「between you and I」はテストで×。でもシェイクスピアもディケンズも書いた

読む前に予想してみよう!
「between you and I」は、最近の英語話者が言い出した新しい言いまちがいだ
1600年に初めて印刷されたシェイクスピアの『ヴェニスの商人』の手紙の中に出てくる。1660年のピープスの日記にも between him and I がある。ただし今の辞書は、改まった場面では避けるよう勧めている。
- 対象
- 1600〜1890年代の戯曲・日記・小説・文法書と現代の辞書
- 規模
- 戯曲・日記・小説・書簡集の本文6点+辞書・文法解説4点
- 研究の種類
- 歴史資料の確認+辞書の記述
- 確かさ
- ★★★★☆
「between you and I(ここだけの話)」は、between のあとは me にするので、テストでは×。でも『ヴェニスの商人』の手紙やディケンズの小説に出てくるし、1660年のピープスの日記には between him and I がある。テストと改まった文では me。
ひとことで言うと「between you and I」は×。でもシェイクスピアも使っていた!
もくじ
between you and I(ここだけの話だけど)
英作文でこう書くと、赤ペンで I に×がつきます。「between は前置詞。前置詞のあとは me」。正解は between you and me です。
ところが、この「×の英語」は、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』に出てきます。しかも登場人物が書いた手紙の中に。1660年の日記にも、ディケンズの小説にも、同じ形が見つかります。
01『ヴェニスの商人』の手紙に書いてある
まず、学校で習うルールです。
- 前置詞:in, for, with, between のように、名詞や代名詞の前に置く語
- 代名詞の形:「私」は、主語なら I、動詞や前置詞のあとなら me(これを 目的格 と呼びます)
だから with me、for me と同じように、between you and me になる。筋の通ったルールです。
では、『ヴェニスの商人』を開いてみます。1600年に初めて印刷された劇です(フォルジャー・シェイクスピア図書館の解説)。3幕2場、若者バサーニオのもとに、親友アントーニオから手紙が届きます。アントーニオはバサーニオのためにお金を借りていましたが、商売の船がすべて難破し、返せなくなりました。その手紙の一文です。
all debts are cleared between you and I if I might but see you at my death
(死ぬ前にひと目会えるなら、君とぼくの貸し借りはすべて帳消しだ)
1600年の初版でも、つづりが古いだけで同じ形です(all debts are cleerd betweene you and I)。舞台で読み上げられる手紙に、between you and I がそのまま書かれているのです。

02ほかの劇にも、日記にも、小説にも出てくる
「between you and I」は、シェイクスピアも書いています。 明日、英語の先生に言いたくなる一言です。
ただし、トウェインには続きがあります。書簡集の編者ペインは、23歳ごろのトウェインについて「英語が上達した。もう between you and I とは書かない」と書き添えました。編者の目には、直ってよかった言い方だったのです。
03なぜ学校では「me」と教えるのか
今の辞書も、学校の先生と同じ立場です。
- Oxford の学習辞典(between):between you and I と言う人もいるが、これは 誤り。between のあとには目的格の me(または ourselves)が必要
- アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)の I の解説:between you and I は、文法を知らないしるしと広く受け取られている。改まった場面では避けるのがいちばん
テストの採点は、こうした「書き言葉の標準」に合わせて行われます。先生が厳しいのではなく、読み手の多くが「まちがい」と感じる形だからです。
04なぜ I が出てくるの? 説は2つ
me のはずの場所に、なぜ I が入るのか。辞書や文法書の説明は2つです。
① 直しすぎ説(正しくしようとして、me でよいところまで I にしてしまう)Oxford の学習辞典の I の解説は、くだけた話し言葉で Jen and me went…(ジェンと私は行った)のように主語なのに me と言う誤りがあり、それがもとで between you and I と言ってしまう人がいる、と書いています。「me はまずい、and I が正しい」という意識が、前置詞のあとにまで広がるわけです(Cambridge の文法解説も、主語の My friends and me はくだけた話し言葉の形で、My friends and I が正しいとされる、としています)。
AHD も、It is I と言うよう教わった人が between のあとでも I が正しいと思いこむ、という見方を紹介しています。ただ、シェイクスピアの例は between you and I を禁じる規則よりおよそ300年古いので「それだけでは説明しきれない」とも書いています(さ入れ言葉の記事とthan me の記事でも紹介)。
② 「you and I」ひとかたまり説イギリスの言語学者ヘンリー・スウィートは、1892年の『新英文法』で別の見方を示しました。シェイクスピアのころの英語では、I と me(主語の形と目的格)が今より自由に入れかわっていた。そのうえ you and I は、you and I will go together(君とぼくで一緒に行こう)のように、主語としていつも一緒に使われる。だから3語がひとかたまりの言葉のようになり、最後の I が形を変えなくなった、というのです。
ただしスウィートは、①の見方も合わせて書いています。すぐ次の節では、it is me が文法書に責められるせいで、between John and me の me まで品がなく聞こえ、I に直されることがある、としています。そうしてシェイクスピアのころの形がよみがえった、という説明です。
05どんでん返し:シェイクスピアは「me」も書いていた
では、昔は I が正しかったのでしょうか。そうとも言えません。
同じシェイクスピアの『マクベス』4幕3場では、王子マルコムが貴族マクダフに But God above / Deal between thee and me(天の神に、きみと私の間を取りはからっていただこう)と言います。こちらは学校で習うとおりの目的格です。スウィートが書いたように、当時は I と me の使い分けが揺れていて、どちらの形も使われていたと考えるほうが、事実に合います。
そして、①と②がそれぞれどれだけ当てはまるのか、今回見た辞書や文法書は決着をつけていません。スウィートのように、両方を合わせて見る説明もあります。
06テストや英作文ではどうする?
07まとめ
between you and I はテストでは×で、Oxford の学習辞典も「誤り」と書いています。それでも、シェイクスピアの劇の手紙にも、ピープスの日記にも、ディケンズの小説にも出てきます。
I になる理由には「直しすぎ」と「ひとかたまり」の2つの説があり、どちらがどれだけ当てはまるのかは決まっていません。答案とメールでは between you and me。シェイクスピアの劇で between you and I に出会ったら、400年前からある言い方として味わえば十分です。
よくある質問
between you and I は間違いですか?
テストや改まった文では間違いとされます。between は前置詞なので、そのあとは目的格の me にします。Oxford の学習辞典は between you and I を「誤り」と書き、正しい形は between you and me です。
between you and me はどういう意味ですか?
「ここだけの話だけど」という意味です。たとえば Between you and me, I don't like this plan.(ここだけの話、この計画は好きじゃない)のように使います。
なぜ between you and I と言う人がいるのですか?
説は2つあります。主語なのに me と言う誤りを避けようとして、me でよいところまで I にしてしまう「直しすぎ」説と、you and I がひとかたまりの言葉のようになり最後の I が形を変えなくなった、というスウィート(1892年)の説です。
シェイクスピアも between you and I と書いたのですか?
はい。『ヴェニスの商人』3幕2場で、アントーニオの手紙に all debts are cleared between you and I とあります。ただ『マクベス』では between thee and me とも書いていて、当時は I と me の使い分けが揺れていたと考えられます。
between you and I は昔から使われていたのですか?
少なくとも1600年初版の『ヴェニスの商人』や、1660年のピープスの日記(between him and I)にあります。ディケンズの『ピクウィック・ペーパーズ』や、1856年のマーク・トウェインの手紙にも出てきます。
I と me のどちらを使うか、迷ったときの見分け方は?
「you and」を消してみる方法があります。for you and I なら for I になっておかしいので、for me が正しく、for you and me になります。主語なら You and I are in the same class. のように I です。
映画や小説で between you and I を見たら、ミスですか?
書き手のミスとは限りません。シェイクスピアやディケンズの登場人物も使っています。くだけた話し言葉として読めばよく、自分が答案やメールで書くときは between you and me にします。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEnglish textbooks teach that a word like "between," "for," or "with" should be followed by "me," not "I."…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many students learn to say "between you and me." If they write "between you and I," the teacher marks it wrong. Now look at Shakespeare. In The Merchant of Venice, a man named Antonio sends a letter to his best friend.
In it, he writes "all debts are cleared between you and I." In 1660, Samuel Pepys wrote "between him and I" in his diary. But on a test, you should write "me."
73 words ・ CEFR A2
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多くの生徒は「between you and me」と言うように習います。「between you and I」と書くと、先生はそれを×にします。では、シェイクスピアを見てください。『ヴェニスの商人』で、アントーニオという男が親友に手紙を送ります。
その中で彼は「君とぼくの貸し借りはすべて帳消しだ(all debts are cleared between you and I)」と書いています。1660年には、サミュエル・ピープスが日記に「between him and I」と書きました。でも、テストでは「me」と書くべきです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
テストで×になる between you and I が、シェイクスピアやピープスの文章に出てくるという話なので A。
Q2. Who wrote "between him and I" in a diary in 1660?
In 1660, Samuel Pepys wrote "between him and I" in his diary とあるので C。アントーニオは劇の中で手紙を書いた人物。
Q3. In the passage, what does "debts" mean?
debt は「借金、借り」。all debts are cleared で「貸し借りはすべて帳消し」の意味なので B。
English textbooks teach that a word like "between," "for," or "with" should be followed by "me," not "I." So "between you and I" gets a red mark. The rule makes sense, but the marked form has a long history. It appears in a letter in Shakespeare's The Merchant of Venice, which was first printed in 1600.
Samuel Pepys, who later became an important navy official, wrote "between him and I" in his private diary in 1660. In a Charles Dickens novel, a lawyer uses the phrase twice in one short speech. Today, though, the Oxford Advanced Learner's Dictionary calls it wrong, and many readers agree. So it is safer to write "between you and me" in tests and emails.
119 words ・ CEFR B1
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英語の教科書は、「between」「for」「with」のような語のあとには「I」ではなく「me」が来ると教えます。だから「between you and I」は赤ペンで直されます。ルールは筋が通っていますが、直される形のほうにも長い歴史があります。1600年に初めて印刷されたシェイクスピアの『ヴェニスの商人』では、手紙の中に出てきます。
のちに海軍の重要な役人になるサミュエル・ピープスは、1660年、自分だけの日記に「between him and I」と書きました。チャールズ・ディケンズの小説では、弁護士が短いせりふの中で2回この言い方を使います。でも今では、Oxford の学習辞典はこれを誤りとしていて、そう感じる読み手も多くいます。だから、テストやメールでは「between you and me」と書くほうが安全です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
the marked form has a long history と歴史を示したうえで、最後に it is safer to write "between you and me" とまとめているので B。
Q2. Where does Shakespeare use the phrase?
It appears in a letter in Shakespeare's The Merchant of Venice とあるので C。弁護士はディケンズの小説、日記はピープス。
Q3. Why does the writer suggest using "me" in tests and emails?
the Oxford Advanced Learner's Dictionary calls it wrong, and many readers agree. So … と理由が書かれているので C。
Why do so many speakers say "between you and I" when grammar books insist on "me"? One common answer is overcorrection. People who are told not to say "Jen and me went to the park" may start to feel that "and I" is always the safer choice, even after a word like "between."
The American Heritage Dictionary mentions this idea, but it says it cannot be the whole story, because the phrase already appears in Shakespeare's The Merchant of Venice, first printed in 1600. In 1892 the linguist Henry Sweet offered another idea. In Shakespeare's time, he wrote, speakers swapped "I" and "me" more freely, and "you and I" was used so often as a subject that the three words became a fixed unit whose last word stopped changing.
Shakespeare himself was not consistent, either. In Macbeth, a prince says "between thee and me," the form teachers want. Neither explanation has been proven. For now, the practical advice is simple. Dictionaries still treat "between you and I" as a mistake in formal English, so use "me" on tests and enjoy Shakespeare's version when you read him.
186 words ・ CEFR B2
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文法書が「me」だと言い張るのに、なぜこれほど多くの人が「between you and I」と言うのでしょうか。よく挙がる答えの一つは「直しすぎ」です。「Jen and me went to the park」と言ってはいけないと教わった人は、「between」のような語のあとでも「and I」のほうが安全だと感じるようになるかもしれません。
American Heritage Dictionary はこの考えを紹介しつつ、それだけでは説明しきれないと書いています。この言い方は、1600年に初めて印刷されたシェイクスピアの『ヴェニスの商人』にすでに出てくるからです。1892年、言語学者ヘンリー・スウィートは別の考えを示しました。シェイクスピアの時代には「I」と「me」が今より自由に入れかわっていて、しかも「you and I」は主語としてとてもよく使われたので、3語がひとかたまりになり、最後の語が形を変えなくなった、というのです。
シェイクスピア自身も一貫してはいませんでした。『マクベス』では、王子が先生の望む形の「between thee and me」と言っています。どちらの説明も証明されてはいません。今のところ、実用的な助言は単純です。辞書は改まった英語では今も「between you and I」をまちがいとして扱っているので、テストでは「me」を使い、シェイクスピアの言い方は読むときに楽しめばよいのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the passage mainly discuss?
冒頭の Why do so many speakers say … の問いに対して、直しすぎ説とスウィートの説を紹介しているので B。
Q2. According to Henry Sweet, why did "I" stay after "you and"?
"you and I" was used so often as a subject that the three words became a fixed unit とあるので B。
Q3. Why does the writer mention Macbeth?
Shakespeare himself was not consistent のあとに Macbeth の between thee and me を挙げているので、両方の形を使っていたことを示すため。A。
重要単語
- prepositionB1名詞前置詞"With" and "for" are prepositions.
pre-(前に)+position(置くこと)。名詞・代名詞の「前に置く」語。前置詞のあとの代名詞は me, him, her, us, them - pronounB1名詞代名詞Use a pronoun so you don't repeat the name.
pro-(代わりに)+noun(名詞)。I / me のように、場所によって形が変わるものがある - debtB1名詞借金、借りIt took him ten years to pay off the debt.
b は発音しない(デット)。pay off a debt で「借金を返し終える」 - overcorrectionC1名詞直しすぎSaying "for you and I" may be a kind of overcorrection.
over-(〜しすぎ)+correction(訂正)。言語学では hypercorrection(過剰修正)とも言う - consistentB2形容詞一貫した、首尾一貫したTry to be consistent with your spelling.
反対語は inconsistent。be consistent with ~ で「~と食いちがわない」 - formalB1形容詞改まった、正式なThis word is too casual for a formal letter.
反対語は informal / casual。formal writing(改まった書き言葉)は入試の英作文でもよく出る - diaryA2名詞日記He wrote about the fire in his diary.
keep a diary で「日記をつける」。dairy(乳製品)とつづりが似ているので注意
公式・一次情報をチェック
- Henry VI, Part 2, Act 1, Scene 2(Folger Shakespeare Library)folger.edu
- Macbeth, Act 4, Scene 3(Folger Shakespeare Library)folger.edu
- The Merchant of Venice(Folger Shakespeare Library:作品の解説・初版の年)folger.edu
- The Merchant of Venice, Quarto 1(1600)3.2(Internet Shakespeare Editions の翻刻)internetshakespeare.uvic.ca
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「between you and I(ここだけの話)」はテストで×。でもシェイクスピア『ヴェニスの商人』の手紙に all debts are cleared between you and I とある。1660年のピープスの日記にも between him and I がある。
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出典・参考文献(9件)タップで表示
- Shakespeare, W. The Merchant of Venice, Act 3, Scene 2(Folger Shakespeare Library 版の本文)folger.edu
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins, 2022)「I」(Usage Note)ahdictionary.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary(Oxford University Press)「between」oxfordlearnersdictionaries.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary(Oxford University Press)「I」oxfordlearnersdictionaries.com
- Cambridge Dictionary, English Grammar Today「Pronouns: personal」(Cambridge University Press)dictionary.cambridge.org
- Sweet, H. (1892) A New English Grammar, Logical and Historical, Part I, §1084, Oxford: Clarendon Press(Internet Archive)archive.org
- The Diary of Samuel Pepys(Wheatley 編, Project Gutenberg)gutenberg.org
- Dickens, C. The Pickwick Papers, Chapter X(Project Gutenberg)gutenberg.org
- Paine, A. B. (ed.) Mark Twain's Letters, Volume 1(Project Gutenberg)gutenberg.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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