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英語で一番多い単語「the」は16語に1語。2位はその約半分…「ジップの法則」の謎

英語で一番多い単語「the」は16語に1語。2位はその約半分…「ジップの法則」の謎

読む前に予想してみよう!

文章に出てくる単語の回数は、順位が下がるほど、順位にほぼ反比例して減っていく

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の書き言葉・話し言葉、日本語を含む15言語の子ども向け発話など
規模
英語コーパス約1億語ほか
研究の種類
コーパス分析のレビュー(観察研究)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

1億語の英語データで1位は the(約6%)、2位 of はその約半分。「n位は1位のn分の1」というジップの法則は大筋で成り立つが、理由はまだ謎。

ひとことで言うとよく使う単語の回数は、1位・2位・3位…と、きれいな割合で減っていくんだって!

もくじ
  1. 1億語を数えたら、the が16語に1語
  2. 日本語でも成り立つの?
  3. なぜ「n分の1」になるのか――まだ誰も知らない
  4. まとめ

英語でいちばんよく使われる単語は何でしょう? 答えは the。ここまでは予想どおりかもしれません。

では、どれくらいの回数なのでしょう。約1億語の英語を集めたデータでは、the は100万語あたり約6万2000回、つまりおよそ16語に1語。そして2位の of は、the のほぼ半分しか出てきません。

「2位は1位の2分の1、3位は3分の1、4位は4分の1……」。単語の使われ方には、こんな不思議なほど単純な法則があると言われてきました。名前はジップの法則(Zipf's law)。ところが、なぜそうなるのかは、いまも決定的な説明がないのです。

011億語を数えたら、the が16語に1語

イギリス英語のデータベース British National Corpus(BNC) は、話し言葉と書き言葉を合わせて約1億語。ランカスター大学のリーチ(Leech)さんらがこれで作った頻度表(2001年刊)の上位はこうです。

2位の of は、ほぼぴったり「2分の1」。ところが3位の and は「3分の1」より多く、4位の a も「4分の1」を上回ります。つまり上位の単語では、きれいな「n分の1」から少しずれているのです。

ピアンタドーシ(Piantadosi)さんの2014年のレビューも、全体としてはジップの法則によく合う一方、よく使う単語のあたりには偶然では説明できない系統的なずれがあることを示しています。順位を少しずらすマンデルブロ(Mandelbrot)の改良版の式のほうが、実際のデータにはよく合います。

話し言葉では、順位が少し変わります。BNC の話し言葉だけで数えると、1位は the(約3万9600回)のままですが、2位は I(約2万9400回)、3位は you(約2万6000回)。話し言葉では「私」と「あなた」が上位に来るのです。

1位の the だけが飛び抜けて多く、順位が下がるにつれて回数はなだらかに減っていく
1位の the だけが飛び抜けて多く、順位が下がるにつれて回数はなだらかに減っていく

02日本語でも成り立つの?

日本語は単語の間にスペースがないので、「何を1語と数えるか」で結果が変わるのが悩みどころです。それでも、ラヴィ=ロトバインとアーノンの2023年の研究は、子どもと大人の会話を記録したデータベース(CHILDES)で、日本語を含む7語族・15言語の「大人が子どもに話しかけることば」を分析し、どの言語もジップ型の式によく合うことを示しました。日本語(約94万語)でも、実際の回数と式の予想の相関係数(1に近いほどよく合う)は 0.993 でした。

一方で、「英語はよく使う上位1000語を知っていれば文章の単語の8割をカバーできるのに、日本語は6割しかない」という話を聞いたことがあるかもしれません。この話でよく引かれるのが、国立国語研究所が1984年に出した日本語教師向けの本『語彙の研究と教育(上)』の表です。

ここでどんでん返し。同じ本には、英語の数字はモスクワの研究所の調査を紹介したもので、冠詞・前置詞・代名詞などの機能語は除外していると考えられると書かれています。つまり the が数えられていない可能性があるのです。日本語の数字は国語研の「現代雑誌九十種」の調査からとったもので、調べ方が別です。本自体も、英語などの欄と日本語の欄を直接比べるのは控えるべきと注意しています(そのうえで、日本語は少ない語数ではカバーしにくい言語だろうと推測はしています)。数字だけを切り取って比べるのは危ないのです。

03なぜ「n分の1」になるのか――まだ誰も知らない

この法則は、言語学者ジップ(G. K. Zipf)が1930〜40年代に広めて以来、70年以上研究されてきました。「話し手と聞き手の手間を減らすため」「よく使われた語ほど、また使われやすいから」など説明の候補は山ほどあります。ところがピアンタドーシさんは、これまでの説明は、どれも基本的な事実をすべてすっきり説明できていないと結論しました。たとえば、こんな事実があります。

  • サルがでたらめにタイプしても似た形になる:文字とスペースをランダムに打つだけでも、英文をスペースではなく e で区切って「単語」にしても、よく似たカーブになる。法則を導けるというだけでは、その説が正しい強い証拠にはならない
  • 意味の決まった語でも成り立つ:月(January など)・惑星・元素の名前のように、言語が自由に決めたわけではない語のグループでも、ジップに近い分布になる
  • 数のことばは「数の大きさ」順:英語・ロシア語・イタリア語の数詞は、表す数が大きいほど使われず、ほぼ大きさの2乗に反比例して減っていた
  • 作ったばかりの単語でも出る:ネット上で集めた25人に「宇宙船がネバダの砂漠に墜落し、Wug, Plit, Blicket, Flark, Warit, Jupe, Ralex, Timon という8体の生き物が出てきた」という書き出しで物語を書いてもらうと、初めて見るこの8つの名前の使用回数まで、ジップに近い形になった

8体には何の差もつけていないのに、人は自然と、よく登場させる名前とあまり使わない名前を、ジップに近い割合で作り出してしまう。ピアンタドーシさんは記憶のしくみが関わっていそうだと考えていますが、答えはまだ出ていません。

04まとめ

the は16語に1語。of はその約半分。単語の世界は、ほんの一握りの「超よく使う語」と、ほとんど出てこない「その他おおぜい」でできています。

それがなぜ、ほぼ「n分の1」というきれいな形になるのかは、ジップから70年以上たった今も解けていない謎です。次に英文を読むとき、the を数えてみると、その謎の入り口に立てるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers at Lancaster University counted the words in the British National Corpus, a collection of about… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Researchers at Lancaster University counted the words in the British National Corpus, a collection of about 100 million words of spoken and written English. "The" came first, with almost 62,000 uses per million words. "Of" came second with about half that number. This fits Zipf's law, which says that the second word appears about half as often as the first, the third about a third as often, and so on.

The pattern is not perfect. "And," in third place, is used more often than the law predicts. In spoken English, the list changes, and "I" and "you" move up to second and third. Scientists have offered many reasons for the law, but so far none of them can explain all the facts.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ランカスター大学の研究者たちは、話し言葉と書き言葉の英語約1億語を集めたブリティッシュ・ナショナル・コーパスの単語を数えた。「the」が1位で、100万語あたり約6万2000回使われていた。「of」はその約半分の数で2位だった。これはジップの法則に合っている。この法則によれば、2位の単語は1位の約半分、3位は約3分の1の回数で現れ、以下同様に続く。

ただし、このパターンは完璧ではない。3位の「and」は、法則の予想より多く使われている。話し言葉では順位が変わり、「I」と「you」が2位と3位に上がる。科学者たちはこの法則について多くの理由を提案してきたが、今のところ、すべての事実を説明できるものはない。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Which words become second and third in spoken English?

Q3. What can we infer about "and"?

重要単語

  • frequencyB1
    名詞頻度、使われる回数The frequency of "the" is higher than that of any other English word. 形容詞は frequent(頻繁な)、副詞は frequently。high / low frequency で「高い/低い頻度」。
  • rankB1
    名詞・動詞順位/順位をつける"Of" ranks second in the British National Corpus. rank first で「1位になる」。frequency rank は「頻度順位」。
  • corpusB2
    名詞コーパス(言語資料を集めたデータベース)The researchers built a corpus of 100 million words. 複数形は corpora。ラテン語で「体」の意味。
  • roughlyB1
    副詞おおよそ、ざっと"Of" appears roughly half as often as "the." about / approximately と同じ意味で、会話でもよく使う。
  • coverageB2
    名詞カバー率、範囲Some researchers say that 98 percent coverage lets readers follow a text without a dictionary. 動詞 cover(覆う)+-age。lexical coverage で「語彙のカバー率」。
  • function wordB2
    名詞機能語(the, of, in など文法的な役割の語)Function words like "the" and "of" appear in almost every sentence. 対になるのは content word(内容語:名詞・動詞など意味の中心になる語)。
  • deriveC1
    動詞導き出す、(〜に)由来するMany theories can derive the same law from different ideas. derive A from B で「BからAを導く」。be derived from で「〜に由来する」。
英語で一番多い単語は the。約1億語のデータでは16語に1語が the で、2位の of はその約半分。「n位の単語はn分の1」というジップの法則、宇宙人の物語を書かせる実験でも現れた。なぜそうなるのか、決定版の説明はまだない。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Piantadosi (2014) Zipf's word frequency law in natural language: A critical review and future directions, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org
  2. Leech, Rayson & Wilson (2014; 初版2001, Longman) Word Frequencies in Written and Spoken English, Routledgedoi.org
  3. Lavi-Rotbain & Arnon (2023) Zipfian Distributions in Child-Directed Speech, Open Minddoi.org
  4. 国立国語研究所 (1984) 語彙の研究と教育(上), 日本語教育指導参考書12(執筆: 玉村文郎), 大蔵省印刷局doi.org
  5. Nation (2006) How Large a Vocabulary is Needed For Reading and Listening?, The Canadian Modern Language Reviewdoi.org

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