SOS は「Save Our Souls」の略じゃない。無線で叫ぶ「メーデー」はフランス語の「助けて」

読む前に予想してみよう!
遭難信号の SOS は「Save Our Souls(我らの魂を救え)」の頭文字である
Merriam-Webster やオックスフォードの辞書によると、SOS はモールス信号で送りやすく聞き分けやすい文字として選ばれた。「Save Our Souls の略」は後からできた俗説。
- 対象
- 遭難信号の SOS とメーデー
- 規模
- 英語辞典4種・国際電気通信連合の史料・国語辞典と百科事典
- 研究の種類
- 辞書の語源欄と史料の照合
- 確かさ
- ★★★★☆
SOS は何の頭文字でもなく、モールス信号で打ちやすく聞き分けやすいから選ばれた。声で話す無線で使う「メーデー」はフランス語 m'aider(助けて)から。
ひとことで言うとSOS は何かの略じゃなくて、モールス信号で打ちやすい並びだった!
もくじ
SOS は、何の略でもありません。
「Save Our Souls(我らの魂を救え)」でも、「Save Our Ship(我らの船を救え)」でもない。アメリカの辞書 Merriam-Webster は、SOS は魂とも船とも、S で始まるどんな単語とも関係がない、とはっきり書いています。
選ばれた理由は、モールス信号で打ちやすいから。モールス信号は、短い音「・」と長い音「-」の組み合わせで文字を送るしくみです。SOS は・・・(S)---(O)・・・(S)。短い音3つ、長い音3つ、短い音3つ。それだけでした。
この記事では、SOS の頭文字の話がなぜ俗説なのか、声の無線で使う「メーデー」はどこから来たのかを、辞書と百科事典で確かめます。ただし、細かいところは資料によって説明が違う点もあります(最後の「どんでん返し」で紹介します)。
01SOS は「打ちやすい並び」として選ばれた
Merriam-Webster の記事「7 Good Stories That Just Aren't True(本当ではない7つの面白い話)」によると、SOS が英語で使われ始めたのは1910年です。当時、海の上の船どうしの連絡には、モールス信号がいちばん使われていました。SOS は、その中で打ちやすい並びとして提案され、採用されました。
オックスフォードの学習辞典も、言葉のもとを説明する欄(語源欄)で同じことを書いています。SOS はモールス信号で送りやすく、聞き分けやすい文字として選ばれた。「save our souls の略」というのは民間語源(folk etymology)、つまり後からできた語源の俗説だ、というのです。
日本の百科事典も同じです。小学館の『日本大百科全書(ニッポニカ)』は、「Save our soul. または Save our ship. の頭文字というのは俗説である」と書いています。
Merriam-Webster は冗談まじりにこう書いています。もし CQD のままだったら、きっと誰かが「Come Quick, Dammit!(早く来い、こんちくしょう)」のような作り話の語源を考えただろう、と。
02「メーデー」は5月1日と無関係。フランス語の「助けて」
映画やドラマで、パイロットが無線に向かって叫ぶ場面を見たことがあるかもしれません。
Mayday! Mayday! Mayday!
これは5月1日の労働者のメーデー(May Day)とはまったく別の言葉です。Merriam-Webster の辞書によると、救難信号の Mayday は、フランス語の m'aider(助けて)から来ています。オックスフォードの学習辞典と American Heritage Dictionary は、もとは venez m'aider(助けに来て)だとしています。
日本の辞書も、2つを分けて載せています。『デジタル大辞泉』では、5月1日のメーデーは May Day、救難信号のメーデーは Mayday です。救難信号のほうは「助けに来て」の意味のフランス語から来ています。船や航空機が無線電話(声で話す無線)で送る、世界共通の救難信号です。
03声の無線では、SOS が聞き取りにくかった
SOS があるのに、なぜ新しい言葉が必要だったのでしょう。
Merriam-Webster の記事によると、1923年ごろ、イギリスとフランスの間には飛行機の行き来が多くありました。ところが飛行機は、電信(電気の信号で「・」「-」を送るしくみ)のモールス信号を使っていませんでした。声で話す無線で連絡していたのです。声だと「S」の音は聞き分けにくい。緊急時に「Sam の S です、Frank の F じゃありません」と言い直す時間はありません。
そこでイギリスの新聞タイムズは、1923年2月2日にこう伝えました。(無線)電話では S の文字が聞き分けにくい。だから国際遭難信号の SOS は「May-day」に代わる。May-day は、フランス語の M'aidez(助けて)の音を英語の文字でうつしたものです。
その後、1927年にアメリカのワシントンで国際無線電信会議が開かれました。このとき各国が結んだ規則に、MAYDAY が書きこまれました。国際電気通信連合(ITU)が公開している当時の条約文には、無線電話の遭難信号は「MAYDAY」と言う、と定められています。

つまり、使い分けはこうです。電信(モールス信号)なら SOS、声の無線ならメーデー。『日本大百科全書』にも、無線電話のときはメイ・デイを使う、と書かれています。
04golf も posh も「頭文字」ではなかった
「じつは〇〇の頭文字」という話は、SOS 以外にもたくさんあります。同じ Merriam-Webster の記事が取り上げている2つを見てみましょう。
- golf:「Gentlemen Only, Ladies Forbidden(紳士のみ、婦人お断り)」の頭文字、という話があります。でも golf という語は、スコットランドの古い英語の記録に出てきます。600年近く前から使われた証拠があるのです。一方、この頭文字の説明が見つかるのは1980年代の終わりから。オックスフォードの学習辞典は、オランダ語の kolf(クラブ、バット)と関係があるかもしれない、と断定しない形で書いています
- posh(高級な、上流の):「Port Out, Starboard Home(行きは左舷、帰りは右舷)」の頭文字、という話です。左舷は船の左側、右舷は船の右側のこと。イギリスとインドを行き来した船で、日の当たらない良い側の船室を指した、というのです。オックスフォードは証拠はないとし、Merriam-Webster も「posh の語源ではない」と否定しています。Merriam-Webster によると、20世紀初めに posh を使った記録の多くはイギリス軍の兵士たちのものでした。船室を選べるような人たちではありません
05どんでん返し:細かいところは資料ごとに違う
SOS が頭文字ではない、という点は Merriam-Webster・オックスフォード・『日本大百科全書』で一致しています。でも細部には食い違いがあります。
まず CQD の意味。Merriam-Webster は「CQ(注意の呼びかけ)+D(危険)」と説明しますが、『日本大百科全書』は「Come quick, danger の略」と書いています。SOS の頭文字説は3つの資料がそろって否定しているのに、その前の信号 CQD が何を表すのかは、資料によって説明が違うのです。
次にメーデーの年。Merriam-Webster の記事は、Mayday が英語に入ったのは1923年としています。ところが同じ Merriam-Webster の辞書では、救難信号としての最初の使用は1927年です。また、メーデーを考えたのはロンドンのクロイドン空港の無線士フレデリック・モックフォードだ、という話もあります。でも Merriam-Webster は、その話を裏づけることはできなかったと書いています。
最後に、SOS はもう海の主役ではありません。『日本国語大辞典』によると、日本では衛星通信(人工衛星を中継にした通信)を使う、新しい海の遭難・安全のしくみが入りました。そのため、モールス符号の SOS は1999年1月31日をもって廃止されました。『日本大百科全書』は、モールス信号をやめていない国もある、と書き添えています。
06まとめ
SOS は「Save Our Souls」の略ではなく、モールス信号で打ちやすく聞き間違えにくい並びとして選ばれた3文字でした。声の無線では、フランス語の「助けて」から来た Mayday が使われます。
それでも「Save Our Souls」の話が広まったのは、3文字に意味があったほうが覚えやすいからかもしれません。golf も posh も同じです。「〇〇の頭文字」という語源話は、まず辞書で確かめる。それがウソの語源にだまされないいちばんの近道です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSOS is probably the best-known call for help in the world, but it does not stand for "Save Our Souls" or…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people think SOS means "Save Our Souls." But it is not short for anything. Ships used Morse code to send messages, and SOS was easy to send. It is three short sounds, three long sounds and three short sounds again. It was also hard to mistake.
Pilots who talk on the radio say "Mayday." This word comes from French and means "help me." It has nothing to do with May 1.
72 words ・ CEFR A2
和訳を見る
SOS は「Save Our Souls(我らの魂を救え)」という意味だと思っている人はたくさんいます。でも、SOS は何の略でもありません。船はモールス信号でメッセージを送っていて、SOS は送りやすかったのです。短い音3つ、長い音3つ、そしてまた短い音3つです。それに、間違えにくくもありました。
無線で話すパイロットは「メーデー」と言います。この言葉はフランス語から来ていて、「助けて」という意味です。5月1日とは関係ありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
SOS が何の略でもないこと、Mayday がフランス語から来たことを説明しているので B。
Q2. Why was SOS chosen?
SOS was easy to send とあるので C。A は多くの人の思いこみとして書かれている。
Q3. In the passage, what does "hard to mistake" mean?
hard to mistake は「間違えにくい」、つまり正しく聞き取りやすいという意味なので A。
SOS is probably the best-known call for help in the world, but it does not stand for "Save Our Souls" or "Save Our Ship." Dictionaries such as Merriam-Webster and Oxford say the letters were picked because they were easy to send and recognize in Morse code. Before SOS, ships used CQD, which was harder to hear clearly.
At a radio conference in Berlin in 1906, countries agreed to give priority to SOS. Pilots had a different problem. They spoke over the radio, and the sound of "S" was easy to miss. So in 1923, a British newspaper reported that SOS would be replaced by "May-day," which sounds like the French for "help me."
113 words ・ CEFR B1
和訳を見る
SOS はおそらく世界でいちばんよく知られた助けを呼ぶ合図だが、「Save Our Souls」や「Save Our Ship」の略ではない。Merriam-Webster やオックスフォードなどの辞書によると、この文字はモールス信号で送りやすく、聞き分けやすいから選ばれた。SOS の前、船は CQD を使っていたが、こちらははっきり聞き取りにくかった。
1906年にベルリンで開かれた無線の会議で、各国は SOS を優先することに合意した。パイロットには別の問題があった。彼らは無線で声で話していて、「S」の音は聞き逃しやすかった。そこで1923年、イギリスの新聞が、SOS は「助けて」を意味するフランス語に似た音の「May-day」に置きかえられると伝えた。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
SOS は略語ではないこと、声の無線用に Mayday ができたことが主旨なので B。
Q2. What happened in Berlin in 1906?
At a radio conference in Berlin in 1906, countries agreed to give priority to SOS とあるので C。
Q3. Why did pilots need a word other than SOS?
They spoke over the radio, and the sound of "S" was easy to miss とあるので A。
Ask people what SOS stands for and many will say "Save Our Souls." Dictionaries disagree. Merriam-Webster says the signal has nothing to do with souls, ships or any other word starting with S, and the Oxford learner's dictionary calls the souls story a folk etymology. The letters won because their Morse pattern, three dots, three dashes and three dots, was easy to tap out and hard to confuse.
An international conference in Berlin in 1906 gave SOS priority over other distress calls. Spoken radio needed something else. In February 1923, The Times in London explained that the letter S was hard to make out when spoken over the radio, so pilots would say "May-day," a sound borrowed from the French for "help me."
In 1927, an international radio conference in Washington, D.C., wrote MAYDAY into its rules. Merriam-Webster's dictionary dates the word to 1927, but its article says 1923. Even the older signal is explained in two ways. One source reads CQD as "CQ" plus "danger," and a Japanese encyclopedia reads it as "come quick, danger." In Japan, ships stopped using SOS in Morse code in early 1999.
188 words ・ CEFR B2
和訳を見る
SOS が何の略かと聞けば、多くの人は「Save Our Souls」と答えるだろう。辞書の見方は違う。Merriam-Webster は、この信号は魂とも船とも、S で始まるほかのどんな語とも関係がないと書き、オックスフォードの学習辞典は魂の話を民間語源(語源の俗説)と呼んでいる。この文字が選ばれたのは、短点3つ・長点3つ・短点3つというモールスのパターンが、打ちやすく、ほかと取り違えにくかったからだ。
1906年のベルリンでの国際会議は、SOS をほかの遭難信号より優先させた。声の無線には別のものが必要だった。1923年2月、ロンドンのタイムズ紙は、無線の声では S の文字が聞き取りにくいので、パイロットは「助けて」を意味するフランス語から借りた音「May-day」を使うようになると説明した。
1927年、ワシントンでの国際無線会議が MAYDAY を規則に書きこんだ。Merriam-Webster の辞書はこの語の始まりを1927年としているが、同社の記事は1923年としている。古いほうの信号でさえ、説明は2通りある。ある資料は CQD を「CQ」+「danger」と読み、日本の百科事典は「come quick, danger」と読む。日本では、1999年の初めに、船がモールス信号の SOS を使うのをやめた。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
SOS の頭文字説の否定と Mayday の由来がテーマなので B。
Q2. According to the passage, why did the letters SOS win?
their Morse pattern ... was easy to tap out and hard to confuse とあるので C。
Q3. What does the passage suggest about the sources on these signals?
SOS が略語でない点は一致しているが、Mayday の年や CQD の説明は資料によって違うと述べているので B。
重要単語
- distress signalB2名詞遭難信号The ship sent a distress signal in the storm.
distress は「苦しみ、遭難」。distress call とも言う。 - Morse codeB1名詞モールス信号My grandfather could read Morse code.
考案者サミュエル・モールス(Morse)の名から。短点は dot、長点は dash。 - abbreviationB2名詞略語、省略形"TV" is an abbreviation of "television."
stand for ~ で「~の略である」。What does SOS stand for? のように聞く。 - folk etymologyC1名詞民間語源、語源の俗説"Save Our Souls" is a folk etymology for SOS.
etymology は「語源」。folk は「民間の、ふつうの人々の」。 - MaydayC1名詞(声の無線の)救難信号The pilot sent out a Mayday call.
フランス語 m'aider(助けて)から。5月1日の May Day とはつづりも由来も別。 - priorityB1名詞優先、優先事項Safety is our top priority.
give priority to ~ で「~を優先する」。形容詞 prior(前の、優先する)から。 - rescueB1動詞救助するA helicopter rescued the fishermen.
名詞も同じ形。a rescue team で「救助隊」。
公式・一次情報をチェック
- SOS(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- Mayday(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- golf(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
SOS は「Save Our Souls」の略ではない。モールス信号で ・・・---・・・ と打ちやすく、聞き間違えにくいから選ばれた。声の無線で叫ぶ「メーデー」はフランス語 m'aider(助けて)から。5月1日のメーデーとは別の言葉。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(8件)タップで表示
- Merriam-Webster「7 Good Stories That Just Aren't True」merriam-webster.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「SOS」oxfordlearnersdictionaries.com
- ITU History Portal「International Radiotelegraph Conference (Berlin, 1906)」itu.int
- 日本大百科全書(ニッポニカ)・精選版 日本国語大辞典「SOS」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- ITU History Portal「International Radiotelegraph Conference (Washington, 1927)」(International Radiotelegraph Convention of Washington, 1927 の本文 PDF を含む)itu.int
- Merriam-Webster「Where does the word 'mayday' come from?」merriam-webster.com
- Merriam-Webster.com Dictionary「Mayday」merriam-webster.com
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「メーデー」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
本館
マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究
論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も





