SNS で友達を外す unfriend。1659年の牧師の手紙に、もう Un-friended とある

読む前に予想してみよう!
「unfriend」という形の語は、SNS が広まるまで英語の記録に一度も出てこなかった
1659年、イギリスの牧師トマス・フラーが論争相手にあてた手紙に「mutually Un-friended」と書いている。今の SNS の意味とは別に、350年以上前に同じ組み立ての語があった。
- 対象
- 17世紀の刊行本と英語辞書・出版社の発表
- 規模
- 1659年の用例・2009年の発表
- 研究の種類
- 語源調査(文献・辞書)
- 確かさ
- ★★★★☆
SNS で友達から外す unfriend は、2009年に米国版オックスフォード辞典の「今年の単語」。ところが1659年、論争中の牧師が相手への手紙に Un-friended と書いていた。
ひとことで言うとSNS の言葉に見える unfriend。350年以上前の手紙に、もう Un-friended が出ていた!
もくじ
SNS で、つながっていた人を友達リストから外す。英語ではこれを unfriend(アンフレンド)と言います。I unfriended him.(あの人を友達から外した)のように使う、いかにもネット時代の単語です。
2009年には、オックスフォード大学出版局の米国向け辞書『New Oxford American Dictionary』が、この unfriend をその年の「今年の単語」に選びました。
ところが、1659年のイギリスで、ある牧師がケンカ相手にあてた手紙に、すでに「Un-friended」と書いていました。Facebook ができる350年近く前のことです。
012009年の「今年の単語」は unfriend
オックスフォード大学出版局の公式ブログ(2009年11月16日)によると、New Oxford American Dictionary はこの年の単語に unfriend を選び、こう定義しました。
- unfriend(動詞):Facebook などの SNS で、人を「友達」から外すこと
- 例文:I decided to unfriend my roommate on Facebook after we had a fight.(ケンカのあと、ルームメイトを Facebook の友達から外すことにした)
辞書編集者のクリスティン・リンドバーグは選んだ理由として、un- がつく語のほとんどは unpleasant(不快な)のような形容詞で、unpack(荷をほどく)のような動詞もあるが、unfriend はふつうとは違う、と説明しています。unfriend は friend を「友達になる」という動詞として使う前提の語なのに、その動詞の friend は「(たぶん)17世紀あたりからは、実際には使われていない」からです。
同じ年の候補には、hashtag(ハッシュタグ)、netbook(小型ノートパソコン)、funemployed(失業を楽しむ)などが並んでいました。ハッシュタグは、unfriend に負けていたのです。
021659年、ケンカ中の牧師が書いた「Un-friended」
舞台は17世紀のイギリス。牧師のトマス・フラー(Thomas Fuller)は、自分が書いた教会の歴史の本を、同じく聖職者のピーター・ヘイリン(Peter Heylyn)に厳しく批判されました。フラーは1659年、反論の本『The Appeal of Injured Innocence(傷つけられた潔白の訴え)』を出します。
その本の最後に、「わが親愛なる友、ヘイリン博士へ」という手紙が載っています。書き出しはこうです。
「I Hope, Sir, that we are not mutually Un-friended by this Difference which hath happened betwixt us.」(このたびの意見の違いによって、私たちがお互いに“友でなくなって”いなければよいのですが)
ケンカの相手に「まだ友達だよね?」と呼びかける手紙。そこに使われていたのが Un-friended でした。今の「SNS で友達を外す」とは場面が違いますが、「friend の前に un- をつけて、友達でなくなる」という組み立ては同じです。
03シェイクスピアの「unfriended」は「友のいない」
フラーより前にも、unfriended という形はありました。フォルジャー・シェイクスピア図書館の本文で確かめると、シェイクスピアの劇では、たとえば次の2か所に出てきます。
- 『リア王』第1幕第1場:リア王が、末娘コーディリアを妻にするかと求婚者に迫る場面。娘を「Unfriended(味方もいない)」身だと言い放つ
- 『十二夜』第3幕第3場:アントーニオが、セバスチャンの後を追ってきた理由を話す場面。知らない土地は「Unguided and unfriended(案内人も友もいない)」よそ者には荒っぽく冷たいものだから、と言う
こちらは「友達のいない」という形容詞です。「友達だった人を外す」という今の unfriend とは、意味の向きが少し違います。

04friend の語源は「愛する人」。free も Friday も親せき
では、friend という単語そのものは、どこから来たのでしょう。アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)の「Word History(語の歴史)」欄によると、
- friend のもとは古英語の frēond。動詞 frēon(愛する、好む、自由にする)と同じもとの動詞の「〜している」の形(現在分詞)から来ていて、もとの意味は「愛する人」
- その動詞 frēon は、今の英語の free(自由にする) として残っている
- 同じ根っこ(「好む・愛する・親しくする」)は、ゲルマンの愛の女神フリッグ(Frigg)の名前にも出てくる。Friday(金曜日)は「フリッグの日」。ラテン語の「ウェヌス(ビーナス)の日」を訳した名前
つまり、friend(友達)と free(自由な)と Friday(金曜日)は、同じ「愛する」から枝分かれした言葉です。
なお AHD は、動詞の friend に「SNS で友達に加える」(くだけた言い方)と「親しくなる、味方になる」(古い言い方)の2つの意味を載せています。Dictionary.com でも、古いほうの意味は「まれ(Rare)」の扱いです。
05tweet も troll も、SNS より古い
ほかにも、SNS の言葉に見えて、実は昔からある単語があります。
- tweet:Dictionary.com によると、記録に現れるのは1835〜45年ごろ。もとは小鳥の「チュッチュッ」という鳴き声をまねた語。AHD も第1の意味は「小鳥の弱い鳴き声」で、X(旧 Twitter)の投稿は2番目
- troll:ネットの「荒らし」。AHD では、「船から釣り糸を流して魚を誘う」という意味の troll と同じ項目に載っている。そのうえで、「荒らしをする人」の意味は、北欧の伝説に出てくる怪物 troll の影響も受けた、と書いている
- hashtag:こちらは本当に新しい。Dictionary.com では2005〜10年の記録
06どんでん返し:ヘイリンの返事は「恨みはない。でも…」
フラーの呼びかけは、うまくいったのでしょうか。
ヘイリンは同じ1659年に出した本『Certamen epistolare(手紙の戦い)』の付録で、フラーの手紙をまるごと載せたうえで、返事を書いています。こちらも EEBO-TCP で全文が読めます。その中身は、とても丁寧な手紙だと認めたうえで「あなたへの恨みはない。あなた個人には好意を持っている。ただし、あなたが本の中で味方している立場は別だ」。そして、また批判を続けています。
“友達申請”は、すんなりとは受け入れられなかったわけです。
また、フラーの Un-friended が、今の unfriend に直接つながっているわけでもありません。Dictionary.com は今の unfriend を2005〜10年に記録が始まった語とし、SNS の friend(連絡先に加える)に un- がついたもの、と説明しています。17世紀の言葉が350年受け継がれたというより、同じ組み立ての言葉が、時代をへだてて2度生まれたと考えるのが自然です。
07まとめ
「SNS で友達から外す」unfriend は、2009年に「今年の単語」になった新しい単語です。でも1659年、ケンカ中の牧師フラーは、相手に「お互い Un-friended になっていないといいのですが」と書いていました。
friend のもとの意味は「愛する人」。free や Friday も同じ根っこです。次に誰かを unfriend したくなったら、350年前の牧師の、ていねいな仲直りの手紙を思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn November 2009, the New Oxford American Dictionary named "unfriend" its Word of the Year.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When you remove someone from your friends list on social media, you "unfriend" them. In 2009, an Oxford dictionary chose "unfriend" as its Word of the Year. It sounds like a new word.
But in 1659, an English priest named Thomas Fuller was arguing with another writer. He wrote him a kind letter. In it, he said he hoped they were not "Un-friended" by their argument. So a word like it was already used more than 350 years ago.
79 words ・ CEFR A2
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SNS で友達リストから誰かを外すとき、その人を「unfriend」すると言います。2009年、オックスフォードの辞書が「unfriend」を「今年の単語」に選びました。新しい単語のように聞こえます。
でも1659年、トマス・フラーというイギリスの牧師が、別の書き手と言い争っていました。彼はその相手に優しい手紙を書きました。その中で、言い争いのせいで2人が「Un-friended(友でなくなる)」になっていなければいい、と書いたのです。つまり、よく似た言葉が350年以上前にもう使われていたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
新しく聞こえる unfriend が1659年の手紙にすでに出てくる、という話なので B。
Q2. When did Thomas Fuller write the letter?
in 1659, an English priest named Thomas Fuller ... とあるので C。2009年は「今年の単語」に選ばれた年。
Q3. In the passage, what does "unfriend" mean today?
When you remove someone from your friends list on social media, you "unfriend" them. とあるので C。
In November 2009, the New Oxford American Dictionary named "unfriend" its Word of the Year. It defined the verb as removing someone as a "friend" on a social networking site such as Facebook. "Hashtag" was on the list of other words considered that year.
But "unfriend" has a much longer past. In 1659, two English churchmen, Thomas Fuller and Peter Heylyn, were fighting in print over a history book Fuller had written. At the end of his reply, Fuller added a friendly letter to Heylyn. It began with the hope that they were not "mutually Un-friended" by their disagreement. He also asked why Peter should fall out with Thomas, since both followed the same Lord.
115 words ・ CEFR B1
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2009年11月、New Oxford American Dictionary は「unfriend」を「今年の単語」に選んだ。辞書はこの動詞を、Facebook のような SNS で人を「友達」から外すことと定義した。この年に検討されたほかの語のリストには「hashtag」も入っていた。
しかし「unfriend」には、ずっと長い過去がある。1659年、イギリスの2人の聖職者トマス・フラーとピーター・ヘイリンは、フラーが書いた歴史の本をめぐって、本の上で争っていた。フラーは反論の本の最後に、ヘイリンへの友好的な手紙を添えた。それは、意見の違いによって2人が「お互いに友でなくなって」いなければよい、という願いで始まっていた。フラーはさらに、同じ主に従っているのに、なぜピーターがトマスと仲たがいしなければならないのか、とも書いた。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did Fuller and Heylyn disagree?
were fighting in print over a history book Fuller had written とあるので A。
Q2. Where did Fuller put his friendly letter?
At the end of his reply, Fuller added a friendly letter to Heylyn. とあるので B。
Q3. What was Fuller trying to do with his letter?
意見の違いで「友でなくなって」いなければいい、なぜ仲たがいするのか、と書いているので、言い争いがあっても友情を保とうとしていたと分かる。C。
The verb "unfriend" was picked as the 2009 Word of the Year by the New Oxford American Dictionary, which defined it as removing someone as a "friend" on a site such as Facebook. A senior editor noted that the word was unusual because it assumed a verb "friend" that had not really been used since perhaps the 17th century.
In 1659 the clergyman Thomas Fuller published a long defense of his history of the church against attacks by Peter Heylyn. He closed it with a letter hoping the two men were "not mutually Un-friended" by their quarrel, and joked that Peter and Thomas, like the apostles, served the same master. Heylyn printed that letter in a book of his own the same year.
His answer was polite. He said he held no grudge against Fuller as a person, but he still could not accept the views in Fuller's history, and he kept on arguing. Today's "unfriend" probably did not come down from Fuller. Dictionary.com dates the modern verb to 2005 to 2010 and explains it as "un-" added to "friend" in its social media sense, so the same word seems to have been formed twice.
195 words ・ CEFR B2
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動詞「unfriend」は、New Oxford American Dictionary によって2009年の「今年の単語」に選ばれた。辞書はこれを、Facebook のようなサイトで人を「友達」から外すことと定義した。
上級編集者は、この語が珍しいのは、たぶん17世紀以来、実際には使われてこなかった動詞の「friend」を前提にしているからだ、と述べた。1659年、聖職者トマス・フラーは、ピーター・ヘイリンの攻撃に対して、自分が書いた教会の歴史の本を弁護する長い本を出した。フラーはその本を、言い争いによって2人が「お互いに友でなくなって」いなければよいと願う手紙で締めくくり、使徒と同じように、ピーターとトマスは同じ主に仕えているのだと、しゃれを言った。ヘイリンは同じ年、自分の本にその手紙を載せた。
彼の返事は礼儀正しかった。フラー個人への恨みはないと言いながら、フラーの歴史の本の考えはやはり受け入れられないとして、議論を続けた。今日の「unfriend」は、おそらくフラーから受け継がれたものではない。Dictionary.com は今の動詞を2005年から2010年のものとし、SNS の意味の「friend」に「un-」がついたものと説明している。つまり、同じ語が2度作られたらしい。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did the senior editor call "unfriend" unusual?
it assumed a verb "friend" that had not really been used since perhaps the 17th century とあるので B。
Q2. How did Heylyn respond to Fuller's letter?
His answer was polite ... he still could not accept the views ... and he kept on arguing. とあるので C。
Q3. What does the writer conclude about the modern word?
Today's "unfriend" probably did not come down from Fuller ... the same word seems to have been formed twice とあるので D。
重要単語
- unfriendB1動詞(SNS で)友達から外すI unfriended him after he kept posting rude comments.
un-(取り除く)+friend。2009年の New Oxford American Dictionary の Word of the Year。 - fall out withB2句動詞~とけんかして仲が悪くなるShe fell out with her best friend over a small thing.
1659年のフラーの手紙にも出てくる。fall out over ~「~のことでけんかする」。 - quarrelB1名詞口げんか、言い争いThe two writers had a long quarrel in print.
have a quarrel with ~「~と口論する」。動詞としても使う。 - befriendC1動詞~の友達になる、~に親切にするAn old woman befriended the lonely boy.
be-+friend。古い英語では friend だけでこの意味の動詞として使えた。 - grudgeC1名詞恨みHe doesn't hold a grudge, even after a bad argument.
hold a grudge (against ~)「(~に)恨みを持つ」の形でよく使う。 - opponentB2名詞相手、敵対者He wrote a polite letter to his opponent.
oppose(反対する)と同じ仲間。スポーツの「対戦相手」にも使う。 - coinC1動詞(新しい語を)作るNobody knows who coined the word first.
名詞の coin(硬貨)を「鋳造する」から。coin a phrase「うまい言い回しを作る」。
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SNS で「友達から外す」unfriend。2009年に米国版オックスフォード辞典の「今年の単語」に選ばれた新語…と思いきや、1659年に英国の牧師がケンカ相手への手紙で「お互い Un-friended になっていないといいのですが」と書いていた。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Fuller, Thomas (1659) The Appeal of Injured Innocence(EEBO-TCP 本文 A40651)github.com
- Heylyn, Peter (1659) Certamen epistolare, or, The Letter-Combate(EEBO-TCP 本文 A86280)github.com
- Oxford University Press (2009-11-16) Oxford Word of the Year 2009: Unfriend, OUPblogblog.oup.com
- The American Heritage Dictionary「friend」(Word History)「unfriend」「tweet」「troll」ahdictionary.com
- Dictionary.com「unfriend」「friend」「tweet」「hashtag」(Origin)dictionary.com
- Folger Shakespeare Library「King Lear」1.1・「Twelfth Night」3.3folger.edu
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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