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英語のマジか!?ウソ

「Long time no see」は主語も動詞もないのに辞書に載る英語。1900年の本にも登場

「Long time no see」は主語も動詞もないのに辞書に載る英語。1900年の本にも登場

読む前に予想してみよう!

「Long time no see」は文法がおかしいので、ちゃんとした英語の辞書には載っていない

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の辞書の記述と、1900年に出版された回想録・1971年の戦史、先住民の話し方の描かれ方の研究
規模
辞書4種・回想録1冊・戦史1冊・論文1本
研究の種類
辞書の記述と古い本の確認
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

主語も動詞もない Long time no see を、オックスフォードの学習辞典は「くだけた言い方」として載せる。1900年の本には you つきで出てくる。中国語から来たという説は証拠がはっきりしない。

ひとことで言うと「Long time no see!」は文法はヘンでも、辞書にのる英語!

もくじ
  1. 文法で見ると、どこがヘン?
  2. 辞書には「くだけた言い方」として載っている
  3. 1900年の本では「Long time no see you」
  4. このせりふは「本人の話し方」の記録ではない
  5. どんでん返し:その場面、軍の記録とちがう
  6. もう1つの説:中国語の「好久不見」から?
  7. 仲間の「片言フレーズ」も辞書に載っている
  8. 学校ではなぜ「変な英語」扱い?
  9. テストや英作文ではどうする?
  10. まとめ
  11. よくある質問

Long time no see!(久しぶり!)

英会話の本や旅行ガイドで、まっ先に覚えるあいさつの一つです。でも、英文法の授業で習ったルールで見直すと、この文はかなり変です。主語がない。動詞もない。 no の後ろに see がいきなり来る。英作文のテストでこう書いたら、赤ペンで直されそうです。

それでも、イギリスのオックスフォード大学出版局の学習辞典には、ちゃんと載っています。しかも記録をさかのぼると、1900年にシカゴで出た本に、もう出てきます。その本では、アメリカ先住民のリーダーのせりふとして書かれていました。ただし、このせりふをそのまま「本人の言葉」と受け取るわけにはいきません。

01文法で見ると、どこがヘン?

ふつうの英語なら、こう言います。

  • I haven't seen you for a long time.(長いあいだ、あなたに会っていなかった)
  • It's been a long time.(ずいぶんたったね)

この2つには、主語(I・It)と動詞(have seen・has been)があります。ところが Long time no see は、

  • Long time:「長い時間」という名詞のかたまり
  • no see:「ない」+「見る」

を並べただけです。英語では、動詞の前に no を置いて「〜しない」と言う形は、ふつう使いません(I no see とは言わず I don't see と言います)。単語をただ並べた「片言」に近い形です。

02辞書には「くだけた言い方」として載っている

それでも辞書は、この言い方を英語として扱っています。

  • オックスフォード現代英英辞典(学習者向け):time の項目の成句に long time no see があり、ラベルは (informal)=くだけた言い方。意味は「長いあいだ会っていなかった人に、こんにちはと言うときに使う」
  • ケンブリッジ英語辞典:long time no see を見出しに立て、「しばらく会っていなかった人に会ったときに言う」と説明。あいさつの言葉の仲間に分類している

Long time no see は、文法の規則では説明できない。でも、オックスフォードの学習辞典に載っている“くだけた英語”です。 文法の規則に合わなくても、多くの人が使えば辞書に載る。その代表例です。

031900年の本では「Long time no see you」

では、いつからあるのでしょうか。古い例として知られているのが、ウィリアム・F・ドラナンという人が1900年にシカゴで出版した回想録『Thirty-One Years on the Plains and in the Mountains(平原と山での31年)』です。Internet Archive で当時の本が読めます。

当時は you がついていました。そして me no want のように、no を動詞の前に置く形が、作者がジャックのせりふとして書いた文にくり返し出てきます。no see は、この崩した英語の型そのものです。

04このせりふは「本人の話し方」の記録ではない

この本のせりふは、ジャック本人が書き残したものでも、その場でだれかが書き留めたものでもありません。作者のドラナンが、戦争からおよそ27年後に、先住民の話し方として書いた英語です。

アメリカの言語人類学者バーバラ・ミーク(ミシガン大学)は2006年の論文で、映画やテレビ、一部の文学が、先住民の登場人物に崩れた英語を話させてきたことを調べました。動詞の形を変えない、I の代わりに me を使う、heap(たくさん)のような決まった語をはさむ、といった特徴です。heap を「先住民の言葉づかい」と結びつけたのは、ワシントン・アーヴィングやマーク・トウェインといったアメリカの作家だという研究も紹介しています。ミークは、こうした書き方が先住民を「自分たちとはちがう人々」として描く固定観念を、気づかれにくい形でくり返してきたと論じています。

ミークの論文は、ドラナンの本そのものは取り上げていません。それでも、ドラナンの本のせりふにも、me や heap が出てきます。ですから、これはモードックの人々が実際にどう話したかの記録ではなく、当時の書き手が使った「型」として読むべきものです。ここで引用するのは、long time no see という言い方が1900年の本に印刷されていた、という言葉の記録を確かめるためです。

1900年の回想録には、すでに「Long time no see you」というせりふがあった(ドラナン『平原と山での31年』)
1900年の回想録には、すでに「Long time no see you」というせりふがあった(ドラナン『平原と山での31年』)

05どんでん返し:その場面、軍の記録とちがう

しかも、この場面が本当にあったかどうかも疑わしいのです。モードック戦争の戦史『Modoc War: Its Military History & Topography』(エルウィン・N・トンプソン、1971年。アメリカ国立公園局の協力で出版)の第10章を読むと、こう書かれています。

  • ジャックが投降したのは 1873年6月1日、ウィロー・クリークという谷で
  • 見つけたのは、陸軍のトリンブル大尉の部隊の一隊
  • ジャックが銃を渡した相手は、ジム・シェイという古参の兵士(その場にいた軍曹マッカーシーの記録)
  • ジャックといっしょに谷から出てきたのは、男性1〜2人、少年2人、女性3人と小さな子どもたち(ドラナンの本では、ジャックと妻と幼い娘の3人だけ)

この章に、ドラナンの名前は出てきません。つまり「Long time no see you」は、その場で本当に交わされた会話の記録とは言えません。作者が、先住民のせりふとして書いた英語です。言葉の古い例としては貴重ですが、「この日、この人が言った」とは言えないのです。

06もう1つの説:中国語の「好久不見」から?

由来には、もう1つよく知られた説があります。アメリカン・ヘリテージの熟語辞典(Dictionary.com に掲載)は、long time no see を「片言の英語をおどけてまねた言い方」とし、中国人と西洋人のやりとりで使われたピジン英語から生まれたと説明しています(時期は「1800年代の終わり」)。ピジン英語とは、言葉の通じない人どうしが、取り引きなどのために作った簡単な英語のことです。

ケンブリッジの英中辞典は、long time no see の中国語訳に「好久不見」をあてています。この中国語のあいさつは、漢字を一つずつ英語に置きかえると long time no see と同じ並びになる、と説明されることがあります。ただし、熟語辞典は証拠になる古い文章を示していません。今回確かめられた古い例は、先住民のせりふとして書かれたものでした。中国語から来たのか、別の片言から生まれたのかは、はっきりしていません。

07仲間の「片言フレーズ」も辞書に載っている

文法の規則に合わないのに、辞書に残った言い方はほかにもあります。

  • No can do.(できないよ):ケンブリッジ英語辞典は informal として載せ、Sorry, no can do. という例を挙げる。アメリカン・ヘリテージの熟語辞典によると、記録は 1914年 から
  • Chop-chop!(早く早く!):オックスフォードの学習辞典によると informal で、語源は「速い」を表す中国語の言葉をもとにしたピジン英語(くわしくは「gung ho の記事」で)

08学校ではなぜ「変な英語」扱い?

学校の英文法は、「主語+動詞」を土台に文を組み立てる練習です。英作文の採点も、その規則にそっているかで決まります。Long time no see はこの規則で説明できないので、授業では「決まり文句として丸ごと覚える」扱いになります。これは教え方として筋が通っています。規則どおりの文が書ければ、どこでも通じるからです。

09テストや英作文ではどうする?

10まとめ

Long time no see は、主語も動詞もない、文法の規則からはみ出した英語です。それでも、1900年の本にすでにあり、今はオックスフォードやケンブリッジの辞書に載っています。由来は中国語説もありますが、決め手はまだありません。

会話では気軽に Long time no see!、英作文では It's been a long time.。場面で使い分ければ、どちらも正しい英語です。

よくある質問

「Long time no see」の意味は何ですか?

「久しぶり!」という意味のあいさつです。オックスフォードの学習辞典は、長いあいだ会っていなかった人に、こんにちはと言うときに使うくだけた言い方として載せています。ケンブリッジ英語辞典も見出しに立て、あいさつの言葉の仲間に入れています。

「Long time no see」は文法的に間違いですか?

英文法の規則では説明できない形です。主語も動詞もなく、no の後ろに see がいきなり来ます。ふつうは I no see とは言わず I don't see と言います。それでもオックスフォードやケンブリッジの辞書に載っている英語で、友だちとの会話なら使ってかまいません。

「Long time no see」は目上の人に使ってもいいですか?

目上の人へのメールや手紙では、主語と動詞のある文にするのがおすすめです。辞書のラベルは (informal)=くだけた言い方です。It's been a long time. や I haven't seen you for a long time. と書けば、英作文でも使えます。

「Long time no see」はいつから使われていますか?

古い例として知られているのは、1900年にシカゴで出版されたドラナンの回想録です。1873年、モードック戦争の終わりの場面で、先住民のリーダーのせりふとして "Long time no see you" と書かれています。ただし本人の言葉の記録ではなく、作者が書いた英語です。

「Long time no see」は中国語の「好久不見」から来たのですか?

はっきりしていません。アメリカン・ヘリテージの熟語辞典は、中国人と西洋人のやりとりで使われたピジン英語から生まれたと説明していますが、証拠になる古い文章は示していません。今回確かめられた古い例は、アメリカ先住民のせりふとして書かれたものでした。

「Long time no see you」と言ってもいいですか?

ふつうは言いません。1900年の本には you つきの "Long time no see you" が出てきますが、今の辞書の見出しは you のない Long time no see です。

「久しぶり」を英語で言うほかの言い方はありますか?

It's been a long time. や I haven't seen you for a long time. があります。会話向きの It's been ages!(すごく久しぶり!)の ages は、オックスフォードの学習辞典で「とくにイギリス英語の、くだけた言い方」です。

文法に合わないのに辞書に載っている英語はほかにありますか?

あります。No can do.(できないよ)は、ケンブリッジ英語辞典が informal として載せ、アメリカン・ヘリテージの熟語辞典によると記録は1914年からです。Chop-chop!(早く早く!)も、オックスフォードの学習辞典に informal として載っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn grammar class, we learn that a sentence needs a subject and a verb. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In grammar class, we learn that a sentence needs a subject and a verb. "Long time no see" has neither. It just puts "long time" next to "no see," and English does not normally put "no" in front of a verb.

Even so, both Oxford and Cambridge list the phrase as a greeting, and Oxford labels it informal. One early example comes from a memoir published in Chicago in 1900. The writer gives the line "Long time no see you" to a Modoc leader called Captain Jack. But a history of the Modoc War gives a different account of how Jack gave himself up, so the scene may not be a true record. For school essays, it is safer to write "It's been a long time."

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

文法の授業では、文には主語と動詞が必要だと習う。「Long time no see」にはそのどちらもない。「long time」と「no see」を並べただけで、英語ではふつう動詞の前に「no」を置かない。

それでも、オックスフォードとケンブリッジはどちらもこの言い方をあいさつとして載せていて、オックスフォードは「くだけた言い方」というラベルをつけている。古い例の一つは、1900年にシカゴで出版された回想録にある。作者は「Long time no see you」というせりふを、キャプテン・ジャックと呼ばれたモードック族のリーダーに言わせている。しかし、モードック戦争の歴史書は、ジャックが投降したいきさつを別のように書いているので、この場面は本当の記録ではないかもしれない。学校の作文では、「It's been a long time.」と書くほうが安全だ。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does the writer say the phrase breaks grammar rules?

Q2. In the 1900 memoir, who is given the line "Long time no see you"?

Q3. What does the writer suggest about the scene in the memoir?

重要単語

  • informalB1
    形容詞くだけた、略式の"Long time no see" is fine in an informal chat. in-(否定)+formal(改まった)。辞書の (informal) ラベルは「友だちとの会話向き」の目印。
  • greetingB1
    名詞あいさつShe waved and called out a greeting. greet(あいさつする)+-ing。Season's Greetings は年末のカードの決まり文句。
  • phraseA2
    名詞決まった言い方、句Learn the whole phrase, not each word. set phrase で「決まり文句」。文法で分解しにくい表現は phrase ごと覚えるのが近道。
  • subjectB1
    名詞(文法の)主語;教科Every English sentence usually needs a subject. 「教科」の意味でもよく使う。What's your favorite subject?
  • pidginC1
    名詞ピジン語(言葉の通じない人どうしが作った簡単な言葉)Traders used a simple pidgin to do business. pidgin English で「ピジン英語」。鳥の pigeon(ハト)とは別の語なので、つづりに注意。
  • memoirC1
    名詞回想録He wrote a memoir about his life in the West. フランス語 mémoire(記憶)から。最後の -oir は「ワー」に近く読む。
  • surrenderB2
    動詞降伏する、投降するThe soldiers told him to surrender. give oneself up と同じ意味。名詞も surrender。
「久しぶり!」の Long time no see は主語も動詞もない英語。でもオックスフォードの学習辞典に「くだけた言い方」として載る。1900年の回想録には「Long time no see you」と you つきで出てくる。

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出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. Oxford Advanced Learner's Dictionary「time」(idiom: long time no see)・「chop-chop」・「age」oxfordlearnersdictionaries.com
  2. Cambridge Dictionary「long time no see」「no can do」dictionary.cambridge.org
  3. The American Heritage Idioms Dictionary「long time no see」「no can do」(Dictionary.com 掲載)dictionary.com
  4. Drannan, W. F. (1900) Thirty-One Years on the Plains and in the Mountains, Chicago: Thos. W. Jackson Publishing, pp. 580–581(Internet Archive)archive.org
  5. Thompson, E. N. (1971) Modoc War: Its Military History & Topography, Argus Books, Chapter 10(米国立公園局の協力で出版。NPS History 掲載)npshistory.com
  6. Meek, B. A. (2006) And the Injun goes "How!": Representations of American Indian English in white public space, Language in Society 35(1): 93–128doi.org
  7. Cambridge English–Chinese (Traditional) Dictionary「long time no see」dictionary.cambridge.org

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