「ghoti」で「フィッシュ」と読む英語ジョーク、作者とされるショーの誕生前からあった

読む前に予想してみよう!
「ghoti=fish」のジョークを考えたのは、劇作家バーナード・ショーだと確かめられている
ショーの著作からは見つかっていない。いちばん古い記録は1855年12月の手紙で、ショーが生まれる7か月前。
- 対象
- 19世紀の手紙・雑誌・本、言語学者の調査
- 規模
- 1845〜2008年の文献
- 研究の種類
- 歴史言語学(文献調査)
- 確かさ
- ★★★☆☆
ghoti を fish と読ませるジョークは「ショー作」とされるが、著作に見つからない。知られている最古の記録はショーが生まれる7か月前、1855年の手紙。
ひとことで言うとghoti を「フィッシュ」と読むジョーク、本当の作者はショーじゃなかった!
もくじ
ghoti と書いて「フィッシュ(fish)」と読む。英語の先生がよく話す、つづりのジョークです。
作者は『ピグマリオン』で知られるアイルランド生まれの劇作家、バーナード・ショー。そう紹介されることが多いのですが、ショーの書いたものからは見つかっていません。
いま分かっているいちばん古い記録は、1855年12月11日の手紙。ショーが生まれる7か月前です。しかも、英語のつづりのルールに照らすと「ghoti は fish とは読めない」という指摘もあります。
01ghoti はなぜ「フィッシュ」と読める?
しくみはこうです。
- gh は enough(イナフ)の gh で「f」の音
- o は women(ウィミン)の o で「イ」の音
- ti は nation(ネイション)の ti で「シュ」の音
3つをつなぐと「f・イ・シュ」で fish。英語のつづりと発音がどれだけずれているかを、たった5文字で見せるジョークです。
アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)で確かめると、enough の発音は「イナフ」、women は「ウィミン」。woman(ウマン)の複数形なのに、o を「イ」と読みます。
02作者は「出版社の息子」だった
2008年4月、ミズーリ大学の言語学者マシュー・ゴードンが、イギリスの古い雑誌のデータベースで、ショーより前の ghoti を見つけました。ペンシルベニア大学の言語学者たちのブログ「Language Log」で、言葉の歴史を調べるベン・ジマーが、その経緯をくわしく書いています。
雑誌に引用された手紙の一節は、こう始まります。
「My son William has hit upon a new method of spelling Fish.」(息子のウィリアムが、Fish の新しいつづり方を思いついた)
手紙は続けて、gh は tough・rough・enough の f、o は women の i、ti は mention・attention の sh、だから ghoti は fish だ、と説明しています。いま広まっている「nation の ti」ではなく、mention(メンション)が例に使われていました。
ジマーによると、息子のウィリアム・オリアーは当時31歳ごろ。子どものいたずらではなく、大人の言葉遊びです。
では、なぜショーの名前がついたのか。ジマーの調べでは、それまで見つかっていた ghoti のいちばん古い例は1937年の新聞記事。ショーの作だと書いた最も古い例は1946年で、マリオ・ペイという人によるものでした(ジマーは、ペイを言葉の話では「いつも頼れるとは限らない」書き手としています)。ショーの著作にくわしい人たちが調べても、ghoti は見つかっていません。

0310年前には「scissors のつづり方は174万通り」
ghoti のような遊びは、じつはもっと前からありました。ジマーが「ghoti のヒントになったかもしれない」と紹介しているのが、つづりの改革を訴えたアレクサンダー・エリスの1845年の本『A Plea for Phonotypy and Phonography』です。
エリスは、英語の音を43に分けると、1つの音のつづり方は平均で9通り近くあると数えました。そして scissors(ハサミ) を例に、こんな計算をしています。
- scissors の音は6つ(s・i・z・u・r・z)
- それぞれのつづり方の数は、s が9通り、i が18通り、z が9通り、u が19通り、r が7通り、z が9通り
- かけ算すると 1,745,226通り。そのうち「正しい」のは scissors だけ
例として挙げたのが schiesourrhce。schism の sch、sieve の ie、as の s、honour の our、myrrh の rrh、sacrifice の ce をつないだものです。エリスはこのつづりのあとに小さな記号をつけ、ページの下の注で「笑いの記号」と説明しています。ジマーはこれを「顔文字の先祖」と呼んでいます。
04ショーは本気で、遺言に「新しいアルファベット」を書いた
ショーの名前が ghoti と結びついたのには、理由があります。ショー(1856〜1950年)は、英語のつづりのくせの強さを、遠慮なく批判していた人でした。
文字コードの国際規格 Unicode に出された1997年の提案書によると、ショーは遺言で、イギリスの公的な遺産管理人に「40文字以上の新しいアルファベット」を探して発表するよう命じました。
ところが、話はすんなり進みません。オックスフォード大学出版局の信託法の教科書の学習資料によると、1957年のイギリスの裁判(Re Shaw)では、新しいアルファベットの研究に遺産を使うという遺言は、教育のための慈善目的とは認められませんでした。裁判官は「知識を増やすだけでは、教えることと結びつかない限り慈善目的にならない」と述べています。
それでもアルファベットは生まれました。選ばれたのはデザイナーのキングズリー・リードの案で、Shavian(ショー・アルファベット)と呼ばれます。
- 文字は48個。大文字と小文字の区別はない
- 大文字がないかわりに、人名などの固有名詞の前には専用の点(ネームマーク)をつける
- 1962年、ショーの劇『アンドロクレスとライオン』が、ふつうのつづりとショー・アルファベットを並べた本としてペンギン社から出て、図書館に配られた
広く使われることはありませんでしたが、Shavian はいま Unicode に登録されていて、コンピューターで扱える文字になっています。
05魚の研究雑誌のコラム名も「Ghoti」
ghoti は、学術の世界にまで泳いでいきました。
魚と漁業の研究雑誌『Fish and Fisheries』(ワイリー社)には、「Ghoti」という名前の短い論説のコーナーがあります。2004年の論文のページには、このコーナーの説明として「Ghoti の語源」が書かれていて、そこには「ショーは、fish が ghoti とつづれると示して英語のおかしさを指摘するのが好きだったと言われる」とあります。
ショー作という話は、研究者向けの雑誌にまで「言われる」の形で残っているのです。
06どんでん返し:「ghoti は fish とは読めない」という反論
ここまで読むと「英語のつづりはめちゃくちゃだ」と思うかもしれません。でも、ジマーの記事のコメント欄には、ghoti そのものへの反論も書きこまれました。
ある読者が「語の頭の gh が f になる英単語も、語の終わりの ti がシュになる英単語も、あまりない。英語のつづりは ghoti を fish の書きかえとしては認めていない」と書きこみました。ジマーはこれに「まったくその通り」と答え、だからこそショーたちが ghoti を英語のつづりの本気の例として持ち出したとは考えにくく、昔からのジョークをくり返しただけだろう、と書いています。
辞書で発音を確かめると、語の頭の gh は ghost(ゴウスト)のように g の音。gh が f になるのは enough・laugh のように語の終わりのほうです。ti がシュになるのも、nation・patient のように後ろに母音が続くときです。英語のつづりには、文字が語のどこにあるかで読み方が決まる面があり、ghoti はそこを無視している、という指摘です。ただし、これはブログのコメント欄でのやりとりで、つづりの研究論文で確かめたものではありません。
エリス自身も、174万通りの計算のすぐあとで「c がどこでも s の音を表せるわけではない、といったルールがあるので、実際の数はもっと少ない」と書き添えていました。
07まとめ
ghoti=fish は「ショーのジョーク」として有名ですが、いちばん古い記録はショーが生まれる前、出版人オリアーの息子ウィリアムの思いつきでした。その10年前には、エリスが scissors のつづり方を174万通りと数えています。
ショー本人は、遺言で新しいアルファベットまで用意させた本気のつづり改革派でした。ただ、ghoti そのものは文字の位置を無視したジョークだ、という指摘もあります。英語のつづりはでたらめに見えて、文字の位置で読み方が決まる面もある。gh を見たら、語のどこにあるかを確かめてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf "gh" sounds like "f" in "enough," "o" like "i" in "women," and "ti" like "sh" in "nation," then "ghoti"…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Here is an old English joke. You can spell "fish" as "ghoti." The "gh" sounds like "f" in "enough." The "o" sounds like "i" in "women." And the "ti" sounds like "sh" in "nation." Many people say the writer Bernard Shaw made this joke.
But the oldest example is in a letter from 1855. Shaw was born seven months later, so he did not start it.
66 words ・ CEFR A2
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英語の古いジョークを紹介します。「fish」は「ghoti」とつづることができます。「gh」は「enough」の中で「f」のような音です。「o」は「women」の中で「i」のような音です。そして「ti」は「nation」の中で「sh」のような音です。多くの人が、作家のバーナード・ショーがこのジョークを作ったと言います。
でも、いちばん古い例は1855年の手紙の中にあります。ショーはその7か月後に生まれたので、彼が始めたのではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ghoti=fish というつづりのジョークと、作者が誰かという話なので B。
Q2. When is the oldest example of the joke from?
the oldest example is in a letter from 1855 とあるので A。
Q3. In the word "women," what sound does the "o" make?
The "o" sounds like "i" in "women." とあるので C。
If "gh" sounds like "f" in "enough," "o" like "i" in "women," and "ti" like "sh" in "nation," then "ghoti" spells "fish." This joke is usually credited to the playwright George Bernard Shaw, but no one has found it in his writings. In 2008, a linguist at the University of Missouri found it in a magazine article from 1874.
The article quoted a letter from a publisher named Charles Ollier. In it, Ollier wrote that his son William had found a new way to spell "fish." Library records later showed that the letter was dated December 11, 1855. Shaw was born in July of the following year. The earliest known claim that Shaw invented the joke comes from 1946.
119 words ・ CEFR B1
和訳を見る
もし「gh」が「enough」の中で「f」のように、「o」が「women」の中で「i」のように、「ti」が「nation」の中で「sh」のように聞こえるなら、「ghoti」は「fish」とつづることになる。このジョークはふつう劇作家ジョージ・バーナード・ショーの作とされるが、彼の書いたものの中からは誰も見つけていない。2008年、ミズーリ大学の言語学者が、1874年の雑誌記事の中にそれを見つけた。
記事は、出版人チャールズ・オリアーの手紙を引用していた。その中でオリアーは、息子のウィリアムが「fish」の新しいつづり方を見つけたと書いていた。のちに図書館の記録から、その手紙の日付は1855年12月11日だと分かった。ショーが生まれたのは翌年の7月だ。ショーがこのジョークを考えたという主張の、知られているいちばん古いものは1946年のものだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
1855年の手紙が見つかり、ショーが生まれる前からジョークがあったことが主旨なので B。
Q2. Who came up with the new spelling, according to Ollier's letter?
Ollier wrote that his son William had found a new way to spell "fish." とあるので C。
Q3. What can we infer about the claim that Shaw invented the joke?
ジョークは1855年、ショーの作だという主張は1946年なので、約90年後に出てきたと分かる。A。
Take the "gh" from "enough," the "o" from "women" and the "ti" from "nation," and you can spell "fish" as "ghoti." English teachers love this joke, and they usually credit it to George Bernard Shaw, who did campaign for spelling reform. In his will he asked for a new alphabet of at least 40 letters, and one was eventually published in 1962.
But the joke itself does not appear anywhere in his writings. In 2008 a linguist found it quoted in an 1874 magazine article about the publisher Charles Ollier, and a librarian traced the original letter to December 11, 1855, seven months before Shaw was born. Ollier said the idea came from his son William, an adult at the time. Ten years earlier, the reformer Alexander Ellis had worked out that "scissors" could in theory be spelled in 1,745,226 different ways.
Later, a reader of a language blog pointed out a problem with "ghoti." English words almost never begin with a "gh" that sounds like "f" (think of "ghost"), and "ti" only sounds like "sh" before a vowel.
179 words ・ CEFR B2
和訳を見る
「enough」の「gh」、「women」の「o」、「nation」の「ti」を取ってくれば、「fish」を「ghoti」とつづれる。英語の先生はこのジョークが大好きで、ふつうジョージ・バーナード・ショーの作だとする。ショーは実際につづりの改革を訴えていた。遺言では40文字以上の新しいアルファベットを求め、1962年にはついに1つが発表された。
だがジョークそのものは、彼の書いたもののどこにも出てこない。2008年、ある言語学者が出版人チャールズ・オリアーについての1874年の雑誌記事にそれが引用されているのを見つけ、図書館員がもとの手紙を1855年12月11日のものだとつきとめた。ショーが生まれる7か月前だ。オリアーは、この思いつきは当時大人だった息子ウィリアムによるものだと書いている。その10年前には、改革論者アレクサンダー・エリスが、「scissors」は理屈の上では1,745,226通りのつづり方ができると計算していた。
のちに、言語のブログの読者が「ghoti」の弱点を指摘した。英語で語の頭の「gh」が「f」の音になることはほとんどない(「ghost」を思い出してほしい)。また「ti」が「sh」の音になるのは母音の前だけだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ghoti の本当の起源と、つづりの規則を破っているという弱点の話なので A。
Q2. How many ways did Alexander Ellis say "scissors" could be spelled?
"scissors" could in theory be spelled in 1,745,226 different ways とあるので C。
Q3. According to the passage, why does "ghoti" not really work?
語の頭の gh はほとんど f にならず、ti は母音の前でしか sh にならない、とあるので、文字の位置を無視しているから。B。
重要単語
- spellingA2名詞つづりEnglish spelling is hard even for native speakers.
spell(つづる)+-ing。spelling reform は「つづり字改革」。 - pronounceB1動詞発音するHow do you pronounce this word?
名詞は pronunciation(つづりが pronoun- になる点に注意)。 - silentB1形容詞発音しない、黙字のThe "k" in "knife" is silent.
silent letter「黙字」。night の gh も silent。 - creditB2動詞(手柄・作品を人に)帰するThe joke is often credited to Shaw.
credit A to B / credit B with A「A を B の手柄とする」。映画の「クレジット」も同じ語。 - reformB2名詞・動詞改革(する)Shaw wanted a reform of English spelling.
日本語の「リフォーム(家の改装)」は英語では renovation や remodeling。 - willB2名詞遺言(書)He left money in his will for a new alphabet.
助動詞の will と同じつづり。leave A in one's will「遺言で A を残す」。 - playwrightC1名詞劇作家The playwright wrote more than fifty plays.
-wright は「作る人」(shipwright 船大工)。write ではないので注意。
公式・一次情報をチェック
- ghost(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- George Bernard Shaw – Facts(The Nobel Prize)nobelprize.org
- Shavian の文字表(Unicode)unicode.org
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ghoti と書いて fish と読む英語ジョーク。gh は enough の f、o は women のイ、ti は nation のシュ。だから ghoti は fish。ショー作とよく言われるが、いま分かる最古の記録はショー誕生の7か月前、1855年の手紙。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Zimmer (2008) "Ghoti" before Shaw, Language Log(ペンシルベニア大学)languagelog.ldc.upenn.edu
- Zimmer (2008) ghoti = fish, ADS-L(アメリカ方言学会メーリングリスト)listserv.linguistlist.org
- Ellis (1845) A Plea for Phonotypy and Phonography(Internet Archive)archive.org
- Jenkins (1997) Proposal to add Shavian to Unicode/ISO-IEC 10646, Unicode L2/97-103unicode.org
- Froese (2004) Keep it simple: three indicators to deal with overfishing, Fish and Fisheries 5(1)doi.org
- Watt, Trusts & Equity 10th ed. 第7章ガイド(Re Shaw [1957]), Oxford University Presslearninglink.oup.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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