辞書の“イギリス発音”で話す英国人は推定3%。エリザベス女王の母音も30年で少し変わった

読む前に予想してみよう!
イギリス人の多くは、英語の辞書にのっている「イギリス発音」と同じ発音で話している
辞書のイギリス発音のお手本は RP(容認発音)。大英図書館によると、RP で話すのは英国の人口の約3%と見積もられている。
- 対象
- 英国の話し言葉(RP と標準英語)・エリザベス女王のクリスマス放送
- 規模
- 人口に占める割合の見積もり+1950年代と80年代の放送の母音
- 研究の種類
- 研究者の見積もり・公的機関の解説・音声の分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
辞書の「イギリス発音」のお手本は RP と呼ばれる発音。でも大英図書館によると、RP で話すのは英国の人口の約3%と見積もられている。エリザベス女王の母音の一部さえ、1950年代から80年代に変わっていた。
ひとことで言うと辞書の「イギリス発音」で話すイギリス人は、100人に3人くらいと見積もられているんだって!
もくじ
教科書の音声で「イギリス英語」を聞いたことがあるでしょう。英語の辞書を開けば、発音記号に「英」「米」や UK・US の印がついています。
では、その「イギリス発音」で話しているイギリス人は、どれくらいいるのでしょうか。
大英図書館によると、最近の見積もりで英国の人口の約3%。 100人いたら3人ほどです。しかも、そのお手本の代表のように思われているエリザベス女王の発音さえ、年を重ねるうちに少しずつ変わっていました。
01辞書の「イギリス発音」の正体
学習者向けの辞書『Oxford Learner's Dictionaries』は、発音の説明ページで、イギリス英語の発音は 「主流の RP を話す、若い世代の発音」 だと書いています。アメリカ英語のほうは「一般米語(General American)」です。
RP(Received Pronunciation) は、日本語では「容認発音」と訳されます。received は「受け入れられた、認められた」という意味です。
大英図書館の解説(2019年、話し言葉部門の主任学芸員ジョニー・ロビンソン)によると、RP のなりたちはこうです。
- 呼び名を作ったのは、1869年の言語学者 A・J・エリス
- 19世紀に、イートンやハローのような寄宿制の私立学校と、オックスフォード・ケンブリッジ大学を出た人たちの話し方が、もとになった
- 音声学者ダニエル・ジョーンズは、はじめこれを「Public School Pronunciation(パブリックスクールの発音)」と呼んでいた
- 1920年代には、BBC が放送の標準に選んだ。だから「BBC English」とも呼ばれる
RP は 「どこの地方の発音か分からない」発音 です。言語学者ピーター・トラッドギルは、RP を 特定の地域ではなく、上流・中流上層の家庭の出身者と結びついた「社会のなまり」 だと説明しています。
02約97%の英国人は、ちがう発音で話している
つまり、きちんとした標準の英語を話す人でも、その多くは地元の発音のままです。RP は「正しい英語」のことではなく、たくさんあるイギリスの発音の1つ なのです。
03女王の母音も、30年で少し変わった
では、「クイーンズ・イングリッシュ」の本家、エリザベス2世はどうだったのでしょう。
大英図書館の解説は、女王は 「ほとんど女王だけの、独特の英語」 を話す、と書いています。
そして2000年、オーストラリアのマッコーリー大学の研究者らが、科学雑誌『ネイチャー』に「Does the Queen speak the Queen's English?(女王はクイーンズ・イングリッシュを話しているか)」という短い論文を出しました。
調べたのは、女王が毎年クリスマスに行っていた放送(クリスマス・メッセージ)です。1950年代の放送と1980年代の放送で、女王の母音(ア・イ・ウのような音)を比べた ところ、いくつかの母音が、1980年代の イングランド南部の標準的な発音 に近づいていました。それは、女王より 若く、社会の階層が低い人たちに多い発音 でした。
年をとった人でも、まわりの発音の変化に知らないうちに合わせることがある。女王も、その例だったのです。
04RP そのものも変わっている
RP も、ずっと同じではありません。大英図書館は、1909年生まれのレディ・シルヴィアという女性の録音を、上流階級や年配の人に多い「保守的な RP」の例として紹介しています。
- lost(なくした)を exhaust(排気)と、gone(行ってしまった)を dawn(夜明け)と韻を踏むように(終わりの音がそろうように)発音する。off や cloth も同じ。今の多くの人とはちがう、古い RP の音
- tune(曲)を「テューン」と発音する。若い世代は「チューン」に近く、dune(砂丘)は June と同じ音になることも
- man などの母音は、若い RP では「ア」に近くなった。これは 北イングランドの発音に近づいた めずらしい例
大英図書館は、初期の BBC 放送の声は、今ではほとんどの人にとってとても古めかしく聞こえる とも書いています。

05「クイーンズ・イングリッシュ」は発音の名前ではなかった
「クイーンズ・イングリッシュ」と聞くと、上品なイギリス発音を思い浮かべる人も多いでしょう。でも『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の Queen's English の意味は「イングランドの標準英語」。King's English も同じ意味で載っています。王が男性なら King、女性なら Queen というだけです。
大英図書館も、「クイーンズ・イングリッシュ」「BBC イングリッシュ」「オックスフォード・イングリッシュ」といった呼び名は どれも少し誤解を招く と書いています。今の BBC やオックスフォード大学では、話し方は1種類ではないからです。
King's English のほうは、シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』(1623年の全集版の本文)にも出てきます。医者の家の召使いクイックリー夫人が、主人が帰ってきて家に人がいるのを見つけたら God's patience and the King's English(神様のがまんと、王様の英語)がひどい目にあう、とぼやく場面です。この主人はフランス語まじりの英語を話す人物で、同じ場面で Vat is you sing?(What are you singing? のつもり)と言います。
06なぜ教科書や辞書は RP なのか
では、3%の人の発音をお手本にするのはおかしいのでしょうか。そうではありません。
大英図書館によると、RP は 辞書の発音記号のもとになっている 発音で、外国語として英語を教えるときにも、一般米語と並んで広く使われています。オックスフォードの辞書も、RP と一般米語を選んだ理由を、広く教えられていて、イギリスらしい・アメリカらしいとすぐ分かり、古くさくも地方色が強すぎもしない からだと説明しています。
お手本は1つ決めたほうが、学ぶ側には分かりやすい。ただ、それが「イギリス人みんなの発音」ではない、というだけです。
07どんでん返し:「3%」は数えた数字ではない
ここで注意が1つあります。「約3%」は、国勢調査のように全員の発音を調べて数えた数字ではありません。
大英図書館の書き方は「最近の見積もりでは(recent estimates suggest)」。どの調査の見積もりかは、この解説には書かれていません。それに、どこまでを RP とみなすかでも、数字は動きます。
確かに言えるのは、「RP で話すのは英国の中の少数派」ということまでです。
08まとめ
英語の辞書の「イギリス発音」は、RP と呼ばれる発音がお手本です。でも RP で話すのは英国の人口の約3%と見積もられていて、多くの人は、標準の英語を地元の発音で話しています。そして RP も、女王の発音も、時代とともに変わってきました。
「イギリス英語の発音」は1つではありません。 辞書の発音は、たくさんある中から選ばれた、学びやすいお手本なのです。
よくある質問
クイーンズ・イングリッシュとは何ですか?
イングランドの標準英語のことです。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の Queen's English の意味は「イングランドの標準英語」で、King's English も同じ意味。王が男性なら King、女性なら Queen というだけで、発音の名前ではありません。
RP(容認発音)とは何ですか?
辞書の「イギリス発音」のお手本になっている発音です。Received Pronunciation の略で、received は「認められた」の意味。19世紀の寄宿制の私立学校やオックスフォード・ケンブリッジ大学を出た人たちの話し方がもとで、1920年代に BBC が放送の標準に選びました。
RP で話すイギリス人はどれくらいいますか?
大英図書館によると、最近の見積もりで英国の人口の約3%です。ただし全員を調べて数えた数字ではなく、どの調査の見積もりかも解説には書かれていません。確かに言えるのは、RP で話すのは少数派ということです。
エリザベス女王はクイーンズ・イングリッシュを話していたのですか?
女王の母音の一部は、30年で少し変わっていました。2000年の論文で、クリスマス放送の母音を1950年代と1980年代で比べると、一部の母音が1980年代のイングランド南部の標準的な発音に近づいていました。大英図書館は、女王はほとんど女王だけの独特の英語を話す、と書いています。
辞書のイギリス発音はどの発音ですか?
RP です。オックスフォードの学習辞典は、イギリス英語の発音を「主流の RP を話す、若い世代の発音」と説明しています。アメリカ英語のほうは一般米語(General American)がお手本です。
なぜ3%の人の発音を教科書や辞書のお手本にするのですか?
広く教えられていて、イギリスらしいとすぐ分かり、古くさくも地方色が強すぎもしないからです(オックスフォードの辞書の説明)。大英図書館によると、RP は辞書の発音記号のもとになり、英語教育で一般米語と並んで広く使われています。
英語を学ぶならイギリス発音とアメリカ発音のどちらがいいですか?
どちらで覚えてもかまいません。辞書の「英」は RP、「米」は一般米語がお手本です。リスニング試験ではほかの発音が出ることもあるので、いろいろな発音を聞きなれておくと強くなります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLearner's dictionaries usually give two pronunciations for each word, one British and one American.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many English dictionaries show a "British" pronunciation for each word. This is based on an accent called RP. It started at expensive schools and old universities in the 1800s.
But how many people in the UK speak like this? The British Library says only about 3 percent. Most British people speak with the accent of their own area. In Scotland, you will almost never hear RP at all.
68 words ・ CEFR A2
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多くの英語の辞書には、それぞれの単語の「イギリス」の発音がのっています。これは RP という発音をもとにしています。RP は1800年代に、授業料の高い学校や古い大学で始まりました。
でも、英国でこのように話す人はどれくらいいるのでしょうか。大英図書館によると、約3%だけです。イギリス人の多くは、自分の地域の発音で話します。スコットランドでは、RP はほとんど聞かれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
辞書のイギリス発音(RP)で話す人は約3%だけ、という話なので B。
Q2. Where did RP start, according to the passage?
It started at expensive schools and old universities in the 1800s. とあるので B。
Q3. In the passage, what does "accent" mean?
the accent of their own area(自分の地域の発音)のように使われているので、「発音のしかた」の C。
Learner's dictionaries usually give two pronunciations for each word, one British and one American. Oxford's dictionaries say their British model is the speech of younger people who use "mainstream" RP, or Received Pronunciation. RP grew out of the way people talked at famous boarding schools and at Oxford and Cambridge in the 1800s, and the BBC later chose it for broadcasting.
But the British Library says recent estimates put RP speakers at only about 3 percent of the UK population. The linguist Peter Trudgill points out that many people who speak standard English grammar still keep their local accent. So the "British English" in your dictionary is just one of many accents in Britain, and most people there sound different.
120 words ・ CEFR B1
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学習者向けの辞書は、たいてい単語ごとに、イギリス式とアメリカ式の2つの発音をのせている。オックスフォードの辞書は、イギリス式のお手本は「主流の」RP(容認発音)を使う若い人の話し方だと説明している。RP は1800年代の有名な寄宿学校や、オックスフォード大学・ケンブリッジ大学での話し方から生まれ、のちに BBC が放送用に選んだ。
ところが大英図書館によると、最近の見積もりでは、RP の話し手は英国の人口の約3%にすぎない。言語学者のピーター・トラッドギルは、標準英語の文法で話す人の多くも、地元の発音は保っていると指摘している。つまり、辞書の「イギリス英語」は英国にたくさんある発音の1つにすぎず、そこに住むほとんどの人はちがう話し方をしている。
4択リーディングクイズ
Q1. According to Oxford's dictionaries, whose speech is their British model?
their British model is the speech of younger people who use "mainstream" RP とあるので B。
Q2. What does Trudgill point out?
many people who speak standard English grammar still keep their local accent とあるので C。
Q3. What is the writer's main point in the last sentence?
just one of many accents in Britain, and most people there sound different とあるので B。
Many learner's dictionaries base their British pronunciations on an accent called RP. It began in the 1800s as the speech of the ruling class, who went to boarding schools such as Eton and Harrow, and in the 1920s the BBC adopted it for broadcasting.
Today, according to the British Library, only about 3 percent of people in the UK speak it, and it is barely heard in Scotland or Northern Ireland. That figure is an estimate, not a count, and it depends on where one draws the line around RP. Either way, RP is clearly a minority accent. Even the Queen's own speech did not stay fixed.
In 2000, researchers in Australia compared the vowels in Elizabeth II's Christmas broadcasts from the 1950s with those from the 1980s. Some of her vowels had drifted toward the standard southern British accent of the 1980s, an accent more typical of younger speakers lower down the social scale. RP itself keeps changing too. Some older RP speakers still rhyme "lost" with "exhaust," a pronunciation that sounds old-fashioned today.
175 words ・ CEFR B2
和訳を見る
多くの学習者向け辞書は、イギリス式の発音を RP という発音にもとづいて示している。RP は1800年代、イートンやハローのような寄宿学校に通った支配階級の話し方として始まり、1920年代に BBC が放送用に採用した。
今日、大英図書館によると、RP で話すのは英国の人口の約3%にすぎず、スコットランドや北アイルランドではほとんど聞かれない。この数字は見積もりで、数えたものではなく、どこまでを RP とみなすかによって変わる。いずれにしても、RP が少数派の発音であることははっきりしている。女王自身の話し方でさえ、固定されてはいなかった。2000年、オーストラリアの研究者たちが、エリザベス2世のクリスマス放送の母音を、1950年代と1980年代で比べた。
女王の母音のいくつかは、1980年代のイングランド南部の標準的な発音へと寄っていた。より若く、社会の階層が低い話し手に多い発音だ。RP そのものも変わり続けている。年配の RP の話し手の中には、今も lost を exhaust と韻を踏ませて発音する人がいるが、その音は今では古めかしく聞こえる。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the writer say the 3 percent figure should be treated carefully?
That figure is an estimate, not a count, and it depends on where one draws the line around RP. とあるので B。
Q2. What did the 2000 study find?
Some of her vowels had drifted toward the standard southern British accent of the 1980s とあるので C。
Q3. What can be inferred from the example of "lost" and "exhaust"?
一部の年配の RP の話し手の音が今では古めかしく聞こえるとあり、RP そのものが変わってきたと推測できるので A。
重要単語
- accentB1名詞(地域や階層による)なまり、話し方She speaks English with a Scottish accent.
日本語の「アクセント(強く読む位置)」は英語では stress が近い。英語の accent は「話し方全体のくせ」。 - pronunciationB1名詞発音Check the pronunciation in your dictionary.
動詞は pronounce(プロナウンス)だが、名詞は pro-nun-ciation(プロナンシエイション)。つづりの o が消えるのに注意。 - dialectB2名詞方言(語彙や文法もふくむ)They speak a local dialect at home.
accent は発音だけ、dialect は単語や文法まで含む違い。RP は accent、標準英語は dialect の1つ。 - vowelB1名詞母音English has more vowel sounds than Japanese.
反対は consonant(子音)。女王の発音の研究で調べたのは、この vowel。 - estimateB2名詞見積もり、推定It's only a rough estimate.
名詞は「エスティメット」、動詞は「エスティメイト」と発音が変わる。a rough estimate「ざっとした見積もり」。 - standardB1形容詞標準のThis is the standard spelling.
Standard English は文法と語彙の標準のこと。発音の標準(RP)とは別の話。 - minorityB2名詞少数派Only a minority of the students walk to school.
反対は majority(多数派)。a minority accent は「少数の人だけが使う発音」。
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辞書の「イギリス発音」は RP という発音がお手本。でも大英図書館によると、RP で話すのは英国の人口の約3%と見積もられている。女王のクリスマス放送を調べた研究では、女王の母音の一部も1950年代から80年代に、イングランド南部の若い人に多い発音へ少し近づいていた。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Robinson, J. (2019) Received Pronunciation, British Accents and Dialects, British Library(2019年12月の保存版, Internet Archive)web.archive.org
- Trudgill, P. (2011) Standard English: what it isn't(Bex & Watts eds. 1999, Routledge 所収の章の改訂版, LAGB Education Committee 公開)lagb-education.org
- Harrington, J., Palethorpe, S. & Watson, C. I. (2000) Does the Queen speak the Queen's English?, Nature 408, 927–928doi.org
- Oxford Learner's Dictionaries「Pronunciation」(辞書の発音表記の説明)oxfordlearnersdictionaries.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「Queen's English」「King's English」ahdictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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