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日英くらべホント

「ハイカラ」の語源は英語の high collar。明治の新聞が高い襟の洋行帰りをからかった

「ハイカラ」の語源は英語の high collar。明治の新聞が高い襟の洋行帰りをからかった

読む前に予想してみよう!

「ハイカラ」は、英語の high collar(高い襟)から生まれた言葉だ

研究カード(どんな研究?)
対象
辞書・事典の記述
規模
国語辞典2種・百科事典・人名事典・日本史辞典
研究の種類
辞書の語源説明と用例の照らし合わせ
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「ハイカラ」は英語 high collar(高い襟)から。明治の新聞が、高い襟の洋行帰りを「ハイカラー党」とからかったのが始まりと辞書は書く。

ひとことで言うと「ハイカラ」は、英語の「高いえり」がもとなんだって!

もくじ
  1. 「ハイカラ」の語源は「背の高い襟」
  2. 始まりは新聞のからかい
  3. からかいが「おしゃれ」に変わった
  4. 英語の collar は「仕事」も表す
  5. どんでん返し:どの新聞が最初か、辞書でも食い違う
  6. まとめ

「おばあちゃん、その帽子ハイカラだね」。

「ハイカラ」と聞くと、明治や大正の古い日本語のように感じます。でも、「ハイカラ」の語源は、じつは英語の high collar(ハイ・カラー=背の高い襟)です。

しかも始まりは、ほめ言葉ではありませんでした。小学館の『デジタル大辞泉』によると、高い襟をつけた洋行帰り(外国から帰ってきた人)の議員たちを、新聞が「ハイカラー党」とからかって書き立てたのがきっかけだというのです。

01「ハイカラ」の語源は「背の高い襟」

もとの意味は、シャツの首まわりに立つ、背の高い襟そのものです。ブリタニカ国際大百科事典は、このころ欧米でハイカラーが流行していたと書いています。

日本国語大辞典が挙げる例を年代で比べると、「西洋風を気どる」という意味の例(1900年)のほうが、「高い襟」そのものの例(1902年)より2年古いのです。辞書に残った記録の上では、「高い襟」そのものより、人をからかう呼び名としての例のほうが先に出てきます。

02始まりは新聞のからかい

では、だれが言い出したのでしょうか。辞書の説明をくらべてみます。

『デジタル大辞泉』は、明治31、32年(1898、99年)ごろの議会で、高い襟をつけていた洋行帰りの議員たちを、新聞『万朝報(よろずちょうほう)』が「ハイカラー党」とからかって書き立てたのが始まりだとしています。

『ブリタニカ国際大百科事典』はもう少しくわしく、1900年ごろ、外国から帰ったばかりの竹越与三郎・望月小太郎・松本君平の3人がハイカラーをつけていたのを、『万朝報』の記者・石川半山が「高襟党」と書いたことに由来する、と説明しています。

日本国語大辞典にある1900年6月21日の『毎日新聞』の例にも、望月小太郎の名前が出てきます。

「進歩党でも抜からず望月小太郎、蔵原惟廓などと云ふハイ、カラア党を迎へて」(『毎日新聞』1900年6月21日。精選版 日本国語大辞典の用例による)

「ハイ、カラア党」と呼ばれているのは望月小太郎や蔵原惟廓たちのほうで、進歩党もその人たちを迎え入れた、という書き方です。ブリタニカによると、吹けば飛ぶような軽薄さ、という連想から「灰殻(はいから)」ともじって書かれることもあったそうです。

高い襟をつけた洋行帰りを、新聞が「ハイカラー党」とからかったのが始まりとされる(デジタル大辞泉)
高い襟をつけた洋行帰りを、新聞が「ハイカラー党」とからかったのが始まりとされる(デジタル大辞泉)

03からかいが「おしゃれ」に変わった

からかいの言葉は、やがて広く使われるようになります。ブリタニカは、ハイカラの意味を「しゃれた」「きざな」「最新流行の」「気のきいた」とまとめています。ほめる意味と、ちょっと皮肉な意味が同居しているわけです。

日本国語大辞典によると、永井荷風の『あめりか物語』(1908年)にも使われています。女性の髪型の「ひさし髪」はハイカラ髪と呼ばれ、その髪型の人は「ハイカラさん」と呼ばれました(ブリタニカ)。

さらに、ハイカラは仲間の言葉も生みました。

  • ハイカる:「ハイカラ」を動詞にした語で、ハイカラを気どること。1910〜11年の本に例がある(日本国語大辞典)
  • 蛮カラ(ばんカラ):野蛮の「蛮」に、ハイカラの「カラ」をつけた語。身なりや言動が荒っぽいこと。わざと荒っぽくふるまうことも言う。「ハイカラ」に対して作られた言葉で、1908年の例がある(日本国語大辞典)

04英語の collar は「仕事」も表す

英語の collar(カラー)は、シャツや上着の襟のことです。この collar は、英語でも人の様子を表す言葉になっています。オックスフォードの学習辞典で確かめてみましょう。

  • white-collar:工場などではなく、オフィスで働く。a white-collar job(事務の仕事)
  • blue-collar:工業の現場で体を使って働く人に関する。blue-collar workers(現場で働く人たち)

英語では襟の色が「仕事の種類」を表し、日本語では襟の高さが「西洋かぶれ」を表しました。同じ襟でも、英語と日本語ではまったく違う意味に育ったのです。

05どんでん返し:どの新聞が最初か、辞書でも食い違う

ここまでの話には、すっきりしない点が残ります。

『デジタル大辞泉』と『ブリタニカ』は、どちらも『万朝報』の名前を挙げます。ところが日本国語大辞典が「西洋風」の意味の最も古い例として挙げているのは、1900年の『毎日新聞』です。

しかも、人名事典で石川半山を調べると、明治31年(1898年)に『毎日新聞』の主筆(記事を書く中心の記者)になり、『万朝報』の会社に移ったのは大正3年(1914年)と書かれています(日本人名大辞典+Plus)。この記述にしたがえば、1900年ごろの石川半山は『万朝報』ではなく『毎日新聞』の人だったことになります。

ちなみに、この『毎日新聞』は今の毎日新聞とは別の新聞です。明治3年(1870年)創刊の『横浜毎日新聞』が名前を変えたもので、1886年に『毎日新聞』、1906年に『東京毎日新聞』と改題し、1940年に廃刊しました(山川 日本史小辞典)。

つまり、「high collar から来た」「洋行帰りの高い襟をからかった」までは辞書の説明がそろっていますが、どの新聞のだれが最初に書いたかは、辞書によって違うのです。今回は明治の新聞の実物は確かめていません。

06まとめ

「ハイカラ」は、英語の high collar(高い襟)がもとになった言葉です。明治30年代のはじめ、高い襟をつけた洋行帰りを新聞がからかったのが始まりとされ、やがて「しゃれた」「西洋風の」という意味で広まりました。

ただし、最初に書いたのがどの新聞のだれなのかは、辞書によって説明が違います。語源の話は、辞書を1冊だけでなく何冊か見くらべると、意外な食い違いが見つかります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAsk a Japanese speaker what "haikara" means, and you will probably hear "stylish" or "Western-style." The… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Ask a Japanese speaker what "haikara" means, and you will probably hear "stylish" or "Western-style." The word feels old and very Japanese, but Japanese dictionaries trace it to the English phrase "high collar." According to one major dictionary, around 1898 or 1899 a newspaper made fun of some members of Japan's parliament who had come back from the West.

They wore the tall shirt collars that were fashionable in Europe and America at the time, and the paper called them the "high collar party." The joke stuck. By 1908, the novelist Nagai Kafū was using "haikara" in his stories. English uses collars to talk about people too. A "white-collar" job is office work, and "blue-collar" workers do physical work in industry.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本語の話者に「ハイカラ」の意味をたずねると、たぶん「おしゃれな」や「西洋風の」という答えが返ってくるだろう。この言葉は古くて日本語らしく感じられるが、日本の辞書はそのもとを英語の「high collar(高い襟)」という言い方にたどっている。ある大きな辞書によると、1898年か1899年ごろ、ある新聞が、西洋から帰ってきた議会の議員たちをからかった。

彼らは当時ヨーロッパやアメリカで流行していた背の高いシャツの襟をつけており、その新聞は彼らを「ハイカラー党」と呼んだ。この冗談は定着した。1908年には、小説家の永井荷風が自分の小説の中で「ハイカラ」を使っていた。英語でも、襟を使って人のことを話す。「ホワイトカラー」の仕事は事務の仕事で、「ブルーカラー」の労働者は工業の現場で体を使って働く。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the passage, why did a newspaper make fun of some politicians?

Q2. What did the newspaper call the politicians?

Q3. What does the writer suggest by mentioning "white-collar" and "blue-collar"?

重要単語

  • collarB1
    名詞(シャツや上着の)襟I turned up my collar against the cold wind. カタカナでは色の color と同じ「カラー」だが、英語ではつづりも母音の発音も違う。turn up one's collar「襟を立てる」。
  • white-collarB2
    形容詞事務職の、会社勤めのMy father has a white-collar job at a bank. white-collar crime は「会社員などが職場で起こす横領などの犯罪」。blue-collar とセットで覚える。
  • blue-collarB2
    形容詞工場などで体を使って働くThe town has many blue-collar workers. white-collar(事務職の)とセットで覚える。blue-collar workers の形でよく使う。
  • make fun ofA2
    熟語〜をからかうThe newspaper made fun of the new politicians. laugh at と近い。相手を傷つけるニュアンスがあるので使う場面に注意。
  • stylishB1
    形容詞おしゃれな、洗練されたShe wore a stylish coat to the party. style+-ish。「ハイカラ」を英語にするならこれが近い。
  • fashionableB1
    形容詞流行の、はやりのTall collars were fashionable in Europe at that time. fashion+-able。反対は old-fashioned(時代遅れの)。
  • coinC1
    動詞(新しい言葉を)作り出すNobody knows who coined the word. 名詞では「硬貨」。coin a word / coin a phrase で「新語を作る」。語源の話でよく使う。
「ハイカラ」は昔の日本語っぽいけど、もとは英語の high collar(高い襟)。明治の新聞が、高い襟の洋行帰りを「ハイカラー党」とからかったのが始まりだと辞書は書く。ただ、どの新聞が最初かは辞書によって違う。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. デジタル大辞泉「ハイカラ」・精選版 日本国語大辞典「ハイカラ」・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ハイカラ」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. デジタル版 日本人名大辞典+Plus「石川半山」・20世紀日本人名事典「石川半山」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. 山川 日本史小辞典 改訂新版「横浜毎日新聞」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  4. デジタル大辞泉「蛮カラ」・精選版 日本国語大辞典「蛮カラ」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  5. 精選版 日本国語大辞典「ハイカる」(コトバンク掲載)kotobank.jp

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