2015年の「今年の単語」は絵文字😂だった。オックスフォードの候補には Brexit もいた

読む前に予想してみよう!
オックスフォードが選ぶ「今年の単語」に、絵文字が選ばれたことがある
2015年に😂(Face with Tears of Joy)が選ばれた。オックスフォードは「今年の単語が初めてピクトグラフ(絵による記号)になった」と発表している。
- 対象
- オックスフォードの「今年の単語」公式発表と言語学の論文
- 規模
- 2015〜2025年の発表、絵文字の使用統計(イギリス・アメリカ)
- 研究の種類
- 辞書出版社の言語データ調査+言語学の理論研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
オックスフォードの2015年「今年の単語」は絵文字😂。イギリスで使われた絵文字の20%を占めた。候補には Brexit もあった。
ひとことで言うと2015年、英語の「今年の単語」に選ばれたのは、文字ではなく絵文字だった!
もくじ
2015年、イギリスのオックスフォード大学出版局が選ぶ英語の「今年の単語」が発表されました。選ばれたのは……
😂
文字ではありません。涙を流して笑う顔の絵文字です。オックスフォードは「初めて、今年の単語がピクトグラフ(絵による記号)になった」と発表しました。しかもこの年の最終候補には、翌年イギリスを大きくゆらすことになる Brexit(イギリスのEU離脱)も入っていたのです。
01オックスフォードの「今年の単語」2015は😂
オックスフォード辞典の「Word of the Year(今年の単語)」は、その年の空気や関心ごとをいちばんよく表す言葉を、辞書の専門家が選ぶものです(2022年からは一般投票の結果も参考にしています)。
2015年に選ばれた😂の正式な名前は Face with Tears of Joy(うれし涙の顔)。オックスフォードの発表によると、選ばれた理由は、SwiftKey の集計で「2015年に世界でいちばん使われた絵文字」だったからです。
オックスフォードは発表の中で、😂を「今年をいちばんよく表す“単語”」と、わざわざ引用符つきで書いています。編集者自身も、ふつうの単語とは違うことを意識していたようです。
02候補に残った Brexit、そして翌年は post-truth
2015年は、😂のほかに8つの言葉が最終候補に入っていました。
- ad blocker(広告ブロック)、Brexit(イギリスのEU離脱)、Dark Web(ダークウェブ)、lumbersexual(木こり風のおしゃれ男子)
- on fleek(ばっちり決まっている)、refugee(難民)、sharing economy(シェアリングエコノミー)、they(性別を特定しない単数の they)
このときの Brexit は、まだ「ありうるかもしれない」離脱を指す言葉でした。オックスフォードの解説によると、この年の初めに話題だったのはギリシャのユーロ圏離脱を表す Grexit。それが下火になる一方で、イギリスの国民投票が現実味をおび、Brexit の使用が増えていったのです。
そして翌2016年、イギリスでは国民投票が行われ、アメリカでは大統領選挙がありました。この年の「今年の単語」は post-truth(ポスト真実)。「事実よりも感情や個人の信念のほうが世論を動かす状況」という意味です。オックスフォードは、EU離脱の国民投票とアメリカ大統領選挙の中で使用が急増したことを理由にあげています。Brexit 自身は選ばれませんでしたが、翌年の「今年の単語」の背景になったのです。

03最近の「今年の単語」は? brain rot は1854年から
オックスフォードの「今年の単語」は、2013年の selfie(自撮り写真)など、その年の空気を映してきました。2015年より後の言葉を見てみましょう。
ここで、もう1つの「マジか!?」。2024年の brain rot は、いかにも今どきのネット用語に見えます。ところがオックスフォードによると、最初の記録は1854年。アメリカの作家ソローの『ウォールデン 森の生活』です。ソローは、イギリスがジャガイモの病気(potato rot)を治そうと努力しているのに、もっと広く深刻な「脳の腐敗(brain-rot)」を治そうとする人はいないのか、と書いていました。
170年前の言葉が、TikTok などで若い世代に使われて、よみがえったのです。
04どんでん返し:絵文字は「単語」なのか?
とはいえ、😂は本当に「単語」と呼べるのでしょうか。
言語学者のローレン・ゴーンさんとグレッチェン・マカロックさんは、2019年の論文「Emoji as Digital Gestures(デジタルの身ぶりとしての絵文字)」で、絵文字は単語よりも、話すときの身ぶり(ジェスチャー)に近いと論じました。ウインクや親指を立てる絵文字は、実際の身ぶりとそっくりです。
論文が紹介するデータには、こんなものがあります。
- インスタグラムの分析では、😂は、ふつうなら lolol や lmao(どちらも「(笑)」にあたるネット用語)と書くような文で使われていた
- 2個・3個・4個の絵文字の並びを、よく使われる順に200種類ずつ見ると、約半分は😂😂のような同じ絵文字のくり返しだった
同じ絵文字を連打するのは、話しながら手を何度も振って強調する身ぶりに似ている、と2人は考えています。つまり😂は、「意味を伝える単語」というより「笑っている様子を見せる身ぶり」に近いのかもしれません。
ただし、この論文はツイッター(現X)などの実例を観察して考えをまとめたもので、数を測る実験ではありません。2人自身も、今後の量的な研究のための枠組みだと位置づけています。
05まとめ
2015年、オックスフォードの「今年の単語」は絵文字の😂。イギリスで使われた絵文字の5つに1つがこれでした。候補にいた Brexit は選ばれませんでしたが、翌年の post-truth の背景になりました。
そして言語学者によれば、😂は「単語」というより「身ぶり」に近いのかもしれません。次に😂を送るときは、手をたたいて笑っている自分を思い浮かべてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2015, Oxford Dictionaries surprised a lot of people.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Every year, Oxford Dictionaries chooses a "Word of the Year." In 2015, the winner was not really a word. It was an emoji, the yellow face that cries because it is laughing so hard.
Its official name is "Face with Tears of Joy." It was the most popular emoji in the world that year. In the UK, one out of every five emoji that people used was this face. "Brexit" was also on the shortlist, but it did not win.
80 words ・ CEFR A2
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毎年、オックスフォード辞典は「今年の単語」を選びます。2015年に選ばれたのは、本当の意味での単語ではありませんでした。それは絵文字で、笑いすぎて泣いている黄色い顔でした。
正式な名前は「Face with Tears of Joy(うれし涙の顔)」です。その年、世界でいちばん人気のある絵文字でした。イギリスでは、使われた絵文字の5つに1つがこの顔でした。「Brexit」も最終候補に入っていましたが、選ばれませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2015年の「今年の単語」に絵文字が選ばれた話なので B。
Q2. In the UK, how many of the emoji people used were this face?
In the UK, one out of every five emoji that people used was this face. とあるので C。
Q3. In the passage, what does "tears of joy" mean?
joy は「喜び」。tears of joy は「うれし涙」なので A。
In 2015, Oxford Dictionaries surprised a lot of people. Its Word of the Year was a small yellow face crying with laughter, officially called the "Face with Tears of Joy" emoji. Oxford worked with SwiftKey, a company that makes keyboard apps for phones, to find out which emoji people used most. This one made up 20 percent of all emoji used in the UK in 2015, up from 4 percent the year before.
In the US, it rose from 9 to 17 percent. Eight other words and phrases also made the shortlist, including "Brexit," which then meant a possible British exit from the European Union. In 2016, the UK held a vote on leaving the EU, and Oxford's choice for that year was "post-truth."
124 words ・ CEFR B1
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2015年、オックスフォード辞典は多くの人をおどろかせた。その年の「今年の単語」は、笑いすぎて泣いている小さな黄色い顔、正式名「Face with Tears of Joy(うれし涙の顔)」の絵文字だったのだ。オックスフォードは、スマートフォンのキーボードアプリを作る会社 SwiftKey と組んで、人々がどの絵文字をいちばん使っているかを調べた。この絵文字は、2015年にイギリスで使われた絵文字全体の20%を占め、前の年の4%から増えていた。
アメリカでは9%から17%に上がった。最終候補にはほかに8つの語句が入り、その中には、当時イギリスのEU離脱の可能性を指していた「Brexit」もあった。2016年、イギリスではEU離脱を問う国民投票が行われ、その年のオックスフォードの選択は「post-truth(ポスト真実)」だった。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did Oxford work with SwiftKey?
to find out which emoji people used most とあるので B。
Q2. How did the use of this emoji in the US change?
In the US, it rose from 9 to 17 percent. とあるので D。4%から20%はイギリスの数字。
Q3. What can we infer about "Brexit" in 2015?
which then meant a possible British exit とあり、翌年に投票が実際に行われたので、2015年の時点ではまだ起きていないことを指していたと分かる。C。
Oxford Dictionaries made an unusual choice in 2015. Its Word of the Year was a pictograph, the "Face with Tears of Joy" emoji. Data from the keyboard app SwiftKey showed it made up 20 percent of all emoji used in the UK that year and 17 percent in the US. Even Oxford put "word" in quotation marks when explaining the decision. The linguists Lauren Gawne and Gretchen McCulloch offer another way to think about this.
In a 2019 paper, they argued that emoji behave less like words and more like the gestures people make while they talk. They pointed to an Instagram analysis in which the laughing face showed up where people might otherwise type "lolol" or "lmao." About half of the most common emoji sequences, they noted, repeat a single emoji, the way a speaker moves a hand up and down to stress a point.
Their paper is built on examples, and the authors present it as a starting point for studies that count and measure. Most later winners have been ordinary words. "Brain rot," the 2024 choice, sounds like recent slang, yet Oxford traced its first recorded use to Henry David Thoreau's book "Walden," published in 1854.
199 words ・ CEFR B2
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オックスフォード辞典は2015年、珍しい選択をした。その年の「今年の単語」は、ピクトグラフである「Face with Tears of Joy(うれし涙の顔)」の絵文字だった。キーボードアプリ SwiftKey のデータでは、この絵文字はその年イギリスで使われた絵文字全体の20%、アメリカでは17%を占めていた。オックスフォード自身も、この決定を説明するときに「単語」という語を引用符でくくっていた。言語学者のローレン・ゴーンとグレッチェン・マカロックは、これについて別の考え方を示している。
2019年の論文で2人は、絵文字は単語よりも、人が話しながらする身ぶりに近い働きをすると論じた。2人が挙げたインスタグラムの分析では、この笑い顔は、ふつうなら「lolol」や「lmao」と打つような場面で使われていた。また、よく使われる絵文字の並びの約半分は、1つの絵文字のくり返しで、話し手が強調のために手を上下に振るのに似ていると指摘した。
この論文は実例をもとにしており、著者たちは、数を数えて測る研究のための出発点として位置づけている。その後に選ばれたのは、ほとんどがふつうの言葉だ。2024年に選ばれた「brain rot」は最近の俗語のように聞こえるが、オックスフォードは最初の記録を、1854年に出版されたヘンリー・デイヴィッド・ソローの本『ウォールデン』までさかのぼった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
絵文字が「今年の単語」に選ばれたことと、絵文字が本当に単語なのかという問題を扱っているので C。
Q2. According to Gawne and McCulloch, what are emoji most like?
emoji behave less like words and more like the gestures people make while they talk とあるので A。
Q3. What does the writer suggest about the 2019 paper?
Their paper is built on examples, and the authors present it as a starting point for studies that count and measure とあり、量的な研究の余地を残していると分かるので B。
重要単語
- tears of joyB1名詞うれし涙She cried tears of joy when she heard the news.
tear(涙)の発音は「ティア」。「破る」の tear(テア)と同じつづりなので注意。😂の正式名 Face with Tears of Joy にも入っている。 - shortlistB2名詞最終候補のリストFive words made it onto the shortlist.
make the shortlist「最終候補に残る」。動詞で be shortlisted「最終候補に選ばれる」とも言う。 - gestureB1名詞身ぶり、手ぶりA thumbs-up is a gesture that means "good."
make a gesture「身ぶりをする」。比喩で「(気持ちを示す)行為」の意味もある:a kind gesture。 - lolB1略語(ネットで)笑That video was so funny, lol.
laughing out loud の略。くだけた言い方なので、作文や改まったメールには使わない。 - voteA2名詞・動詞投票(する)More than 30,000 people voted online.
vote for ~「~に投票する」。2022年からオックスフォードの「今年の単語」にも一般投票が入った。 - reflectB2動詞反映する、映し出すThe word reflects the mood of the year.
re-(返す)+flect(曲げる)。名詞 reflection は「反射、映った姿、よく考えること」。 - slangB2名詞俗語、スラング"Rizz" is slang for charm.
rizz は charisma の真ん中を切り取った語とされる。fridge(← refrigerator)や flu(← influenza)も同じ作り方。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- Oxford Word of the Year 2025(Oxford University Press)corp.oup.com
- lol(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
4コマでわかる

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オックスフォードの2015年「今年の単語」は、絵文字の😂(うれし涙の顔)。世界でいちばん使われた絵文字だったのが理由で(イギリスでは絵文字全体の20%)、候補には Brexit もいた。言語学者には「絵文字は単語より身ぶりに近い」という見方も。
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出典・参考文献(8件)タップで表示
- Oxford Languages「Word of the Year 2015」(2022年12月17日の保存版)web.archive.org
- Oxford Languages「Word of the Year 2015: Shortlist」(2022年12月17日の保存版)web.archive.org
- Oxford Languages「Word of the Year 2016」(2023年1月11日の保存版)web.archive.org
- Oxford University Press (2024) 'Brain rot' named Oxford Word of the Year 2024(2026年10月4日の保存版)web.archive.org
- Oxford University Press「Oxford Word of the Year 2025」(2026年10月1日の保存版)web.archive.org
- Oxford Languages「Word of the Year 2022」(2023年12月29日の保存版)web.archive.org
- Oxford University Press (2023) 'Rizz' crowned Oxford Word of the Year 2023(2025年12月31日の保存版)web.archive.org
- Gawne & McCulloch (2019) Emoji as Digital Gestures, Language@Internet 17scholarworks.iu.edu
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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