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英語のマジか!?ビミョー

オーストリアは「東」、オーストラリアは「南」。その東と南も、もとは同じ言葉かも

オーストリアは「東」、オーストラリアは「南」。その東と南も、もとは同じ言葉かも

読む前に予想してみよう!

オーストリアとオーストラリアの名前は、どちらも「南の国」という意味だ

研究カード(どんな研究?)
対象
中世の文書・地図と辞書の語源欄
規模
996年〜1824年の記録
研究の種類
歴史学・歴史言語学(文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

Austria はドイツ語の「東の地方」、Australia はラテン語の「南の」から。別々の言葉だが、米国の辞書 AHD は、英語の east(東)とラテン語の「南」が大昔の同じ言葉から分かれた可能性があると書く。

ひとことで言うとオーストリアは「東」、オーストラリアは「南」。でも大昔は同じ言葉だったかも!

もくじ
  1. オーストリアの本当の名前は「エスターライヒ」
  2. オーストラリアは「ヨーロッパの人がまだ見たことのない南の大陸」
  3. おまけ:「オーストリア」はスペイン王家の名前でもあった
  4. どんでん返し:「東」と「南」は、本当に赤の他人?
  5. まとめ

オーストリア(Austria)とオーストラリア(Australia)。英語のつづりの違いは、たった2文字(al)です。

でも意味は正反対の方角。オーストリアは「東の地方」、オーストラリアは「南の」という意味の言葉から来ています。片方はドイツ語、もう片方はラテン語。生まれもまったく別です。

ところが、アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)』の語源の説明をずっとさかのぼると、「東」と「南」が、同じひとつの言葉から分かれた可能性が出てきます。

01オーストリアの本当の名前は「エスターライヒ」

オーストリアの人たちは、自分の国をドイツ語で Österreich(エスターライヒ) と呼びます。英語の Austria は、この名前のラテン語版です。

名前が記録に残る最初の例は、996年11月1日の文書です。神聖ローマ帝国の皇帝オットー3世が、ドイツ南部フライジングの司教に土地を与えたときの文書(特許状)で、その土地の場所を「地元のことばで Ostarrîchi と呼ばれる地方に」と書いています。

つまりオーストリアの名前は、西どなりの人たちから見た「東のはずれ」という呼び方でした。ヴィンケルバウアーは、この996年の文書を「オーストリアの出生証明書」と呼ぶのは言いすぎで、せいぜい「洗礼の記録」だと書いています。国が生まれた日ではなく、名前が記録された日だからです。

02オーストラリアは「ヨーロッパの人がまだ見たことのない南の大陸」

一方の Australia は、ラテン語の austrālis(南の) から来ています。AHD によると、そのもとは auster。意味は「南風」、そして「南」です。

オーストラリア国立図書館の解説によると、この名前には長い前日談があります。

  • ヨーロッパの人々は長いあいだ、南のほうに巨大な陸地があると信じ、Terra Australis Incognita(知られざる南の大地) と呼んでいた
  • 「Australia」という名前が印刷された最古の例は、1545年の天文学の本。想像上の南の大陸に、この名前が書きこまれていた
  • 17世紀にオランダの航海者たちが北・西・南の海岸を地図にし、大陸は「ニューホランド」と呼ばれた
  • 1803年に大陸を一周したイギリスの探検家マシュー・フリンダーズが、1804年の手書きの地図で「Australia」の名を使った
  • 1814年に出版された地図と航海記では「Terra Australis」の名が使われたが、フリンダーズは「Australia のほうが好ましい」と書いている
  • 1817年12月、ニューサウスウェールズ植民地の総督マッコーリーがロンドンへの公文書で Australia を推し、1824年までにイギリス海軍本部も正式に使いはじめた

「オーストラリア」は、大陸が地図に載る前から、空想の大陸の名前として存在していたわけです。

「Australia」という名前は、ヨーロッパに大陸が知られる前の1545年に、想像上の南の大陸の名前として印刷されていた(オーストラリア国立図書館)
「Australia」という名前は、ヨーロッパに大陸が知られる前の1545年に、想像上の南の大陸の名前として印刷されていた(オーストラリア国立図書館)

03おまけ:「オーストリア」はスペイン王家の名前でもあった

オーストリアの名前は、国の外にも広がりました。ヴィンケルバウアーの解説によると、ハプスブルク家は14〜15世紀ごろから「オーストリア家(Haus Österreich)」と呼ばれるようになります。

その一族はスペインの王にもなりました。スペインではハプスブルク家の王たちが los Austrias(オーストリアたち) と呼ばれ、フランスに嫁いだスペインの王女2人は、フランスで Anne d'Autriche(オーストリアのアンヌ)、Marie-Thérèse d'Autriche と呼ばれました。スペインの王女なのに「オーストリアの」。ここでの「オーストリア」は国ではなく、一族の名前なのです。

英語で単語の頭につける Austro- にも、2つの意味があります(AHD)。

  • Austro-①「南の」:Austroasiatic(オーストロアジア語族。インドシナ半島などの言葉のグループ)
  • Austro-②「オーストリアの」:Austro-Hungarian(オーストリア=ハンガリーの)

同じつづりなのに、片方は「南」、片方は「東の地方」から来た国。英語の辞書でも、別の見出しに分けられています。

04どんでん返し:「東」と「南」は、本当に赤の他人?

ここまでなら「似ているのは偶然」で終わりです。ところが AHD の巻末の付録をのぞくと、話が変わります。

この付録は、英語の単語を、英語・ラテン語・ギリシャ語などの共通の祖先とされる大昔の言葉(インド・ヨーロッパ祖語)までさかのぼるものです。そこに *aus-「光る」 という祖先の言葉があります。ここから生まれたとされるのが、

  • east(東):「日がのぼる方角」から
  • Easter(イースター、復活祭):ゲルマン語の「夜明け」から
  • Ostrogoth(東ゴート族):「東の」ゴート族
  • aurora(オーロラ):ラテン語の「夜明け」から

そして AHD は、ラテン語の auster(南風) も、語のつくりが、ゲルマン語(英語やドイツ語の祖先)で「東の」「夜明け」を表す語とそっくり同じで、**この *aus- から来た可能性がある**と書いています。もしそうなら、Austria の「Öster(東)」と Australia の「Austr(南)」は、どちらも「光る」という同じ言葉の子孫ということになります。

ただし、AHD はここで「可能性がある」と書き、さらに「意味のつながりははっきりしない」と認めています。「光る」や「夜明け」を表す言葉が、なぜ「東」ではなく「南」の意味になったのか。AHD はその説明をしていません。

南極に近い空に出るオーロラは、英語で aurora australis(南のオーロラ)。ラテン語の「夜明け」と「南の」を並べた名前ですが、もし AHD の言う可能性が当たっているなら、同じ祖先の言葉が2回入っていることになります。

05まとめ

オーストリアは、西どなりのバイエルンから見た「東のはずれの地方」。オーストラリアは、ヨーロッパの人がまだ見たことのなかった空想の「南の大陸」。名前ができた時代も場所もばらばらで、似ているのはたまたまです。

ただ、ずっと昔までさかのぼると、「東」と「南」は同じ「光る」という言葉から分かれたのかもしれません。次にイースターの卵を見たら、遠い親戚のオーストリアとオーストラリアを思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe oldest known record of Austria's name is a document from 996. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The oldest known record of Austria's name is a document from 996. In it, Emperor Otto III gave land to a bishop and described the place as an area that local people called "Ostarrichi." The Bavarians seem to have given the name to the eastern edge of their territory, and it later became "Österreich" in German.

The Latin form "Austria" first appears in 1147. Australia has a different story. Its name comes from the Latin "australis," meaning "southern." For centuries, Europeans believed in a huge unknown land in the south, and "Australia" was printed as a name for it as early as 1545. The explorer Matthew Flinders later used it for the real continent.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

オーストリアの名前の、知られている最古の記録は996年の文書だ。その中で皇帝オットー3世は司教に土地を与え、その場所を地元の人々が「オスタリーキ」と呼ぶ地方だと書いた。この名前は、バイエルンの人々が自分たちの領土の東のはずれに付けたものらしく、のちにドイツ語で「エスターライヒ」になった。

ラテン語形の「Austria」が最初に現れるのは1147年だ。オーストラリアには別の物語がある。その名前は「南の」を意味するラテン語「australis」から来ている。何世紀ものあいだ、ヨーロッパの人々は南に巨大な未知の土地があると信じており、早くも1545年に、その名前として「Australia」が印刷された。のちに探検家マシュー・フリンダーズが、それを実在の大陸に使った。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Who gave the name "Ostarrichi" to the area?

Q3. What can we infer from the 1545 book?

重要単語

  • easternA2
    形容詞東の、東部のVienna is in the eastern part of Austria. east(東)+-ern。Easter(イースター)も east と同じ「光る」の語根から来たとされる。
  • southernA2
    形容詞南の、南部のAustralia is in the Southern Hemisphere. 発音は「サザン」(ou を「ア」と読む)。ラテン語では australis。
  • continentB1
    名詞大陸Australia is both a country and a continent. the Continent と大文字で書くと、イギリスから見た「ヨーロッパ大陸」を指すことがある。
  • charterC1
    名詞(王などが出す)特許状、公式の文書The charter gave the land to a bishop. 「貸し切り(のバス・飛行機)」の意味でも使う:a charter flight。
  • dawnB1
    名詞夜明けWe left home at dawn. at dawn「夜明けに」。ラテン語では aurora(オーロラ)。
  • regionB1
    名詞地方、地域This region is famous for its wine. 996年の文書でも、ラテン語 regio(地方)が使われている。形容詞は regional。
  • AussieB2
    名詞オーストラリア人(くだけた言い方)My new roommate is an Aussie from Perth. Australian を縮めた語。発音は「オズィー」に近い。オーストリア人は Austrian で、Aussie とは言わない。
オーストリアは「東の地方」、オーストラリアは「南の」が語源。似ているのは偶然…のはずが、米国の辞書 AHD は、ラテン語の「南」と英語の east(東)が同じ祖先かもしれないと書いている。イースターも親戚。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Winkelbauer (2018) Was war „Österreich" vor 1918?, Aus Politik und Zeitgeschichte(bpb)bpb.de
  2. Land Niederösterreich「Der Landesname: Die Ostarrîchi-Urkunde」noe.gv.at
  3. National Library of Australia「Where the name 'Australia' came from」library.gov.au
  4. The American Heritage Dictionary「austral」ahdictionary.com
  5. The American Heritage Dictionary「Indo-European Roots Appendix」(aus-)ahdictionary.com

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