
「between you and I」はテストで×。でもシェイクスピアもディケンズも書いた
「between you and I(ここだけの話)」は、between のあとは me にするので、テストでは×。でも『ヴェニスの商人』の手紙やディケンズの小説に出てくるし、1660年のピープスの日記には between him and I がある。テストと改まった文では me。
赤ペンで直された、あのルール。誰がいつ決めたのか、さかのぼると意外な人が出てきます。

「between you and I(ここだけの話)」は、between のあとは me にするので、テストでは×。でも『ヴェニスの商人』の手紙やディケンズの小説に出てくるし、1660年のピープスの日記には between him and I がある。テストと改まった文では me。

1人の相手でも you were が正解。でも1700年代には you was が広く使われ、1762年の文法書は「一流の書き手までこの誤りをしている」と嘆いた。辞書で有名なウェブスターは1789年に擁護した。

ain't のもとの形 an't は、17〜18世紀には上流階級も使う話し言葉だった。『ガリバー旅行記』のスウィフトも手紙に書いている。ain't が集中攻撃を浴びたのは19世紀。ただし今は改まった英語では使えない。

英語の動詞が形を変えるのは「今」と「過去」だけ。ケンブリッジの文法解説は「英語に未来形はない」と書き、will を can や must と同じ助動詞の仲間に入れる。will のもとの意味は「〜したい」。ただし will を未来形と見る学者もいる。

love は進行形(be+〜ing)にしないと習うが、英オックスフォードの学習辞典は「くだけた言い方」で I'm loving ... を載せ、19世紀の小説にも例がある。ただし英国の会話では、love のうち進行形で使われるのは今も1%未満。

「A, B and C」の and の前にカンマを打つか。2017年、米メイン州の法律の文にこのカンマがなかったことで、乳業会社が、残業代を求めた配達ドライバーとの裁判の控訴審で負け、のちに500万ドルで和解した。

Because で始まる文は、後ろに文の中心が続けば正しい英語。米国の辞書はこの禁止を「学校の先生のお気に入りのルール」と書く。1979年の米国の調査では、たずねた大学1年生の75%が教わったと答えた。

「数えられる名詞には fewer」は、1770年に1人の書き手が書いた好みから。less を数に使う英語は千年以上前からある。2008年には英国のスーパーがレジ表示を変えると報じられた。
How are you? から Shall we? まで。教科書のフレーズは、本当に古い? 失礼?

5W1H を「6人の召使い」と呼ぶ英語の詩は、『ジャングル・ブック』のキプリングが1902年の本に載せたもの。でも同じ問いは、13世紀のキリスト教の学者アクィナスの本に、ラテン語の詩の1行として出てくる。

今の英語は相手がだれでも you。でも400年前は、ていねいな you と、親しい・見下す thou を使い分けた。1603年の裁判では検事が「thou と呼んでやる、裏切り者」と言った。

丁寧と習う聞き返しの Pardon?。1950年代、イギリスの言語学者ロスは、これを上流階級ではない人の言葉に分類し、上流の人は What? と言うと書いた。2004年の本でも、上流の人が嫌う言葉の代表とされた。一方、ケンブリッジ英語辞典は Pardon? を丁寧な聞き返しとしている。

shall は1961年から30年ほどで、英米の書き言葉とも約4割減り、米国の連邦裁判所の民事のルールからも消えた。それでも Shall we ...? は、米国人が shall を使う主な場面として辞書に残る。

否定の質問への Yes・No が日本語と逆になるのは、日本語は「相手の言葉に賛成か」で、英語は「答えの中身が肯定か否定か」で決めるから。古い英語には否定の言葉に返す専用の yes があり、今も読まれる英語の聖書、欽定訳聖書(1611年初版)でも yes は4回だけ、すべて否定の言葉への返事だった。

「Bless you はローマの疫病から始まった」という話がのる有名な本は、1260年ごろの聖人の伝記集。くしゃみへのあいさつは、その疫病より500年以上前、1世紀のローマの本にもう出てくる。1871年、イギリスの人類学者は疫病説を「伝説」とした。

2019年の論文によると、米国の39州とワシントンDCに、医師の「お気の毒に」などを、責任を認めた証拠として裁判で使わせない法律がある。ただし多くの州では「私のミスです」は守られない。

「I'm fine, thank you はネイティブは使わない」は言い過ぎ。英英辞典に同じ型の例文がある。米国人どうしのあいさつを録音した調査では、How are you? への返事は Good が最多で、Fine も出てきた。0回だったのは I'm hungry. のような返事。

主語も動詞もない Long time no see を、オックスフォードの学習辞典は「くだけた言い方」として載せる。1900年の本には you つきで出てくる。中国語から来たという説は証拠がはっきりしない。

英語の学習辞典で「生徒が先生への呼びかけに使う」とあるのは、イギリス英語の sir と miss。teacher にその使い方は載っていない。1956年には、言語学者が teacher という語を「上流ではない人の言葉」と書いていた。
月や曜日の名前、ABCの歌、“クイーンズ・イングリッシュ”。毎日見る英語の、知らない顔。

辞書の「イギリス発音」のお手本は RP と呼ばれる発音。でも大英図書館によると、RP で話すのは英国の人口の約3%と見積もられている。エリザベス女王の母音の一部さえ、1950年代から80年代に変わっていた。

米国では音楽出版社が「Happy Birthday to You」の歌詞は自社のものだと主張し、使用料を取っていた。2015年、米国の裁判所が「その会社に有効な著作権はない」と判断し、2016年にだれでも自由に使える歌になった。メロディーは1893年の幼稚園の歌と同じ。

probably が何%かは辞書に書いていない。CIA の分析官が1964年に発表した表では probable は75%前後、英国の情報機関の今の表は55〜75%。人に聞くと答えは大きく散らばる。

ABCの歌ときらきら星は同じメロディー。論文によると、楽譜が最初に出版されたのは1761年のフランス。モーツァルトは作曲した人ではなく、このメロディーで変奏曲を書いた人。アルファベットの歌詞をつけた楽譜は、1835年にボストンで「ドイツの歌」という題で出た。

シェイクスピアの14行詩(ソネット)154編のうち96編には、今の発音だと合わない韻がある。当時の発音を復元すると love と prove は韻を踏み、意味の通らなかったしゃれも生き返る。

「アメリカ英語」と習う gotten は1611年の英国の聖書に、秋の fall は1693年の英国の詩にある。どちらも昔のイギリス英語。ただし「米語は古い英語の保存版」も言いすぎ。

つづりの覚え歌「i before e except after c」(i は e の前。ただし c の後ろは別)は2009年、英国の指導資料で「教える価値なし」とされた。でも「イー」と読む語に限ればよく当たり、2013年の全国カリキュラムでは条件つきで必修の項目に入った。

米国の電話の会話200例で、What・Where などの疑問文は81%が語尾を下げていた。Do you〜? のような Yes/No 疑問文は9割前後が上げ調子。下げて言われた Yes/No 疑問文は、頼みごと・お知らせなど、ふつうの質問ではないものだった。
ジョン万次郎の英会話本から、筆記体が消えた日まで。日本人と英語の授業の150年。

英語の v を「ヴ」と書く方法は、1860年に福沢諭吉が英語の本で使ったのが始まりとされる。本人も後に「当時思付(おもいつき)の新案」と書いた。じつは「ワ」に濁点の文字も作っていた。

太平洋戦争中も、中学校の英語は時間を減らされながら続いていた。将校を育てる陸軍の幼年学校は1938年に英語を始め、1945年8月まで教えた。1945年4月に授業が原則停止になったときは、英語以外の科目もいっしょに止まった。

TOEICはアメリカから入ってきた試験、ではない。1977年に日本人の北岡靖男がアメリカの試験団体ETSに開発を依頼し、1979年12月に日本の5都市で第1回を実施。日本の外で初めて行われたのは1982年の韓国だった。

1872年、のちの初代文部大臣・森有礼は、不規則動詞をなくした英語を日本で使う案を米国の言語学者に送った。返事は、英語を変えることには反対。国民の教育は主に日本語で、というもの。

1859年、ジョン万次郎の英会話の本は Good day を「グーリ デイ」、D を「リー」と書いた。つづりではなく、アメリカで聞いた音のカタカナ。ただし water は「ワータ」。

「This is a pen.」は実在した。英語学者・斎藤秀三郎の中学1年用の教科書(1908年)で、第1課の1文目。昭和の教師用の本は「ペンを手に取って言う」と指示していた。

国が決める中学校の教える内容の基準「学習指導要領」は、1958〜1989年の版では筆記体を教える文字に入れていた。1998年に出た版(2002年度から実施)からは「指導することもできる」に。アメリカでも2010年の全国共通の基準に入らず、カリフォルニア州は2023年の州法で、小学校で教えることにした。
「和製英語だから通じない」は、ときどき半分だけ正しい。

英語の mansion のいちばんの意味は「大邸宅」。でもイギリスでは「〜Mansions」が集合住宅の名前に使われ、1880年代にはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールの隣に、集合住宅「アルバート・ホール・マンションズ」が建った。もとはラテン語の「とどまる所」で、メゾネットやパーマ(パーマネント)も同じ語源。

和製英語と習う「サラリーマン」。でもオックスフォード英語辞典(OED)には、1719年の英語の salary man の例がある。この語が日本語に入り、「日本の会社員」の意味で英語に戻った。





























このコーナーは「学校の英語はまちがいだ」と言いたいのではありません。授業やテストのルールは、入門の人が迷わないための“決めごと”や、書き言葉のていねいな基準として大事な役目があります。
ここで紹介するのは、そのルールがどこから来たのかと、実際の英語ではどう使われているのかです。各記事の最後に「テスト・英作文ではどうする?」をまとめています。授業や試験では、先生の指導に合わせてください。