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英語のマジか!?ホント

1人を指す they は“新しい英語”じゃなかった。14世紀の物語にもう登場

1人を指す they は“新しい英語”じゃなかった。14世紀の物語にもう登場

読む前に予想してみよう!

1人の人を they で受ける使い方は、21世紀に生まれた新しい英語だ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の文学作品・新聞・辞書の用例
規模
14世紀〜現代の用例
研究の種類
歴史言語学(文献調査)・辞書編纂
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

性別を決めずに1人を they で受ける英語は、OEDによると14世紀の物語(1375年より前の写本)に例がある。オースティンも使い、2019年には米辞書の「今年の単語」に選ばれた。

ひとことで言うとthey は600年以上前から「その人」1人のことも指してきた!

もくじ
  1. 最古の例は14世紀の中世の物語
  2. オースティンもシェイクスピアも使っていた
  3. なのに、なぜ「間違い」と言われたの?
  4. 2019年、辞書の「今年の単語」に
  5. どんでん返し:「昔からの they」と「新しい they」は別もの
  6. まとめ

英語の授業で「they=彼ら」と習いましたよね。では、この英文はどうでしょう。

Someone left their umbrella.(だれかが傘を忘れていったよ)

someone は1人なのに、受けているのは their(they の所有格)。「文法ミスでは?」「最近広まった新しい言い方でしょ?」と思った人、実はこれ、何百年も前から使われてきた、年季の入った英語なのです。

01最古の例は14世紀の中世の物語

OEDのサイトでこの歴史を紹介したイリノイ大学の英語学者デニス・バロン(Baron)は、ことばは書き残されるより前に話されているものなので、実際にはもっと前から使われていた可能性が高いと書いています。

02オースティンもシェイクスピアも使っていた

メリアム・ウェブスターの辞書で they を引くと、語法の解説に名だたる作家の用例が並んでいます。たとえばジェーン・オースティンは、everybody を they で受けて、こう書きました。

「I would have everybody marry if they can do it properly.」(ちゃんとできるなら、だれだって結婚すればいいと思うの)

同じ解説には、シェイクスピアが every one(みんな)を themselves で受けた一行、『若草物語』の作者オルコットが anyone を theirs で受けた文、『赤毛のアン』の作者モンゴメリが anybody を them で受けた文も紹介されています。

03なのに、なぜ「間違い」と言われたの?

バロンによると、18世紀に入って文法家たちが「複数形の代名詞が単数の語を受けるのはおかしい」と注意し始めました。メリアム・ウェブスターによれば、代わりに his or her のような言い方が勧められましたが、これは広く嫌われたといいます。

ここでバロンが持ち出すのが you です。you も、もとは複数を指す代名詞でした。何百年も「ていねいな単数」として使われたあと、17世紀には1人の相手を指す thou を押しのけます。1660年にはクエーカー教の創始者ジョージ・フォックスが、単数の you を使う人をばか者呼ばわりする本まで書いたそうです。

でも今、1人の相手に You are kind. と言っても、だれも文句を言いません。1人なのに are を使う you が許されて、1人なのに are を使う they がダメ、というのは筋が通らない——バロンも、メリアム・ウェブスターも持ち出す切り返しです。

1794年には、アメリカの新聞『New Bedford Medley』でこんな応酬もありました。3人の女性が書いた文章の単数の they に、ある投稿者がケチをつけたところ、女性たちは「性別を隠したかったから、わざと使った」と反論。気に入らないなら新しい代名詞を発明してみたら、と言い返したのです。

1794年、単数の they をとがめられた書き手たちは「わざとです」と言い返した
1794年、単数の they をとがめられた書き手たちは「わざとです」と言い返した

042019年、辞書の「今年の単語」に

2019年、メリアム・ウェブスターは they を「今年の単語(Word of the Year)」に選びました。辞書サイトでの they の検索数は、前年より313%も増えていました。同社は、英語には everyone や someone を受ける性別に中立な単数の代名詞がないため、they が600年以上その役目を果たしてきたと説明しています。

背景にあるのは、ノンバイナリー(男性・女性のどちらか一方に当てはまらない)の人を指す they の広まりです。メリアム・ウェブスターはこの意味を2019年9月に辞書に加えました。

同じ2019年には、APA(アメリカ心理学会)の公式ブログが、性別がわからない人や they を使う人については「he or she」より単数の they を使うよう勧めました。APA の論文執筆ルール第7版も単数の they を正式に認め、he や she を単独で「一般の人」の代わりに使わないよう求めています。

05どんでん返し:「昔からの they」と「新しい they」は別もの

ただし、「単数の they は昔からある」と言うときには注意が必要です。

長い歴史があるのは、everyone や someone のように性別がわからない・問題にしない相手を受ける they。一方、男性・女性のどちらにも当てはまらない特定の1人(ノンバイナリーの人)を they と呼ぶ使い方は、メリアム・ウェブスター自身が比較的新しいと説明しています。OEDも、この意味の用例は2009年からとしています。

受け入れられ方にも差がありました。バロンによると、2010年の『New Oxford American Dictionary』第3版は、everyone などを受ける they を「一般に受け入れられている」とする一方、特定の名詞を受ける they は「今では一般的だが、そこまで広くは受け入れられていない」としていました。2018年の記事の時点では、権威ある『シカゴ・マニュアル・オブ・スタイル』も改まった文章での単数の they を認めていなかったそうです。

つまり、「単数の they は新語」はウソ、でも「今の使い方が全部昔からある」も言いすぎ。ことばの歴史は、たいてい半分ずつホントです。

06まとめ

they は「彼ら」だけでなく、600年以上前から「(性別のわからない)その人」も指してきました。オースティンが使い、辞書が載せ、論文のルールも認めた、れっきとした英語です。

英作文で everyone や someone を受けるときは、their / they / them を思い出してください。he or she を何度も書くより、ずっと自然な英語になります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn school, most of us learn that "they" means more than one person. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In school, most of us learn that "they" means more than one person. But English speakers have long used it for one person whose gender is unknown, as in "Everyone has their own opinion." The Oxford English Dictionary traces this use back to a story from the 1300s, and famous writers such as Jane Austen and William Shakespeare used it.

In the 18th century, some grammarians began to call it an error. The same thing had already happened to "you," which was once a plural word and is now used for one person without any complaint. Today the American Psychological Association accepts singular "they" in academic writing. In 2019, Merriam-Webster made "they" its Word of the Year after lookups for the word rose by 313 percent.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

学校では、たいていの人が「they」は2人以上の人を意味すると習う。しかし英語の話し手は、「Everyone has their own opinion.(みんなそれぞれ意見がある)」のように、性別のわからない1人に対しても昔からこの語を使ってきた。オックスフォード英語辞典はこの用法を14世紀の物語までさかのぼっており、ジェーン・オースティンやウィリアム・シェイクスピアのような有名な作家も使っていた。

18世紀になると、一部の文法学者がそれを誤りだと言い始めた。同じことは「you」にもすでに起きていた。you はかつて複数の語だったが、今ではだれも文句を言わずに1人に対して使われている。今日、アメリカ心理学会は学術的な文章で単数の「they」を認めている。2019年、メリアム・ウェブスターは、この語の検索数が313%増えたことを受けて「they」を「今年の単語」にした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. By how much did lookups for "they" rise before it became the Word of the Year?

Q3. Why does the writer mention the word "you"?

重要単語

  • pronounB1
    名詞代名詞"They" is one of the most common pronouns in English. pro-(〜の代わりに)+noun(名詞)。personal pronoun は「人称代名詞」。
  • singularB1
    形容詞単数の"Someone" is singular, but we often use "their" after it. 反対は plural(複数の)。singular they は「単数の they」。
  • pluralB1
    形容詞複数の"You" was once a plural pronoun. 名詞の複数形は the plural (form)。単数の they でも動詞は複数形(they are)を使う。
  • antecedentC1
    名詞先行詞(代名詞が指す語)In "Everyone has their own opinion," the antecedent of "their" is "everyone." ante-(前に)+cede(行く)。関係代名詞の「先行詞」も同じ語。
  • gender-neutralB2
    形容詞性別に中立なEnglish has no perfect gender-neutral singular pronoun. neutral は「中立の」。gender-neutral language は「性別に偏らない言葉づかい」。
  • nonbinaryB2
    形容詞男性・女性のどちらか一方に当てはまらないMy friend is nonbinary and uses "they." binary(二つから成る)に non- がついた形。2019年9月、メリアム・ウェブスターが they の新しい意味として辞書に加えた。
  • grammarianC1
    名詞文法学者Some grammarians said singular "they" was a mistake. grammar(文法)+-ian(人)。つづりは grammer ではなく grammar。

動画でもっと知る

4コマでわかる

1人を指す they は“新しい英語”じゃなかった。14世紀の物語にもう登場の4コマ漫画
Someone left their umbrella. の their、1人なのに複数形? この「単数の they」、OEDの最古例は14世紀の物語。オースティンも使い、2019年には米辞書の「今年の単語」に。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Baron (2018) A brief history of singular 'they', Oxford English Dictionary(Oxford University Press)oed.com
  2. Merriam-Webster (2019) Word of the Year 2019: Theymerriam-webster.com
  3. Merriam-Webster「they」(Usage Guide)merriam-webster.com
  4. APA Style「Singular "They"」(American Psychological Association)apastyle.apa.org
  5. Balhorn (2004) The Rise of Epicene They, Journal of English Linguistics 32(2)doi.org

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