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英語のマジか!?ビミョー

「you was」はテストで×。でも18世紀には哲学者ヒュームも書き、ウェブスターが擁護した

「you was」はテストで×。でも18世紀には哲学者ヒュームも書き、ウェブスターが擁護した

読む前に予想してみよう!

「you was」は、昔から教育のない人だけが使ってきた言い方だ

研究カード(どんな研究?)
対象
1742〜1811年の文法書・随筆・書簡・小説・裁判記録と、18世紀の手紙のデータの研究
規模
文法書4点・随筆と書簡集2点・小説と伝記4点・裁判記録1点+手紙のデータを使った論文1本
研究の種類
歴史資料の確認+歴史社会言語学の研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

1人の相手でも you were が正解。でも1700年代には you was が広く使われ、1762年の文法書は「一流の書き手までこの誤りをしている」と嘆いた。辞書で有名なウェブスターは1789年に擁護した。

ひとことで言うと「you was」は今は×。でも250年前は、一流の書き手も使っていた!

もくじ
  1. 過去形が「1人用」と「複数用」に分かれる動詞は be だけ
  2. 1762年、「一流の書き手まで、この誤りを」
  3. 1789年、ウェブスター「会話ではたいてい you was」
  4. 手紙と小説では、だれが you was と言った?
  5. なぜ学校では were なのか
  6. どんでん返し:ラウスの証拠の一つは「執事の手紙」だった
  7. テストや英作文ではどうする?
  8. まとめ
  9. よくある質問

You was late again.(また遅刻したね)

英作文でこう書くと、赤ペンで was が were に直されます。「主語が you なら、相手が1人でも were」と習ったはずです。

ところが1762年、イギリスの文法書がこう嘆いています。you was は「とんでもない誤り」なのに、一流の書き手までやっている。例に挙がったのは、貴族や有名な詩人の手紙などでした。そして27年後、辞書で有名なアメリカのノア・ウェブスターは、反対に you was の味方をします。

01過去形が「1人用」と「複数用」に分かれる動詞は be だけ

まず、今の英語のルールを確認します。

  • I / he / she / it → was
  • we / they → were
  • you → were(相手が1人でも何人でも)

アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)の were の項目によると、英語の不規則動詞(go → went のように、過去形が -ed で終わらない動詞)の多くは、昔は過去形に単数用と複数用の別の形がありました。今も分かれているのは be だけで、1人の相手を指す you にも複数用の were を使います。

ほかの動詞なら you had、you went と過去形は1つなので、迷うのは be だけです。迷いの出発点は、you がもともと「あなたたち」を指す複数の代名詞だったことにあります。

021762年、「一流の書き手まで、この誤りを」

ロバート・ラウスが1762年にロンドンで出した『英文法入門(A Short Introduction to English Grammar)』は、48ページの注でまず、1人の相手に You を使うなら動詞も複数に合わせて You have(You hast ではない)にする、と書きます。そのうえで you was を取り上げました。

ラウスより1年早い1761年には、文法家ジョゼフ・プリーストリーも文法書の注で、「名の知れた書き手の多くが、1人の相手に you was と言う」と書いていました。例は哲学者ヒュームの随筆です。恋に夢中な男に恋人のことを語らせると、if ever you was acquainted with a goddess or an angel(女神か天使と知り合いになったことがあるか)とまじめに聞いてくるだろう、という一節で、1742年に出たヒュームの『道徳・政治論集』第2巻にそのとおり書かれています。それでもプリーストリーは、you は複数なのだから動詞も複数にすべきだ、と注で問いかけています。

031789年、ウェブスター「会話ではたいてい you was」

文法家が「誤り」と言うなか、反対の声を上げたのが、のちにアメリカで大きな辞書を作るノア・ウェブスターです。1789年の本『英語論(Dissertations on the English Language)』で、彼はこう書きました。

  • 本の中では you were がふつうだが、会話ではたいてい you was と言う
  • 文法家が何と言おうと、この言い方は古くから広く使われている。言葉を作るのは、実際の使い方だ
  • これは庶民だけの言い方ではない。文法家の規則にしばられない学のある人たちの間でも一般的だ
  • だから be の過去形は I was, thou wast(または you was), he was と活用させるべきだ

ウェブスターは1822年の『英文法(A Philosophical and Practical Grammar)』第2版でも、「1人を指すようになった言葉は単数として扱うべきだ」として例を並べました。ボズウェルの『ジョンソン伝』で、ジョンソンの友人ベネット・ラングトンが言った Why was you glad?(どうしてうれしかったのです?)。1806年にボストンで開かれた裁判で、パーカー判事が証人にたずねた Where was you standing during the transaction?(その出来事のあいだ、どこに立っていましたか)。そのうえで、これはまちがいではなく、国じゅうで使われている英語だと書きました。

辞書で有名なウェブスターは、「you was」の味方でした。 これが、明日先生に言いたくなる一言です。

ウェブスターは1822年の文法書で、1806年の裁判で判事が証人にたずねた Where was you standing…? を「国じゅうで使われている英語」の例に挙げた
ウェブスターは1822年の文法書で、1806年の裁判で判事が証人にたずねた Where was you standing…? を「国じゅうで使われている英語」の例に挙げた

04手紙と小説では、だれが you was と言った?

1700年代の後半から、you was を使う人物が変わっていきます。

  • 1777年:『ジョンソン伝』に収められた、サー・アレグザンダー・ディックからジョンソン博士への礼状に which you was so good as to send me(ご親切にお送りくださった)とある
  • 1778年:フランシス・バーニーの小説『エヴリーナ』では、you was が会話に9回出てくる。言うのは、ヒロインの祖母、荒っぽい船長、ロンドンの親戚とその知り合い、気取った紳士、そして貴族のマートン卿。手紙の形で書かれたヒロイン自身の文には出てこない
  • 1811年:ジェイン・オースティンの『分別と多感』では、you was が4回。4回ともスティール姉妹のせりふ。地の文(せりふ以外の文)は、妹のルーシーを「ignorant and illiterate(無知で無教養)」と描いている

18世紀の手紙を大量に集めたデータを調べた研究(ライティネン、2009年)も、同じ流れを示しています。you was は 1700年代の半ばより前に最も多く使われ、その後しだいに、文法書の注意書きとともに「標準ではない言い方」の目印になっていきました。

05なぜ学校では were なのか

今の英語では、1人の相手にも you were が標準です(AHD)。テストの採点や英作文は、この書き言葉の標準に合わせて行われます。

ラウスの「you は複数だから were」と、ウェブスターの「1人を指すなら単数の was」。どちらにも筋は通っています。上の研究が示すのは、理屈の勝ち負けより、「どちらがちゃんとした英語に聞こえるか」という人々の評価が変わっていった流れです。

06どんでん返し:ラウスの証拠の一つは「執事の手紙」だった

ラウスが1つ目に挙げたアディソンの文には、続きがあります。『スペクテイター』517号を開くと、この文は物語の登場人物サー・ロジャーの死を知らせる、屋敷の執事の手紙の一文です。語り手は、執事が素朴な心のまま書いてきた手紙を、何も変えずに紹介する、と前置きしています。

アディソンは、執事らしい言葉づかいとして you was を書いたのかもしれません。それでも、ボリングブルック卿とポープの例は本人たちの手紙です。上流の人も you was と書いていたことは変わりません。

そして you was は、今も消えていません。AHD によると、アメリカのくだけた話し言葉や方言では、be の過去形をすべての主語で was にそろえる話し方が広く見られます。アメリカ南部の海沿いの一部には、He was a good man, weren't he?(いい人だったよね?)のように、肯定は was、否定は weren't にする地域もあります。

07テストや英作文ではどうする?

08まとめ

1人の相手にも you were。今の学校英語のこのルールは正しいものです。ただ1700年代には you was が広く使われ、文法家が嘆き、ウェブスターが擁護しました。

その後、you was は小説の中で「教育の足りない人物」のせりふになり、標準の座を were に明け渡しました。テストでは were。古い本で you was に出会ったら、250年前の“ふつうの英語”として読めば十分です。

よくある質問

you was は間違いですか?

今の標準の英語では間違いです。相手が1人でも you were が標準です(AHD)。テストの採点や英作文も、この書き言葉の標準に合わせて行われます。You were right. や Were you at home yesterday? のように書きましょう。

なぜ1人の相手でも you were なのですか?

AHD によると、過去形が単数用と複数用に分かれる動詞は今は be だけで、1人の相手を指す you にも複数用の were を使うのが標準だからです。迷いの出発点は、you がもともと「あなたたち」を指す複数の代名詞だったことにあります。

昔は you was と言っていたのですか?

1700年代には広く使われていました。1762年のラウスの文法書は、一流の書き手までこの誤りをしていると嘆き、ボリングブルック卿や詩人ポープの手紙の例を挙げています。18世紀の手紙の研究では、you was は1700年代の半ばより前に最も多く使われました。

ウェブスターは you was について何と言いましたか?

1789年の『英語論』で、会話ではたいてい you was と言い、庶民だけでなく学のある人たちの間でも一般的だ、と書いて擁護しました。be の過去形は I was, thou wast(または you was), he was と活用させるべきだ、とも書いています。

哲学者ヒュームも you was と書いていたのですか?

はい。1742年に出たヒュームの『道徳・政治論集』第2巻に、if ever you was acquainted with a goddess or an angel という一節があります。1761年に文法家プリーストリーが、名の知れた書き手の例として取り上げました。

昔の小説に出てくる you was は誤植ですか?

いいえ、当時はふつうに使われた形です。ただ、オースティンの『分別と多感』(1811年)では4回ともスティール姉妹のせりふで、地の文は妹のルーシーを「無知で無教養」と描いています。19世紀の小説では、話し手の育ちや性格を表すこともあります。

今でも you was と言う人はいますか?

います。AHD によると、アメリカのくだけた話し言葉や方言では、be の過去形をすべての主語で was にそろえる話し方が広く見られます。映画や歌で聞こえても、まねして書く必要はありません。

If I was rich… の was も同じ間違いですか?

別の話です。If I was rich…(もし私がお金持ちなら)の was は仮定法の問題で、ここで扱っている、1人の相手に使う you was とは分けて考えましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe verb "be" is the only English verb that still has two past forms. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The verb "be" is the only English verb that still has two past forms. It uses "was" for one person and "were" for more than one. "You" takes "were," even when it means one person. In the 1700s, though, many people used "you was" for one person. A grammar book from 1762 called it a terrible mistake, but it also admitted that top writers made it, and it listed letters by Lord Bolingbroke and the poet Alexander Pope.

In 1789, Noah Webster, later famous for his dictionary, took the other side. He wrote that "you was" was normal in conversation, even among well-educated people. But in Jane Austen's novel Sense and Sensibility (1811), only the Steele sisters say it, and the younger one is described as "ignorant and illiterate."

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

動詞「be」は、今も過去形を2つ持っている唯一の英語の動詞です。1人には「was」、2人以上には「were」です。「you」は、1人だけを指すときでも「were」をとります。ところが1700年代には、多くの人が1人の相手に「you was」を使っていました。1762年のある文法書は、それをひどいまちがいと呼びましたが、一流の書き手もこのまちがいをしていると認め、ボリングブルック卿や詩人アレグザンダー・ポープの手紙を例に挙げました。

1789年、のちに辞書で有名になるノア・ウェブスターは、反対の立場をとりました。「you was」は、学のある人たちの間でも会話ではふつうだと書いたのです。でも、ジェイン・オースティンの小説『分別と多感』(1811年)では、これを言うのはスティール姉妹だけで、妹は「無知で無教養」と描かれています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Whose letters did the 1762 grammar book list as examples?

Q3. What can we infer about "you was" by 1811?

重要単語

  • singularB1
    形容詞単数の"Child" is singular and "children" is plural. single(1つの)と同じ語源。文法では the singular form(単数形)のように使う
  • pluralB1
    形容詞複数のMost plural nouns end in -s. 名詞としても使う:What's the plural of "mouse"?(mouse の複数形は?)
  • grammarianC1
    名詞文法家、文法学者Some grammarians did not like the new word. grammar(文法)+-ian(〜する人)。musician, librarian と同じ作り
  • defendB1
    動詞擁護する、守るShe defended her friend when others laughed at him. 名詞は defense(米)/ defence(英)。defend A against B で「A を B から守る」
  • nonstandardC1
    形容詞標準的でない、標準語ではない"Ain't" is often called nonstandard English. non-(〜でない)+standard(標準の)。辞書では nonstandard というラベルで示されることが多い
  • dialectB2
    名詞方言My grandfather speaks a strong local dialect. accent は「発音のなまり」、dialect は語彙や文法まで含む「方言」
  • witnessB2
    名詞目撃者、(裁判の)証人The witness said she saw a red car. 動詞では「目撃する」。witness an accident(事故を目撃する)
テストで×の「you was」。1762年の文法書は「一流の書き手までこの誤りを」と嘆いた。辞書で有名なウェブスターは1789年に「会話ではふつう you was。学のある人も使う」と擁護した。

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出典・参考文献(10件)タップで表示
  1. Lowth, R. (1762) A Short Introduction to English Grammar: with Critical Notes, London: J. Hughs, p.48 注(Project Gutenberg)gutenberg.org
  2. Priestley, J. (1761) The Rudiments of English Grammar; Adapted to the Use of Schools(Internet Archive)archive.org
  3. Priestley, J. (1768) The Rudiments of English Grammar, with Notes and Observations, p.192(Internet Archive)archive.org
  4. Hume, D. (1742) Essays, Moral and Political, Vol. II(The Sceptic, Internet Archive)archive.org
  5. Webster, N. (1789) Dissertations on the English Language(Project Gutenberg)gutenberg.org
  6. Webster, N. (1822) A Philosophical and Practical Grammar of the English Language, 2nd ed., p.28(Internet Archive)archive.org
  7. Trial of Thomas O. Selfridge, before the Hon. Isaac Parker (1807), Boston, p.58(Internet Archive)archive.org
  8. Laitinen, M. (2009) Singular YOU WAS/WERE variation and English normative grammars in the eighteenth century, Pragmatics & Beyond New Series 183, pp.199–217doi.org
  9. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins, 2022)「were」(Our Living Language)ahdictionary.com
  10. Burney, F. (1778) Evelina(Project Gutenberg)gutenberg.org

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