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英語のマジか!?ビミョー

color を広めたウェブスター、soup を「soop」にする案は大コケしていた

color を広めたウェブスター、soup を「soop」にする案は大コケしていた

読む前に予想してみよう!

アメリカ英語の color や center は、ウェブスターがゼロから発明したつづりだ

研究カード(どんな研究?)
対象
ウェブスターの辞書(1806年・1828年)と英米のつづり
規模
辞書・教本・書簡・当時の新聞
研究の種類
辞書史(文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

米英のつづりの差には、ウェブスターが1806年と1828年の辞書で推したものが多い。ただ多くは彼以前からあり、soop や tung などの案は定着しなかった。

ひとことで言うとcolor の u をぬいたのはウェブスターの辞書。でも失敗した案もたくさん!

もくじ
  1. 1806年と1828年、2冊の辞書が「アメリカのつづり」を推した
  2. 定着したつづり(勝ち):color、center、jail
  3. 定着しなかったつづり(負け):soop、ake、tung、wimmen
  4. どんでん返し:つづり改革は、ほぼ負け戦
  5. 入試・英検ではどっちでもいい?
  6. まとめ

アメリカ英語は color、イギリス英語は colour。center と centre、traveled と travelled。学校で「アメリカ式とイギリス式で違う」と習ったこのつづり、だれが決めたのでしょう?

よく名前が挙がるのが、アメリカの辞書編集者 ノア・ウェブスター(Noah Webster)。いまのメリアム・ウェブスター辞書が「直系のご先祖」と呼ぶ人物です。

ところがこのウェブスター、soup を soop、tongue を tung、women を wimmen にしようとも本気で提案していました。もちろん、こちらは見事に不発。つづり改革の「勝ち」と「負け」をのぞいてみましょう。

011806年と1828年、2冊の辞書が「アメリカのつづり」を推した

ウェブスターの最初の辞書は、1806年の『A Compendious Dictionary of the English Language』。辞書史の研究者マイケル・アダムズ(Michael Adams)は、これをアメリカ人による初めての本格的な辞書と位置づけています。そして1828年、代表作『An American Dictionary of the English Language』を出しました。

それより前の1783年に初版を出したつづり教本(のちの題名は『The American Spelling Book』。青い表紙から「ブルーバック・スペラー」と呼ばれた)は、アダムズによればアメリカで聖書の次に人気のあった本。辞書を出す前から、ウェブスターは何世代もの子どもたちの「つづりの先生」だったのです。

メリアム・ウェブスター社の編集者は、同社のポッドキャストで彼のねらいを2つ挙げています。アメリカの英語をイギリスの英語と区別することと、つづりを発音に近づけることです。

02定着したつづり(勝ち):color、center、jail

メリアム・ウェブスター社がまとめた「勝ち」の例です。

  • color / honor / humor:発音しない u を落とした。いまのアメリカ英語の標準
  • center / theater:語末を -er に。center は1806年版でも1828年版でも center だけを載せた
  • jail:イギリス式の gaol ではなく jail。1806年の辞書から一貫していた
  • magic / public:magick のような語末の k を落とした
  • traveled:1806年の辞書には traveller(l が2つ)とあったのに、1828年には traveler と traveled に

center については、同社が紹介するオックスフォード英語辞典(OED)の説明では、ベイリー(Nathan Bailey)の辞書の多くの版も、シェイクスピアやミルトンの作品の版も -er でした。1755年にサミュエル・ジョンソンが自分の辞書に centre だけを載せたのは、手元のベイリーの大型「フォリオ版」が centre だったからではないか、というのです。イギリス式の centre のほうが、1冊の辞書の選択に引っぱられたのかもしれません。

1文字の差が、海の両側で「別のつづり」になった
1文字の差が、海の両側で「別のつづり」になった

03定着しなかったつづり(負け):soop、ake、tung、wimmen

一方、まったく定着しなかった案もたくさんあります。

  • soop(soup):coop や loop とそろえる案。group を groop にする案も不発
  • ake(ache):bake、cake と同じ形に
  • tung(tongue):1828年の辞書に「正しいつづりは tung」と書いた。古英語では tunge だった
  • wimmen(women):1806年の辞書に載せたが、1828年の辞書からは消えた
  • masheen(machine):これも不発

極めつけは1790年の評論集『A Collection of Essays and Fugitiv Writings』。題名からして fugitive の e がなく、中では iz(is)、waz(was)、giv(give) などと書いていました。さすがに iz や waz は、自分の辞書には入れていません。

04どんでん返し:つづり改革は、ほぼ負け戦

メリアム・ウェブスター社の編集者は、ウェブスターを「ひとつ目のねらい(アメリカ英語の独立)には成功し、ふたつ目(発音どおりのつづり)には失敗した」と総括しています。

あとに続いた改革も苦戦しました。メリアム・ウェブスター社によると、セオドア・ローズヴェルト大統領は、簡略化したつづり300語を政府の印刷局で使うよう命じましたが、猛反発とからかいを浴び、議会が4か月後にひっくり返しました。

そもそも「アメリカ式つづり=ウェブスターのおかげ」という定番の説明を、一次資料で確かめ直そうとした研究もあります。color などの -o(u)r の語30語を、辞書やつづり教本、1740〜1840年の新聞などでたどった研究(1990年)です。

05入試・英検ではどっちでもいい?

  • 大学入試センターは、共通テストの英語について、国際的に広く使われているアメリカ英語を基本にしつつ、場面設定によってイギリス英語を使うこともあると説明しています。根拠に挙げているのは高校の学習指導要領とその解説で、英語には「語彙、綴り、発音、文法などに多様性がある」ことに気づかせる指導を求めています。ただしこれは問題文の英語についての説明です。
  • 中学校の教科書『NEW CROWN』(三省堂)は、覚えやすさを優先して color や center などアメリカ式のつづりを採用していると説明しています。
  • 一方で、受験生が答案に colour と書いたら減点されるのかについて、大学入試センターや日本英語検定協会が公式に示した説明は、今回の調査では見つけられませんでした。採点基準は試験ごとに違いうるので、気になる人は各試験の公式案内で確認を。

06まとめ

color の u がないのは、以前からあったつづりをウェブスターが辞書で強く推し、アメリカの人たちがそれを受け入れたことが大きいのです。でも soop や tung のように、人々が受け入れなかったつづりは、辞書に載せても残りませんでした。

つづりを最後に決めるのは、辞書を書く人ではなく、それを使う大勢の人たち。英作文では、自分が選んだつづりを最後までそろえることを心がけましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you compare an American book with a British one, you will notice small spelling differences. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you compare an American book with a British one, you will notice small spelling differences. Americans write "color" and "center," while British writers add a "u" to the first word and end the second with "re." Noah Webster helped to spread the American forms through his dictionaries of 1806 and 1828. He wanted American English to look different from British English, and he also wanted spelling to follow sounds more closely.

Many of these spellings were already in use before him, so he was more of a promoter than an inventor. Some of his ideas failed completely. Americans never accepted "soop" for "soup," "ake" for "ache," or "wimmen" for "women."

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

アメリカの本とイギリスの本を比べると、つづりの小さな違いに気づくだろう。アメリカ人は「color」「center」と書くが、イギリスの書き手は前者に「u」を加え、後者を「re」で終える。ノア・ウェブスターは、1806年と1828年の辞書を通じて、アメリカ式の形を広める手助けをした。彼はアメリカ英語をイギリス英語と違って見えるようにしたいと考え、また、つづりがもっと発音に沿うようにしたいとも考えた。

こうしたつづりの多くは彼以前からすでに使われていたので、彼は発明者というより推進役だった。彼の考えの中には完全に失敗したものもある。アメリカ人は「soup」の代わりの「soop」も、「ache」の代わりの「ake」も、「women」の代わりの「wimmen」も、決して受け入れなかった。

4択リーディングクイズ

Q1. What were Webster's two goals?

Q2. Which spelling did Americans NOT accept?

Q3. Why does the writer call Webster "more of a promoter than an inventor"?

重要単語

  • spellingA2
    名詞つづりAmerican and British spelling are a little different. 動詞 spell は「つづる」。How do you spell it? は「それはどうつづりますか?」の定番表現。
  • reformB2
    名詞・動詞改革(する)Webster wanted to reform English spelling. re-(再び)+form(形づくる)。日本語の「リフォーム(家の改装)」は英語では renovation や remodeling のほうが自然。
  • silent letterB1
    名詞発音しない文字、黙字The "k" in "knife" is a silent letter. ウェブスターは colour の u のような黙字を嫌った。knife の k、listen の t なども黙字。
  • catch onB2
    句動詞流行する、定着するSome of his new spellings never caught on. catch on to ~ だと「~を理解する」の意味にもなる。過去形は caught on。
  • consistentB2
    形容詞一貫した、むらのないKeep your spelling consistent in one essay. 名詞は consistency。be consistent with ~ で「~と矛盾しない」。英作文の採点でも大事な考え方。
  • varietyB1
    名詞(言語の)変種;多様性American English is one variety of English. a variety of ~ は「さまざまな~」。言語学では「方言・地域ごとの英語」を中立的に呼ぶ言葉として使う。

動画でもっと知る

アメリカ英語の color や center は、ウェブスターが1806年と1828年の辞書で推したつづり。でも同じ人が soup→soop、tongue→tung、women→wimmen も提案し、見事に不発。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Merriam-Webster「Noah Webster's Spelling Wins and Fails」merriam-webster.com
  2. Merriam-Webster Word Matters Podcast Episode 15「Why are American and British English different?」merriam-webster.com
  3. Adams (2020) The Making of American English Dictionaries, The Cambridge Companion to English Dictionaries(Cambridge University Press)doi.org
  4. Anson (1990) Errours and Endeavors: A Case Study in American Orthography, International Journal of Lexicography 3(1)doi.org
  5. 大学入試センター「大学入学共通テスト英語におけるイギリス英語の使用について」dnc.ac.jp

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