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英語のマジか!?ウソ

「ABCの歌」のメロディーは英米生まれじゃない。最初の出版は1761年のフランス

「ABCの歌」のメロディーは英米生まれじゃない。最初の出版は1761年のフランス

読む前に予想してみよう!

「ABCの歌」のメロディーは、イギリスかアメリカで生まれた曲だ

研究カード(どんな研究?)
対象
このメロディーが国をこえて広まった過程を論じた論文1本、モーツァルト作品目録、1800年代の童謡集、英英辞典
規模
論文1本(Kultura 156号, 2017年)+目録・史料3点
研究の種類
文献調査(論文が引く図書館目録・研究書の孫引きを含む)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ABCの歌ときらきら星は同じメロディー。論文によると、楽譜が最初に出版されたのは1761年のフランス。モーツァルトは作曲した人ではなく、このメロディーで変奏曲を書いた人。アルファベットの歌詞をつけた楽譜は、1835年にボストンで「ドイツの歌」という題で出た。

ひとことで言うとABCの歌のメロディーが最初に出版されたのは、1761年のフランスだった!

もくじ
  1. 3つの歌は、同じ1つのメロディー
  2. 始まりは1761年、フランスの曲集
  3. モーツァルトは作曲した人ではなく、変奏曲を書いた人
  4. 「きらきら星」には5番まである
  5. 1835年、ボストンで出たABCの楽譜は「ドイツの歌」
  6. 最後の「Z」は、国によって読み方が違う
  7. なぜ学校ではABCの歌で覚えるのか
  8. どんでん返し:作曲したのは、結局だれ?
  9. まとめ
  10. よくある質問

A, B, C, D, E, F, G…

英語の授業の最初のころに、みんなで歌った「ABCの歌」。メロディーは「きらきら星」と同じです。どちらも英語の歌なので、イギリスかアメリカで生まれた曲だと思いますよね。

ところが2017年の論文によると、このメロディーの楽譜が最初に出版されたのは 1761年のフランス。論文は、このメロディーが国をこえて広まった道すじを論じたものです。英語の歌詞は、あとからつきました。しかもアルファベットの歌詞をつけた楽譜は、1835年にアメリカのボストンで 「ドイツの歌」 という題で出ていたのです。

013つの歌は、同じ1つのメロディー

同じメロディーで歌われている、有名な歌を並べてみます。

  • ABCの歌(The ABC Song):アルファベットを順に歌う
  • きらきら星(Twinkle, Twinkle, Little Star):星に呼びかける英語の童謡
  • Ah! vous dirai-je, maman(ああ、ママに言うわ):フランスの童謡

ベオグラード芸術大学のマリヤ・ディノフ=ヴァシッチの論文(学術誌『Kultura』2017年)は、このメロディーが世界中でいろいろな歌詞をつけて歌われていると紹介しています。たとえばドイツ語の Morgen kommt der Weihnachtsmann(あしたはサンタがやってくる)、トルコ語の Yaşasın Okulumuz(ばんざい、私たちの学校)。中国語や日本語などの替え歌もあげています。

02始まりは1761年、フランスの曲集

論文は、ジョージ・リストという研究者の1978年の論文などを引いて、こう書いています。

よく知られているフランス語の歌詞は、「ああ、ママに言うわ、何が私を悩ませているのか」で始まります。悩みの中身は、パパは大人のように考えなさいと言うけれど、私はお菓子のほうが理屈より大事だと思う、というものです(論文の紹介による)。

03モーツァルトは作曲した人ではなく、変奏曲を書いた人

「きらきら星はモーツァルトの曲」と思っている人は少なくありません。論文も、多くの人がそう信じていると書いています。

実際は、モーツァルトはすでにあったこのメロディーをもとに、12の変奏曲 を書いたのです。変奏曲(variations)とは、1つのテーマ(主題)を、リズムや飾りの音を変えながら何通りにも弾いていく曲のことです。

国際モーツァルテウム財団が公開している作品目録「ケッヘル目録」では、この曲は KV 265。作曲したのは ウィーン、1781〜1782年。楽譜は1785年にウィーンの出版社トリチェッラから出ました。

論文によると、このメロディーで変奏曲を書いたのはモーツァルトだけではなく、ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハ、アダン、ドホナーニらもいます。サン=サーンスやリストも、自分の曲の中で引用しました。

「きらきら星」はモーツァルトの作曲ではありません。モーツァルトは、もとからあったフランスのメロディーで変奏曲を書いたのです。

モーツァルトの KV 265 は、1781〜82年にウィーンで書かれた変奏曲(モーツァルテウム財団のケッヘル目録)
モーツァルトの KV 265 は、1781〜82年にウィーンで書かれた変奏曲(モーツァルテウム財団のケッヘル目録)

04「きらきら星」には5番まである

ジェーン・テイラーの詩は、題が「The Star(星)」。今でも1800年代の童謡集で読めます。私たちがよく歌う1番のあとに、まだ4つの連(歌の番にあたるまとまり)が続きます。

  • Up above the world so high, / Like a diamond in the sky.(世界のはるか上で、空のダイヤモンドみたいに):1番
  • Then the traveller in the dark, / Thanks you for your tiny spark!(暗やみの旅人は、きみの小さな光にお礼を言う):3番

3番では、星の光は夜道を行く人の道しるべです。星がまたたかなければ、旅人はどちらへ行けばいいか分からない、と続きます。子どもの歌ですが、ちゃんと物語になっているのです。

051835年、ボストンで出たABCの楽譜は「ドイツの歌」

では、アルファベットの歌詞は、いつこのメロディーについたのでしょうか。論文は、シカゴのニューベリー図書館の目録をもとに、こう紹介しています。

  • 1835年、ボストンの楽譜出版社 チャールズ・ブラッドリー が、アルファベットの歌詞とこのメロディーを組み合わせた楽譜の著作権を登録した
  • 題は The A.B.C., a German air with variations for the flute with an easy accompaniment for the piano forte(ABC:フルートのための変奏つきドイツの歌、やさしいピアノ伴奏つき)
  • 編曲者として、1750年に亡くなったルイ・ルメールの名前が書かれていたが、それを支える根拠は今も示されていない

フランスで出版されたメロディーに、アメリカの出版社が「ドイツの歌」という題をつけて売り出したわけです。理由は論文にも書かれていません。

06最後の「Z」は、国によって読み方が違う

ABCの歌の最後は Z です。ケンブリッジ英語辞典によると、Z の読み方はイギリス英語で zed(ゼッド)、アメリカ英語で zee(ズィー)。アメリカ式なら、G(ジー)、P(ピー)、V(ヴィー)などと同じ「イー」の音で終わります。

07なぜ学校ではABCの歌で覚えるのか

26文字を順番どおりに覚えるのは、意外と大変です。そこで役に立つのがこの歌です。論文は、このメロディーが世界中で好まれる理由として、次の点をあげています。

  • 音の高さの幅がせまく、だれでも歌いやすい
  • 同じ形のくり返しが多く(A→B→A の3つの部分でできている)、覚えやすい
  • 単純なのに、プロの音楽家が変奏したくなるほどのおもしろさがある

英語の授業でまず歌うのは、理にかなっているのです。

08どんでん返し:作曲したのは、結局だれ?

ここまでくると「じゃあ、最初に作ったのはだれ?」が気になります。答えは 分かっていません。

1761年の曲集に名前のあるブアンが作ったのか、それより前からあった作者不明のメロディーを載せただけなのか。マルーは後者の立場です。ブラッドリーの楽譜にあったルメールの名前も、根拠は示されていません。さらに、ABCの歌詞を最初に考えたのがブラッドリーなのかどうかも、論文は書いていません。論文が紹介しているのは、図書館の目録に残る1835年の楽譜の記録です。

09まとめ

「ABCの歌」のメロディーは、英語の国で生まれた曲ではありませんでした。楽譜の出版は1761年のフランスが最初で、モーツァルトはそれを変奏した人。英語の「きらきら星」の詞は1806年、アルファベットの歌詞をつけた楽譜は1835年のボストンで出て、なぜか「ドイツの歌」の題でした。

フランスで出版されたメロディーが、ウィーンのモーツァルト、イギリスの詩人、アメリカの出版社の手を通って、日本の教室にたどりついたのです。次に歌うときは、5番まであるきらきら星も、ぜひ。

よくある質問

ABCの歌ときらきら星は同じ曲ですか?

はい、メロディーは同じで、歌詞が違うだけです。フランスの童謡「Ah! vous dirai-je, maman(ああ、ママに言うわ)」も同じメロディーです。2017年の論文によると、このメロディーの楽譜が最初に出版されたのは1761年のフランスです。

きらきら星はモーツァルトが作曲したのですか?

いいえ。モーツァルトは、もとからあったフランスのメロディーをもとに12の変奏曲を書いた人です。ケッヘル目録では KV 265 で、ウィーンで1781〜1782年に作曲されました。

ABCの歌のメロディーを最初に作ったのはだれですか?

分かっていません。1761年のフランスの曲集にはブアンという人物の名前がありますが、それより前からあった作者不明のメロディーを載せただけだという見方(マルー)もあります。

ABCの歌はいつからあるのですか?

論文が図書館の目録をもとに紹介している記録では、1835年です。ボストンの楽譜出版社チャールズ・ブラッドリーが、アルファベットの歌詞とこのメロディーを組み合わせた楽譜の著作権を登録しました。題は「ドイツの歌」でした。歌詞を最初に考えたのがだれかは、論文にも書かれていません。

きらきら星の英語の歌詞はだれが書きましたか?

イギリスのジェーン・テイラーです。1806年に「The Star(星)」という題の詩として発表しました。この詩は5つの連(番)まであり、3番では星の光が夜道を行く旅人の道しるべになります。

ABCの歌の最後の Z は何と読みますか?

ケンブリッジ英語辞典によると、イギリス英語では zed(ゼッド)、アメリカ英語では zee(ズィー)です。どちらも辞書に載っている正しい読み方なので、授業で習ったほうで答えれば大丈夫です。

なぜABCの歌は覚えやすいのですか?

論文は、このメロディーが好まれる理由として、音の高さの幅がせまくだれでも歌いやすいことと、A→B→Aの3つの部分でできていて同じ形のくり返しが多いことをあげています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe ABC song, "Twinkle, Twinkle, Little Star" and the French children's song "Ah! 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The ABC song, "Twinkle, Twinkle, Little Star" and the French children's song "Ah! vous dirai-je, maman" all use one tune. According to a 2017 study, this tune was first printed in a French music book in 1761, without any words. In 1806, a young English writer named Jane Taylor published a poem called "The Star," and it was later sung to the French tune.

Many people believe Mozart wrote the melody, but he took a tune that already existed and wrote twelve variations on it in Vienna in 1781 or 1782. In 1835, a Boston publisher printed the ABC words with the tune. The publisher called the piece "a German air," even though the tune had come from France.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ABCの歌、「きらきら星」、フランスの子どもの歌「ああ、ママに言うわ」は、どれも1つのメロディーを使っている。2017年の研究によると、このメロディーは1761年にフランスの曲集で、歌詞なしで初めて印刷された。1806年、ジェーン・テイラーという若いイギリスの書き手が「星」という詩を発表し、のちにそれがフランスのメロディーに合わせて歌われるようになった。

多くの人は、モーツァルトがこのメロディーを書いたと思っているが、彼はすでにあったメロディーを使い、1781年か1782年にウィーンで、それをもとにした12の変奏曲を書いた。1835年には、ボストンの出版社がABCの歌詞をこのメロディーといっしょに印刷した。出版社はその曲を「ドイツの歌」と呼んだが、メロディーはフランスから来たものだった。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. What did Mozart do with the tune?

Q3. What does the last sentence suggest about the 1835 title?

重要単語

  • tuneB1
    名詞メロディー、曲I know the tune, but I can't remember the words. melody とほぼ同じ。sing to the tune of ~「~の節で歌う」。out of tune は「音程がずれて」。
  • lyricsB1
    名詞歌詞The lyrics of "Twinkle, Twinkle" come from an 1806 poem. ふつう複数形で使う。「曲」は tune / music、「詞」は lyrics と分けて覚える。
  • variationB2
    名詞変奏;変化Mozart wrote twelve variations on the tune. write variations on ~「~の主題で変奏曲を書く」。vary(変わる)の名詞形。
  • nursery rhymeB2
    名詞童謡、わらべうた"Twinkle, Twinkle, Little Star" is a famous nursery rhyme. nursery は「子ども部屋、保育所」。rhyme は「韻、韻をふんだ詩」。
  • alphabetA2
    名詞アルファベット、字母There are 26 letters in the English alphabet. ギリシャ文字の最初の2文字 alpha と beta から。「アルファベット順に」は in alphabetical order。
  • publisherB1
    名詞出版社、出版する人A Boston publisher printed the ABC song in 1835. publish(出版する)+-er。publication は「出版(物)」。
  • composeB2
    動詞作曲するNobody knows who composed the tune. composer は「作曲家」。他人の曲を手直しするのは arrange(編曲する)。
英語の授業で歌った「ABCの歌」は「きらきら星」と同じメロディー。論文によると最初の出版は1761年のフランスの曲集で、モーツァルトは作曲者ではなく、変奏曲を書いただけ。アルファベットの歌詞をつけた楽譜は、1835年にボストンで「ドイツの歌」という題で出た。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Dinov-Vasić, M. (2017) Processes of transculturalization in the case of melody Twinkle, twinkle little star, Kultura 156: 210–224doi.org
  2. Internationale Stiftung Mozarteum, Köchel-Verzeichnis「KV 265 Twelve variations in C on "Ah, vous dirai-je, Maman" for clavier」kv.mozarteum.at
  3. Taylor, A. & Taylor, J. Rhymes for the Nursery(Philadelphia: George S. Appleton 版, 1849年, Internet Archive)archive.org
  4. Cambridge Dictionary「Z, z」「zed」dictionary.cambridge.org

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