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「love は進行形にしない」のに i'm lovin' it。『ジェーン・エア』にも同じ形

「love は進行形にしない」のに i'm lovin' it。『ジェーン・エア』にも同じ形

読む前に予想してみよう!

love や like は、どんな場合も進行形にできない

研究カード(どんな研究?)
対象
イギリスの日常会話の録音データと、19世紀の小説
規模
会話は1990年代初め約420万語と2010年代約480万語、動詞100語
研究の種類
同じ作り方の会話データを20年おいて比べる研究+辞書・小説の用例
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

love は進行形(be+〜ing)にしないと習うが、英オックスフォードの学習辞典は「くだけた言い方」で I'm loving ... を載せ、19世紀の小説にも例がある。ただし英国の会話では、love のうち進行形で使われるのは今も1%未満。

ひとことで言うと「I'm loving it」はまちがいじゃない! でも I love it がふつう

もくじ
  1. 2003年9月2日、ミュンヘンから始まった
  2. 「状態動詞」ってなに?
  3. 辞書は「くだけた言い方ならOK」
  4. 19世紀の小説にも was liking や was loving
  5. どんでん返し:会話の love のうち、進行形は今も1%未満
  6. なぜ学校では「進行形にしない」と教えるのか
  7. テストや英作文ではどうする?
  8. まとめ
  9. よくある質問

i'm lovin' it

マクドナルドのおなじみの言葉です。ところが中学・高校では、こう習いました。「like や love のように 気持ちや状態を表す動詞は、進行形(be+〜ing)にしない」。テストで I'm loving it. と書いたら、赤ペンで直されたかもしれません。

では、マクドナルドは文法をまちがえたのでしょうか。調べると、イギリスのオックスフォードの学習辞典が I'm loving ... を「くだけた言い方」として載せている ことが分かります。しかも同じ形は、200年前の小説にも出てきます。

012003年9月2日、ミュンヘンから始まった

マクドナルドの公式発表によると、i'm lovin' it のキャンペーンが始まったのは 2003年9月2日、ドイツのミュンヘン です。

lovin' は、loving の最後の g を省き、省いたしるしにアポストロフィ(')をつけた書き方です。リリースは i'm lovin' it を「ふだんの生活の喜びを表す、シンプルな言い方」と説明しています。

02「状態動詞」ってなに?

状態動詞(stative verb) は、動作ではなく「状態」を表す動詞です。know(知っている)、like(好きだ)、love(大好きだ)、believe(信じている)などがそうです。

  • I know her.(彼女を知っている)→ I'm knowing her. とは言わない
  • I'm eating lunch.(昼ごはんを食べている)→ eat は動作なので進行形にできる

「知っている」は、動きではなく、ずっと続く状態です。一方、進行形は「今まさに動いている、一時的なこと」を表します。だから状態動詞は進行形と相性が悪い。これが学校のルールの理屈です。

03辞書は「くだけた言い方ならOK」

ところが、オックスフォード上級学習英英辞典の love(動詞)を開くと、こう書いてあります。

  • 人を愛する意味の love は「進行形では使わない」
  • 物ごとを「とても気に入っている・楽しんでいる」意味の love は「ふつうは進行形では使わない」。そのうえで、(くだけた言い方)be loving something として I'm loving my new leather jacket.(新しい革ジャン、すごく気に入ってる)を載せている
  • 文法の解説欄では、want・like・love・hate・think などは、くだけた言い方で 「ある時点の気持ち」や「しばらく続く気持ち」 を表すときに進行形で使うことがあり、そうした使い方は増えてきている、と説明。例は I'm loving the weather today!(今日の天気、最高!)

つまり、I'm loving it. は「今これ、すごくいい!」という、その場の気持ち を表す言い方です。「人を愛している」の I love you. とは使い分けられています。

1814年の小説『マンスフィールド・パーク』には was liking(好きになっていた)が出てくる
1814年の小説『マンスフィールド・パーク』には was liking(好きになっていた)が出てくる

0419世紀の小説にも was liking や was loving

状態動詞の進行形は、マクドナルドが発明したものではありません。東フィンランド大学とハンブルク大学の言語学者の研究(2020年、あとで詳しく紹介します)は、それまでの研究をまとめて、進行形が状態動詞に広がりはじめたのは17世紀、19世紀に大きく増えた、と書いています。

実際に、19世紀のイギリスの小説を Project Gutenberg の本文で調べると、次の文が見つかります。

  • ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』(1814年)第19章:Sir Thomas was liking him already.(サー・トマスは、もう彼のことを気に入りはじめていた)
  • オースティン『説得』(1818年)第7章:the next moment she was hating herself(次の瞬間には、自分がいやになっていた)
  • シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』(1847年)第37章:she was loving another!(彼女はほかの男を愛していた!)
  • チャールズ・ディケンズ『荒涼館』(1853年)第13章:Your cousin Richard has been loving you(いとこのリチャードは、ずっとあなたを好きだったのよ)

『ジェーン・エア』の例は、人を愛する love の進行形です。今の学習辞典が「使わない」と書いている使い方でも、小説の会話にはこうして出てきます。

「好き」の進行形は、200年前のオースティンの小説にもあります。

05どんでん返し:会話の love のうち、進行形は今も1%未満

では今、英語を話す人は I'm loving ... をどんどん使っているのでしょうか。会話の数字を見ると、そうとは言えません。

研究者たちは、love の進行形の9回を、love がふつうに進行形で使われるようになった印とは見ていません。数少ない個別の例にとどまる という見方です。会話の love の99%以上は、今も進行形ではない形です。

一方で、別の言語学者マルティネス・バスケスは、大量の英文で love の進行形を調べた2018年の論文で、状態動詞の進行形は 使われることが増えている と書いています。I'm loving your blog!(あなたのブログ、すごくいい!)のような、くだけた言い方が広がっているという見方です。どれだけ増えたかは、どんな英文を調べるかで見え方が変わります。

もう一つ。はっきり増えた wonder は、I was just wondering if you could email me.(メールをいただけないかなと思いまして)のように、ていねいに頼む言い方 でよく使われます。状態動詞の進行形が広がっているのは、「すごくいい!」より、こうした場面のほうなのかもしれません。

06なぜ学校では「進行形にしない」と教えるのか

学校のルールには、ちゃんと理由があります。

  • 会話でも love の99%以上は進行形ではない。まず I love ... を覚えるのが、いちばん外れが少ない
  • know や believe は、今でもほとんど進行形にならない。I'm knowing の誤りを防ぐには、はっきりしたルールが役に立つ
  • 進行形にすると「今だけ」「その場の気持ち」という意味が加わる。この細かい使い分けは、基本を覚えてからのほうが分かりやすい

07テストや英作文ではどうする?

08まとめ

「love は進行形にしない」は、ほとんどの場合に当てはまる、よくできたルール です。会話の love の99%以上は今も I love ... です。それでも、オックスフォードの学習辞典は「くだけた言い方」として I'm loving ... を載せ、オースティンもブロンテも同じ形を書いていました。

マクドナルドの i'm lovin' it は、文法ミスではなく、「今これ、最高!」というその場の気持ちを表す言い方 です。テストでは I love it.、友だちとの会話では I'm loving it.。場面で選べば大丈夫です。

よくある質問

I'm loving it は文法的に間違いですか?

文法ミスとは言えません。オックスフォード上級学習英英辞典は、くだけた言い方として be loving something を載せ、I'm loving my new leather jacket. を例に挙げています。ただしイギリスの会話では、love の進行形は今も全体の1%未満です。

I'm loving it はどういう意味ですか?

「今これ、すごくいい!」という、その場の気持ちを表す言い方です。マクドナルドのニュースリリースは、i'm lovin' it を「ふだんの生活の喜びを表す、シンプルな言い方」と説明しています。「人を愛している」の I love you. とは使い分けられています。

love はなぜ進行形にしないと習うのですか?

love は、動作ではなく状態を表す「状態動詞」だからです。進行形は「今まさに動いている、一時的なこと」を表すので、ずっと続く状態を表す動詞とは相性が悪い、というのが学校のルールの理屈です。know や believe も同じ仲間です。

i'm lovin' it はいつから使われていますか?

マクドナルドの公式発表によると、キャンペーンが始まったのは2003年9月2日、ドイツのミュンヘンです。アメリカでの開始は9月29日でした。lovin' は、loving の最後の g を省き、省いたしるしにアポストロフィ(')をつけた書き方です。

昔の英語にも love の進行形はありますか?

あります。シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』(1847年)に she was loving another! が、ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』(1814年)に Sir Thomas was liking him already. が出てきます。

love の進行形は増えていますか?

見方が分かれています。イギリスの日常会話を比べた2020年の研究では、love の進行形は1990年代初めの0回から2010年代の9回になりましたが、love 全体の0.92%でした。一方、2018年の別の論文は、状態動詞の進行形は使われることが増えていると書いています。

I'm loving you と言ってもいいですか?

ふつうは言いません。オックスフォード上級学習英英辞典は、人を愛する意味の love は「進行形では使わない」と書いています。人への気持ちは I love you. と言うのが基本です。

テストや英作文では I'm loving it と書いてもいいですか?

テストや英作文では、I love ... や I like ... と現在形で書くのが安全です。会話で「今これ、最高!」と言いたいときは I'm loving this song! も使えますが、くだけた言い方です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn September 2003, McDonald's launched "i'm lovin' it" in Munich, and the slogan soon spread to more than… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In September 2003, McDonald's launched "i'm lovin' it" in Munich, and the slogan soon spread to more than 100 countries. To many English learners, it looks like a mistake. They are taught that verbs for feelings and states, such as "know," "like" and "love," don't take the progressive form.

An Oxford learner's dictionary gives a softer rule. It says that "love" in the sense of enjoying something is not usually used in the progressive, but it lists "I'm loving my new leather jacket" as informal English.

The form is not new, either. In Jane Austen's 1814 novel Mansfield Park, one character "was liking" a young man already. Even so, the simple form wins by far. In recent British conversation, less than 1 percent of uses of "love" were progressive.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2003年9月、マクドナルドはミュンヘンで「i'm lovin' it」を始め、この宣伝文句はまもなく100か国以上に広がった。多くの英語学習者には、これはまちがいに見える。「know」「like」「love」のような気持ちや状態を表す動詞は進行形にならない、と教わるからだ。

オックスフォードの学習辞典は、もっとゆるいルールを示している。何かを楽しむという意味の「love」はふつう進行形では使わないとしたうえで、「I'm loving my new leather jacket」をくだけた英語として載せているのだ。

この形は新しいものでもない。ジェイン・オースティンの1814年の小説『マンスフィールド・パーク』では、ある登場人物が、もう若い男性を「気に入りはじめていた(was liking)」。それでも、ふつうの形のほうが圧倒的に多い。最近のイギリスの会話では、「love」が進行形で使われたのは1%未満だった。

4択リーディングクイズ

Q1. Why might the slogan look wrong to English learners?

Q2. How does the Oxford learner's dictionary describe "I'm loving my new leather jacket"?

Q3. What does the writer mean by "the simple form wins by far"?

重要単語

  • progressiveB2
    名詞・形容詞進行形(の)"I'm eating" is in the progressive. be+〜ing の形。「今まさに」「一時的に」の感じを足す。形容詞では「進歩的な」の意味もある。
  • stative verbC1
    名詞状態動詞"Know" is a stative verb, so we don't usually say "I'm knowing." state(状態)の形容詞形 stative。know, believe, like, love, own など。反対は dynamic verb(動作動詞)。
  • informalB1
    形容詞くだけた、ふだん着の"I'm loving it" is fine in informal speech. in- + formal(改まった)。辞書の (informal) の表示は「友だちとの会話向き」のサイン。
  • temporaryB1
    形容詞一時的なThe progressive often shows that something is temporary. 反対は permanent(永久の)。a temporary job「臨時の仕事」。
  • sloganB2
    名詞宣伝文句、標語The company used the same slogan in more than 100 countries. もとはスコットランドの氏族の「ときの声」(ゲール語で「軍勢」+「叫び」)。広告の短い文句は tagline とも言う。
  • wonderB1
    動詞〜かなと思うI was wondering if you could help me. I was wondering if ... は「〜していただけないかと思いまして」というていねいな頼み方。過去進行形にすると、より遠回しになる。
  • puzzledB1
    形容詞とまどった、首をかしげたThe students looked puzzled when they saw the slogan. puzzle(なぞ、パズル)から。be puzzled by ...「〜にとまどう」。
「love は進行形にしない」と習ったのに、マクドナルドは i'm lovin' it。英オックスフォードの学習辞典も、I'm loving ... をくだけた言い方として載せる。1847年の『ジェーン・エア』にも she was loving another とある。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. McDonald's (2003) McDonald's Unveils 'i'm lovin' it' Worldwide Brand Campaign(McDonald's 公式ニュースリリース, 2003年9月2日)mcdonalds.mediaroom.com
  2. Oxford Advanced Learner's Dictionary「love(verb)」(Grammar Point: Talking about states of feeling)oxfordlearnersdictionaries.com
  3. Rautionaho, P. & Fuchs, R. (2020) Recent change in stative progressives: a collostructional investigation of British English in 1994 and 2014, English Language and Linguistics 25(1): 35–60doi.org
  4. Martínez-Vázquez, M. (2018) I'm loving it! A corpus-based study of the progress of love, Journal of English Linguistics 46(2): 140–166doi.org
  5. Austen, J. (1814) Mansfield Park, 第19章(Project Gutenberg)gutenberg.org

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