本館「マジカ!?サイエンス」科学の雑学とニュースを論文でウラ取り読みに行く →

原田英語のマジか!?ことば 特設コーナー

言語学のマジか!?ことばの大発見を、いちばん分かりやすく

「はしご」は「なわばしご」でにごるのに、「とかげ」は「おおとかげ」でにごらない。奈良時代には「神(かみ)」と「上(かみ)」が別の音だった。英語の father とラテン語の pater をつなぐ法則を表にまとめたのは、グリム兄弟の兄だった——。言語学は、ことばのしくみ・歴史・世界のちがいを調べる学問です。専門家が読んでも引っかからない正確さで、はじめての人が一読で楽しめる言葉にかみ砕きました。

71記事
6分野
366論文・学術書などの出典
32用語の解説

🗺️ 3分でわかる言語学の地図

言語学は、ことばを「音」「世界のちがい」「歴史」「日本語」「脳とこども」「数」など、いろいろな方向から調べます。気になる問いから読んでみてください。

音のふしぎ音声学・音韻論

人間はどんな音でことばを作る? 舌打ちが子音になる言語、音が11しかない言語、悪口に向かない音。口と耳から見たことばの話。

「とうきょう」は手拍子で4つ、英語の辞書では3音節。俳句の5・7・5が数えるのは「拍」
ホント
日英くらべ

「とうきょう」は手拍子で4つ、英語の辞書では3音節。俳句の5・7・5が数えるのは「拍」

俳句の5・7・5は、手拍子1回で区切る「拍(モーラ)」の数。「とうきょう」は4拍だが、音節で数えると「とう・きょう」の2つ、英語の辞書の発音では3音節になる。日本語話者は聞くときも拍で区切っていることが、1993年の実験で示された。

マジか度!?!?!?!?!?9分

🌍 世界の言語のびっくり言語類型論・言語と思考

世界の言語は、どこまでちがう? 「1」がない言語、においを一言で言える言語、過去は東・未来は西の言語。約7,000の言語を比べると見えてくること。

「オオカミが来た」と「オオカミをつかまえた」で、オオカミが同じ形になるバスク語
ホント
🌍 世界

「オオカミが来た」と「オオカミをつかまえた」で、オオカミが同じ形になるバスク語

バスク語では「オオカミが来た」のオオカミと「猟師がオオカミをつかまえた」のオオカミが同じ形で、印がつくのは猟師のほうだけ。このように目的語をとる動詞の主語だけに印をつける型を「能格」型と呼ぶ。世界の言語を比べたデータベース WALS では、名詞をこの型で区別する言語は190言語中32言語。

マジか度!?!?!?!?!?10分
日本手話は「日本語を手で表したもの」ではない。眉やあごの動きも文法の一部になる、別の言語
ウソ
🌍 世界

日本手話は「日本語を手で表したもの」ではない。眉やあごの動きも文法の一部になる、別の言語

日本のろう者の間で生まれ育った日本手話は、日本語とは別の文法を持つ言語。同じ手の動きでも、相手を見て眉を上げ、あごを引いて答えを待てば「はい・いいえ」の質問、眉を上げて体を前に傾ければ「もし〜なら」になる。手話は世界共通でもなく、系統の分類では、日本手話は台湾や韓国の手話と同じグループに入る。

マジか度!?!?!?!?!?9分

ことばの歴史をさかのぼる歴史言語学・比較言語学

ことばの「ご先祖さま」はたどれる? 英語の two とヒンディー語の do は同じ言葉。記録のない時代のことばを、音の法則で組み立て直す。

21歳のソシュールが予想した「消えた音」。約50年後、トルコの粘土板にその跡があった
ホント
🌍 世界

21歳のソシュールが予想した「消えた音」。約50年後、トルコの粘土板にその跡があった

1878年、21歳のソシュールは、英語やラテン語の共通の祖先の言葉に、どの言語にもそのままの形では残っていない音があったと推定した。1927年、トルコの粘土板に書かれたヒッタイト語で、その音があったはずの位置に ḫ という子音が現れることが指摘された。

マジか度!?!?!?!?!?10分
フランス語の「〜ない」の pas は、もとは「1歩」。英語の not も、もとは「何もない」だった
ホント
🌍 世界

フランス語の「〜ない」の pas は、もとは「1歩」。英語の not も、もとは「何もない」だった

フランス語 ne…pas(〜ない)の pas は、もとは「1歩」。英語の not も、もとは「何もない」という語。否定の言葉が弱ると別の語が足され、その語が否定の主役になって、また弱る。この流れを1917年にデンマークのイェスペルセンが指摘した。

マジか度!?!?!?!?!?8分
英語の name は昔「ナーメ」、house は「フース」。イギリス北部では今も「フース」
ホント
英語

英語の name は昔「ナーメ」、house は「フース」。イギリス北部では今も「フース」

中世の英語の name は「ナーメ」、house は「フース」に近い音だった。長く伸ばす母音がそろって動いた「大母音推移」で、今の音になった。ところが北イングランドとスコットランドでは、time の「イー」は「アイ」に変わったのに、house の「ウー」は変わらなかった。

マジか度!?!?!?!?!?10分

日本語の謎を解く日本語学・方言学

日本語は昔からこうだった? 室町時代の「母」はファファ、「アホ」と「バカ」の境目、12番目の基本色。毎日使う日本語の、知らない顔。

「とかげ」は「おおとかげ」でにごらない。米国人の名がつくこの決まり、先に書いたのは江戸の国学者
ホント
日本語

「とかげ」は「おおとかげ」でにごらない。米国人の名がつくこの決まり、先に書いたのは江戸の国学者

「たこ」は「おおだこ」とにごるのに、「とかげ」は「おおどかげ」にならない。うしろの言葉に「が・ざ・だ・ば」行の音がもうあると、にごらない決まりがあるからだ。米国人の名で「ライマンの法則」と呼ばれるが、江戸時代の賀茂真淵が100年以上前に書いていた。

マジか度!?!?!?!?!?10分
「言語とは、陸軍と海軍を持った方言である」。言語か方言かは、ことばの中身だけでは決まらない
ビミョー
🌍 世界

「言語とは、陸軍と海軍を持った方言である」。言語か方言かは、ことばの中身だけでは決まらない

スウェーデンの若者は、隣の国のデンマーク語より英語のほうがよく分かった。北京の人は、同じ中国語の「方言」とされる広東語の文を聞いて、かぎになる単語をほとんど訳せなかった。言語か方言かは、通じるかどうかだけでは決まらない。

マジか度!?!?!?!?!?9分
明治の横浜の外国人向け会話本では、「ここのつ」が Cocoanuts、「やっつ」が Yachts
ビミョー
日英くらべ

明治の横浜の外国人向け会話本では、「ここのつ」が Cocoanuts、「やっつ」が Yachts

開港後の横浜では、外国人が片言の日本語で商売をしていた。1879年の冗談まじりの会話本では、9は Cocoanuts、8は Yachts。言語学では、こうした言葉を、共通の言葉がない人どうしが使う簡単な言葉「ピジン」の、いちばん初めの段階(プレ・ピジン)と見る研究がある。「だめ」を表す「ペケ」がここから来たのかは分かっていない。

マジか度!?!?!?!?!?11分

ことばと脳・こども心理言語学・言語獲得

人はどうやってことばを身につける? お腹の中で聞いた音、手で「ばぶばぶ」する赤ちゃん、子どもたちが作った新しい言語。脳と成長から見たことば。

数で見ることば計量言語学・コーパス言語学

ことばを数えると何が分かる? 英語の the は16語に1語、run の意味は645通り。大量の文章を数えて見つかった法則。

もっと深く:本館で読む、言語の研究

姉妹サイト「マジカ!?サイエンス」では、言語の研究論文を1本ずつ、データの読み方から解説しています。

言語学の用語集

記事に出てくる言語学の用語を、ひとことで説明しました。用語をタップすると、くわしい記事に進みます。

イェスペルセンのサイクルいぇすぺるせんのさいくるJespersen's cycle
否定の言葉が弱まると強めの言葉が足され、やがてそれが新しい否定の言葉になる、というくり返し。
印欧祖語いんおうそごProto-Indo-European
英語・ヒンディー語・ロシア語などの共通の祖先とされる言語。記録は残っておらず、子孫の言語を比べて組み立て直したもの。
音象徴おんしょうちょうsound symbolism
音そのものが、形や大きさなどのイメージと結びつく現象。丸い形に「ブーバ」、とがった形に「キキ」が選ばれやすい。
音素おんそphoneme
その言語で、意味を区別する音の単位。日本語の「かき」と「がき」は、最初の音(/k/ と /g/)のちがいだけで別の言葉になる。
危機言語ききげんごendangered language
話す人が減り、次の世代に受け継がれなくなるおそれのある言語。
基本語順きほんごじゅんbasic word order
主語(S)・目的語(O)・動詞(V)を並べるふつうの順番。日本語は SOV、英語は SVO。
クリック子音くりっくしいんclick consonant
舌打ちのような音を、単語の子音として使うもの。南部アフリカの言語などにある。
グリムの法則ぐりむのほうそくGrimm's Law
英語やドイツ語の祖先の言語で起きた、子音の規則的な変化。ラテン語の pater と英語の father の p と f の対応など。
言語相対論げんごそうたいろんlinguistic relativity
話す言語によって、ものの考え方や感じ方が影響を受けるという考え。どの程度の影響があるかは今も研究が続いている。
喉音理論こうおんりろんlaryngeal theory
印欧祖語には、子孫の言語にほとんど残っていない「喉音」と呼ばれる音があったとする説。ヒッタイト語の記録が手がかりになった。
高低アクセントこうていあくせんとpitch accent
声の高さの上がり下がりで単語を区別するしくみ。東京では「箸」と「橋」を高さで言い分ける。
語族ごぞくlanguage family
共通の祖先の言語から分かれたと考えられる言語のグループ。英語とヒンディー語は、どちらもインド・ヨーロッパ語族。
孤立した言語こりつしたげんごlanguage isolate
ほかのどの言語とも親戚関係が見つかっていない言語。バスク語がよく例に挙がる。
再帰さいきrecursion
文の中に、同じ種類の文を入れ子にして埋め込めるしくみ。「彼が来たと私は言った」。
ジップの法則じっぷのほうそくZipf's law
単語を使われる回数の多い順に並べると、回数が順位にほぼ反比例するという経験則。
手話言語しゅわげんごsign language
手の形や動きに、眉やあごの動きなども加えて表す言語。日本手話は日本語とは別の文法をもつ。
証拠性しょうこせいevidentiality
話している内容を、見て知ったのか、聞いて知ったのか、推測なのかを、文法で表し分けるしくみ。
上代特殊仮名遣いじょうだいとくしゅかなづかいOld Japanese kō-otsu distinction
奈良時代の万葉仮名で、「き」「ひ」「み」「こ」などの音が2つのグループ(甲類・乙類)に書き分けられていたこと。
声調せいちょうtone
声の高さの上がり下がりで、単語の意味を区別するしくみ。中国語やタイ語などにある。
双数そうすうdual
「2つ・2人」だけを表す専用の文法の形。単数・複数とは別にある。
大母音推移だいぼいんすいいGreat Vowel Shift
中英語の終わりごろから数百年かけて、英語の長い母音がそろって発音を変えた変化。name の母音が「アー」から今の「エイ」へ変わった。
能格のうかくergative
目的語のない文の主語と目的語が同じ形になり、目的語のある文の主語だけが別の形になるしくみ。バスク語などにある。
拍(モーラ)はくmora
日本語で音の長さを数える単位。「ん」「っ」「ー」も1拍に数え、「とうきょう」は4拍になる。
ピジンぴじんpidgin
共通の言葉を持たない人どうしが、取引などのために作る、しくみの単純な言葉。母語として話す人はいない。
鼻濁音びだくおんvelar nasal
ガ行の音を、鼻にぬけるように発音したもの。発音記号では [ŋ]。「かがみ」の「が」をこう言う人がいる。
ブローカ野ぶろーかやBroca's area
脳の左の前のほうにある、話すことに関わる領域。1861年に医師ブローカが、話せなくなった患者の脳を調べて報告したことから、この名がついた。
方言周圏論ほうげんしゅうけんろんconcentric dialect distribution
都で生まれた新しい言葉が周りへ広がり、古い言葉ほど遠い地方に残るという考え。柳田国男が『蝸牛考』で唱えた。
母語話者ぼごわしゃnative speaker
その言語を最初に身につけ、母語として話す人。英語は、母語でない話し手のほうが多いとされる。
マガーク効果まがーくこうかMcGurk effect
「バ」の声に「ガ」と言う口の映像を重ねると、「ダ」などに聞こえる錯覚。耳だけでなく目の情報も使って音を聞いている証拠とされる。
ライマンの法則らいまんのほうそくLyman's Law
うしろの言葉にすでに濁音(が・ざ・だ・ば行の音)があると、連濁が起きにくいという決まり。「とかげ」→「おおとかげ」。
連濁れんだくrendaku
2つの言葉がくっついて1語になるとき、うしろの言葉の最初の音がにごる現象。「はな」+「ひ」→「はなび」。
ワグ・テストわぐてすとwug test
存在しない言葉を使って、子どもが複数形や過去形の決まりを身につけているかを調べる方法。1958年にジーン・バーコが発表した。

言語学についてよくある質問

言語学とは、何を研究する学問ですか?

ことばのしくみ(音・単語・文・意味)、ことばの歴史、世界の言語のちがい、ことばと脳や社会との関係などを研究する学問です。ある言語を上手に話せるようになるための学問ではなく、ことばそのものを観察して、決まりや理由を探します。

言語学と、英語学・日本語学のちがいは?

英語学は英語を、日本語学(国語学)は日本語を中心に研究します。言語学は1つの言語に限らず、たくさんの言語を比べて、人間のことばに共通するしくみやちがいを探します。もちろん重なる部分も大きく、日本語学の研究は言語学の研究でもあります。

世界には、いくつの言語がありますか?

数え方によって変わりますが、おおよそ7,000とされます。どこまでを1つの言語とし、どこからを方言とするかの線の引き方で、数が大きく変わるからです。

このコーナーの記事は、何を根拠に書いていますか?

論文・大学出版局などの学術書・学術データベース・辞書の公式ページなど、原典で確かめたことだけを書いています。記事を書いた人とは別の2人が原典に当たり直して確認し、各記事の最後に出典を載せています。