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英語のマジか!?ホント

「やる気満々」の英語 gung ho は、中国の協同組合の略「工合」だった

「やる気満々」の英語 gung ho は、中国の協同組合の略「工合」だった

読む前に予想してみよう!

英語の gung ho(やる気満々)は、中国語から来た言葉である

研究カード(どんな研究?)
対象
英語・中国語の語源と第二次世界大戦の部隊史
規模
辞書2種+米海兵隊の公式戦史+博士論文+15世紀の随筆
研究の種類
辞書の語源記述と原典の照合
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

gung ho(やる気満々)は、中国の「工業合作社(工場の協同組合)」の略「工合」。1942年、米海兵隊の部隊が掛け声にして英語に広まった。

ひとことで言うと「やる気満々」の gung ho は、中国の協同組合の名前「工合(ゴンホー)」だった!

もくじ
  1. gung ho の語源は中国語の「工合」
  2. 1938年、上海で生まれた「工合」運動
  3. 1942年、海兵隊の掛け声「Gung Ho!」
  4. おまけ:箸の chopsticks は「速い棒」
  5. どんでん返し:「いっしょに働こう」が「向こう見ず」に
  6. まとめ

He's really gung ho about the new project.(彼は新しい企画にやる気満々だ)

英語の gung ho(ガンホウ) は「やる気満々の、張り切った」という意味のくだけた言葉です。響きは英語っぽくありません。それもそのはず。

正体は中国語の「工合(gōnghé、ゴンホー)」。しかも中国語として昔からあったふつうの言い回しではなく、中国の工場の協同組合「工業合作社」を縮めた呼び名でした。それを英語に持ちこんだのは、アメリカ海兵隊の一人の将校です。

01gung ho の語源は中国語の「工合」

アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)の語源欄によると、gung ho はもともと、第二次世界大戦中にアジアにいた米海兵隊の一部の部隊の合言葉で、Gung Ho と大文字で書いていました。そのもとが、中国語の gōnghé。

1つずつ見ると「働く」+「合わせる」。だから英語では「いっしょに働こう」と説明されてきました。オックスフォードの学習辞典(OALD)は、gōnghé を「work together(いっしょに働く)の意味と受け取られ」、米海兵隊のスローガンになった、と書いています。

021938年、上海で生まれた「工合」運動

では、もとの「工業合作社」とは何だったのでしょう。

ニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントンに2016年に出された博士論文によると、この運動(英語では Gung Ho movement)は1938年3月19日、上海での最初の会合から始まりました。日本軍の攻撃で中国の工場が大きな被害を受けていたころです。小さな協同組合の作業場をたくさん作って工業を立て直し、日本軍と戦う前線に物資を送ろうという運動でした。

中心人物とされるのが、上海に住んでいたニュージーランド人のレウィ・アレーです。アレーが知り合ったアメリカ人の記者夫妻、エドガー・スノーとヘレン・フォスター・スノーのうち、ヘレンが協同組合の運動を作ろうと言い出し、アレーを説得したとされます。論文によると、「工合」という名前はアレーが選んだもので、書きやすく覚えやすいスローガンになるからでした。

最も多かった1941年には、16の省におよそ3,000の協同組合があり、組合員は30万人以上。布や毛布、印刷、薬、軍服まで、500種類以上の品物を作っていました。

「工合」は、戦争中の中国で作られた小さな協同組合の作業場の運動だった(Reynolds, 2016)
「工合」は、戦争中の中国で作られた小さな協同組合の作業場の運動だった(Reynolds, 2016)

031942年、海兵隊の掛け声「Gung Ho!」

この言葉を英語に持ちこんだのが、アメリカ海兵隊のエバンズ・カールソン(1896〜1947年)です。

米海兵隊の歴史部門が1995年に出した公式の戦史パンフレットによると、カールソンは1937年、3度目の中国勤務で上海に着き、日本軍と戦う中国共産党の八路軍に同行しました。そこでゲリラ戦や、兵士一人ひとりが「なぜ戦うのか」を理解する教育について考えを深めます。

1942年2月、カールソンは新しい部隊、第2襲撃大隊(2d Raider Battalion)の指揮官になりました。副隊長は、ローズベルト大統領の息子ジェームズ・ローズベルトです。パンフレットによると、この部隊では誰でも思ったことを言ってよく、将校も兵士と同じ扱い。そして掛け声は「Gung Ho!」、中国語で「いっしょに働こう」でした。

AHD によると、カールソンは問題を話し合って解決する集会を「Gung Ho」と呼び、兵士たちは自分たちを「Gung Ho 大隊」と呼ぶようになりました。海兵隊の戦史によると、この大隊のために作られた大きなナイフは「Gung Ho ナイフ」、荷物入れにもなる狩猟用の上着は「Gung Ho ジャケット」と呼ばれました。そこから gung ho は、張り切っている人なら誰にでも使う言葉として広がりました。

04おまけ:箸の chopsticks は「速い棒」

中国語から英語に入った身近な言葉は、ほかにもあります。AHD の語源欄で、もとの意味を見てみましょう。

chopsticks(箸):chop は「切る」ではありません。AHD によると、中国で使われたピジン英語(中国語と英語がまざった、商売のための言葉)の chop で、意味は「速い」。それに stick(棒)をつけた、「速い棒」です。

しかも、これは中国語の「筷子(kuàizi)」をまねた言葉。AHD によると、筷子の「筷(kuài)」は「快(速い)」から来ていて、もとは箸を「箸(zhù)」と呼んでいました。それが変わったのは、船乗りが「箸」と同じ音の「住(とまる)」を言うのを嫌ったからだ、というのです。

15世紀、明の時代の陸容(1436〜1494年)の随筆『菽園雜記』には、実際にこの話が出てきます。民間の言葉のタブーは各地にあり、特に呉中(いまの蘇州のあたり)が多い、として、船の上では「住(とまる)」と「翻(ひっくり返る)」を嫌い、箸を「快兒(速いの)」と呼ぶと書いています。同じように、「翻」と同じ音(fān)の「幡」が入った「幡布」も、「抹布」と言いかえたそうです。

日本語ではいまも、もとの「箸」の字を使っています。

  • chop-chop(早く早く):同じピジン英語の chop(速い)を2回くり返したもの。AHD は、広東語や中国語の「急(いそぐ)」と同じ根っこだとしている
  • kowtow(ぺこぺこする):中国語の「叩頭(kòutóu)」。AHD によると「打つ・たたく」+「頭」。もとはひざまずいて額を地面につける、深い敬意や服従を表すおじぎのこと
  • chop suey(チャプスイ):広東語の「雜碎」。AHD によると意味は「いろいろな細かいもの」

05どんでん返し:「いっしょに働こう」が「向こう見ず」に

ところで、いまの gung ho はほめ言葉でしょうか。

OALD は gung-ho に「(くだけた言い方・批判的に)」という注を付けて、意味を「よく考えずに張り切りすぎている。特に戦いや戦争について」としています。例文は Many people found her gung-ho attitude to the war deeply offensive.(戦争に対する彼女のやる気満々の態度に、多くの人が強い不快感を覚えた)。「みんなで力を合わせて働こう」という協同組合の合言葉が、「よく考えずに張り切りすぎ」という批判の意味でも使われるようになったのです。

もとの部隊でも、Gung Ho は長続きしませんでした。海兵隊の戦史によると、1943年3月に第2襲撃大隊の指揮をついだシャプリー中佐は、マキン島の襲撃を「大失敗」と考え、「Gung Ho」には関心がありませんでした。部隊はすぐに「ふつうの大隊」に作り変えられ、パンフレットはシャプリーがカールソンの「Gung Ho」の実験を終わらせたと書いています。

そして、「工合」がそのまま「いっしょに働こう」という意味の中国語の決まり文句だったわけではありません。AHD が書くように、これは工業合作社の略です。OALD も「work together の意味と受け取られ」と書いていて、もとからその意味の言葉だったとは書いていません。

06まとめ

gung ho は、戦争中の中国の協同組合「工合(工業合作社)」の略が、アメリカ海兵隊の掛け声になって英語に入った言葉でした。最初は「いっしょに働こう」、いまは「やる気満々」。ときには「向こう見ず」の意味にもなります。

ラーメン屋で箸を割るとき、英語の chopsticks は「速い棒」で、その裏には「止まる」を嫌った中国の船乗りがいる、と思い出してください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1938, a group of foreigners and Chinese people started a movement in Shanghai to set up small factories… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1938, a group of foreigners and Chinese people started a movement in Shanghai to set up small factories run as cooperatives. A New Zealander named Rewi Alley chose a short name for it, "gonghe," because it was easy to write and remember.

Around the same time, an American Marine officer, Evans Carlson, was in China watching the war against Japan. In 1942 he took command of a new unit and made "Gung ho!" its battle cry, explaining it as "work together."

His men even called their knives and jackets "gung ho." The phrase then spread, and today anyone who is full of energy for a task can be called gung ho. "Chopsticks" has a Chinese story too. Its "chop" means "quick."

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1938年、外国人と中国人のグループが、協同組合として運営する小さな工場を作る運動を上海で始めた。ニュージーランド人のレウィ・アレーは、書きやすく覚えやすいという理由で、その運動に「工合(gonghe)」という短い名前をつけた。

同じころ、アメリカの海兵隊の将校エバンズ・カールソンが中国にいて、日本との戦争を見ていた。1942年、彼は新しい部隊の指揮をとり、「Gung ho!」をその掛け声にして、「いっしょに働こう」という意味だと説明した。

部下たちは、自分たちのナイフや上着まで「gung ho」と呼んだ。この言葉はそこから広まり、いまでは仕事に燃えている人なら誰でも gung ho と呼ばれる。「chopsticks」にも中国の話がある。その「chop」は「速い」という意味だ。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did Rewi Alley choose the name "gonghe"?

Q2. What did Carlson's men call "gung ho," besides the battle cry?

Q3. What does the passage suggest about the word today?

重要単語

  • gung hoC1
    形容詞やる気満々の;張り切りすぎたHe was gung ho about the new project. be gung ho about ~ で「~に燃えている」。辞書によっては「批判的」の注があり、向こう見ずな熱心さを表すこともある。
  • cooperativeC1
    名詞協同組合The farmers set up a cooperative to sell their rice. co-(いっしょに)+ operate(働く)。形容詞では「協力的な」。略して co-op(コウオップ)。
  • battle cryC1
    名詞(戦いの)掛け声、スローガン"Never give up" became the team's battle cry. 戦場だけでなく、運動や選挙の合言葉にも使う。
  • enthusiasticB1
    形容詞熱心な、乗り気なThe students were enthusiastic about the trip. gung ho の改まった言いかえ。be enthusiastic about ~ の形でよく使う。
  • chopsticksA2
    名詞箸Can you eat noodles with chopsticks? ふつう複数形。1組は a pair of chopsticks。chop はピジン英語の「速い」。
  • kowtowC1
    動詞(to ~)~にぺこぺこする、言いなりになるHe refused to kowtow to his boss. 中国語の「叩頭」から。くだけた言い方で、批判の気持ちがこもる。
英語の gung ho(やる気満々)の正体は中国語の「工合」。中国の工場の協同組合「工業合作社」の略だった。1942年に米海兵隊の部隊が掛け声にして英語に。ちなみに chopsticks(箸)の chop は「速い」。中国の船乗りが「箸(zhù)」を「止まる(住)」と同じ音だと嫌い、「快(速い)」と呼びかえた話につながる。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「gung ho」(Our Living Language)「chopstick」「chop-chop」「kowtow」「chop suey」ahdictionary.com
  2. Oxford Advanced Learner's Dictionary「gung-ho」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  3. Hoffman (1995) From Makin to Bougainville: Marine Raiders in the Pacific War, Marine Corps Historical Center(Project Gutenberg)gutenberg.org
  4. Reynolds (2016) Democratic member control in Chinese cooperatives: A study of the Gung Ho Movement, PhD thesis, Victoria University of Wellingtondoi.org
  5. 陸容撰・佚之點校『菽園雜記』(元明史料筆記叢刊)北京:中華書局, 1985(書誌は CiNii Books NCID BN08273319 で確認)ci.nii.ac.jp
  6. 陸容『菽園雜記』巻一(四庫全書本、Wikisource 所収の翻刻。引用の文言はこれで確認)zh.wikisource.org

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