「いたずらっ子」の naughty と否定の not は親せき。どちらも語源は「何もない」

読む前に予想してみよう!
英語の否定語 not は、「何もない」を意味する naught(nought)が縮んでできた
Oxford の学習辞典は not を「副詞 nought が縮んだもの」、American Heritage 辞典は「naught, nought の変化形」としている。naught は古英語の nā(no)+ wiht(thing)。
- 対象
- 英語の辞書と歴史的な文献
- 規模
- 辞書3種と1611年の英訳聖書・シェイクスピア
- 研究の種類
- 辞書の語源欄と古い用例の照合
- 確かさ
- ★★★★☆
naughty は naught(何もない)+-y。いちばん古い意味は「何も持っていない」。否定の not も、この naught が縮んだ形だと辞書にある。
ひとことで言うと「いたずらな」の naughty と、「〜ない」の not は、もとは同じ言葉なんだって!
もくじ
「Naughty boy!(こら、いたずらっ子!)」
英語の絵本やアニメでよく聞く naughty(ノーティ)。この単語、分解すると naught(何もない)+ -y(「〜な」をつける語尾) です。
そして、毎日のように使う否定の言葉 not も、じつはこの naught が縮んだ形。「いたずらな」と「〜ない」は、同じ「何もない」から生まれた親せき同士なのです。
01naught=「no+thing」
まず、naught(つづりは nought とも)から見てみましょう。
American Heritage 辞典によると、naught は古英語(千年以上前の英語)の nāwiht から来ています。分けると nā(no)+ wiht(thing)。つまり「no thing=何もない」です。英語の nothing と、組み立てがそっくりですね。
今でも naught は、かたい言い方で使われます。
- All our efforts came to naught.(努力はすべて水の泡になった)
そして同じ辞典は、not を「naught, nought の変化形」としています。オックスフォードの学習辞典も、not は「副詞 nought が縮んだもの」と書いています。
I do not know. の not は、もとをたどれば「何もない(no thing)」。毎日使う否定の言葉の中に、「物」を表す古い単語 wiht がかくれているわけです。
02「何も持っていない」から「悪い」へ
オックスフォードの学習辞典によると、naughty が記録に残るいちばん古い意味は「possessing nothing(何も持っていない)」でした。そして、ほぼ同じころに「wicked(邪悪な、悪い)」の意味も現れます。
この「悪い」の naughty は、今の「いたずら」よりずっと強い言葉でした。1611年に出た英訳聖書(欽定訳聖書)を開くと、こんな使い方があります。
- 「エレミヤ書」24章2節:一方のかごには、とてもよいイチジク。もう一方のかごには「very naughty figs」。続けて「とても悪くて食べられなかった」と書かれています
- 「箴言」6章12節:「A naughty person, a wicked man」。naughty な人は、悪人と並べられています
- 「列王記下」2章19節:町の人が「the water is naught」と言う。naught だけで「水が悪い」という意味です
シェイクスピアの『ヴェニスの商人』にも、有名なせりふがあります。
So shines a good deed in a naughty world.(悪い世の中では、善い行いがこうして光り輝く)
ここで「いたずらな世の中」と訳すと、意味が通りません。good deed(善い行い)と対になる、「悪い」世の中です。

03今の辞書では「いたずらな」「ちょっとエッチな」
では今はどうでしょう。オックスフォードの学習辞典が挙げる意味は2つです。
- (特に子どもが)行儀が悪い、言うことを聞かない:a naughty boy/a naughty girl
- ちょっと下品な、性に関係する:a naughty joke(きわどい冗談)
Dictionary.com では、「邪悪な、悪い」の意味には「廃れた(Obsolete)」の印がついています。聖書では「悪人」だった naughty が、今では子どものいたずらレベルまで弱くなったのです。
04おまけ:「身分が低い・値打ちがない」が「悪い」に
「何も持っていない」が「悪い」に変わる。英語には、同じように「低い・値打ちがない」から「悪い」に変わった単語がほかにもあります。オックスフォードの学習辞典で確かめました。
- mean(意地悪な、けちな):古英語 gemǣne から。ラテン語の communis(共通の)と同じ根っこで、もとは「2人以上に共通の」。それが「身分が低い」になり、「心がせまい」を経て、19世紀に今の「けちな」「意地悪な」がよく使われるようになった。Don't be so mean!(意地悪しないで!)の mean は、common(ふつうの)の遠い親せきです
- vile(ひどい、下劣な):ラテン語の vilis「値打ちが低い」から。a vile smell(ひどいにおい)
- wretch(かわいそうな人、悪いやつ):古英語 wrecca には「追放された人」という意味もあった。ところが、ドイツ語の親せきの語 Recke は「戦士、英雄」。同じ根っこの言葉が、英語では「みじめな人」、ドイツ語では「英雄」になりました
05おまけ2:2000年代は「naught の時代」
naught(nought)には「数字の0」の意味もあります。オックスフォードの学習辞典で見ると、これが今の英語にしっかり残っています。
- イギリス英語で noughts and crosses(0と×)は「○×ゲーム」。アメリカ英語では tic-tac-toe
- 2000〜2009年は、イギリス英語で the noughties。twenties(20年代)にならって1990年代に作られた言葉で、発音は /ˈnɔːtɪz/(ノーティズ)。naughty に s をつけたように聞こえます
- アメリカ英語では同じ10年を the aughts と呼びます。American Heritage 辞典によると、0を表す aught は、a naught が an aught と区切りまちがえられてできた語です
イギリスでもアメリカでも、2000年代の呼び名は「何もない」の naught から来ている。英語の「無」は、なかなかしぶといのです。
06どんでん返し:「貧しい→悪い→いたずら」は一本道ではない
「何も持っていない(貧しい)人が、やがて悪い人の意味になった」と説明したくなります。でも辞書をよく読むと、そう単純ではありません。
オックスフォードの学習辞典は、「何も持っていない」と「邪悪な」がどちらも中世英語の終わりごろに現れたとしています。どちらが先に広まったのか、はっきりした順番は書かれていません。
American Heritage 辞典の説明では、naughty のもとになった中世英語の nought 自体が「何もない」と「悪いもの」の両方の意味を持っていました。1611年の聖書の「the water is naught(水が悪い)」のように、naught だけで「悪い」を表す使い方は、そのあとも残りました。naughty は「貧しい」から一歩ずつ悪くなったのではなく、最初から「悪い」の意味を親からもらっていたのかもしれません。
07まとめ
naughty は「何もない(naught)」から生まれ、「何も持っていない」「悪い」を経て、今は「いたずらな」になりました。400年前の聖書では、食べられないイチジクも naughty figs です。
そして、毎日使う not も同じ naught の縮んだ形。次に I'm not naughty! と言うときは、「何もない」が2回入っていることを思い出してください。
この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Naughty" was formed from "naught," which goes back to the Old English "nāwiht," made of "nā" (no) and…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When a child does something bad, English speakers may say, "Don't be naughty!" The word "naughty" comes from "naught," an old word for "nothing." The oldest meaning on record is "having nothing."
Later the word also meant "very bad." In an English Bible from 1611, figs that nobody could eat are called "naughty figs." Today the word is much softer. People use it mostly for children who don't listen.
69 words ・ CEFR A2
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子どもが何か悪いことをすると、英語を話す人は「Don't be naughty!(いたずらしないの!)」と言うことがあります。
naughty という語は、「何もない」を表す古い言葉 naught から来ています。記録に残るいちばん古い意味は「何も持っていない」です。その後、この語は「とても悪い」という意味にもなりました。1611年の英語の聖書では、だれも食べられないイチジクが「naughty figs」と呼ばれています。今日、この語はずっとやわらかくなりました。人々は主に、言うことを聞かない子どもに使います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
naughty が naught(何もない)から来て、意味が変わってきた話なので B。
Q2. What is the oldest recorded meaning of "naughty"?
The oldest meaning on record is "having nothing." とあるので C。
Q3. In the passage, what does "softer" mean in "the word is much softer"?
「とても悪い」から子どもの「いたずら」程度になったので、意味が「弱くなった」ということ。A。
"Naughty" was formed from "naught," which goes back to the Old English "nāwiht," made of "nā" (no) and "wiht" (thing). So the word is built a lot like "nothing." Two major dictionaries also say that "not" is a shortened form of "naught." When "naughty" first appeared, in the second half of the 1300s, it could mean "having nothing," and in the same period it also came to mean "wicked." That strong meaning lasted for centuries.
The King James Bible of 1611 talks about "very naughty figs" that were too bad to eat, and it puts "a naughty person" next to "a wicked man." Today the word is mostly used for children who behave badly, and one dictionary marks the "wicked" sense as no longer used.
125 words ・ CEFR B1
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naughty は naught から作られた語で、naught は古英語の nāwiht にさかのぼる。nāwiht は nā(no)と wiht(thing)でできている。つまりこの語は、nothing とよく似た組み立てだ。2つの大きな辞書は、not も naught が短くなった形だとしている。naughty が1300年代後半に初めて現れたとき、それは「何も持っていない」を意味することがあり、同じ時期に「邪悪な」という意味も持つようになった。その強い意味は何百年も続いた。
1611年の欽定訳聖書は、悪すぎて食べられない「very naughty figs」について語り、「a naughty person」を「a wicked man(悪人)」と並べている。今日、この語は主に行儀の悪い子どもに使われ、ある辞書は「邪悪な」の意味に「もう使われない」という印をつけている。
4択リーディングクイズ
Q1. What two parts make up the Old English word "nāwiht"?
made of "nā" (no) and "wiht" (thing) とあるので B。
Q2. How does the King James Bible use "naughty"?
食べられない very naughty figs と、a wicked man と並ぶ a naughty person の例から、「悪い」の意味で使っているので C。
Q3. What can we infer about the meaning of "naughty" over time?
昔は wicked(邪悪な)の強い意味だったが、今は主に子どもの行儀の悪さに使うので、意味が弱くなったと言える。A。
Parents who scold a "naughty" child are using a word built on "naught," or "nothing." Its earliest recorded sense, according to Oxford, was "possessing nothing." It is tempting to tell a neat story in which poor people slowly came to be seen as bad people. The dictionaries do not quite support it. Oxford places the "wicked" sense in the same late medieval period, and the American Heritage Dictionary notes that "nought" itself could mean "evil."
The King James Bible still uses it that way. In one story, the people of a city say their water is simply "naught," and the land around it is barren. The same dictionaries trace "not" to "naught" as well, so one of the most common words in English began as "no thing." Other words have slid in a similar way.
"Mean" first referred to something shared by two or more people, then came to mean "low in rank," and only in the nineteenth century did "stingy" and "unkind" become common. The idea of nothing also survives as a number. British speakers call the years 2000 to 2009 "the noughties," and Americans call them "the aughts."
190 words ・ CEFR B2
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「naughty」な子どもをしかる親は、naught、つまり「何もない」を土台にした語を使っている。Oxford によれば、この語の記録に残るいちばん古い意味は「何も持っていない」だった。貧しい人がしだいに悪い人と見なされるようになった、というきれいな話をしたくなる。だが辞書はそれをあまり裏づけていない。Oxford は「邪悪な」の意味を同じ中世の終わりごろに置いており、American Heritage 辞典は、nought そのものが「悪い」を意味しえたと記している。
欽定訳聖書にも、この使い方が残っている。ある話では、町の人々が自分たちの町の水をただ「naught」と言い、まわりの土地は不毛だとされている。同じ辞書は not も naught にさかのぼるとしており、英語で最もよく使われる語の1つは「no thing」から始まったことになる。ほかの語も似た形で意味がずれてきた。
mean は最初、2人以上で共有されるものを指し、その後「身分が低い」を意味するようになり、19世紀になってようやく「けちな」「意地悪な」がよく使われるようになった。「何もない」という考えは数としても生き残っている。イギリス英語の話し手は2000〜2009年を「the noughties」と呼び、アメリカ人は「the aughts」と呼ぶ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the writer's main point?
naughty は naught から来たが、「貧しい→悪い」のきれいな話は辞書が裏づけない、と述べているので B。
Q2. According to the passage, when did "stingy" and "unkind" become common meanings of "mean"?
only in the nineteenth century did "stingy" and "unkind" become common とあるので D。
Q3. Why does the writer mention water that is "naught" in the Bible?
nought そのものが「悪い」を意味しえたことの例として挙げているので A。
重要単語
- naughtyB1形容詞(子どもが)いたずらな、言うことを聞かないThe naughty puppy chewed my shoes again.
発音は /ˈnɔːti/(ノーティ)。gh は読まない。大人が冗談っぽく使うこともあり、「ちょっときわどい」の意味もある。 - naughtC1名詞・代名詞何もないこと、無All our hard work came to naught.
come to naught(nought)「水の泡になる」。古英語 nā(no)+ wiht(thing)。not もここから。 - wickedB2形容詞邪悪な、悪いThe wicked king took everything from the people.
-ed を「イド」と読む(ウィキッド)。昔の naughty はこの意味でも使われた。 - meanB1形容詞意地悪な;けちなDon't be so mean to your little brother.
もとは「共通の」。common と同じ根っこ。動詞の mean(意味する)とは別の語。 - vileB2形容詞ひどく不快な、下劣なThere was a vile smell in the kitchen.
ラテン語 vilis「値打ちが低い」から。「ひどい」を強く言いたいときの語。 - wretchC1名詞かわいそうな人;悪いやつThe poor wretch lost all his money.
古英語 wrecca には「追放された人」の意味もあった。形容詞は wretched「みじめな」。 - noughts and crossesB2名詞〔英〕○×ゲームWe played noughts and crosses on the train.
nought は「0」。アメリカ英語では tic-tac-toe。 - scoldB2動詞しかるMy mother scolded me for being naughty.
scold A for B「B のことで A をしかる」。tell off(英・くだけて)も同じ意味。
公式・一次情報をチェック
- naughty(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- noughties(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- The Merchant of Venice, Act 5, Scene 1(Folger Shakespeare Library)folger.edu
このネタ、誰かに教えたくなった?
「Naughty boy!(こら、いたずらっ子!)」の naughty の語源は naught(何もない)。いちばん古い意味は「何も持っていない」。400年前の英語の聖書では、食べられないイチジクも naughty figs。否定の not も、naught が縮んだ形。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins)「naughty」「naught」「not」「aught」ahdictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「naughty」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Oxford Learner's Dictionaries「mean」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「naughty」dictionary.com
- The King James Version of the Bible(1611年訳, Project Gutenberg 版)gutenberg.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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