「前置詞で文を終えるな」を広めたとされる詩人、自分の文でもやっていた

読む前に予想してみよう!
英語では、前置詞を文の最後に置くのは文法の誤りである
American Heritage 英語辞典は、英語は文末の前置詞を許すだけでなく、それが必要な文もあるとする。例:We have much to be thankful for. ケンブリッジの文法解説も、くだけた文体ではふつうだとしている。
- 対象
- 17〜18世紀の英語の文章と現代の辞書・文法解説
- 規模
- 1672年・1762年の原典と現代の辞書
- 研究の種類
- もとの文章と、辞書の使い方の注意書きの照合
- 確かさ
- ★★★★☆
米国の辞書によると、「前置詞で文を終えてはいけない」という説を最初に広めたのは詩人ドライデン(1672年)。でも彼は、同じ文章で自分の書いたものにもあったと認めていた。英語では文末の前置詞はごくふつう。
ひとことで言うと「前置詞を文の最後に置くな」の元祖とされる詩人は、自分でも置いていた!
もくじ
Who are you talking to?(だれと話してるの?)
英語の授業で、こんな文を見たことがあるはずです。文の最後が to。前置詞で終わっています。
ところが英語には、「前置詞で文を終えてはいけない」という“ルール”が、何百年も語りつがれてきました。アメリカの『American Heritage 英語辞典』によると、この説を最初に広めたのは17世紀の詩人ジョン・ドライデン。しかも本人の書いた文章を開くと、ドライデンは前置詞で終わる文を「よくある欠点」と批判した同じ一文で、「つい最近、自分の書いたものにも見つけた」と書いていたのです。
01英語では、前置詞が最後に来るのはふつう
まず、いまの英語ではどうなのかを確かめましょう。
前置詞(preposition)は、in, on, at, with, for のように、名詞の前に置いて「どこで」「だれと」などを表す言葉です。ところが英語では、前置詞が名詞から離れて、文の最後に回ることがよくあります。
- Where are you from?(どこの出身?)
- What are you looking at?(何を見てるの?)
- This is the house I grew up in.(ここが私の育った家です)
ケンブリッジ大学出版局の文法解説は、これを「前置詞の取り残し(preposition stranding)」と呼び、くだけた文体ではよく使われると説明しています。改まった言い方とくだけた言い方を、こう並べています。
- She was someone to whom he could talk.(改まった言い方)
- She was someone who he could talk to.(くだけた言い方)
『American Heritage 英語辞典』(AHD)はさらに踏みこんで、英語は文末の前置詞を許すだけでなく、それが必要な文もあると書いています。例は We have much to be thankful for.(ありがたいことがたくさんある)。for を前に出そうとすると、文がぎこちなくなってしまいます。
02“ルール”の出どころは、1672年のドライデン
では、なぜ「前置詞で終えるな」と言われるようになったのでしょう。
AHD の使い方の解説によると、この説を最初に広めたのはジョン・ドライデン(1631〜1700)です。イギリスの桂冠詩人(王室が任命する詩人)で、劇や評論も書きました。AHD は、その根拠はおそらく、ラテン語に当てはめて考えた見かけだけの理屈だったとしています。
ドライデンがこれを書いたのは、1672年に出た劇『グラナダの征服』の第2部につけた評論「エピローグの弁護」です。ひと世代前の劇作家たちの英語には誤りが多い、と批判する文章でした。
ドライデン自身の言葉は、次のとおりです。
"The preposition in the end of the sentence; a common fault with him, and which I have but lately observed in my own writings."(ドライデン「エピローグの弁護」)
自分もやっていたと、正直に書いています。それでも「欠点」とよんだこの一言が、のちの“ルール”の出発点になりました。
ちなみに preposition という語は、AHD によるとラテン語の praepositio(前に置くこと)から来ています。名前は「前に置くもの」でも、英語では後ろに回ることがある、というわけです。

031700年代の文法家が“学校のルール”にした
AHD によると、1700年代の文法家たちがこの説を磨き上げ、やがて学校で教える文法の「守るべき教え」としてあがめられるようになりました。
ただ、その時代の文法書を開いてみると、話はそれほど単純ではありません。ロバート・ラウスが書いた『英文法小入門』(1762年)を見てみましょう。
- ラウスは、前置詞が関係代名詞(whom など)から離れて文の最後に回る例として、Horace is an author, whom I am much delighted with.(ホラティウスは、私がとても楽しんでいる作家だ)を挙げる
- そして、これは英語がとても好む言い方(an Idiom which our language is strongly inclined to)で、ふだんの会話で広く使われ、くだけた書き言葉にもよく合う、と書く
- ただし、前置詞を関係代名詞の前に出すほうが上品で分かりやすく、重々しい文体に合う、とした
ラウス自身の説明の文も、an Idiom which our language is strongly inclined to と、前置詞の to で区切られています(このあとはセミコロンで文が続きます)。ラウスは「禁止」ではなく、場面による使い分けを書いていたのです。
この考え方は、いまのケンブリッジの文法解説(くだけた文体ではふつう、改まった文体では前に出す)とほとんど同じです。
04チャーチルの「名言」は、たぶん作り話
この“ルール”をからかう一言として知られているのが、イギリスの首相チャーチルが言ったとされる次の文です。
This is the kind of pedantic nonsense up with which I will not put.(これは、私ががまんならない、学者ぶったたわごとだ)
ふつうに言えば ...nonsense which I will not put up with. です。put up with(〜をがまんする)の up with を無理やり前に出したので、ひどくぎこちない英語になっています。
ただし AHD は、この一言がチャーチルの言葉とされるのはおそらく誤りだとしています。ルールを守ろうとして文を書き直すと、こっけいな結果になることがある、という例として紹介しているのです。
05どんでん返し:ルールは消えたわけではない
「前置詞で終えてもいい」と言っても、改まった文体で前置詞を前に出す言い方がなくなったわけではありません。ケンブリッジの解説も to whom や In which room を「改まった言い方」として並べています。ラウスが言った「重々しい文体には前に出すほうが合う」という感覚は、いまも生きているのです。
AHD も、このルールからは近年「いくらか後退」が見られる、という書き方をしています。完全に捨てられたとは言っていません。
それに、「ドライデンが最初」というのは AHD の見方です。今回確かめたのは、ドライデンの1672年の文章と1762年のラウスの文法書、そして現代の辞書と文法解説です。ドライデンより前に同じことを言った人がいたかどうかまでは、確かめられていません。
06まとめ
「前置詞で文を終えてはいけない」は、AHD によると、1672年に詩人ドライデンが先輩作家の英語を批判した一言から広まりました。でもドライデン自身、同じ一文で「自分の書いたものにもあった」と認めています。90年後のラウスの文法書も、「英語がとても好む言い方」と書いていました。
Who are you talking to? は、英語としてまったく自然な文。改まった場面では前置詞を前に出すこともある、と知っておけば十分です。
よくある質問
英語で前置詞を文の最後に置くのはまちがいですか?
いいえ、まちがいではありません。『American Heritage 英語辞典』は、英語は文末の前置詞を許すだけでなく、それが必要な文もあるとしています。例は We have much to be thankful for.(ありがたいことがたくさんある)です。
Who are you talking to? は正しい英語ですか?
正しい英語です。ケンブリッジの文法解説は、前置詞が文の最後に回る形を「前置詞の取り残し(preposition stranding)」と呼び、くだけた文体ではよく使われると説明しています。Where are you from? も同じ形です。
「前置詞で文を終えるな」というルールは誰が言い出したのですか?
『American Heritage 英語辞典』によると、最初に広めたのは17世紀の詩人ジョン・ドライデンです。1672年の評論で、先輩ベン・ジョンソンの劇の一行を「文末の前置詞」と批判しました。根拠はおそらくラテン語に当てはめた理屈だった、と辞書は書いています。
ドライデン自身も前置詞で文を終えていたのですか?
はい。本人がそう書いています。ジョンソンの文末の前置詞を「彼によくある欠点」と批判した同じ一文で、「私もつい最近、自分の書いたものの中に見つけた」と認めていました。
改まった文章では前置詞をどこに置けばいいですか?
前置詞を関係代名詞の前に出す言い方があります。ケンブリッジの解説は She was someone to whom he could talk. を改まった言い方、She was someone who he could talk to. をくだけた言い方として並べています。意味は同じです。
18世紀の文法書は文末の前置詞を禁止していたのですか?
少なくとも1762年のラウスの文法書は、禁止ではなく使い分けを書いていました。文末に前置詞を回す形を「英語がとても好む言い方」とし、会話やくだけた書き言葉に合うとしたうえで、重々しい文体では前に出すほうが合うと説明しています。
「up with which I will not put」は誰の言葉ですか?
イギリスの首相チャーチルの言葉として知られていますが、『American Heritage 英語辞典』は、そうされるのはおそらく誤りだとしています。ルールを守ろうと put up with をばらばらにすると、こっけいな文になるという例です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany English learners are told that a sentence should not end with a preposition.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
"Who are you talking to?" This question ends with "to." Some people say you should never end a sentence with a word like "to," "for" or "with." Where did this idea come from? An English poet, John Dryden, wrote about it in 1672. He said an older writer often made this mistake.
But in the same sentence, he also said he found it in his own writing! Today, dictionaries say this kind of sentence is normal English.
77 words ・ CEFR A2
和訳を見る
「だれと話しているの?」この質問は to で終わっています。to や for や with のような語で文を終えてはいけない、と言う人がいます。この考えはどこから来たのでしょう?イギリスの詩人ジョン・ドライデンが、1672年にそれについて書きました。彼は、先輩の作家がよくこの間違いをすると言いました。
でも同じ文の中で、自分の書いたものにもそれを見つけたとも言っていたのです!今では、辞書はこういう文はふつうの英語だと言っています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
to や for で文を終えるなという考えの出どころの話なので B。
Q2. What did Dryden say about his own writing?
he also said he found it in his own writing とあるので C。
Q3. In the passage, what does "normal" mean?
normal は「ふつうの、いつもの」。usual が近いので B。
Many English learners are told that a sentence should not end with a preposition. But questions like "What are you looking at?" and "Where are you from?" are completely natural. The rule seems to go back to the poet John Dryden.
In 1672, he picked out a line by the older playwright Ben Jonson that ended with "from" and called it a common fault. In the very same sentence, he admitted he had recently found the same thing in his own writing. Grammar writers in the 1700s developed the idea, and it became a rule taught in schools.
Today, Cambridge's grammar guide says ending with a preposition is common in informal English. In formal writing, people may still say "to whom" or "in which."
124 words ・ CEFR B1
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多くの英語学習者は、文を前置詞で終えてはいけないと教わる。でも「何を見ているの?」や「どこの出身?」のような質問は、まったく自然だ。
このルールは詩人ジョン・ドライデンにさかのぼるようだ。1672年、彼は先輩の劇作家ベン・ジョンソンの、from で終わる一行を取り上げ、よくある欠点だと言った。まさに同じ文の中で、彼は最近、自分の書いたものにも同じことを見つけたと認めていた。1700年代の文法書の書き手たちがこの考えを発展させ、それは学校で教えるルールになった。
今日、ケンブリッジの文法解説は、前置詞で終わるのはくだけた英語ではよくあることだとしている。改まった文章では、今でも to whom や in which と言うことがある。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Dryden criticize in 1672?
he picked out a line by the older playwright Ben Jonson that ended with "from" とあるので A。
Q2. According to the passage, who developed the idea in the 1700s?
Grammar writers in the 1700s developed the idea とあるので B。
Q3. What does the writer suggest about the rule today?
common in informal English と In formal writing, people may still say "to whom" から、ふだんの英語では問題ないが改まった文章では避けることもあると分かる。C。
The American Heritage Dictionary credits the poet John Dryden with first spreading the idea that an English sentence must not end with a preposition, probably because of a false comparison with Latin. The source is a 1672 essay in which he listed errors in plays from the generation before him. One example was a line by Ben Jonson ending in "frighted from." Dryden called it a common fault with Jonson, then added that he had recently noticed it in his own writing.
Grammarians of the next century built the idea into a rule, yet at least one of them was less strict than people imagine. Robert Lowth's grammar of 1762 calls this pattern an idiom "which our language is strongly inclined to," ending his own clause with "to." He judged it fine for conversation and familiar writing, though he found the other order more graceful and better suited to a solemn style.
The dictionary adds that some sentences, such as "We have much to be thankful for," need the preposition at the end. The well-known line about "nonsense up with which I will not put" is often credited to Churchill, but the dictionary says this is probably false.
198 words ・ CEFR B2
和訳を見る
アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、英語の文は前置詞で終わってはならない、という考えを最初に広めたのは詩人ジョン・ドライデンだとしている。おそらくラテン語との誤った比較によるものだという。出どころは彼が1672年に出した評論で、その中で彼は自分より一世代前の劇の誤りを並べた。例の1つが、frighted from で終わるベン・ジョンソンの一行だった。
ドライデンはそれをジョンソンによくある欠点とよび、続けて、最近は自分の書いたものにもそれを見つけたと書き添えた。次の世紀の文法家たちがこの考えをルールに組みこんだが、少なくともその1人は、人々が思うほど厳しくはなかった。ロバート・ラウスの1762年の文法書は、この語順を「英語がとても好む言い方(which our language is strongly inclined to)」とよび、自分の文の区切りを to で終えている。彼は、それが会話やくだけた書き言葉には問題ないと判断したが、もう一方の語順のほうが上品で、重々しい文体にはよく合うと考えた。
同じ辞書は、「ありがたいことがたくさんある(We have much to be thankful for)」のように、前置詞を最後に置く必要がある文もあると付け加えている。「nonsense up with which I will not put」というよく知られた一言は、よくチャーチルの言葉とされるが、辞書はそれはおそらく誤りだとしている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ドライデンから始まり、ラウスも厳しくなかったという、前置詞のルールの始まりと実際の話なので B。
Q2. What did Lowth think about putting a preposition at the end?
He judged it fine for conversation and familiar writing とあるので B。
Q3. Why does the writer mention that Lowth ended his own clause with "to"?
ラウスが文法家でありながら自分でも to で区切っていたことは、18世紀の文法家でさえこの形を自然に使っていたことを示すので B。
重要単語
- prepositionB1名詞前置詞"In," "on" and "at" are common prepositions.
pre-(前に)+position(置くこと)。ラテン語 praepositio(前に置くこと)から。 - put up withB2句動詞〜をがまんするI can't put up with this noise anymore.
= tolerate。up with を前に出した up with which I will not put は、わざとぎこちなくした冗談。 - formalB1形容詞改まった、正式なUse formal English in a letter to a company.
反対語は informal。to whom / in which は formal な言い方。 - informalB1形容詞くだけた、ふだんの"Who are you talking to?" sounds natural in informal English.
in- は否定。会話や友だちへのメールは informal。 - grammarianC1名詞文法家、文法学者Grammarians in the 1700s wrote many rules for English.
grammar+-ian(人)。つづりは grammer ではなく grammar。 - be thankful forB1形容詞句〜をありがたく思うWe have a lot to be thankful for.
for を最後に置くしかない文の代表例。thankful to 人 for 物 の形も覚えておく。 - end upB1句動詞最後には〜になるWe got lost and ended up in a small village.
この up は前置詞ではなく副詞(小辞)。文の最後に来ても何の問題もない。
公式・一次情報をチェック
- Prepositions: position and stranding(Cambridge Dictionary, English Grammar Today)dictionary.cambridge.org
- put up with(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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英語の「前置詞で文を終えるな」を最初に広めたとされるのは17世紀の詩人ドライデン。1672年に先輩の文を「よくある欠点」と批判したが、同じ一文で「最近、自分の文にも見つけた」と書いていた。Who are you talking to? はふつうの英語。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins, 2022)"preposition"(Usage Note・語源)ahdictionary.com
- John Dryden (1672) Defence of the Epilogue; or an Essay on the Dramatic Poetry of the Last Age, in The Works of John Dryden, Vol. 4, ed. Walter Scott(Project Gutenberg #15349)gutenberg.org
- Robert Lowth (1762) A Short Introduction to English Grammar: with Critical Notes. London: J. Hughs(Project Gutenberg #72554)gutenberg.org
- Cambridge Dictionary, English Grammar Today "Prepositions: position and stranding"dictionary.cambridge.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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