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英語のマジか!?ホント

英語の「they」は、もとはバイキングの言葉。1200年ごろ入ったというのが定説

英語の「they」は、もとはバイキングの言葉。1200年ごろ入ったというのが定説

読む前に予想してみよう!

英語の they は、古英語の時代からずっと使われてきた英語生まれの単語だ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の代名詞 they・their・them
規模
英語辞典2種(American Heritage・Oxford)の語源欄と、反対説の論文1本
研究の種類
辞書の語源記述と論文要旨の照合
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

they・their・them は古ノルド語(バイキングの言葉)から来た代名詞、というのが辞書の定説。1200年ごろ英語に現れ、それまでの英語の「彼ら」hīe・hīora・him を少しずつ追い出した。

ひとことで言うとthey は、昔イギリスに来たバイキングの言葉から借りた単語とされている!

もくじ
  1. they・their・them の語源は「古ノルド語」
  2. 代名詞を借りるのは「めったにない」こと
  3. 北から南へ、何百年もかけて広がった
  4. 'em は them の省略……ではないかもしれない
  5. they だけじゃない。sky も egg も北欧から
  6. どんでん返し:them は「半分だけ」借りもの?
  7. まとめ

They are my friends.

英語を習いはじめてすぐに出てくる、この they(彼ら)。じつはもともと英語の単語ではないとされています。

アメリカの代表的な辞書『American Heritage 英語辞典』(以下 AHD)は、語源の解説で「信じがたいかもしれないが、英語の they は英語生まれの代名詞ではない」と書いています。they は、バイキングが話していた古ノルド語(昔の北欧の言葉)から借りてきた“外来語”なのです。their(彼らの)も them(彼らを)も、同じ道を通ってきました。

01they・their・them の語源は「古ノルド語」

まず、2つの辞書の語源欄を並べてみます。

つまり、今の英語の「彼らは・彼らの・彼らを」は、3つそろって北欧から来ています。

古英語(千年ほど前の英語)では、「彼らは」は hīe、「彼らの」は hīora、「彼らを・彼らに」は him でした。AHD の 'em の項目によると、この複数の him は heom ともつづりました。一方で「彼に」も him です。古英語では、「彼に」と「彼らに」が同じ him になることがあったわけです。

02代名詞を借りるのは「めったにない」こと

外国から単語を借りること自体は、どの言語でもよくあります。では、なぜ they が特別なのでしょう。

AHD は理由をこう説明しています。代名詞は、言語のいちばん基本的な部分のひとつ。だから、外国語から借りた語に置きかわることはまれだ、と。

食べ物や道具の名前なら、新しい物といっしょに外国の言葉が入ってきても不思議はありません。でも「彼ら」は、毎日のように口にする言葉です。その「彼ら」まで外国の言葉に入れかわりました。AHD が they を、古ノルド語が英語に与えた影響の大きさを示す「典型的な例」と呼ぶのはこのためです。

古ノルド語を話す人たちが住みついた北部から、they・their・them は南へ広がった(American Heritage 英語辞典)
古ノルド語を話す人たちが住みついた北部から、they・their・them は南へ広がった(American Heritage 英語辞典)

03北から南へ、何百年もかけて広がった

古ノルド語を話す人たちは、どこにいたのでしょうか。

AHD によると、9〜10世紀、デンマークから来た侵入者や移住者がイングランド北東部に住みつき、自分たちの法律で治めました。この法律と、それが通用した地域を「デーンロウ(Danelaw)」と呼びます。古英語の Dena lagu(デーン人の法)から来た名前です。

they・their・them は、このデーンロウから南へ広がりました。AHD によると、主語の they が最初に広まり、their と them はそれより遅れたようです。

その証拠として AHD が挙げるのが、イングランドに印刷機を持ちこんだウィリアム・キャクストンの本です。

  • 1475年以降の、初期に印刷した本:they, hir, hem
  • 後に印刷した本:thei, their, theim

初めのころは「彼らは」だけが北欧系の they で、「彼らの」「彼らを」は英語生まれの hir・hem でした。それが後の本では、3つとも北欧系に変わっています。キャクストンは北部の人ではありません。最初に印刷した本の序文に、自分はイングランド南東部のケントで生まれて英語を覚えた、と書いています。そんな南の人の本でも、北欧系の形に入れかわっていきました。AHD はこれを、北欧系の形が南へ広がっていたはっきりした証拠だとしています(なお AHD はキャクストンを、印刷所のあったウェストミンスターの生まれと書いていますが、本人の序文とは合いません)。1人の印刷業者の本の中で、入れかわりが進んでいく様子が見えるのです。

04'em は them の省略……ではないかもしれない

映画や歌の歌詞で、こんな英語を見たことはありませんか。

  • Give 'em back!(それ、返して!)
  • Let 'em go.(行かせてやれ)

この 'em は、くだけた会話で them の代わりに使われます。見た目は「them の th が落ちたもの」に見えますね。

ところが AHD は、'em の項目で、中英語の hem・em から来た語としています。さかのぼると、古英語の him・heom(彼らを・彼らに)です。つまり、they に追い出された英語生まれの「彼らを」が、'em の形で生き残っている、という見方です。

ただし、AHD の they の語源解説では、この点を「'em に残っている可能性が十分ある」と、少し慎重に書いています。断定ではありません。

05they だけじゃない。sky も egg も北欧から

古ノルド語から入った身近な単語は、ほかにもあります。AHD の語源欄で確かめると、

  • sky(空):古ノルド語の skȳ から。もとの意味は「雲」
  • egg(卵):古ノルド語の egg から
  • get(手に入れる):古ノルド語の geta から
  • take(取る):古英語の tacan を経て、古ノルド語の taka から

They get eggs and look up at the sky.(彼らは卵を手に入れ、空を見上げる)。この短い文の they・get・eggs・sky が、どれも北欧から来た単語です。

06どんでん返し:them は「半分だけ」借りもの?

ここまで「3つとも北欧から」と書いてきましたが、辞書によって書き方が少しちがう語があります。

オックスフォードの学習辞典は、them を古ノルド語の theim から来たとしています。一方、AHD の them の項目は「古ノルド語の theim と、古英語の thǣm から」と、2つの語を並べて書いています。古英語にも thǣm(「それに・それらに」にあたる語)があり、北欧の theim とよく似た形でした。英語に元からあった語と、北欧から入ってきた語が重なって、今の them になった、という見方です。

そもそも「they は北欧から」という説明そのものに異を唱える研究者もいます。言語学者マルセル・コールは2018年、学術誌『Diachronica』の論文で、イングランド北部の古い文書のつづりや使われ方を調べ、they・their・them は古英語で「それら」を指す語 þā・þāra・þām から、英語の中で生まれたと主張しました。論文の要旨の冒頭でも、「古ノルド語から来た」というのが広く受け入れられた見方だと書かれていて、辞書もその見方に立っています。ただ、議論が完全に終わったわけではありません。

また、AHD は「なぜ代名詞まで入れかわったのか」について、古ノルド語の影響の大きさを示す例だと述べるだけで、細かい理由までは書いていません。通説どおり they が北欧から入ってきたとしても、なぜそこまで入りこめたのかは、辞書の説明だけでは分からないのです。

07まとめ

辞書の定説では、they・their・them は、9〜10世紀にイングランド北東部に住みついた人たちの古ノルド語から入り、1200年ごろから何百年もかけて、古英語の hīe・hīora・him を追い出しました。AHD が「めったにない」と言うほどの、言葉の深いところでの入れかわりです。

次に They are my friends. と言うときは、その they がバイキングの船に乗ってやってきた単語らしい、ということを思い出してみてください。そして Give 'em back! の 'em には、追い出された昔の英語が、ひっそり残っているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWords like "I," "you" and "they" are some of the most basic words in a language, so they are rarely… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

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Words like "I," "you" and "they" are some of the most basic words in a language, so they are rarely borrowed from other languages. English has a famous case. Dictionaries trace "they" to Old Norse, the language of Danish invaders who settled in northeast England in the ninth and tenth centuries. It first appeared in English around 1200.

"Their" and "them" followed, and over time the three Norse words replaced the Old English ones, "hie," "hiora" and "him." The books of William Caxton, who brought the printing press to England, show this change. In his early books, printed after 1475, he used "they" with the English forms "hir" and "hem."

Later he wrote "thei," "their" and "theim." Caxton was born in Kent, in the south, far from the Danish area.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「I」「you」「they」のような語は、言語の中でもいちばん基本的な単語に入るので、ほかの言語から借りることはめったにない。英語には有名な例がある。辞書は「they」の語源を、9〜10世紀にイングランド北東部に住みついたデーン人の侵入者の言葉、古ノルド語にたどっている。英語に初めて現れたのは1200年ごろだ。

そのあと「their」と「them」が続き、時間をかけて、この3つの北欧の語が古英語の「hie」「hiora」「him」に取ってかわった。イングランドに印刷機を持ちこんだウィリアム・キャクストンの本に、この変化が表れている。1475年以降に印刷した初期の本では、彼は「they」を、英語の「hir」「hem」といっしょに使った。

後には「thei」「their」「theim」と書いた。キャクストンは、デーン人の地域から遠く離れた南部のケントの生まれだった。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Which words did Caxton use in his early books?

Q3. Why does the writer mention where Caxton was born?

重要単語

  • pronounB1
    名詞代名詞"They" and "them" are both pronouns. pro-(〜の代わりに)+noun(名詞)。名詞の代わりをする語、という作り。
  • borrowA2
    動詞借りる;(ほかの言語から語を)取り入れるEnglish borrowed many words from French. borrow A from B「BからAを借りる」。言語の話では borrowed word(借用語)もよく使う。
  • invaderB2
    名詞侵入者、攻めこんでくる人The invaders came across the sea in long ships. invade(侵入する)+-er。名詞 invasion(侵略)もセットで。
  • settleB1
    動詞住みつく、定住する;解決するMany families settled near the river. settler は「移住者」。settle down は「落ち着く」。
  • replaceB1
    動詞取ってかわる、置きかえるSmartphones have replaced many old cameras. replace A with B「AをBに取りかえる」。入試頻出の語法。
  • informalB1
    形容詞くだけた、略式の"Give 'em back" is an informal way to say "Give them back." 反対語は formal(改まった)。作文では informal な形を避けるのが基本。
  • spreadB1
    動詞広がる、広めるThe new word spread quickly among young people. 過去形・過去分詞も spread(無変化)。spread to ~「~に広がる」。

4コマでわかる

英語の「they」は、もとはバイキングの言葉。1200年ごろ入ったというのが定説の4コマ漫画
英語の they・their・them は、もとは英語じゃない、というのが定説。米国の辞書 American Heritage によると、バイキングが話した古ノルド語から1200年ごろ入り、それまでの英語の「彼ら」hīe・hīora・him を追い出した。「彼ら」のような基本の言葉まで外国から借りるのは、めったにないこと。

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出典・参考文献(8件)タップで表示
  1. American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「they」(Word History)ahdictionary.com
  2. American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「'em」ahdictionary.com
  3. American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「Danelaw」ahdictionary.com
  4. Cole, M. (2018). A native origin for Present-Day English they, their, them. Diachronica, 35(2), 165–209doi.org
  5. Duff, E. G. (1905). William Caxton. Chicago: The Caxton Club(キャクストンの出生地。Project Gutenberg #55919)gutenberg.org
  6. Oxford Advanced Learner's Dictionary「they」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  7. Oxford Advanced Learner's Dictionary「them」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  8. Oxford Advanced Learner's Dictionary「their」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com

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