから読んでみてください。
人間はどんな音でことばを作る? 舌打ちが子音になる言語、音が11しかない言語、悪口に向かない音。口と耳から見たことばの話。

俳句の5・7・5は、手拍子1回で区切る「拍(モーラ)」の数。「とうきょう」は4拍だが、音節で数えると「とう・きょう」の2つ、英語の辞書の発音では3音節になる。日本語話者は聞くときも拍で区切っていることが、1993年の実験で示された。

丸い形ととがった形、どちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」か。25言語917人に聞くと、約7割が丸=ブーバ、とがった形=キキと答えた。アルファベットの形のせいだけではない。ただし、この結びつきが見られなかった言語もある。

言葉を区別する音の数は、パプアニューギニアのロトカス語で11個、南部アフリカの!Xóõ語の記録では161個。日本語は約20個、英語は約40個だが、数え方でも変わる。

共通語では「箸が」は「は」だけが高い。「橋が」は「し」が高くて「が」で下がり、「端が」は「しが」が高いまま下がらない。大阪では箸と橋の高低が入れ替わる。高低で単語を区別しない「無アクセント」の地域もある。

「かがみ」の「が」を鼻にかけて言う鼻濁音は、放送では理想とされてきた。だが2009年の全国調査で使う人は約2割。70代で4割、20代では6%だった。

日本語や英語では舌打ちなどにしか使わないクリック音が、南部アフリカのコサ語などでは単語の子音。Xhosa の Xh もその音。世界566言語の調査では10言語にしかない。






世界の言語は、どこまでちがう? 「1」がない言語、においを一言で言える言語、過去は東・未来は西の言語。約7,000の言語を比べると見えてくること。

「どうやって知ったか」を文法で必ず示す言語がある。アマゾンのタリアナ語は、見た・音やにおいで知った・人から聞いたなど、5通りの印で言い分ける。世界の言語の比較(WALS)では、日本語の「ようだ」なども仲間に入る。

稚内は「冷たい・飲み水の・川」、登別は「濁った・川」。北海道の地名の多くはアイヌ語から来ている。そのアイヌ語は日本語とは別の言語で、ほかのどの言語とも親戚関係が確かめられていない「孤立した言語」とされる。

「文の中に文を入れる力は人間の言語の核」という仮説がある。2005年、アマゾンのピダハン語にはその入れ子がないと主張された。仮説への反例かどうかの論争は、2016年の研究でも決着していない。

バスク語では「オオカミが来た」のオオカミと「猟師がオオカミをつかまえた」のオオカミが同じ形で、印がつくのは猟師のほうだけ。このように目的語をとる動詞の主語だけに印をつける型を「能格」型と呼ぶ。世界の言語を比べたデータベース WALS では、名詞をこの型で区別する言語は190言語中32言語。

日本のろう者の間で生まれ育った日本手話は、日本語とは別の文法を持つ言語。同じ手の動きでも、相手を見て眉を上げ、あごを引いて答えを待てば「はい・いいえ」の質問、眉を上げて体を前に傾ければ「もし〜なら」になる。手話は世界共通でもなく、系統の分類では、日本手話は台湾や韓国の手話と同じグループに入る。

古英語には「ぼくたち2人」の wit、「きみたち2人」の git があった。スロベニア語などには今も「2」専用の形があり、「3」専用の形を持つ言語もある。













ことばの「ご先祖さま」はたどれる? 英語の two とヒンディー語の do は同じ言葉。記録のない時代のことばを、音の法則で組み立て直す。

1878年、21歳のソシュールは、英語やラテン語の共通の祖先の言葉に、どの言語にもそのままの形では残っていない音があったと推定した。1927年、トルコの粘土板に書かれたヒッタイト語で、その音があったはずの位置に ḫ という子音が現れることが指摘された。

英語 father とラテン語 pater、three と trēs のような子音の対応を、1822年に表にまとめたのはグリム兄弟の兄ヤーコプ。表に合わない father と brother の違いは、1875年にヴェルネルが、祖先の言葉のアクセントの位置で説明した。

フランス語 ne…pas(〜ない)の pas は、もとは「1歩」。英語の not も、もとは「何もない」という語。否定の言葉が弱ると別の語が足され、その語が否定の主役になって、また弱る。この流れを1917年にデンマークのイェスペルセンが指摘した。

中世の英語の name は「ナーメ」、house は「フース」に近い音だった。長く伸ばす母音がそろって動いた「大母音推移」で、今の音になった。ところが北イングランドとスコットランドでは、time の「イー」は「アイ」に変わったのに、house の「ウー」は変わらなかった。








日本語は昔からこうだった? 室町時代の「母」はファファ、「アホ」と「バカ」の境目、12番目の基本色。毎日使う日本語の、知らない顔。

「たこ」は「おおだこ」とにごるのに、「とかげ」は「おおどかげ」にならない。うしろの言葉に「が・ざ・だ・ば」行の音がもうあると、にごらない決まりがあるからだ。米国人の名で「ライマンの法則」と呼ばれるが、江戸時代の賀茂真淵が100年以上前に書いていた。

スウェーデンの若者は、隣の国のデンマーク語より英語のほうがよく分かった。北京の人は、同じ中国語の「方言」とされる広東語の文を聞いて、かぎになる単語をほとんど訳せなかった。言語か方言かは、通じるかどうかだけでは決まらない。

奈良時代に日本語を漢字の音で書くとき、「み」「き」「こ」などは2つのグループの字に書き分けられていた。「神」と「上」の「み」も別のグループで、「神様は上にいるから『かみ』」という語源説はほぼ否定された。

開港後の横浜では、外国人が片言の日本語で商売をしていた。1879年の冗談まじりの会話本では、9は Cocoanuts、8は Yachts。言語学では、こうした言葉を、共通の言葉がない人どうしが使う簡単な言葉「ピジン」の、いちばん初めの段階(プレ・ピジン)と見る研究がある。「だめ」を表す「ペケ」がここから来たのかは分かっていない。






人はどうやってことばを身につける? お腹の中で聞いた音、手で「ばぶばぶ」する赤ちゃん、子どもたちが作った新しい言語。脳と成長から見たことば。

「バ」の声に「ガ」と言う口の映像を重ねると「ダ」と聞こえる。マガーク効果と呼ばれるこの錯覚は、日本語話者には起きにくいと言われてきた。ところが最近の大人数の実験では、同じ言語の話者どうしでも効き方が0%から9割以上まで分かれ、言語による差より人による差のほうがずっと大きかった。

1958年、米国のジーン・バーコは、絵カードを見せて「これは wug」のように存在しない言葉を子どもに教え、2匹になったら何と言うかを聞いた。幼稚園児(4〜5歳)の76%、小学1年生の97%が「wugs」と答えた。子どもは聞いた言葉をまねるだけでなく、決まりを使って新しい形を作っている。










ことばを数えると何が分かる? 英語の the は16語に1語、run の意味は645通り。大量の文章を数えて見つかった法則。
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ことばのしくみ(音・単語・文・意味)、ことばの歴史、世界の言語のちがい、ことばと脳や社会との関係などを研究する学問です。ある言語を上手に話せるようになるための学問ではなく、ことばそのものを観察して、決まりや理由を探します。
英語学は英語を、日本語学(国語学)は日本語を中心に研究します。言語学は1つの言語に限らず、たくさんの言語を比べて、人間のことばに共通するしくみやちがいを探します。もちろん重なる部分も大きく、日本語学の研究は言語学の研究でもあります。
数え方によって変わりますが、おおよそ7,000とされます。どこまでを1つの言語とし、どこからを方言とするかの線の引き方で、数が大きく変わるからです。
論文・大学出版局などの学術書・学術データベース・辞書の公式ページなど、原典で確かめたことだけを書いています。記事を書いた人とは別の2人が原典に当たり直して確認し、各記事の最後に出典を載せています。