「you guys(みんな)」の guy は、1605年にイギリス議会を爆破しようとした男の名前

読む前に予想してみよう!
「you guys(みんな)」の guy は、もとは実在した1人の男の名前だった
1605年に議会の爆破をくわだてたガイ・フォークス。毎年11月5日に燃やす彼の人形が guy と呼ばれ、やがて「男」「みんな」の意味に広がった。
- 対象
- 17〜21世紀の英語の文献・辞書の記録
- 規模
- 1605年〜現在
- 研究の種類
- 歴史言語学(文献調査)・辞書
- 確かさ
- ★★★★☆
guy(やつ・男)は、1605年に議会の爆破をくわだてたガイ・フォークスの名前から。毎年11月5日に燃やす彼の人形が guy と呼ばれ、「変な格好の男」→「男」→「you guys(みんな)」と広がった。
ひとことで言うと「Hi, guys!」の guy は、昔イギリスで議会を爆破しようとした人の名前なんだって!
もくじ
「Hey, guys!」「Thank you, guys!」
YouTube の英語の動画で、毎日のように聞こえるあいさつです。guy は「男、やつ」。複数形の guys は「みんな」。
この guy、もとは1人の実在の男の名前です。しかもその男は、1605年にイギリスの議会を、王さまごと火薬で吹き飛ばそうとした人物でした。名前はガイ・フォークス(Guy Fawkes)。「みんな」を表す言葉の出どころが、歴史に残る大事件の犯人なのです。
01guy の語源は「ガイ・フォークス」
アメリカの代表的な辞書『American Heritage Dictionary』(AHD)で guy を引くと、意味は4つ並んでいます。
- 1. (くだけた言い方で)男、やつ
- 2. (guys で)男女どちらも含めた人たち
- 3. (主にイギリスで)変わった見た目や服装の人
- 4. ガイ・フォークスの人形。11月5日に町を引き回して燃やす
語源の欄は、ひとことだけ。[After Guy Fawkes.](ガイ・フォークスにちなむ)。オックスフォードの学習辞典も、同じく「1605年11月5日に国王ジェームズ1世と議会の爆破をくわだてたガイ・フォークスにちなむ」と書いています。
021605年11月、議会の地下に火薬36樽
事件は「火薬陰謀事件(Gunpowder Plot)」と呼ばれます。
公文書館の資料は、今のイギリスでもこの夜をたき火と花火で祝うこと、そして地域によっては子どもたちが「guy」と呼ばれる人形を作って、たき火で燃やすことを紹介しています。11月5日は「ガイ・フォークス・ナイト」「ボンファイア・ナイト(たき火の夜)」と呼ばれます。

03人形の名前が「男」になるまで
では、人形の名前が、どうやって「男」という意味になったのでしょう。
この1語だけで1冊の本を書いた人がいます。アメリカ方言学会の事務局長を務めた英語学者アラン・メトカーフ(Allan Metcalf)です。2019年にオックスフォード大学出版局から出た『The Life of Guy(ガイの一生)』の紹介文によると、意味は次の順に移っていきました。
- 毎年11月5日に燃やすフォークスの人形が a guy、何体もあれば guys と呼ばれる
- 人形は古着を着せて作るので、guy がぼろを着た男を指すようになる
- やがて変な格好をした男全般に
- さらに、格好に関係なく男なら誰でも
- 20世紀には、複数形の guys・you guys が男女を問わず使われるようになり、女性どうしでも「you guys」と呼び合う
辞書によると、guy という言葉が書いたものに初めて出てくるのは1800年代の初めです(いちばん古い記録は、Dictionary.com では1800〜1810年。オックスフォードの学習辞典は人形の意味で「19世紀初め」としています)。事件から200年近くたってからです。
学術誌『Names』に載ったこの本の書評によると、子どもたちは人形のために「pennies for the Guy(ガイのためのペニー)」を集め、たき火の費用にしました。メトカーフは、この習わしのおかげで、guy という言葉がフォークス本人と結びつかなくなっていったと見ています。
04偽名を通していたら「you johns」だった?
フォークスは捕まったとき、ジョン・ジョンソンと名乗っていました。公文書館に残る取り調べの記録にも、最初は「ジョン・ジョンソンの取り調べ」と書かれています。のちの記録では「グイド・フォークス」。書評によると、フォークスは Guido(グイド)という別の名前も使っていました。
メトカーフは本の中で、こう問いかけています。もし、すぐあとに続いた取り調べのあいだずっと偽名を通せていたら、いまごろ私たちは you guys ではなく「you johns」と言っていたのでは?
ちなみに英語の john には、くだけた言い方で「トイレ」という意味があります(AHD)。人の名前から生まれた語です。「Hey, johns!」が「みんな」の意味にならなくて、よかったのかもしれません。
05人の名前が「ふつうの言葉」になった仲間
guy と同じように、1人の人の名前が、ふつうの名詞になった英語はほかにもあります。
- dunce(ばか、のろま):1300年ごろに活躍したスコットランドの神学者ドゥンス・スコトゥス(John Duns Scotus、1265ごろ〜1308年)から。オックスフォードの学習辞典によると、16世紀の学者や宗教改革者が、スコトゥスの流れをくむ人たちを「学問の敵」とあざけったのが始まり。大学者の名前が「ばか」の意味になった
- bobby(イギリスの警察官):1829年、内務大臣としてロンドン警視庁をつくった政治家ロバート・ピール(Robert Peel)から。Bobby は Robert の愛称(AHD・オックスフォード)
- guy(動詞):guy 自身も動詞になり、「からかう、笑いものにする」という意味で AHD に載っている
06どんでん返し:「guys」は本当に男女どちらにも使える?
メトカーフ自身、guys が誰にでも使えるようになるまでには「障害」があったと1章をさいています。本の紹介文によると、アメリカ南部の人からは「うちは you guys じゃなくて y'all だ」、フェミニストからは「男女どちらにも使える言葉とは言えない」と反対が出ました。
先ほどの書評を書いた学者も、ここには賛成していません。単数の guy は男性だけを指すのに、複数の guys は女性も含むことになっている。メトカーフ自身も認めるこのねじれを挙げたうえで、「guys は男女どちらにも使える言葉として広く受け入れられた」という本の主張に疑問を示しています。英語の mankind(人類)が「みんな」のつもりでも男性を思わせるのと同じだ、という意見です。
もう1つ。「ガイ・フォークスが事件の主犯」というイメージも、そのまま信じてはいけません。英国国立公文書館の資料では、リーダーはロバート・ケイツビーで、フォークスは火薬の係です。資料は、フォークスが本当に中心人物だったのか、なぜ彼ひとりが11月5日に記憶されているのかは、歴史家がいまも考え続けている問いだとしています。計画そのものが、カトリックの力をそぐための政府側の作戦だったと見る歴史家もいる、とも書いています。
07まとめ
「Hey, guys!」の guy は、400年以上前に議会の地下で火薬とともに捕まった男の名前でした。人形の名前になり、ぼろを着た男になり、ただの「男」になり、ついには「みんな」になったのです。
次に英語の動画で「Hi, guys!」と聞いたら、11月5日のたき火と、ジョン・ジョンソンという偽名を思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen people say "Hey, guys!" they are using the name of a man who tried to kill a king.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
"Guy" is a very common English word. It means "a man," and "you guys" can mean "all of you." But the word comes from a real person.
In 1605, Guy Fawkes and his friends planned to blow up the Parliament building in London. He was caught with 36 barrels of gunpowder. Every year on November 5, people in Britain have bonfires. Some children make a straw figure of him and burn it. This figure is called a "guy."
78 words ・ CEFR A2
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「guy」はとてもよく使う英単語です。意味は「男の人」で、「you guys」は「みなさん」という意味にもなります。でも、この語は実在の人物から来ています。
1605年、ガイ・フォークスと仲間たちは、ロンドンの議会の建物を爆破しようと計画しました。彼は36樽の火薬とともに捕まりました。毎年11月5日、イギリスの人々はたき火をします。子どもたちが彼のわら人形を作って燃やすこともあります。この人形は「guy」と呼ばれます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
But the word comes from a real person. と、guy という語の出どころを説明しているので B。
Q2. What was Guy Fawkes caught with?
He was caught with 36 barrels of gunpowder. とあるので C。
Q3. In the passage, what does "figure" mean in "a straw figure"?
make a straw figure of him and burn it から、ここでの figure は「人の形をした人形」なので B。
When people say "Hey, guys!" they are using the name of a man who tried to kill a king. In November 1605, Guy Fawkes was caught under the Houses of Parliament, where 36 barrels of gunpowder had been hidden.
At first he told the king's men that his name was John Johnson. After the plot failed, Parliament made November 5 a day of thanksgiving. Today people in Britain still mark the night with bonfires and fireworks.
Children made figures of Fawkes out of old clothes and straw and collected "pennies for the guy." Because the figures were dressed in rags, "guy" came to mean a badly dressed man, and later any man at all. In the 20th century, "you guys" began to include women too.
125 words ・ CEFR B1
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人が「Hey, guys!」と言うとき、その人は王を殺そうとした男の名前を使っている。
1605年11月、ガイ・フォークスは、36樽の火薬が隠されていた議会の建物の地下で捕まった。はじめ彼は王の家来たちに、自分の名前はジョン・ジョンソンだと言った。計画が失敗したあと、議会は11月5日を感謝の日と定めた。今もイギリスの人々は、たき火と花火でこの夜を祝う。
子どもたちは、古着とわらでフォークスの人形を作り、「ガイのためのペニー」を集めた。人形はぼろを着ていたので、「guy」は「みすぼらしい格好の男」を意味するようになり、のちには男なら誰でも指すようになった。20世紀には、「you guys」が女性も含むようになった。
4択リーディングクイズ
Q1. What name did Guy Fawkes give when he was first caught?
At first he told the king's men that his name was John Johnson. とあるので C。
Q2. Why did "guy" come to mean a badly dressed man?
Because the figures were dressed in rags, "guy" came to mean a badly dressed man とあるので B。
Q3. What can we infer about the word "guy"?
人形 → みすぼらしい男 → 男なら誰でも → 女性も含む、と意味が広がってきたことが読み取れるので A。
"Guy" is about as casual as English words get, yet its history goes back to a famous plot against a king. In 1605 a group of Catholic plotters hid 36 barrels of gunpowder beneath the Houses of Parliament, hoping to kill King James I. The man found near the barrels said he was John Johnson. He turned out to be Guy Fawkes, the group's gunpowder expert, though the leader was a man named Robert Catesby.
Straw figures of Fawkes, burned every November 5, became known as "guys," and the word slowly widened to mean a shabby man, an oddly dressed man and finally any man. Allan Metcalf, a linguist who wrote a whole book about the word, asks whether we would now be saying "you johns" if Fawkes had stuck to his false name. Not everyone agrees that the plural is neutral, though. One reviewer of the book points out that a single guy is always male, so to her "guys" still sounds male, much like "mankind."
167 words ・ CEFR B2
和訳を見る
「guy」は英語の中でもとびきりくだけた言葉だが、その歴史は、国王をねらった有名な陰謀にまでさかのぼる。1605年、カトリックの陰謀グループが、国王ジェームズ1世を殺そうと、議会の建物の地下に36樽の火薬を隠した。樽の近くで見つかった男はジョン・ジョンソンと名乗った。
その正体はグループの火薬の専門家ガイ・フォークスだったが、リーダーはロバート・ケイツビーという男だった。毎年11月5日に燃やされるフォークスのわら人形は「guys」と呼ばれるようになり、この語は少しずつ意味を広げ、みすぼらしい男、変な格好の男、そしてついには男なら誰でも指すようになった。この語について1冊の本を書いた言語学者のアラン・メトカーフは、もしフォークスが偽名を通していたら、今ごろ私たちは「you johns」と言っていたのではないか、と問いかけている。ただし、複数形が男女どちらにも使える言葉だと誰もが認めているわけではない。この本のある書評者は、単数の guy はいつも男性なので、自分には「guys」も「mankind」と同じように男性的に聞こえる、と指摘している。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement about the 1605 plot is true according to the passage?
Guy Fawkes, the group's gunpowder expert, though the leader was a man named Robert Catesby とあるので C。
Q2. Why does Allan Metcalf mention "you johns"?
if Fawkes had stuck to his false name(偽名を通していたら)と問いかけているので、偽名のほうが言葉になった可能性を示している。B。
Q3. What does the reviewer think about the word "guys"?
a single guy is always male, so to her "guys" still sounds male とあるので C。
重要単語
- guyA2名詞男、やつ;(guys で)みんなCome on, you guys, the movie is starting!
語源はガイ・フォークス。単数は男性だけ、複数の you guys は男女まじりにも使う。くだけた言い方。 - effigyC1名詞(人に似せて作った)人形、像The children made an effigy out of old clothes and straw.
burn ... in effigy で「(抗議などで)〜の人形を燃やす」。ニュース英語で見かける。 - plotB1名詞陰謀、たくらみ;(物語の)筋The plot to blow up Parliament failed.
the Gunpowder Plot=火薬陰謀事件。映画や小説の「あらすじ」の意味でもよく使う。 - gunpowderB2名詞火薬The men hid barrels of gunpowder under the building.
gun(銃)+powder(粉)。a barrel of 〜で「〜1樽」。 - aliasC1名詞偽名、別名He gave the guards an alias, John Johnson.
under an alias で「偽名を使って」。副詞として「別名〜」の意味でも使う。 - bonfireB2名詞(野外の大きな)たき火We watched the fireworks from beside the bonfire.
Bonfire Night は11月5日のガイ・フォークス・ナイトのこと。 - ridiculeC1動詞あざける、笑いものにするIt isn't kind to ridicule someone's clothes.
名詞も同じ形。動詞の guy にも「からかう」の意味がある。ridiculous(ばかげた)と同じ仲間。
公式・一次情報をチェック
- guy(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
- dunce(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- bobby(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
このネタ、誰かに教えたくなった?
「Hey, guys!」の guy は、1605年にイギリス議会を火薬36樽で吹き飛ばそうとしたガイ・フォークスの名前。毎年燃やす彼の人形が guy と呼ばれ、「変な格好の男」→「男」→「みんな」に。研究書の著者いわく、偽名を通していたら「you johns」だったかも。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Metcalf (2019) The Life of Guy, Oxford University Pressdoi.org
- Dodge Robbins (2021) Life of Guy, Names: A Journal of Onomastics 69(4)(Metcalf の本の書評)doi.org
- The National Archives(英国国立公文書館)The Gunpowder Plot(教育用資料)nationalarchives.gov.uk
- American Heritage Dictionary「guy」「dunce」「bobby」「john」ahdictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「guy」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- Dictionary.com「guy」(Origin of guy: First recorded in 1800–10)dictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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