「一匹狼」を表す英語 maverick は、子牛に焼き印を押さなかった男の名字から来たとされる

読む前に予想してみよう!
「一匹狼」を意味する英語 maverick は、もとは人の名字だった
辞書やテキサス州歴史協会の事典によると、焼き印のない子牛を maverick と呼ぶのは、テキサスのサミュエル・マーヴェリック(1803〜1870年)の名字から来たとされる。ただし AHD は「〜にちなむかもしれない」と慎重に書いている。
- 対象
- テキサス州歴史協会の人物事典・米国の英語辞書・1944年の雑誌記事
- 規模
- 1840〜1940年代の記録
- 研究の種類
- 語源調査(文献)
- 確かさ
- ★★★☆☆
maverick(一匹狼)は、テキサスのサミュエル・マーヴェリックの名字から。焼き印のない子牛をこう呼んだのが始まりとされる。元下院議員の孫は1944年、お役所の回りくどい文章を、七面鳥の鳴き声をまねた語 gobbledygook と呼んで批判した。
ひとことで言うと「一匹狼」を表す英語は、焼き印を押されなかった子牛の持ち主の名字から来たらしい!
もくじ
映画のタイトルにもなった英語「maverick(マーヴェリック)」。辞書を引くと「一匹狼」「組織の方針に従わない人」と出てきます。
ところがこの単語、もとはテキサスに住んでいた一人の男の名字です。しかも最初の意味は人ではなく、「焼き印を押されていない子牛」でした。
さらに、その男の孫はアメリカ連邦議会の下院議員になり、のちの1944年、お役所の回りくどい文章に腹を立てて七面鳥の鳴き声をまねた英単語で呼んで切り捨てました。その単語も、今の辞書に載っています。
01maverick の語源は「サミュエル・マーヴェリック」という人
アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)で maverick を引くと、意味は二つあります。
- 1. 自分の考えで行動する人。とくに、所属する集団の方針に従わない人
- 2. 焼き印のない放牧の家畜。とくに母牛からはぐれた子牛。昔から「最初に焼き印を押した人のもの」とされてきた
語源欄には「Samuel Augustus Maverick(1803〜1870年)にちなむのかもしれない。群れの子牛に焼き印を押さずにおいたアメリカの牛飼い」とあります。Dictionary.com も、サミュエル・A・マーヴェリックにちなむアメリカ英語で、使われ始めたのは1865〜70年ごろ、と書いています。
焼き印は、放し飼いの牛が「だれの牛か」を示す目印です。それがない子牛は、持ち主が分からない“はぐれ者”。そこから「どこの群れにも属さない人」という意味が生まれました。
02本人は「牛飼い」というより弁護士で大地主
では、サミュエル・マーヴェリックはどんな人だったのか。テキサス州歴史協会の人物事典『Handbook of Texas』をたどると、カウボーイのイメージとはだいぶ違います。
つまり、事典の記述から見えるのは「信念があって焼き印を押さなかった反逆者」ではありません。土地の売り買いが本業の大地主が、町に戻るときに小さな牛の群れを人に任せ、その群れがさまよっていた。その“ほったらかし”が、のちに「一匹狼」という意味の単語になったわけです。

03孫モーリーは、本当に“maverick”な議員だった
話はここで終わりません。サミュエルの孫、モーリー・マーヴェリック(Maury Maverick、1895〜1954年)も歴史に名を残しました。
同じ事典の「Maverick, Fontaine Maury」の項によると、モーリーは1935〜38年に下院議員、1939〜41年にサンアントニオ市長を務めました。議員時代には、政府が進める改革よりさらに踏みこもうとする「maverick な議員たち」のグループをまとめて全国の注目を集めた、とあります。名字が maverick の人が、文字どおり maverick な議員を率いていたわけです。1937年には『A Maverick American(あるマーヴェリックなアメリカ人)』という題の本も書いています。
041944年、お役所ことばを「gobbledygook」と呼んだ
第二次世界大戦中、モーリーは政府の戦時生産局の一員で、「Smaller War Plants Corporation(小規模軍需工場公社)」の会長でした。事典は、彼が中小企業の味方として知られた、と書いています。
アメリカの雑誌『TIME』1944年4月10日号の記事によると、彼はワシントンの「gobbledygook(ガブルディグック)」な言葉づかいにかみつきました。職員に向けた文書では、「〜を finalize する」「〜から stem する」「〜レベルで」といった役所特有の言い回しをやめよう、と呼びかけていました。記事が引用した文書は、こう続きます。
「activation や implementation という語を使う者は撃つ」(Anyone using the words 'activation' or 'implementation' will be shot.)
もちろん冗談です。でも、それくらい回りくどい言葉にうんざりしていたのでしょう。
同じ年の5月29日号の『TIME』によると、モーリーは『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』で、gobbledygook を「長く、もったいぶっていて、あいまいで、こみ入った話し方や書き方」と定義しました。同じことを何度もくり返し、数語で言えることを長々と言うのも gobbledygook だ、とも述べています。
この語の組み立てについて、AHD は「七面鳥の鳴き声(gobble)をまねた語」と説明しています。七面鳥がゴロゴロとのどを鳴らすような、意味の分からない音の連なり。お役所の文章をそう呼んだのです。
gobbledygook は今も、英語でふつうに使われる単語です。AHD の定義は「分かりにくく、回りくどい専門用語」。The contract was full of legal gobbledygook.(その契約書は法律用語だらけで、さっぱり分からなかった)のように使います。
05おまけ:mustang は「はぐれた家畜」、sideburns は将軍の名前から
maverick のように、家畜や人名から生まれた身近な英語はほかにもあります。どれも AHD で確かめたものです。
- mustang(マスタング):北米の平原にいる小さな野生の馬。語源はアメリカのスペイン語 mesteño で、意味は「はぐれた家畜」。さらにさかのぼると、中世ラテン語の「寄せ集めの(動物)」に行き着く。maverick と同じく、持ち主のいない動物を指す言葉が出発点
- sideburns(もみあげ):もとは burnsides。南北戦争の北軍の将軍アンブローズ・バーンサイド(1824〜1881年)の名前から。AHD は、彼が「軍での経歴よりも、ほおひげで知られた」人物で、フレデリックスバーグなどで敗れた、と紹介している。burn と side が入れかわって sideburns になった
自分の名前が「もみあげ」になった将軍と、「一匹狼」になった大地主。どちらも、本業とは別のところで名前が英語に残りました。
06どんでん返し:辞書は「〜にちなむのかもしれない」としか書いていない
ここまで「maverick はサミュエル・マーヴェリックの名字から」と書いてきました。ただ、AHD の語源欄は「Possibly after(〜にちなむのかもしれない)」と書いていて、言い切ってはいません。
テキサス州歴史協会の事典は、マーヴェリック家の群れから maverick という語が生まれた、とはっきり書いています。一方で、焼き印のない子牛を最初にそう呼んだのはだれか、いつどこでか、という最初の記録までは、今回調べた資料では確かめられませんでした。Dictionary.com の「1865〜70年ごろ」は、群れが売られた1856年より後です。名字が子牛の呼び名として広まるまでの道すじも、今回の資料では分かりませんでした。
もう一つ。gobbledygook も、モーリーが「ゼロから作った」と言えるかどうかは慎重に考える必要があります。今回確かめられたのは、1944年に彼がこの語でお役所ことばを批判し、雑誌が「彼が gobbledygook と呼んだ言葉づかい」と報じたところまでです。AHD は語源を「七面鳥の鳴き声のまね」、Oxford Learner's Dictionaries は「1940年代(もとはアメリカ)」とするだけで、どちらも作った人の名前は書いていません。
07まとめ
焼き印のない子牛の呼び名から「一匹狼」へ。maverick は、テキサスの大地主が牛を放っておいたことから広まったとされる言葉でした。その孫は、名字どおり型破りな議員になり、のちに回りくどいお役所ことばを gobbledygook と呼んで笑い飛ばしました。
次に「マーヴェリック」という言葉を見たら、群れからはぐれて草原を歩く子牛を思い出してみてください。英語の単語の後ろには、意外な家族の物語が隠れていることがあります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSamuel Maverick went to Yale, worked as a lawyer, and served as mayor of San Antonio.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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The English word "maverick" means a person who does not follow the group. But it probably started as a family name. In the 1840s, a man named Samuel Maverick bought some cattle in Texas. He moved back to the city, so he left the animals with other people.
His calves had no brand, the mark that shows the owner. Later, people called a calf like this a "maverick." Over time, the word was used for people too.
77 words ・ CEFR A2
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英語の「maverick」は、集団に従わない人という意味です。でも、もとはおそらく名字でした。1840年代、サミュエル・マーヴェリックという男性がテキサスで牛を買いました。彼は町に戻ったので、牛をほかの人に任せました。
彼の子牛には、持ち主を示す印である焼き印がありませんでした。のちに人々は、こうした子牛を「maverick」と呼ぶようになりました。やがて、この語は人にも使われるようになりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「集団に従わない人」を表す maverick が、もとは名字だったという話なので B。
Q2. Why did Samuel Maverick leave his animals with other people?
He moved back to the city, so he left the animals with other people とあるので A。
Q3. In the passage, what is a "brand"?
no brand, the mark that shows the owner とあるので C。
Samuel Maverick went to Yale, worked as a lawyer, and served as mayor of San Antonio. His real business was land, and when he died in 1870 he owned more than 300,000 acres. In 1847 he also bought a small herd of cattle. He left it with caretakers, and the animals wandered around without brands.
According to the Texas State Historical Association, this herd gave English the word "maverick," first for an unbranded calf and later for a person who thinks independently. His grandson Maury became a member of Congress. In 1944 he told government workers to stop writing "gobbledygook," his name for long, unclear official language. He even joked that anyone using the word "implementation" would be shot.
119 words ・ CEFR B1
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サミュエル・マーヴェリックはイェール大学に通い、弁護士として働き、サンアントニオの市長も務めた。彼の本業は土地で、1870年に亡くなったときには30万エーカー以上を持っていた。1847年には小さな牛の群れも買った。彼はそれを世話係に任せ、牛たちは焼き印のないままさまよった。テキサス州歴史協会によると、この群れが英語に「maverick」という語をもたらした。
最初は焼き印のない子牛を、のちには独自の考えを持つ人を指す語として。孫のモーリーは下院議員になった。1944年、彼は政府の職員に「gobbledygook」を書くのをやめるよう伝えた。これは、長くて分かりにくいお役所の言葉を指す彼の呼び名だった。「implementation」という語を使う者は撃つ、と冗談まで言った。
4択リーディングクイズ
Q1. What was Samuel Maverick's main business?
His real business was land とあるので B。牛の群れは小さなものだった。
Q2. What happened to the herd he bought in 1847?
the animals wandered around without brands とあるので C。
Q3. What can we guess about Maury Maverick from the passage?
長くて分かりにくいお役所ことばを gobbledygook と呼んでやめさせようとしたので、短く分かりやすい文を求めていたと推測できる。A。
Ask a dictionary where "maverick" comes from and you will usually find one name: Samuel Maverick, a Texas lawyer and land investor who died in 1870 owning more than 300,000 acres. Cattle were a sideline for him. In 1847 he bought a small herd and later left it with caretakers on the coast, where the calves went unbranded.
The Texas State Historical Association says this herd gave rise to the word. On the open range, an unbranded calf was traditionally the property of whoever branded it first, so a "maverick" belonged to no one. From there the word came to mean a person who goes their own way.
The American Heritage Dictionary is a little more careful and says the word is "possibly" named after him, and Dictionary.com dates it to the late 1860s, about ten years after the herd was sold. The family left a second mark on English. In 1944 his grandson Maury, a former congressman, told his staff to drop what he called "gobbledygook," a word that imitates the gobbling of a turkey.
176 words ・ CEFR B2
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「maverick」の語源を辞書で引くと、たいてい一人の名前が見つかる。サミュエル・マーヴェリック。テキサスの弁護士で土地に投資し、1870年に亡くなったときには30万エーカー以上を持っていた。彼にとって牛は本業ではなかった。
1847年に小さな群れを買い、のちに海辺の世話係に任せたところ、子牛たちには焼き印が押されないままになった。テキサス州歴史協会は、この群れからこの語が生まれたとしている。放牧地では、焼き印のない子牛は昔から最初に焼き印を押した人のものとされていたので、「maverick」はだれのものでもなかった。そこからこの語は、自分の道を行く人を意味するようになった。アメリカン・ヘリテージ英語辞典はもう少し慎重で、この語は彼にちなむ「かもしれない」と書いている。
Dictionary.com はこの語の始まりを1860年代後半としており、これは群れが売られてから約10年後だ。この一家は英語にもう一つ足跡を残した。1944年、元下院議員の孫モーリーは、部下に「gobbledygook」と彼が呼ぶものをやめるよう求めた。七面鳥の鳴き声をまねた語である。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
maverick と gobbledygook という2つの語がマーヴェリック家と結びついている話なので B。
Q2. Why did a "maverick" calf belong to no one?
an unbranded calf was traditionally the property of whoever branded it first とあるので C。
Q3. Why does the writer mention the word "possibly" and the late 1860s?
辞書が possibly(〜かもしれない)と書き、使われ始めた時期も群れの売却より後であることから、結びつきは有力だが確定ではないと示している。A。
重要単語
- maverickC1名詞・形容詞一匹狼、型破りな人;焼き印のない子牛She was a maverick who never followed the party line.
a maverick politician(型破りな政治家)のように形容詞的にも使う。ほめ言葉にも悪口にもなる。 - unbrandedC1形容詞焼き印のない;ブランドのないThe rancher found three unbranded calves near the river.
brand はもともと「焼き印」。そこから「商標、ブランド」の意味が生まれた。 - herdB2名詞(牛などの)群れA small herd of cattle was grazing by the road.
a herd of cows / elephants。羊は a flock of sheep、魚は a school of fish と使い分ける。 - strayB2名詞・形容詞迷子の動物;はぐれたWe found a stray dog in the park.
mustang の語源 mesteño も「はぐれた家畜」。stray from ~で「~からそれる」。 - jargonB2名詞専門用語、仲間うちの言葉The letter was full of legal jargon.
gobbledygook は「分かりにくい jargon」をからかう言い方。 - coinC1動詞(新しい語を)作り出すNobody knows who first coined the word.
名詞では「硬貨」。coin a phrase で「うまいことを言えば」。 - plainB1形容詞分かりやすい、飾らないPlease write the report in plain English.
plain English は「専門用語を使わない分かりやすい英語」。gobbledygook の反対。
公式・一次情報をチェック
- Maverick, Samuel Augustus(Handbook of Texas Online)tshaonline.org
- maverick(The American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
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一匹狼を表す英語 maverick は、テキサスの土地持ちサミュエル・マーヴェリックの名字。焼き印のない子牛をこう呼んだのが始まりとされる。元下院議員の孫は1944年、お役所の回りくどい文を、七面鳥の鳴き声をまねた語 gobbledygook と呼び「activation を使う者は撃つ」と書いた。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Marks, Paula Mitchell「Maverick, Samuel Augustus」Handbook of Texas Online(テキサス州歴史協会, 2023年改訂)tshaonline.org
- Henderson, Richard B.「Maverick, Fontaine Maury」Handbook of Texas Online(テキサス州歴史協会)tshaonline.org
- The American Heritage Dictionary「maverick」「gobbledygook」「mustang」「sideburns」「burnsides」「Burnside」ahdictionary.com
- Dictionary.com「maverick」(Origin of maverick)dictionary.com
- Oxford Learner's Dictionaries「gobbledegook」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
- TIME (1944-04-10) People: Strikers / TIME (1944-05-29) People: People, May 29, 1944time.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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