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英語のマジか!?ホント

「Have fun!」の fun、300年あまり前は「いかさま」という意味だった

「Have fun!」の fun、300年あまり前は「いかさま」という意味だった

読む前に予想してみよう!

1755年のジョンソンの英語辞典で、fun は「下品な俗語」とされていた

研究カード(どんな研究?)
対象
17〜18世紀の英語の辞書と現代の辞書
規模
1699年の隠語辞典、1755年のジョンソン辞典ほか
研究の種類
歴史言語学(辞書・文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「楽しい」の fun は、17世紀の終わりには「いかさま・だまし」という意味。泥棒やいかさま師の隠語を集めた1699年の辞典には「お尻」の意味も。1755年のジョンソン辞典は「下品な俗語」とした。

ひとことで言うとfun(楽しい)は、昔は「だます」という悪い言葉だった!

もくじ
  1. fun の語源は「人をばかにする」
  2. 1699年の隠語辞典「What do you fun me?」
  3. ジョンソン辞典「A low cant word」
  4. 仲間の fond も、もとは「ばかな」
  5. どんでん返し:funner・funnest は今も「使えない」が多数
  6. まとめ

「Have fun!(楽しんでね!)」。英語の fun(ファン) は、学校で最初のほうに習う、明るくて気持ちのいい単語です。

ところが300年ちょっと前、この fun は 「いかさま」「人をだます手口」 という意味でした。1699年にロンドンで出た隠語の辞書には、さらに 「お尻」 という意味まで載っています。

そして1755年、イギリスの文学者サミュエル・ジョンソンの有名な英語辞典は、fun にこんな注をつけました。「A low cant word.(下品な俗語)」。

01fun の語源は「人をばかにする」

オックスフォードの学習辞典によると、fun が記録に出てくるのは17世紀の終わり。そのときの意味は「いたずら、だまし(trick or hoax)」でした。

もとになったのは、今は使われない動詞の fun(だます、かつぐ)。これは、14〜15世紀ごろの英語の fon(人をばかにする、ばかなことをする) が地方で変化した形です。fon には「ばか者」という名詞もありました。

アメリカの辞書 Dictionary.com は、fun が最初に記録されたのを1675〜85年としています。辞書の説明をまとめると、fun は 「ばか」「人をばかにする」という言葉から生まれたと考えられています。

021699年の隠語辞典「What do you fun me?」

その「だます」の fun が、実際にどう使われていたのか。手がかりになるのが、1699年にロンドンで出た『A New Dictionary of the Terms Ancient and Modern of the Canting Crew』です。書いたのは「B. E.」とだけ名乗る人物。物乞い・泥棒・いかさま師などの仲間うちの隠語を集めた辞書です。トロント大学の初期近代英語の辞書データベース(LEME)は、この本を1699年、ロンドンの出版と記録しています。

この辞書の Fun の項目は、こうなっています(要約)。

  • Fun:いかさま、ずるい手口。また、お尻
  • What do you fun me? =おれをだまそうってのか?
  • I'll kick your fun. =お前の尻をけとばすぞ
  • He put the fun upon the cull. =あいつはカモ(だまされやすい男)をだました
  • I funned him. =あいつを出し抜いてやった

今の「Have fun!」と同じ単語とは思えません。17世紀の終わりの fun は、泥棒やいかさま師の仲間で使われていた、うさんくさい言葉だったのです。

17世紀の終わり、fun は「いかさま」「人をだます手口」を指す言葉だった(オックスフォード学習辞典、1699年の隠語辞典)
17世紀の終わり、fun は「いかさま」「人をだます手口」を指す言葉だった(オックスフォード学習辞典、1699年の隠語辞典)

03ジョンソン辞典「A low cant word」

それから約半世紀後の1755年。サミュエル・ジョンソンが『英語辞典(A Dictionary of the English Language)』を出します。セントラルフロリダ大学が公開している電子版で fun を引くと、こう書かれています。

  • FUN(名詞)[A low cant word.] Sport; high merriment; frolicksome delight.

意味は「遊び、大はしゃぎ、ふざけた楽しさ」。もう今の fun とほとんど同じです。それでもジョンソンは、ちゃんとした文章で使う言葉ではないと、わざわざ注をつけたのです。

ジョンソンに「下品」扱いされたのは fun だけではありません。同じ辞書を引くと、今ではふつうに使う単語に、次のような注があります。

  • clever(かしこい):4つ目の意味の説明に「これは下品な言葉で、ふざけた文章か会話でしかほとんど使われない。決まった意味もなく、好きなものなら何にでも使われる」
  • fuss(大さわぎ):「下品な俗語」
  • coax(なだめすかす)、touchy(怒りっぽい)、sham(いんちき):「下品な言葉」
  • bamboozle(だます):「まじめな文章、きちんとした文章では使わない俗語」
  • fib(ささいなうそ):「子どもの間の俗語」
  • shabby(みすぼらしい):「会話や下品な文章に入りこんできたが、英語に入れるべきではない」

clever の「好きなものなら何にでも使う」という説明は、今の日本語の「やばい」の使われ方を思わせます。

04仲間の fond も、もとは「ばかな」

fun のもとになった fon からは、もうひとつ身近な単語が生まれています。fond(好きな) です。

オックスフォード学習辞典によると、fond はもともと14〜15世紀ごろの英語では 「のぼせ上がった、ばかな」 という意味でした。語源は fun と同じ、今は使われない fon(ばか者、ばかである)。

I'm fond of you.(あなたが好きです)の fond も、もとをたどれば「のぼせ上がった、ばかな」。fun と fond は、どちらも「ばか」から出発した兄弟なのです。

05どんでん返し:funner・funnest は今も「使えない」が多数

では今、fun は完全に「ちゃんとした英語」になったのでしょうか。じつは、まだ議論が残っています。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典には、言葉の使い方を評価する専門家の集まり(Usage Panel)があります。2015年の調査では、We went to a fun party.(楽しいパーティーに行った)のように fun を形容詞として名詞の前に置く言い方を、パネルのメンバーの84%が「使ってよい」と答えました。

ところが、形容詞の比較級 funner・最上級 funnest は別です。funner はメンバーの88%、funnest は80%が「使えない」と答えました。同じ辞書によると、funner・funnest は1950年代から使われていますが、本や新聞のように編集者の手が入った文章には、ほとんど出てこないそうです。出てくるのは、人の言葉をそのまま引用するとき(たいていは子どもの言葉)くらいです。

もうひとつ、語源にも分かっていない部分があります。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、fun が fon から来たことを「possibly(おそらく)」と書いています。オックスフォード学習辞典も、fon そのものは「由来不明」としています。

06まとめ

fun は、17世紀の終わりには「いかさま」という意味の、うさんくさい言葉でした。1699年の隠語辞典の fun の項には、「お尻」の意味まで載っています。1755年には今と同じ「楽しさ」の意味になっていましたが、ジョンソンはそれでも「下品な俗語」と書きました。

clever や fuss も同じ扱いだったことを思うと、言葉の「上品・下品」は時代によって変わります。次に「Have fun!」と言うときは、300年前のいかさま師の顔を思い浮かべてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Have fun!" sounds friendly, but the word has a shady past. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"Have fun!" sounds friendly, but the word has a shady past. When "fun" first appeared in English in the late 1600s, it meant a trick or a hoax. It came from an older verb meaning "to make a fool of someone."

A dictionary of thieves' slang, printed in London in 1699, gives the example "What do you fun me?" It means "Are you trying to cheat me?" The same book says "fun" could also mean a person's backside. By 1755 the word meant "sport" or "merriment," close to how we use it now.

Even so, Samuel Johnson called it "a low cant word" in his famous dictionary. He gave words like "clever" and "fuss" a similar warning.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「Have fun!」は親しげに聞こえるが、この言葉にはうさんくさい過去がある。1600年代の終わりに「fun」が初めて英語に現れたとき、それはいたずらやだましを意味していた。「人をばかにする」という意味の、より古い動詞から来た言葉だ。1699年にロンドンで印刷された泥棒の隠語の辞典には「What do you fun me?

」という例が載っており、これは「おれをだますつもりか?」という意味だ。同じ本には、「fun」が人のお尻を意味することもあったと書かれている。

1755年までに、この語は「遊び」や「大はしゃぎ」を意味するようになり、今の使い方に近づいていた。それでもサミュエル・ジョンソンは、有名な辞書の中でこれを「下品な俗語」と呼んだ。彼は「clever」や「fuss」のような語にも、同じような注意書きをつけた。

4択リーディングクイズ

Q1. What did "fun" mean when it first appeared in English?

Q2. What does "What do you fun me?" mean in the 1699 dictionary?

Q3. What does the writer suggest about Johnson's view of "clever" and "fuss"?

重要単語

  • funA2
    名詞・形容詞楽しみ;楽しいWe had a lot of fun at the beach. 名詞なので a fun ではなく a lot of fun、much fun。形容詞の a fun party は今は広く使われる。
  • funnyA2
    形容詞おかしい、こっけいな;変なHis story was so funny that we couldn't stop laughing. fun は「楽しい」、funny は「笑える」「変な」。This smells funny. は「変なにおいがする」。
  • cheatB1
    動詞だます、ずるをするHe cheated on the test and got caught. cheat on a test「試験でカンニングする」。日本語の「カンニング」は和製英語。
  • trickB1
    名詞いたずら、ごまかし;芸当The kids played a trick on their teacher. play a trick on 〜「〜にいたずらをする」。17世紀末の fun はまさにこの意味だった。
  • slangB2
    名詞俗語、スラング"Fun" was once a slang word. 数えられない名詞。a slang word「俗語の1語」のように使う。
  • fondB1
    形容詞(be fond of で)〜が好きだMy grandmother is fond of old movies. もとは「ばかな、のぼせ上がった」。fun と同じ fon(ばか者)から。
  • outwitC1
    動詞(知恵で)出し抜くThe fox outwitted the hunters. out-(〜にまさる)+wit(知恵)。1699年の辞典は I funned him をこの語で説明している。

4コマでわかる

「Have fun!」の fun、300年あまり前は「いかさま」という意味だったの4コマ漫画
Have fun! の fun、300年ちょっと前は「いかさま」。1699年の隠語辞典には「お尻」の意味まで載っていた。1755年の有名なジョンソン辞典は「下品な俗語」扱い。同じ扱いを受けたのが clever や fuss。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Johnson, S. (1755) A Dictionary of the English Language「fun」(Johnson's Dictionary Online, セントラルフロリダ大学)johnsonsdictionaryonline.com
  2. B. E. (1699) A New Dictionary of the Terms Ancient and Modern of the Canting Crew「Fun」(Farmer による1899年の復刻, Internet Archive)archive.org
  3. Lexicons of Early Modern English「B. E., A New Dictionary of the Terms Ancient and Modern of the Canting Crew (1699)」(トロント大学)leme.library.utoronto.ca
  4. Oxford Advanced Learner's Dictionary「fun」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  5. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「fun」(語源・Usage Note)ahdictionary.com

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