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英語のマジか!?ホント

辞書には、編集部がわざと入れた「ウソの英単語」がある。丸写しを見抜くワナ

辞書には、編集部がわざと入れた「ウソの英単語」がある。丸写しを見抜くワナ

読む前に予想してみよう!

有名な辞書の中に、編集者がわざと作ったウソの単語が入っていたことがある

研究カード(どんな研究?)
対象
辞書・百科事典・電話帳・検索結果のわな
規模
4つの事例(1975〜2011年)
研究の種類
雑誌の取材記事・米最高裁判決・企業の公式発表
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

2001年にアメリカで出たオックスフォードの辞書に、存在しない英単語 esquivalience がわざと入れてあった。中身を丸写しした相手を見抜くためのワナ。百科事典や電話帳にも同じ手口がある。

ひとことで言うと辞書には、まねした人を見つけるための「ニセの単語」が入っていることも!

もくじ
  1. esquivalience の正体は?「まね」を見抜くわな
  2. 元祖は「爆発事故で亡くなった」架空の女性写真家
  3. 電話帳にも、グーグルにも「わな」があった
  4. dord は「うっかり」、esquivalience は「わざと」
  5. どんでん返し:わなにかかっても、勝てるとは限らない
  6. まとめ

esquivalience。意味は「わざと職務をサボること」。語源の欄には「19世紀後半から。フランス語の esquiver(身をかわす、こっそり逃げる)から来たか」――。

2001年、アメリカの大きな辞書に、こんな英単語が載りました。それらしい意味に、それらしい語源。ところが、この単語は辞書の編集部がゼロから作った“ウソの単語” でした。

目的は、辞書の中身を丸ごとまねした相手を見抜くこと。辞書には、ときどきこうした“わな”が仕込まれているのです。

01esquivalience の正体は?「まね」を見抜くわな

この話を明らかにしたのは、2005年8月の雑誌『ニューヨーカー』の記事(筆者はヘンリー・アルフォード)です。

きっかけは、『New Oxford American Dictionary(ニュー・オックスフォード米語辞典)』第2版に「e で始まる作りものの単語がひとつある」といううわさでした。ある人が独自に、e で始まる 3,128 項目を1つずつチェック。よく知られた語や、別の大辞典(ウェブスター第3版)に載っている語を外していき、残った 360 語をさらに調べて、候補を 6語 にしぼりました。

マッキーンによると、編集部は最初「一生けんめい働くこと」という意味のニセ単語を考えましたが、うまく思いつかず、「じゃあ逆にしよう」と「わざと仕事をサボること」になったそうです。考えたのはクリスティーン・リンドバーグという編集者でした。

そして、わなにかかったらしい辞書も見つかりました。記事によると、esquivalience はその後 Dictionary.com にも載っていて、出典として『Webster's New Millennium』という別の辞書の名前が挙がっていました。マッキーンはこれを「大きなカメに標識をつけて放すようなもの」とたとえています。目印をつけておいた単語が、よその辞書で見つかったわけです。

02元祖は「爆発事故で亡くなった」架空の女性写真家

辞書のわなには先輩がいます。

1975年版の『New Columbia Encyclopedia(ニュー・コロンビア百科事典)』の 1,850ページには、リリアン・ヴァージニア・マウントウィーゼル(Lillian Virginia Mountweazel) という人物が載っています。

もちろん、こんな人は実在しません。この百科事典の編集者のひとりリチャード・スタインズは『ニューヨーカー』の取材に、「著作権を守るために、ニセの項目を入れるのは百科事典の古い伝統だった」「だれかがリリアンを写したら、盗んだと分かる」と話しています。

爆発事故で亡くなったときの取材先が、『燃えやすいもの』という名前の雑誌。作った人たちの遊び心が見えます。

そしていま、この架空の女性の名前は本物の英単語になりました。Dictionary.com には mountweazel が「辞書や百科事典に、まねをした相手を見つけるためにこっそり入れた、おとりの項目」という意味の名詞として載っています。2026年10月9日にオックスフォード英語大辞典(OED)の公式サイトを見ると、「最近追加された語」の一覧にも mountweazel が並んでいました。

1975年の百科事典には、まねを見抜くための架空の人物「マウントウィーゼル」が載っていた(ニューヨーカー誌、2005年)
1975年の百科事典には、まねを見抜くための架空の人物「マウントウィーゼル」が載っていた(ニューヨーカー誌、2005年)

03電話帳にも、グーグルにも「わな」があった

同じ手口は、辞書の外でも使われてきました。

電話帳:アメリカ・カンザス州の電話会社ルーラル社は、自社の電話帳(約7,700件)に、まねを見抜くためのウソの掲載を入れていました。別の会社フェイスト社が作った電話帳(46,878件)を調べると、1,309件がルーラル社のものとまったく同じで、そのうち4件がウソの掲載でした。米国連邦最高裁の判決(1991年)に、このことがはっきり書かれています。

検索エンジン:2011年2月、グーグルは公式ブログで、マイクロソフトの検索エンジン Bing が自社の検索結果を利用していると主張しました。グーグルは、ふつうの人がまず打ちこまない hiybbprqag のような検索語を約100個作り、それぞれに中身とまったく関係のない本物のページを1位に出るように仕込みました。そのうえで、Bing のツールバーを入れたパソコンで20人のエンジニアがグーグルでこの語を検索し、仕込んだページをクリック。数週間のうちに、Bing で hiybbprqag を検索しても、グーグルが仕込んだのと同じ、ロサンゼルスの劇場の座席のページが出てくるようになったといいます。ただしマイクロソフトは「グーグルの結果をコピーしてはいない」と反論していました(グーグルのブログより)。

04dord は「うっかり」、esquivalience は「わざと」

別館で紹介した dord も「辞書に載った実在しない英単語」でした。ただ dord は、1934年の辞書で略号のカードを1語と読みまちがえたうっかりミスです。esquivalience やマウントウィーゼルは、わざと入れたわな。同じ“幽霊単語”でも、生まれ方は正反対です。

05どんでん返し:わなにかかっても、勝てるとは限らない

では、わなでまねが見つかれば、裁判に勝てるのでしょうか。

電話帳の事件は、そうなりませんでした。1991年3月27日、米国連邦最高裁はルーラル社の訴えを認めませんでした。判決の理由は「事実には著作権がない」。名前・町・電話番号は事実で、それをアルファベット順に並べただけの電話帳には、著作権で守られるだけの創作性がない、という判断です。4件のウソの掲載は「写した証拠」にはなっても、勝つための決め手にはなりませんでした。

辞書のわなも、それだけで勝負が決まるとは限りません。少なくとも『ニューヨーカー』の記事には、esquivalience をめぐって裁判が起きたという話は出てきません。

06まとめ

辞書や百科事典の中には、まねを見抜くためにわざと仕込まれた“ウソ”がまぎれていることがあります。わざとサボることを意味する esquivalience、爆発事故で亡くなったことになっている写真家マウントウィーゼル、電話帳の4件のウソの掲載、検索語 hiybbprqag。

そしてマウントウィーゼルは、いまや辞書に載る本物の英単語になりました。ウソから出た、まことの単語です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1975, an encyclopedia included the life story of Lillian Virginia Mountweazel, a photographer known for… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1975, an encyclopedia included the life story of Lillian Virginia Mountweazel, a photographer known for her pictures of country mailboxes. She was said to have died at 31 in an explosion while working for a magazine called Combustibles. None of it was true. The editors had made her up so they could catch anyone who copied their book.

The trick has been used again and again. A dictionary published in 2001 contained "esquivalience," an invented word for avoiding your duties on purpose. A telephone company in Kansas hid fake listings in its phone book, and four of them later turned up in a rival company's directory. Today "mountweazel" is itself a dictionary word for this kind of fake entry.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1975年、ある百科事典に、田舎の郵便受けの写真で知られる写真家リリアン・ヴァージニア・マウントウィーゼルの経歴が載った。彼女は31歳のとき、『Combustibles(燃えやすいもの)』という雑誌の仕事中に爆発事故で亡くなったとされていた。どれも本当ではなかった。編集者たちは、本をまねした者を見つけるために、彼女を作り上げていたのだ。

この手は何度も使われてきた。2001年に出た辞書には、「わざと義務を避けること」を表す作られた単語 esquivalience が入っていた。カンザス州のある電話会社は電話帳に偽の掲載を隠し、そのうち4件がのちにライバル会社の電話帳に出てきた。今では mountweazel そのものが、この種の偽の項目を表す、辞書に載った単語になっている。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did the editors invent Lillian Virginia Mountweazel?

Q2. How many fake listings turned up in the rival company's directory?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • fictitiousC1
    形容詞架空の、作りもののThe phone book had four fictitious names in it. fiction(作り話)の形容詞。a fictitious entry「架空の項目」、a fictitious name「偽名」。
  • copyrightB2
    名詞著作権You cannot copy the whole book because of copyright. copy(写す)+ right(権利)。動詞としても使う:The text is copyrighted.「その文章は著作権で守られている」。
  • entryB1
    名詞(辞書の)項目、見出しEach entry in this dictionary has an example sentence. enter(入る)の名詞。辞書・百科事典の1つ1つの項目。a fake entry「偽の項目」。
  • trapB1
    名詞わなThe fake word was a trap for copycats. set a trap「わなを仕掛ける」、fall into a trap「わなにかかる」。
  • copycatB2
    名詞まねをする人Don't be a copycat. Write your own report. くだけた語。子どもどうしの「まねっこ!」にも使う。
  • decoyC1
    名詞おとりThe hunter used a wooden duck as a decoy. Dictionary.com は mountweazel を a decoy entry(おとりの項目)と説明している。
  • inventB1
    動詞作り出す;でっち上げるThe editors invented a word that nobody had ever used. 「発明する」だけでなく「(話や人物を)でっち上げる」の意味もある。make up も同じ意味。

4コマでわかる

辞書には、編集部がわざと入れた「ウソの英単語」がある。丸写しを見抜くワナの4コマ漫画
2001年の米国版オックスフォード辞書に載った esquivalience(わざと職務をサボること)は、編集部が作ったウソの単語。中身を丸写しした相手を見抜くワナだった。1975年の百科事典には、架空の女性写真家までいた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Alford (2005) Not a Word, The New Yorkernewyorker.com
  2. Feist Publications, Inc. v. Rural Telephone Service Co., 499 U.S. 340 (1991)(米国連邦最高裁判決、Cornell LII 掲載)law.cornell.edu
  3. Singhal (2011) Microsoft's Bing uses Google search results—and denies it, Google Official Bloggoogleblog.blogspot.com
  4. Dictionary.com「mountweazel」(Origin)dictionary.com

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