ローマ字の「し」は si から shi へ。国のルールが約70年ぶりにヘボン式を基本に

読む前に予想してみよう!
2025年の改定で、新橋は「Shimbashi」と書くのが国の基本ルールになった
新ルールでは「ン」は例外なく n。基本は Shinbashi。ただし駅名などすでに定着した表記をすぐ変える必要はない。
- 対象
- 日本の国のローマ字ルール
- 規模
- 内閣告示・文化審議会答申、世論調査3,579人(全国16歳以上)
- 研究の種類
- 公的文書・全国世論調査
- 確かさ
- ★★★★☆
2025年12月、ローマ字の国のルールが1954年以来の改定。shi・chi・fu のヘボン式が基本に。ただし kanpai や Oono など独自ルールも。
ひとことで言うとローマ字の正式な書き方が、パスポートと同じ「shi」「fu」の書き方になったよ!
小学校3年生の国語で、ローマ字を習ったときのことを覚えていますか? 「し」は si、「ち」は ti、「ふ」は hu。
ところが駅の看板もパスポートも、書いてあるのは shi、chi、fu。「学校で習ったのと違う…」と思った人も多いはずです。
実はこのズレ、国のルールのほうが変わりました。2025年12月22日、ローマ字のつづり方を定めた内閣告示が、1954年以来、約70年ぶりに改定されたのです。
01約70年間、「正式」は訓令式だった
これまでの国のルールは、1954年(昭和29年)12月9日の内閣告示第1号。2つの表があり、ふだん国語を書くときは第1表(いわゆる訓令式:si, ti, tu, hu)を使い、外国との関係や昔からの慣例をすぐには変えにくい場合に限って、第2表(shi, chi, tsu, fu などのヘボン式を含む)でもよい、という決まりでした。
でも現実は逆。文化審議会の答申(2025年8月)も、訓令式は社会生活に定着していないと認め、パスポートや道路標識では第2表のつづりが広く使われてきたと書いています。
02でも「ヘボン式そのまま」ではない
じつは新ルールは、駅の看板でおなじみの書き方と少し違います。
- 「ン」は例外なく n:乾杯は kanpai、新聞は shinbun。東京メトロの駅名のような Shimbashi(新橋)の m は採らない
- 「ッ」は次の子音字を重ねるだけ:日直は nicchoku、抹茶は maccha(matcha ではない)
- のばす音は ō のように横棒(マクロン)をつけるのが一般的。代わりに、かな書きどおり母音字を並べてもよい:Tōhoku → Touhoku、大野 → Ōno → Oono
なぜ m を使わないのか? 文化庁のQ&Aによると、新宿の「ン」と新橋の「ン」は、英語などを母語とする人には違う音に聞こえることがある一方、日本語を母語とする人には聞き分けにくいから。ルールを複雑にしないため、n に統一したのです。

長い音の扱いは、英語学習者にも大事なポイントです。大野さんも小野さんも、横棒なしだと Ono。ゆうきさんも、ゆきさんも Yuki。答申はこれを「区別できない」と問題にしました。
英語の Tokyo は、新ルールでは Tōkyō か Toukyou。 ただし Tokyo、judo、matcha、tempura、Ohtawara(大田原)のように定着した表記は、すぐに変える必要はないとされています。
03どんでん返し:「学びやすい」のは訓令式?
じゃあ、みんなヘボン式のほうが好きなのか? 実はそう単純ではありません。
「使われている」のはヘボン式でも、「学びやすい」と感じる人は訓令式のほうが多い音もあったのです。訓令式は五十音の規則性がそのまま見えるつづり方で、新しい告示も「対照表」として残し、その意義を認めています。パソコンのローマ字入力も、何も変わりません。
04学校ではどう変わる?
小学校では3年生の国語でローマ字を学びます。文部科学省は2025年12月22日付で教科書検定基準を改め、教科書のローマ字は新しい告示の本表と添え書きによることにしました。以前の基準は、3年生で第1表と第2表の両方を学べるようにと定めていました。
学習指導要領の解説(国語編)も、新しい告示を踏まえること、パスポートの氏名のように外国の人とのやりとりでよく使う書き方を理解することが大切だと書き直されています。
05まとめ
「し」は si か shi か。答えは、2025年12月から国のよりどころは shi。ただし、新ルールは「ヘボン式に統一」ではなく、kanpai、nicchoku、Oono のような日本語話者向けの工夫が入った新しいつづり方です。
名前の長い音を Ono・Ōno・Oono のどれで書くかは、本人の意思が尊重されます。一度、自分の名前のローマ字を見直してみてはどうでしょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapan's rules for writing Japanese in the Roman alphabet were set in 1954.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, children learn to write Japanese in the Roman alphabet in the third grade. For many years, they mostly learned "si" for the sound shi and "hu" for the sound fu.
But passports and train stations use "shi" and "fu." In December 2025, the government changed its rules for the first time in about 70 years. Now "shi" and "fu" are the official spellings. Old spellings like "Tokyo" do not have to change right away.
76 words ・ CEFR A2
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日本では、子どもたちは3年生で日本語をローマ字で書くことを習います。長いあいだ、主に「し」の音は「si」、「ふ」の音は「hu」と習ってきました。
しかし、パスポートや駅では「shi」や「fu」が使われています。2025年12月、政府は約70年ぶりにルールを変えました。今では「shi」と「fu」が正式なつづりです。「Tokyo」のような昔からのつづりは、すぐに変える必要はありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
政府がローマ字のルールを変え、「shi」と「fu」が正式なつづりになった、という内容なので B。
Q2. When did the government change the rules?
In December 2025, the government changed its rules とあるので C。
Q3. In the passage, "official" is closest in meaning to
政府がルールを変えた結果「shi」「fu」が official spellings になった、という流れから「公式に正しいと決められた」の A。
Japan's rules for writing Japanese in the Roman alphabet were set in 1954. They told people to use spellings like "si," "ti" and "hu," and children studied them at school. But in daily life, a different system called Hepburn was much more common, with "shi," "chi" and "fu." You can see it on passports and road signs.
So in December 2025, the government replaced the old rules with a single new table based on Hepburn spellings. The new rules add some ideas of their own, too. The Japanese sound "n" is always written with the letter n, so under the new rules the station name Shimbashi is written Shinbashi. Long vowels can be shown with a line over the letter or by writing the vowel twice, as in "Oono."
129 words ・ CEFR B1
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日本語をローマ字で書くための日本のルールは1954年に定められた。そこでは「si」「ti」「hu」のようなつづりを使うよう示され、子どもたちは学校でそれを学んだ。しかし日常生活では、「shi」「chi」「fu」を使うヘボン式という別の方式のほうがずっと一般的だった。パスポートや道路標識で見ることができる。
そこで2025年12月、政府は古いルールを、ヘボン式のつづりにもとづく1つの新しい表に置き換えた。新しいルールには独自の考え方も加わっている。日本語の「ン」は必ず n で書くので、新しいルールでは駅名の Shimbashi は Shinbashi と書く。長い母音は、文字の上に線を引くか、母音を2回書いて「Oono」のように表せる。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
2025年12月にヘボン式にもとづく新しい表に置き換え、独自のルールも加えたという内容なので D。
Q2. According to the passage, where can people see Hepburn spellings?
You can see it on passports and road signs とあるので B。
Q3. Why would someone write a name as "Oono" instead of "Ono"?
Long vowels can be shown ... by writing the vowel twice, as in "Oono" とあり、母音を重ねるのは長い音を示すためなので C。
For seventy-one years, Japan's official rules for writing its language in Roman letters came in two tables. A 1954 cabinet notice put the Kunrei style, with "si," "ti" and "hu," in first place and allowed other spellings, including the Hepburn style with "shi," "chi" and "fu," only in special cases. In practice the order was reversed. Passports and road signs used Hepburn, while elementary schools mainly taught Kunrei.
In December 2025 the government replaced the notice with a single table based on Hepburn spellings. It is not a copy of Hepburn, though. The Japanese "n" sound is always written as n, so "kanpai" replaces "kampai," and a doubled consonant is shown by repeating the next letter, giving "maccha" for the green tea usually spelled "matcha."
For long vowels, writers may use a macron or repeat the vowel, so Ōno can appear as "Oono" and no longer looks like Ono. A 2023 national survey adds a twist. More respondents said "ti" and "hu" seemed easier to learn than "chi" and "fu," even though Hepburn is what they see every day. The new notice has no legal force, and for personal names it asks that people's own wishes be respected.
198 words ・ CEFR B2
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71年間、日本語をローマ字で書くための日本の公式ルールには表が2つあった。1954年の内閣告示は「si」「ti」「hu」の訓令式を第一に置き、「shi」「chi」「fu」のヘボン式などほかのつづりは特別な場合に限って認めていた。実際には、順位は逆だった。パスポートや道路標識はヘボン式を使い、小学校では主に訓令式が教えられていた。
2025年12月、政府はこの告示を、ヘボン式のつづりにもとづく1つの表に置き換えた。ただし、ヘボン式をそのまま写したものではない。日本語の「ン」は常に n で書くので「kampai」ではなく「kanpai」になり、つまる音は次の文字を重ねて表すので、ふつう「matcha」とつづられる緑茶は「maccha」になる。
長い母音は、長音符号を使うか母音を重ねて書けばよく、Ōno は「Oono」とも書けて、もう Ono と同じには見えない。2023年の全国調査には意外な結果もある。毎日目にするのはヘボン式なのに、「chi」「fu」より「ti」「hu」のほうが学びやすそうだと答えた人のほうが多かったのだ。新しい告示に法的な拘束力はなく、個人の名前については本人の意思を尊重するよう求めている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1954年の訓令式中心のルールが、ヘボン式にもとづく独自の表に置き換わったことを説明しているので A。
Q2. Under the new rules, how is the Japanese word for "cheers" written?
"kanpai" replaces "kampai" とあり、「ン」は常に n で書くので B。
Q3. What does the 2023 survey suggest?
毎日見るのはヘボン式なのに、ti・hu のほうが学びやすいと答えた人が多かったとあるので D。ほかの選択肢は本文に書かれていない。
重要単語
- spellingA2名詞つづり、つづり方The new rules change the spelling of a few sounds.
spell(つづる)+-ing。How do you spell your name?(お名前はどうつづりますか)は旅行・入試の定番表現 - officialB1形容詞公式の、正式なShi is now the official spelling.
office(役所・職務)の仲間。official language(公用語)、official website(公式サイト) - romanizeC1動詞ローマ字(ラテン文字)で書くHow do you romanize your family name?
名詞は romanization。Roman alphabet(ローマ字=ラテン文字)とセットで覚える - vowelB1名詞母音Japanese has five vowels, a, i, u, e and o.
反対は consonant(子音)。long vowel(長母音)、short vowel(短母音) - consonantB2名詞子音In "zasshi," the consonant s is written twice.
con-(ともに)+sonant(音を出す)。母音とともに鳴る音、というイメージ - macronC1名詞長音符号(母音字の上の横棒)Tōhoku has a macron over the first o.
ギリシャ語 makros(長い)から。英語の辞書の発音記号でも長い母音の印に使われることがある - replaceB1動詞取って代わる、置き換えるThe new notice replaced the 1954 rules.
replace A with B(AをBに置き換える)の形が入試頻出 - respondentC1名詞(調査の)回答者More than half of the respondents chose "hu."
respond(答える)+-ent(人)。調査・統計の英文によく出る
公式・一次情報をチェック
- ローマ字のつづり方(令和7年12月22日内閣告示第4号・内閣訓令第1号)(文化庁)bunka.go.jp
- 【旧】ローマ字のつづり方 解説(昭和29年内閣告示第1号)(文化庁)bunka.go.jp
- 松本洋平文部科学大臣記者会見録(令和7年12月16日)(文部科学省)mext.go.jp
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学校で「し=si」「ふ=hu」と習った人へ。ローマ字の国のルールが2025年12月、約70年ぶりに改定され、shi・fu のヘボン式が基本に。でも新橋は Shinbashi、長い音は Oono もOKという独自ルールつき。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- 文化審議会 (2025)「改定ローマ字のつづり方(答申)」令和7年8月20日bunka.go.jp
- 文化庁国語課 (2026)「ローマ字のつづり方」(令和7年内閣告示第4号)に関するQ&Abunka.go.jp
- 文化庁 (2023) 令和4年度「国語に関する世論調査」の結果の概要bunka.go.jp
- 文部科学省 教科用図書検定基準の一部を改正する告示の概要(ローマ字つづり)mext.go.jp
- 文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編mext.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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