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英語のマジか!?ビミョー

「キレる」は英語で go berserk。もとは北欧の戦士の名前で、意味は「クマのシャツ」?

「キレる」は英語で go berserk。もとは北欧の戦士の名前で、意味は「クマのシャツ」?

読む前に予想してみよう!

berserk の語源は「クマのシャツ」だと、すべての辞書が断定している

研究カード(どんな研究?)
対象
古ノルド語の文献(サガ・詩)と現代の辞書・論文
規模
10〜13世紀の詩・サガ、19世紀の古ノルド語辞典、2019年の論文ほか
研究の種類
歴史言語学(辞書の語源記述)+文献研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

go berserk(キレて暴れる)の berserk は、バイキング時代の北欧で暴れ狂って戦った戦士 berserkr の呼び名から。「クマ+シャツ」説が有力だが、「はだか+シャツ」説も辞書に残る。

ひとことで言うと「キレる」の英語 berserk は、北欧の戦士の名前。クマの毛皮を着ていたという説が有力!

もくじ
  1. berserk の語源は「クマ」+「シャツ」?
  2. 盾をかじり、獣のようにほえた
  3. 「オオカミの毛皮」の戦士もいた
  4. スコットランドには今も「serkr」が生きている
  5. マレー語から来た「暴れる」もある
  6. どんでん返し:「キノコで狂った」は本当?
  7. まとめ

試合に負けた子が、ゲーム機を投げそうな勢いでキレる。英語ではこれを go berserk(ゴー・バーサーク) と言います。

マンガやゲームでおなじみの「ベルセルク」「バーサーカー」と同じ言葉です。もとは北欧の古い言葉で、戦いのときに我を忘れて暴れる戦士の呼び名でした。

その名前の意味は、有力な説で 「クマのシャツ」。クマの毛皮を着た戦士、というわけです。ところが辞書を何冊か開くと、もう一つの説が消えずに残っています。「はだかのシャツ」、つまり鎧(よろい)なしで戦う戦士です。

01berserk の語源は「クマ」+「シャツ」?

英語の berserk のもとは、古ノルド語(バイキングの時代の北欧の言葉)の berserkr(ベルセルクル)。後半の serkr は「シャツ、上着」です。問題は前半の ber- です。

  • オックスフォード学習辞典:おそらく bjorn(クマ) から。ただし berr(はだかの)、つまり鎧なしの意味の可能性もある
  • アメリカン・ヘリテージ英語辞典:「もしかすると」ber-(クマ)。戦士がクマの毛皮を着ていたらしいことから。または berr(はだか)。昔のヨーロッパの戦士はしばしば裸で戦ったことから
  • Dictionary.com:bjǫrn(クマ)と berr(はだか)のどちらか

3冊ともクマ説を先に挙げていますが、どれも一方に決めきってはいません。

02盾をかじり、獣のようにほえた

1874年に出た『アイスランド語・英語辞典』(クリーズビーとヴィグフソン編)は、berserkr の項目にくわしい説明を書いています。この辞典は、チェコのカレル大学のサーバーにある「Germanic Lexicon Project」で、だれでも読むことができます。

それによると、berserkr はキリスト教が入る前の時代の、荒々しい戦士。サガ(北欧の古い物語)には、戦いの最中に「ベルセルクの発作(berserksgangr)」が起きるようすが描かれています。

  • 獣のようにほえる
  • 口から泡を吹く
  • 盾の鉄のふちをかじる
  • 発作の間は、刃物でも火でも傷つかないと信じられていた
  • 発作がおさまると、ぐったりして、おとなしくなった

デンマークやスウェーデンなど、北欧の昔の王たちが 12人のベルセルク を一番の家来にしていた、という話もいくつも残っています。

サガには、戦いの中で盾の鉄のふちをかじり、獣のようにほえる戦士が描かれている(クリーズビーとヴィグフソン『アイスランド語・英語辞典』)
サガには、戦いの中で盾の鉄のふちをかじり、獣のようにほえる戦士が描かれている(クリーズビーとヴィグフソン『アイスランド語・英語辞典』)

03「オオカミの毛皮」の戦士もいた

クマ説を支える証拠として、同じ辞典は úlfheðnar(ウールヴヘズナル) という言葉を挙げています。意味は 「オオカミの毛皮を着た者たち」。

10世紀の初めに作られた詩では、戦いの乙女ワルキューレが「ベルセルクたちのこと」をたずね、カラスが「彼らは úlfheðnar と呼ばれる」と答えます。別のサガにも「úlfheðnar と呼ばれたベルセルクたちは、鎧の代わりに獣の毛皮の上着を着ていた」とあります。昔の勇者は、クマやオオカミ、トナカイの毛皮をまとった――これが、辞典がクマ説を推す理由です。

一方、はだか説の根拠は、13世紀アイスランドの歴史家スノッリ・ストゥルルソン(1179〜1241年)の王たちの物語『ヘイムスクリングラ』の一文です。そこには、ある戦士たちが 「鎧なしで(brynjulausir)」 出陣したと書かれています。

04スコットランドには今も「serkr」が生きている

後半の serkr(シャツ) は、英語の中にも親戚が残っています。

Dictionary.com によると、スコットランドとイングランド北部の言葉に sark(サーク) があります。意味は「肌着のシャツ、寝間着」。古英語の serc から来ていて、古ノルド語の serkr と同じ仲間の語です。

この sark は、有名な帆船の名前にも入っています。ロンドンのグリニッジに保存されている19世紀の帆船 カティサーク(Cutty Sark) です。船を管理するロイヤル・ミュージアムズ・グリニッジによると、cutty は「短い」、sark は「寝間着、シャツ」。Cutty Sark =「丈の短い寝間着」です。名前は、スコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩『タム・オ・シャンター』で、短い寝間着だけを着て踊る魔女ナニーにちなんでいます。

berserk の「シャツ」と、名船の「寝間着」。同じ言葉の親戚です。

05マレー語から来た「暴れる」もある

戦いの「逆上」が英語の日常語になった例は、北欧だけではありません。

run amok(ラン・アマック) は「暴れ回る、手がつけられなくなる」。オックスフォード学習辞典によると、amok はポルトガル語を通って入った マレー語の amok(逆上して突進する) で、英語の記録は17世紀半ば。最初は、逆上して人を襲うマレー人を指す名詞でした。

The kids ran amok at the party.(子どもたちはパーティーで暴れ回った)のように、今では暴力の場面だけでなく、手がつけられないほど騒がしい場面にも使います。go berserk と run amok、どちらも遠い土地の「戦いの狂乱」が、英語の日常に入りこんだ言葉です。

06どんでん返し:「キノコで狂った」は本当?

ベルセルクはなぜ我を忘れたのか。アメリカの辞書 Dictionary.com は、berserk(名詞)の説明に「幻覚を起こすキノコを食べたせいかもしれない」と書いています。

しかし、これは確かめられた話ではありません。2019年、スロベニアのリュブリャナ大学の研究者ファトゥールが、学術誌に論文を出しました。それによると、ベニテングタケ(毒キノコの一種)説はいちばん広く信じられている説ですが、問題も多いといいます。ファトゥールは代わりに、ナス科の毒草 ヒヨス のほうが言い伝えのようすに合うと主張しました。ただし本人も、考古学や歴史の証拠が足りず、証明も否定もできないと書いています。この論文には、アメリカの中毒の専門家から反論のコメントも寄せられました。

そもそも、1874年の古ノルド語辞典自身が「これらの勇者の描写は、かなり神話的な性格を持つ」と書いています。盾をかじる戦士は、どこまでが本当で、どこからが物語なのか。それもまだ分かっていないのです。

07まとめ

「キレる」の go berserk は、北欧のサガに出てくる戦士 berserkr から。名前は「クマのシャツ」という説が有力ですが、「鎧なしのはだか」説も辞書から消えていません。

serkr の親戚はスコットランドの sark として残り、帆船カティサークの名前にもなっています。次に誰かが go berserk したら、盾をかじる北欧の戦士を思い出してください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf fans "go berserk" after a goal, they are wild with excitement. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If fans "go berserk" after a goal, they are wild with excitement. The word goes back to "berserkr," an Old Norse name for warriors who were said to lose control in battle.

According to the sagas, they howled like animals, foamed at the mouth and bit the iron rims of their shields. The word is made of two parts. "Serkr" means a shirt or coat. The first part is harder. Most dictionaries put "bear" first, because these fighters may have worn bearskins.

But they still mention "bare," meaning a man who fought without armor. English first used "berserk" in the early 1800s as a noun for the warriors themselves. The adjective came later.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ゴールのあとでファンが「go berserk」したなら、彼らは興奮で大騒ぎしている。この語は「berserkr」にさかのぼる。

戦いの中で我を忘れたと言われる戦士を表す、古ノルド語の呼び名だ。サガによると、彼らは動物のようにほえ、口から泡を吹き、盾の鉄のふちをかんだ。この語は2つの部分からできている。「serkr」はシャツや上着を意味する。前半はもっと難しい。多くの辞書は、この戦士たちがクマの毛皮を着ていたかもしれないことから、「クマ」を先に挙げている。

しかし、鎧(よろい)なしで戦った男を意味する「はだか」も、今なお挙げている。英語は1800年代の初めに、戦士そのものを指す名詞として「berserk」を使い始めた。形容詞はそのあとに生まれた。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the sagas, what did berserkers do in battle?

Q2. Why do many dictionaries connect the first part of the word with "bear"?

Q3. What does the writer suggest about the meaning of the first part?

重要単語

  • berserkC1
    形容詞怒り狂った、手がつけられないThe crowd went berserk when the band came on stage. go berserk の形でよく使う。怒りにも大喜びにも使える。発音は後ろの serk を強く。
  • warriorB2
    名詞戦士The warriors carried round wooden shields. war(戦争)から。soldier(兵士)より古風で、物語や歴史でよく使う。
  • armorB2
    名詞鎧(よろい)Knights wore heavy armor in battle. 数えられない名詞。イギリス英語では armour とつづる。
  • frenzyC1
    名詞熱狂、逆上The fans were in a frenzy after the goal. in a frenzy「熱狂して」。feeding frenzy(サメなどがえさに群がるさま)も有名。
  • legendB1
    名詞伝説、言い伝えAccording to legend, fire could not hurt them. according to legend「言い伝えによると」。冠詞をつけずに使うことが多い。
  • shieldB2
    名詞盾(たて)He held his shield up to protect his face. 発音は「シールド」。動詞では「守る、かばう」。
  • run amokC1
    熟語暴れ回る、手に負えなくなるThe puppy ran amok in the kitchen. amok はマレー語から。go berserk と同じく、遠い土地の「逆上」が英語に入った言葉。
「キレて暴れる」は英語で go berserk。berserk は北欧の狂戦士 berserkr で、「クマのシャツ」を着た戦士という説が有力。盾のふちをかじり、獣のようにほえたと伝わる。ただし「鎧なしのはだか」説も辞書に残る。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「berserker」「berserk」ahdictionary.com
  2. Oxford Advanced Learner's Dictionary「berserk」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  3. Cleasby, R. & Vigfusson, G. (1874) An Icelandic-English Dictionary「ber-serkr」(Germanic Lexicon Project, p.61)lexicon.ff.cuni.cz
  4. Fatur (2019) Sagas of the Solanaceae: Speculative ethnobotanical perspectives on the Norse berserkers, Journal of Ethnopharmacology 244doi.org
  5. Royal Museums Greenwich「Why is the ship called Cutty Sark?」rmg.co.uk

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