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英語のマジか!?ウソ

「ghoti」で「フィッシュ」と読む英語ジョーク、作者とされるショーの誕生前からあった

「ghoti」で「フィッシュ」と読む英語ジョーク、作者とされるショーの誕生前からあった

読む前に予想してみよう!

「ghoti=fish」のジョークを考えたのは、劇作家バーナード・ショーだと確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
19世紀の手紙・雑誌・本、言語学者の調査
規模
1845〜2008年の文献
研究の種類
歴史言語学(文献調査)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ghoti を fish と読ませるジョークは「ショー作」とされるが、著作に見つからない。知られている最古の記録はショーが生まれる7か月前、1855年の手紙。

ひとことで言うとghoti を「フィッシュ」と読むジョーク、本当の作者はショーじゃなかった!

もくじ
  1. ghoti はなぜ「フィッシュ」と読める?
  2. 作者は「出版社の息子」だった
  3. 10年前には「scissors のつづり方は174万通り」
  4. ショーは本気で、遺言に「新しいアルファベット」を書いた
  5. 魚の研究雑誌のコラム名も「Ghoti」
  6. どんでん返し:「ghoti は fish とは読めない」という反論
  7. まとめ

ghoti と書いて「フィッシュ(fish)」と読む。英語の先生がよく話す、つづりのジョークです。

作者は『ピグマリオン』で知られるアイルランド生まれの劇作家、バーナード・ショー。そう紹介されることが多いのですが、ショーの書いたものからは見つかっていません。

いま分かっているいちばん古い記録は、1855年12月11日の手紙。ショーが生まれる7か月前です。しかも、英語のつづりのルールに照らすと「ghoti は fish とは読めない」という指摘もあります。

01ghoti はなぜ「フィッシュ」と読める?

しくみはこうです。

  • gh は enough(イナフ)の gh で「f」の音
  • o は women(ウィミン)の o で「イ」の音
  • ti は nation(ネイション)の ti で「シュ」の音

3つをつなぐと「f・イ・シュ」で fish。英語のつづりと発音がどれだけずれているかを、たった5文字で見せるジョークです。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)で確かめると、enough の発音は「イナフ」、women は「ウィミン」。woman(ウマン)の複数形なのに、o を「イ」と読みます。

02作者は「出版社の息子」だった

2008年4月、ミズーリ大学の言語学者マシュー・ゴードンが、イギリスの古い雑誌のデータベースで、ショーより前の ghoti を見つけました。ペンシルベニア大学の言語学者たちのブログ「Language Log」で、言葉の歴史を調べるベン・ジマーが、その経緯をくわしく書いています。

雑誌に引用された手紙の一節は、こう始まります。

「My son William has hit upon a new method of spelling Fish.」(息子のウィリアムが、Fish の新しいつづり方を思いついた)

手紙は続けて、gh は tough・rough・enough の f、o は women の i、ti は mention・attention の sh、だから ghoti は fish だ、と説明しています。いま広まっている「nation の ti」ではなく、mention(メンション)が例に使われていました。

ジマーによると、息子のウィリアム・オリアーは当時31歳ごろ。子どものいたずらではなく、大人の言葉遊びです。

では、なぜショーの名前がついたのか。ジマーの調べでは、それまで見つかっていた ghoti のいちばん古い例は1937年の新聞記事。ショーの作だと書いた最も古い例は1946年で、マリオ・ペイという人によるものでした(ジマーは、ペイを言葉の話では「いつも頼れるとは限らない」書き手としています)。ショーの著作にくわしい人たちが調べても、ghoti は見つかっていません。

ghoti のいちばん古い記録は、1855年12月11日に出版人オリアーがリー・ハントにあてた手紙
ghoti のいちばん古い記録は、1855年12月11日に出版人オリアーがリー・ハントにあてた手紙

0310年前には「scissors のつづり方は174万通り」

ghoti のような遊びは、じつはもっと前からありました。ジマーが「ghoti のヒントになったかもしれない」と紹介しているのが、つづりの改革を訴えたアレクサンダー・エリスの1845年の本『A Plea for Phonotypy and Phonography』です。

エリスは、英語の音を43に分けると、1つの音のつづり方は平均で9通り近くあると数えました。そして scissors(ハサミ) を例に、こんな計算をしています。

  • scissors の音は6つ(s・i・z・u・r・z)
  • それぞれのつづり方の数は、s が9通り、i が18通り、z が9通り、u が19通り、r が7通り、z が9通り
  • かけ算すると 1,745,226通り。そのうち「正しい」のは scissors だけ

例として挙げたのが schiesourrhce。schism の sch、sieve の ie、as の s、honour の our、myrrh の rrh、sacrifice の ce をつないだものです。エリスはこのつづりのあとに小さな記号をつけ、ページの下の注で「笑いの記号」と説明しています。ジマーはこれを「顔文字の先祖」と呼んでいます。

04ショーは本気で、遺言に「新しいアルファベット」を書いた

ショーの名前が ghoti と結びついたのには、理由があります。ショー(1856〜1950年)は、英語のつづりのくせの強さを、遠慮なく批判していた人でした。

文字コードの国際規格 Unicode に出された1997年の提案書によると、ショーは遺言で、イギリスの公的な遺産管理人に「40文字以上の新しいアルファベット」を探して発表するよう命じました。

ところが、話はすんなり進みません。オックスフォード大学出版局の信託法の教科書の学習資料によると、1957年のイギリスの裁判(Re Shaw)では、新しいアルファベットの研究に遺産を使うという遺言は、教育のための慈善目的とは認められませんでした。裁判官は「知識を増やすだけでは、教えることと結びつかない限り慈善目的にならない」と述べています。

それでもアルファベットは生まれました。選ばれたのはデザイナーのキングズリー・リードの案で、Shavian(ショー・アルファベット)と呼ばれます。

  • 文字は48個。大文字と小文字の区別はない
  • 大文字がないかわりに、人名などの固有名詞の前には専用の点(ネームマーク)をつける
  • 1962年、ショーの劇『アンドロクレスとライオン』が、ふつうのつづりとショー・アルファベットを並べた本としてペンギン社から出て、図書館に配られた

広く使われることはありませんでしたが、Shavian はいま Unicode に登録されていて、コンピューターで扱える文字になっています。

05魚の研究雑誌のコラム名も「Ghoti」

ghoti は、学術の世界にまで泳いでいきました。

魚と漁業の研究雑誌『Fish and Fisheries』(ワイリー社)には、「Ghoti」という名前の短い論説のコーナーがあります。2004年の論文のページには、このコーナーの説明として「Ghoti の語源」が書かれていて、そこには「ショーは、fish が ghoti とつづれると示して英語のおかしさを指摘するのが好きだったと言われる」とあります。

ショー作という話は、研究者向けの雑誌にまで「言われる」の形で残っているのです。

06どんでん返し:「ghoti は fish とは読めない」という反論

ここまで読むと「英語のつづりはめちゃくちゃだ」と思うかもしれません。でも、ジマーの記事のコメント欄には、ghoti そのものへの反論も書きこまれました。

ある読者が「語の頭の gh が f になる英単語も、語の終わりの ti がシュになる英単語も、あまりない。英語のつづりは ghoti を fish の書きかえとしては認めていない」と書きこみました。ジマーはこれに「まったくその通り」と答え、だからこそショーたちが ghoti を英語のつづりの本気の例として持ち出したとは考えにくく、昔からのジョークをくり返しただけだろう、と書いています。

辞書で発音を確かめると、語の頭の gh は ghost(ゴウスト)のように g の音。gh が f になるのは enough・laugh のように語の終わりのほうです。ti がシュになるのも、nation・patient のように後ろに母音が続くときです。英語のつづりには、文字が語のどこにあるかで読み方が決まる面があり、ghoti はそこを無視している、という指摘です。ただし、これはブログのコメント欄でのやりとりで、つづりの研究論文で確かめたものではありません。

エリス自身も、174万通りの計算のすぐあとで「c がどこでも s の音を表せるわけではない、といったルールがあるので、実際の数はもっと少ない」と書き添えていました。

07まとめ

ghoti=fish は「ショーのジョーク」として有名ですが、いちばん古い記録はショーが生まれる前、出版人オリアーの息子ウィリアムの思いつきでした。その10年前には、エリスが scissors のつづり方を174万通りと数えています。

ショー本人は、遺言で新しいアルファベットまで用意させた本気のつづり改革派でした。ただ、ghoti そのものは文字の位置を無視したジョークだ、という指摘もあります。英語のつづりはでたらめに見えて、文字の位置で読み方が決まる面もある。gh を見たら、語のどこにあるかを確かめてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf "gh" sounds like "f" in "enough," "o" like "i" in "women," and "ti" like "sh" in "nation," then "ghoti"… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If "gh" sounds like "f" in "enough," "o" like "i" in "women," and "ti" like "sh" in "nation," then "ghoti" spells "fish." This joke is usually credited to the playwright George Bernard Shaw, but no one has found it in his writings. In 2008, a linguist at the University of Missouri found it in a magazine article from 1874.

The article quoted a letter from a publisher named Charles Ollier. In it, Ollier wrote that his son William had found a new way to spell "fish." Library records later showed that the letter was dated December 11, 1855. Shaw was born in July of the following year. The earliest known claim that Shaw invented the joke comes from 1946.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

もし「gh」が「enough」の中で「f」のように、「o」が「women」の中で「i」のように、「ti」が「nation」の中で「sh」のように聞こえるなら、「ghoti」は「fish」とつづることになる。このジョークはふつう劇作家ジョージ・バーナード・ショーの作とされるが、彼の書いたものの中からは誰も見つけていない。2008年、ミズーリ大学の言語学者が、1874年の雑誌記事の中にそれを見つけた。

記事は、出版人チャールズ・オリアーの手紙を引用していた。その中でオリアーは、息子のウィリアムが「fish」の新しいつづり方を見つけたと書いていた。のちに図書館の記録から、その手紙の日付は1855年12月11日だと分かった。ショーが生まれたのは翌年の7月だ。ショーがこのジョークを考えたという主張の、知られているいちばん古いものは1946年のものだ。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Who came up with the new spelling, according to Ollier's letter?

Q3. What can we infer about the claim that Shaw invented the joke?

重要単語

  • spellingA2
    名詞つづりEnglish spelling is hard even for native speakers. spell(つづる)+-ing。spelling reform は「つづり字改革」。
  • pronounceB1
    動詞発音するHow do you pronounce this word? 名詞は pronunciation(つづりが pronoun- になる点に注意)。
  • silentB1
    形容詞発音しない、黙字のThe "k" in "knife" is silent. silent letter「黙字」。night の gh も silent。
  • creditB2
    動詞(手柄・作品を人に)帰するThe joke is often credited to Shaw. credit A to B / credit B with A「A を B の手柄とする」。映画の「クレジット」も同じ語。
  • reformB2
    名詞・動詞改革(する)Shaw wanted a reform of English spelling. 日本語の「リフォーム(家の改装)」は英語では renovation や remodeling。
  • willB2
    名詞遺言(書)He left money in his will for a new alphabet. 助動詞の will と同じつづり。leave A in one's will「遺言で A を残す」。
  • playwrightC1
    名詞劇作家The playwright wrote more than fifty plays. -wright は「作る人」(shipwright 船大工)。write ではないので注意。
ghoti と書いて fish と読む英語ジョーク。gh は enough の f、o は women のイ、ti は nation のシュ。だから ghoti は fish。ショー作とよく言われるが、いま分かる最古の記録はショー誕生の7か月前、1855年の手紙。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Zimmer (2008) "Ghoti" before Shaw, Language Log(ペンシルベニア大学)languagelog.ldc.upenn.edu
  2. Zimmer (2008) ghoti = fish, ADS-L(アメリカ方言学会メーリングリスト)listserv.linguistlist.org
  3. Ellis (1845) A Plea for Phonotypy and Phonography(Internet Archive)archive.org
  4. Jenkins (1997) Proposal to add Shavian to Unicode/ISO-IEC 10646, Unicode L2/97-103unicode.org
  5. Froese (2004) Keep it simple: three indicators to deal with overfishing, Fish and Fisheries 5(1)doi.org
  6. Watt, Trusts & Equity 10th ed. 第7章ガイド(Re Shaw [1957]), Oxford University Presslearninglink.oup.com

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