丁寧と習う「Pardon?」、英国の上流階級は使わず What? と聞き返すとされてきた

読む前に予想してみよう!
イギリスでは、聞き返すときの Pardon? が「上流階級らしくない言葉」と見られてきた
1950年代に言語学者ロスが Pardon を「上流ではない人」の言い方に分類し、上流は What? と言うと書いた。2004年の人類学者の本でも同じ扱いだった。
- 対象
- 1950年代のイギリスの上流階級の言葉づかい(言語学者の観察)と、2000年代の社会人類学者の観察
- 規模
- 書籍2冊(ロスの論文の短縮版を収めた本・人類学者の本)・辞書2種
- 研究の種類
- 言語学者・人類学者の観察記録+辞書の記述
- 確かさ
- ★★★☆☆
丁寧と習う聞き返しの Pardon?。1950年代、イギリスの言語学者ロスは、これを上流階級ではない人の言葉に分類し、上流の人は What? と言うと書いた。2004年の本でも、上流の人が嫌う言葉の代表とされた。一方、ケンブリッジ英語辞典は Pardon? を丁寧な聞き返しとしている。
ひとことで言うと「Pardon?」はていねいと習うけど、イギリスの上流の人は「What?」と聞き返すとされてきた!
もくじ
先生の言ったことが聞き取れなかったとき、中学の英語では Pardon?(もう一度おっしゃってください)と言いましょう、と習った人も多いはずです。What?(え、何?)はぶっきらぼうだから、と。
ところがイギリスでは、その Pardon? こそが「上流階級ではない人」の目印だとされてきました(上流階級は、貴族や名家など社会のいちばん上の層のことです)。1950年代、ある言語学者がこう書いています。上流の人は聞き返すとき、そっけなく What? と言う、と。
011954年、言語学者が言葉づかいを「U(上流)」と「non-U(上流ではない)」に分けた
書いたのは、イギリスのバーミンガム大学の教授アラン・ロスです。1954年、フィンランドの言語学の雑誌に「今の英語で、話し手の階級が分かる言葉」という論文を出しました。
ロスは、上流階級(upper class)の言葉づかいを、その頭文字をとって U、上流ではない人の言葉づかいを non-U と呼びました。この論文を短くしたエッセイ「U and Non-U」は、雑誌『エンカウンター』にも載り、1956年には、作家ナンシー・ミットフォードや小説家イーヴリン・ウォーらの文章とあわせて、本『Noblesse Oblige(ノブレス・オブリージュ)』としてロンドンで出版されました。同じ本には、ミットフォードのエッセイ「イギリスの貴族」も入っています。
つまり、学校で「丁寧」と習った Pardon? を言った時点で、1950年代のイギリスの上流の人には「この人は U ではない」と分かってしまう、というのです。
1950年代のイギリスの言語学者ロスによれば、上流の人は聞き返すとき Pardon? ではなく What? と言う。
02ナプキンもトイレも「階級の目印」
ロスが挙げた目印は、Pardon だけではありません。同じエッセイには、こんな組み合わせが並んでいます。
- non-U の serviette(サービエット)/U の table-napkin(ナプキン)。ロスは、これを 英語で最もよく知られた階級の目印かもしれない と書いている
- non-U の toilet-paper/U の lavatory-paper(トイレットペーパー)
- non-U の wealthy/U の rich(お金持ちの)
ミットフォードも同じ本の自分のエッセイで、ロスの例に sweet(non-U)と pudding(U)=食後のデザートなどを付け足しています。
この本には、詩人ジョン・ベッチマンのこっけいな詩「How to Get On in Society(社交界でうまくやる方法)」も収められています。上品ぶった家の人が、Beg pardon と言ったり、フィッシュナイフ(魚料理用のナイフ)を持ってこさせたりしながらお茶の席を仕切る様子を描いています。

0350年後の2004年の本でも、Pardon は「嫌われる言葉」の代表
では、これは昔の話でしょうか。2004年、イギリスの社会人類学者ケイト・フォックスが、イギリス人のふるまいを観察した本『Watching the English(イギリス人を観察する)』を出しました。そこでも Pardon は主役です。
フォックスは serviette を、ふつうの英語の代わりにしゃれたフランス語を使って格を上げようとする「見当ちがいの努力」だと説明しています。Pardon についても、労働者階級のなかで中流を目指す人が「上品に聞こえるように」と言うことがあるが、見当ちがいの努力だと書いています。上品に見せようとして選んだ言葉ほど、上流の人には「上流ではない」目印に聞こえる、というしくみです。
04どんでん返し:What? と聞き返すのは、上流の人と労働者階級の人
フォックスは、だれでもできる「階級テスト」を紹介しています。わざと小さな声で話して、相手に聞き返させるのです。
- 中流の下〜真ん中の人:Pardon?
- 上流寄りの中流の人:Sorry?(または Sorry — what?)
- 上流の人と、労働者階級の人:どちらも What?(労働者階級の人は t を落として Wha'? と言うことがあるくらいの差だという)
学校で「失礼」と教わる What? は、階級のいちばん上と下で同じだったのです。ただし、これはフォックス自身の観察にもとづく説明で、人数を数えた調査ではありません。
そもそもロス自身も、1956年のエッセイで、こうした階級の目印は 言語学的にはほとんど取るに足らない もので、ほぼすべてがすぐに移り変わる ようだ、と書いていました。言葉としての正しさではなく、「どの集団の言い方か」の目印にすぎない、ということです。
05学校ではなぜ Pardon? を教える?
辞書を見ると、学校の教え方は筋が通っています。ケンブリッジ英語辞典は Pardon? を「聞こえなかったことを、丁寧にくり返してもらうときの言い方」と説明しています。ケンブリッジの文法解説では、聞き返しの What? は「くだけた場面」の言い方で、Sorry, what? より Sorry? だけのほうが丁寧だとしています。
階級の話は、イギリス人どうしの「内輪の目印」です。英語を学ぶ人が初対面の相手に聞き返すなら、ぶっきらぼうに聞こえない言い方を選ぶのが安全です。
06テストや英作文ではどうする?
07まとめ
聞き返しの Pardon? は、ケンブリッジ英語辞典では丁寧な言い方です。けれどもイギリスでは、1950年代に言語学者ロスが「上流ではない人」の言葉に分類し、2004年の本でも上流の人が嫌う言葉の代表とされていました。上流の人は What?、その次は Sorry?。
言葉の「正しさ」と、言葉が背負う「グループの目印」は別物です。テストでは Pardon? で正解。イギリス人と話すなら Sorry? も覚えておく。 それで十分です。
よくある質問
「Pardon?」は失礼な言い方ですか?
辞書では丁寧な言い方です。ケンブリッジ英語辞典は、聞こえなかったことを丁寧にくり返してもらうときの言い方と説明しています。ただイギリスでは、1950年代に言語学者アラン・ロスが「上流ではない人」の言葉に分類し、階級の目印とされてきました。
イギリスの上流階級はなぜ Pardon を嫌うのですか?
上品に見せようとして選ばれる言葉だから、と説明されています。社会人類学者ケイト・フォックスは2004年の本で、労働者階級のなかで中流を目指す人が「上品に聞こえるように」Pardon と言うことがあるが、見当ちがいの努力だと書いています。
イギリスの上流階級の人は何と言って聞き返すのですか?
1950年代の言語学者アラン・ロスによれば、What? です。ロスは、上流(U)の人の言い方はとても短く、聞こえなかったときは What?、人に体が触れたときのおわびは Sorry!、しゃっくりやげっぷのあとは何も言わない、と書きました。
Pardon? と Sorry? と What? の違いは何ですか?
フォックスの「階級テスト」では、聞き返し方で階級が分かるとされます。中流の下〜真ん中の人は Pardon?、上流寄りの中流の人は Sorry?、上流の人と労働者階級の人はどちらも What? です。ただし、これはフォックス自身の観察にもとづく説明で、人数を数えた調査ではありません。
「U」と「non-U」とは何ですか?
言葉づかいを階級で分けた呼び名です。イギリスの言語学者アラン・ロスが1954年の論文で、上流階級(upper class)の言葉づかいを頭文字をとって U、上流ではない人の言葉づかいを non-U と呼びました。
Pardon のほかに、階級が分かる英語にはどんなものがありますか?
ロスは、ナプキンを serviette と言うのが non-U、table-napkin が U だとし、英語で最もよく知られた階級の目印かもしれないと書きました。toilet-paper と lavatory-paper、wealthy と rich も挙げています。
学校のテストでは Pardon? を使ってもいいですか?
はい、正解です。テストや面接では Pardon? や Could you say that again, please? を使えば大丈夫です。ケンブリッジ英語辞典も丁寧な言い方としています。イギリスでは Sorry? もよく使われる聞き返しです。
「I beg your pardon」はどういう意味ですか?
聞き返しにも使いますが、イギリス英語では気分を害したことを伝える言い方にもなります。オックスフォードの学習辞典によると、「今の言い方は聞き捨てならない」という意味で使うことがあります。同じ言葉なので、場面と言い方に注意が必要です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you miss what someone says in English class, you are usually taught to say "Pardon?" In 1950s Britain,…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
At school, many of us learned to say "Pardon?" when we didn't hear something. It sounds polite. But in Britain, some people see it differently.
In the 1950s, a British language professor named Alan Ross wrote about the words of the upper class. He said upper-class people did not say "Pardon?" They just said "What?"
Today, the Cambridge Dictionary still calls "Pardon?" polite. So it is fine for tests and for talking with new people.
75 words ・ CEFR A2
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学校で、聞こえなかったときは「Pardon?」と言うよう習った人は多いでしょう。丁寧に聞こえます。でもイギリスでは、ちがう見方をする人もいます。1950年代、アラン・ロスというイギリスの言語学の教授が、上流階級の言葉について書きました。
上流階級の人は「Pardon?」とは言わず、ただ「What?」と言う、と彼は書きました。
今もケンブリッジの辞書は「Pardon?」を丁寧な言い方としています。だから、テストでも初めて会う人と話すときでも問題ありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
イギリスの上流階級が Pardon? をどう見ていたか、という話なので A。
Q2. According to Alan Ross, what did upper-class people say?
They just said "What?" とあるので C。
Q3. In the passage, what does "polite" mean?
polite は「丁寧な、礼儀正しい」なので B。
If you miss what someone says in English class, you are usually taught to say "Pardon?" In 1950s Britain, though, that word could give you away.
The linguist Alan Ross, a professor at the University of Birmingham, sorted English words into "U" (upper class) and "non-U" (not upper class). He put "Pardon?" in the non-U group. According to Ross, an upper-class speaker who missed something would simply say "What?" He made lists of other pairs too.
"Serviette" was non-U, and the upper-class word was "table-napkin." Ross also wrote that, to a language scholar, these class markers were small details that seemed to change quickly. For learners, "Pardon?" is still a safe and polite choice.
114 words ・ CEFR B1
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英語の授業では、相手の言ったことを聞きのがしたら「Pardon?」と言うようにふつう教わる。
だが1950年代のイギリスでは、その言葉で正体がばれることがあった。バーミンガム大学の教授だった言語学者アラン・ロスは、英語の言葉を「U」(上流階級)と「non-U」(上流階級でない)に分けた。彼は「Pardon?」を non-U のグループに入れた。ロスによれば、上流階級の話し手は何かを聞きのがすと、ただ「What?」と言った。
彼はほかの組み合わせのリストも作った。「serviette」は non-U で、上流階級の言い方は「table-napkin」だった。ロスは、こうした階級の目印は言葉を研究する人から見れば小さなことで、すぐに変わるようだとも書いた。学習者にとって「Pardon?」は今も安全で丁寧な選択だ。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Ross mean by "non-U"?
"non-U" (not upper class) とあるので B。
Q2. Which word did upper-class people use, according to the passage?
"Serviette" was non-U, and the upper-class word was "table-napkin." とあるので D。
Q3. What does the writer suggest at the end?
For learners, "Pardon?" is still a safe and polite choice. とあるので A。
Japanese students are usually taught that "Pardon?" is the polite way to ask someone to repeat themselves. In Britain the word has carried extra baggage. In the 1950s, the Birmingham linguist Alan Ross divided English usage into "U," meaning upper class, and "non-U."
"Pardon" was firmly non-U. Ross listed three situations where non-U speakers used it. They said it when they had not heard, when they brushed past someone, and after a hiccup. An upper-class speaker would say "What?", "Sorry!", or nothing at all.
The idea did not fade. In 2004 the social anthropologist Kate Fox called "pardon" the best-known pet hate of the upper and upper-middle classes. She described a simple test. You speak too quietly and listen to the reply.
People in the lower and middle parts of the middle class say "Pardon?", upper-middles say "Sorry?", and the upper and working classes both say "What?" Ross himself admitted that such markers were trivial from a linguist's point of view and seemed to change fast. The Cambridge Dictionary still calls "Pardon?" polite, so learners have no reason to drop it.
181 words ・ CEFR B2
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日本の生徒はふつう、「Pardon?」は相手にくり返してもらうときの丁寧な言い方だと教わる。だがイギリスでは、この言葉は余計な意味を背負ってきた。1950年代、バーミンガムの言語学者アラン・ロスは、英語の使い方を、上流階級を意味する「U」と「non-U」に分けた。「pardon」ははっきりと non-U だった。ロスは non-U の話し手がそれを使う3つの場面を挙げた。
彼らは、聞こえなかったとき、人と体が触れてすれちがったとき、そしてしゃっくりのあとにそう言った。上流階級の話し手なら「What?」「Sorry!」と言うか、何も言わない。
この考えは消えなかった。2004年、社会人類学者のケイト・フォックスは、「pardon」を上流と上流寄りの中流の人たちが嫌う言葉のなかで最も有名なものと呼んだ。彼女は簡単なテストを紹介している。わざと小さすぎる声で話し、返事を聞くのだ。中流の下から真ん中の人は「Pardon?」、上流寄りの中流は「Sorry?」
と言い、上流と労働者階級はどちらも「What?」と言う。ロス自身も、こうした目印は言語学者から見れば取るに足らず、すぐに変わるようだと認めていた。ケンブリッジの辞書は今も「Pardon?」を丁寧な言い方としているので、学習者がそれをやめる理由はない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
Pardon がイギリスで階級の目印だった一方、ケンブリッジの辞書は丁寧としている、というのが全体の内容なので A。
Q2. According to Kate Fox, which two groups both say "What?"
the upper and working classes both say "What?" とあるので C。
Q3. Why does the writer mention Ross's admission near the end?
such markers were trivial from a linguist's point of view とあり、文法的な正しさの問題ではないことを示すためなので B。
重要単語
- pardonA2間投詞・名詞(聞き返して)何とおっしゃいましたか;許しPardon? I didn't catch your name.
名詞では「(罪の)赦免」の意味も。I beg your pardon. を強い口調で言うと「今の発言は聞き捨てならない」の意味になる。 - upper classB2名詞上流階級He was born into the upper class.
形容詞的に使うときは upper-class とハイフンを入れる(an upper-class family)。 - politeA2形容詞丁寧な、礼儀正しい"Pardon?" is a polite way to ask.
反対語は impolite / rude。It's polite to ... で「〜するのが礼儀だ」。 - repeatA2動詞くり返すCould you repeat the question, please?
聞き返しの定番表現。Could you say that again? も同じ意味で使える。 - napkinA2名詞(食卓用の)ナプキンPut the napkin on your lap.
イギリスで serviette と言うと「上流ではない」と見られることがある、とされてきた語。 - lavatoryB2名詞トイレ(主にイギリス英語。古風・改まった言い方)There's a lavatory upstairs.
ラテン語の lavare(洗う)から。くだけた言い方は loo。 - linguistB2名詞言語学者The linguist studied how people speak in different towns.
「多くの言語を話せる人」の意味もある。linguistics は「言語学」。
公式・一次情報をチェック
- pardon(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
- What(Cambridge Dictionary, Grammar)dictionary.cambridge.org
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聞き返しの Pardon? は丁寧、と習ったのに。1950年代にイギリスの言語学者ロスは Pardon を「上流ではない人」の言葉に分類した。上流の人は短く What?。2004年の本でも、上流の人が嫌う言葉の代表とされている。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Ross, A. S. C. (1956) U and Non-U: An Essay in Sociological Linguistics, in Ross, A. S. C., Mitford, N., Waugh, E. et al., Noblesse Oblige, London: Hamish Hamilton(1954年の論文 Linguistic class-indicators in present-day English, Neuphilologische Mitteilungen 55 の短縮版。Internet Archive)archive.org
- Fox, K. (2004) Watching the English: The Hidden Rules of English Behaviour, London: Hodder & Stoughton(2005年版, Internet Archive)archive.org
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「pardon」(exclamation)・「sorry」・「pardon」(noun: I beg your pardon)oxfordlearnersdictionaries.com
- Cambridge Dictionary「pardon」dictionary.cambridge.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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