エプロンは昔「ナプロン」。a napron を an apron と区切りなおして n が消えた

読む前に予想してみよう!
apron(エプロン)は、昔は napron というつづりだった
a napron が an apron と区切りなおされ、語の頭の n が冠詞の an のほうへ移った。adder(クサリヘビ)や umpire(審判)も同じ仕組み。
- 対象
- 中英語の文献に残るつづり
- 規模
- 1300年ごろ〜1500年ごろの用例
- 研究の種類
- 辞書の語源記述(文献にもとづく調査)
- 確かさ
- ★★★★☆
apron は昔 napron。a napron を an apron と区切りなおして n が消えた。adder・umpire も同じ。逆に n が増えた語もある。
ひとことで言うとエプロンは昔「ナプロン」。a と an の区切りまちがいで n が消えた!
料理のときにつける apron(エプロン)。600年以上前のイングランドでは、これを napron(ナプロン) と呼んでいました。
頭の n はどこへ行ったのでしょう?
じつは、前にある冠詞 a のほうへ引っ越しました。a napron(ア・ナプロン)が、いつのまにか an apron と区切りなおされたのです。英語には、こうして n が消えた単語や、逆に n が増えた単語がいくつもあります。
01エプロンの語源は? apron の元は「テーブルクロス」の仲間
まずは apron の家系図から。
アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』(AHD)によると、apron のもとは古フランス語の naperon。これは nape(テーブルクロス) に「小さい」を表す語尾がついた形で、さらにさかのぼるとラテン語の mappa(ナプキン、布) に行き着きます。
つまり、apron は「小さな布」。親戚には、こんな単語がいます。
- napkin(ナプキン):nape(テーブルクロス)+ -kin(小さいもの)(AHD)
- map(地図):ラテン語の mappa(ナプキン、布)から。地図が布にかかれていたことによる、と AHD は説明しています
エプロンとナプキンと地図が、じつは同じ「布」から生まれた親戚なのです。いまのフランス語にも napperon という語が残っていて、家具の上に敷く敷物(テーブルマットなど)を指します(メリアム・ウェブスター)。フランス語のほうは、n がちゃんと残っているわけです。
02犯人は「a」と「an」
英語では、次の語が母音の音で始まると a が an になります。a book、an egg のように。
ここで、ふつうの速さで言ってみてください。
- a name(名前)
- an aim(目標)
どちらも「アネイム」と聞こえませんか。n が前の語のおしりにつくのか、後ろの語の頭につくのか、耳ではほとんど区別できないのです。
この2つは、メリアム・ウェブスターが挙げている例です。同辞書は、話し言葉ではこの区別がむずかしいため、英語では n で始まる語の「区切りまちがい」がいちばん多いと説明しています。a napron と an apron も、このパターンでした。
03ヘビの adder、審判の umpire も同じ
apron だけではありません。同じ仕組みで n を失った単語は、ほかにもあります。
adder(クサリヘビ)古英語では nǣdre、中英語では naddre。a naddre が an addre になりました(AHD)。メリアム・ウェブスターによると、オックスフォード英語辞典の記録では、1400年代半ばには n があるつづりとないつづりが両方使われ、1500年ごろからは n のない形が主流になりました。親戚の言葉には、古高ドイツ語の nātara や、ラテン語の natrix(水ヘビ)があり、こちらは n で始まります。
umpire(審判)もとは古フランス語の nonper。non(〜でない)+ per(等しい、同等の)でできた語です。AHD によると、争う二人のどちらとも同じ立場に立たず、どちらの味方もしない人、つまり公平に裁く人を指しました。AHD は、もし n が残っていたら、スポーツの観客の怒りのヤジ「Kill the ump!」は「Kill the nump!」だったかもしれない、と冗談めかして書いています。
auger(大工道具のきり)古英語の nafogār から。a nauger が an auger になりました(AHD)。

04どんでん返し:n をもらった単語もある
ここまで読むと、「英語では n は消えるもの」と思いたくなります。でも、じつは逆向きの変化も起きています。
nickname(あだ名)中英語では an eke name。eke は「追加」という意味で、「追加の名前」でした。これが a neke name と区切りなおされて、nickname になりました(AHD)。メリアム・ウェブスターも、nick という語に意味はなく、an ekename を区切りまちがえてできた語だと説明しています。
newt(イモリ)もとは an eute(AHD)。メリアム・ウェブスターは an ewt というつづりで説明しています。これが a newt になりました。古い形の流れをくむ eft という語は、いまも「陸で暮らす時期の、子どものイモリ」の意味で残っています(AHD)。
つまり、a と an の境目では、n はどちらの向きにも移ったのです。n が消えた語も、n が増えた語も、仕組みは同じ「区切りなおし」です。
もうひとつ。orange(オレンジ) も n を失った語だという説明があります。メリアム・ウェブスターは、もとのアラビア語 nāranj の n が、フランス語の冠詞 un・une とまぎれて消えたとし、スペイン語では naranja と n が残っていることを挙げています。ただ AHD の語源欄では、n はアラビア語から古イタリア語の arancio になった段階ですでに消えていて、フランス語の冠詞の話は出てきません(AHD が挙げるフランスの町 Orange の影響は、a が o に変わったことの説明です)。辞書によって説明がちがうので、どの語でも同じように言い切れるわけではないのです。
05まとめ
apron は昔の napron。a napron と an apron が同じに聞こえたせいで、n が冠詞のほうへ移りました。adder・umpire・auger も同じ道をたどり、反対に nickname と newt は n をもらいました。
日本語の「エプロン」も、英語の apron から来た言葉です。もし n が残っていたら、私たちは今ごろ「ナプロン」をつけて料理していたかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBefore you start cooking, you might put on an apron.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many cooks wear an apron. But more than 600 years ago, English speakers called it a "napron."
So what happened to the first n? Say "a name" and "an aim" quickly. They sound almost the same! In the same way, "a napron" and "an apron" were hard to tell apart.
Over time, people heard the n as part of "an," and the word became "apron." The same thing happened to "adder," a kind of snake. It was once "a nadder."
80 words ・ CEFR A2
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多くの料理人はエプロンをつけます。でも600年以上前、英語を話す人たちはそれを「napron」と呼んでいました。
では、最初の n はどうなったのでしょう?「a name」と「an aim」を速く言ってみてください。ほとんど同じに聞こえます!同じように、「a napron」と「an apron」も聞き分けにくかったのです。
時がたつにつれて、人々はその n を「an」の一部として聞くようになり、単語は「apron」になりました。ヘビの一種の「adder」にも同じことが起きました。昔は「a nadder」だったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
napron の最初の n がなくなって apron になった話なので B。
Q2. What was "adder" once called?
It was once "a nadder." とあるので C。
Q3. In the passage, what does "over time" mean?
over time は「時がたつにつれて、だんだんと」。B。
Before you start cooking, you might put on an apron. Six hundred years ago, you might have put on "a napron." The word came from French "naperon," a small cloth, and it is related to "napkin." At normal speed, "a napron" and "an apron" were hard to tell apart.
Many speakers began to hear the n as the end of "an," and over time the n moved from the noun to the article. Other words went the same way. The snake called an adder was once a nadder, and an umpire was once a noumpere.
But the n did not always disappear. "Nickname" comes from "an ekename," meaning "an extra name," so this word actually gained an n.
118 words ・ CEFR B1
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料理を始める前に、エプロンをつけるかもしれない。600年前なら、「a napron」をつけていたかもしれない。この語はフランス語の「naperon(小さな布)」から来ていて、「napkin」と親戚だ。ふつうの速さで話すと、「a napron」と「an apron」は聞き分けにくかった。
多くの話し手が n を「an」の終わりとして聞くようになり、時がたつにつれて n は名詞から冠詞へと移った。ほかの語も同じ道をたどった。adder と呼ばれるヘビは昔は nadder で、umpire(審判)は昔は noumpere だった。
しかし n がいつも消えたわけではない。「nickname」は「追加の名前」を意味する「an ekename」から来ているので、この語は実際には n を得たのだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
a napron と an apron の区切りの聞こえ方で語の形が変わった話なので B。
Q2. Which word was once "noumpere"?
an umpire was once a noumpere とあるので D。
Q3. Why does the writer say "nickname" is different from "apron"?
this word actually gained an n とあり、n を失った apron とは逆なので B。
Nothing about the word "apron" suggests that it once began with an n. In Middle English it was "napron," borrowed from French "naperon," a small cloth. The same family gave English "napkin," and the Latin word "mappa," a cloth or napkin, is also behind the word "map."
The n was lost at the border between two words. Said at normal speed, "a napron" and "an apron" were almost impossible to tell apart, so listeners could hear the n as part of the article. Old documents show how slowly this happened.
For "umpire," the American Heritage Dictionary lists "noumper" from about 1350, "a noounpier" in 1426 or 1427, the n-less "owmpere" in 1440, and "an Oumper" around 1475. "Adder," once "nadder," changed in the same way. The process also ran backward.
"An ekename," or "an extra name," turned into "a neke name," which gave us "nickname," and "an ewt" became "a newt." Some cases are less certain. Merriam-Webster blames the French articles "un" and "une" for the missing n in "orange." The American Heritage Dictionary tells a different story: the n was already gone in the Old Italian word "arancio."
189 words ・ CEFR B2
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「apron」という語には、かつて n で始まっていたことをうかがわせるものは何もない。中英語ではこの語は「napron」で、「小さな布」を意味するフランス語の「naperon」から借りた語だった。同じ一族から英語の「napkin」が生まれ、布やナプキンを意味するラテン語の「mappa」は「map(地図)」という語のもとにもなっている。
n は二つの語の境目で失われた。ふつうの速さで言うと、「a napron」と「an apron」はほとんど聞き分けられなかったので、聞き手が n を冠詞の一部として聞き取ることもあった。古い文書を見ると、この変化がいかにゆっくり進んだかが分かる。
「umpire」について、アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、1350年ごろの「noumper」、1426年か1427年の「a noounpier」、1440年の n のない「owmpere」、1475年ごろの「an Oumper」を挙げている。かつて「nadder」だった「adder」も同じように変わった。この過程は逆向きにも起きた。「追加の名前」を意味する「an ekename」は「a neke name」になり、そこから「nickname」が生まれた。
また「an ewt」は「a newt(イモリ)」になった。はっきりしない例もある。メリアム・ウェブスターは「orange」から n が消えた原因をフランス語の冠詞「un」と「une」に求めている。アメリカン・ヘリテージ英語辞典の説明はちがい、n は古イタリア語の「arancio」の段階ですでに消えていた。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
apron・umpire・adder が n を失い、nickname・newt が n を得た話なので B。
Q2. According to the passage, when does the n-less form "owmpere" appear?
the n-less "owmpere" in 1440 とあるので C。
Q3. What does the writer suggest about "orange"?
Some cases are less certain. のあと、メリアム・ウェブスターと AHD の説明がちがうと述べているので B。
重要単語
- apronA2名詞エプロン、前掛け;(空港の)エプロンPut on an apron before you start cooking.
発音は「エイプロン」。昔は napron。空港で飛行機が止まる場所も apron。 - adderC1名詞クサリヘビ(ヨーロッパの毒ヘビ)We saw an adder lying in the sun on a rock.
古英語の nǣdre から。a nadder が an adder になった。 - umpireB2名詞(野球・テニスなどの)審判The umpire called the runner out.
古フランス語 nonper(non+per=等しくない)から。per は peer(仲間)・pair(対)と同じ「等しい」。 - nicknameB1名詞あだ名、愛称His nickname at school was "Professor."
an ekename(追加の名前)が a neke name になった。nick 自体に意味はない。 - articleB1名詞(文法の)冠詞;記事"A" and "an" are indefinite articles.
indefinite article=不定冠詞(a / an)、definite article=定冠詞(the)。 - napkinA2名詞(食卓用の)ナプキンShe wiped her mouth with a paper napkin.
古フランス語 nape(テーブルクロス)+ -kin(小さいもの)。apron の親戚。 - borderB1名詞境界、境目;国境The n moved across the border between the two words.
on the border「境目に」。国と国の境にも、語と語の境にも使える。
公式・一次情報をチェック
- adder(The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.)ahdictionary.com
- nickname(Merriam-Webster)merriam-webster.com
- エプロン(精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉/コトバンク)kotobank.jp
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apron(エプロン)は昔 napron。a napron を an apron と区切りなおして、n が冠詞へ移った。ヘビの adder、審判の umpire も同じ。逆に nickname は、an ekename の冠詞から n をもらった語。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「umpire」(Word History)ahdictionary.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「apron」ahdictionary.com
- Merriam-Webster「apron」(Etymology)merriam-webster.com
- Merriam-Webster「9 Words Formed by Mistakes」merriam-webster.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged)「apron」dictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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