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「テディベア」のテディは米大統領のあだ名。“撃たなかったクマ”は助かっていなかった

「テディベア」のテディは米大統領のあだ名。“撃たなかったクマ”は助かっていなかった

読む前に予想してみよう!

テディベアのもとになったクマは、ルーズベルト大統領に命を助けられて森へ帰された

研究カード(どんな研究?)
対象
1902〜1926年の新聞・公的機関の資料・辞書・原作
規模
新聞記事5本+公的機関・研究者の解説
研究の種類
文献調査
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

テディベアは、1902年にルーズベルト大統領が木に縛られたクマを撃たなかった話から。ただ当時の新聞によると、そのクマは大統領の指示でナイフでとどめを刺されていた。

ひとことで言うとテディベアの「テディ」は、アメリカの大統領のあだ名なんだって!

もくじ
  1. テディベアの由来は、1902年のミシシッピ州のクマ狩り
  2. 撃たなかった。でも、助けもしなかった
  3. 漫画家が「年寄りのクマ」を「かわいいクマ」に描きかえた
  4. 同じころドイツでも:シュタイフの「55 PB」
  5. おまけ:次の大統領は「ビリー・ポッサム」で大失敗
  6. おまけ2:くまのプーさんの最初の名前は「エドワード・ベア」
  7. どんでん返し:大統領は「テディ」と呼ばれるのが大嫌いだった
  8. まとめ

ふわふわのクマのぬいぐるみ、テディベア(teddy bear)。この「テディ」は、アメリカの第26代大統領セオドア・ルーズベルトのあだ名です。

名前のもとは、1902年の狩りで大統領が「木に縛られたクマを撃たなかった」という話。やさしい大統領がクマを助けた美談として、よく紹介されます。

ところが、数日後の新聞を読むと、クマは助かっていませんでした。大統領の指示で、同行者がナイフでとどめを刺していたのです。しかも大統領本人は、「テディ」と呼ばれるのが大嫌いでした。

01テディベアの由来は、1902年のミシシッピ州のクマ狩り

アメリカの国立公園局(NPS)によると、話はこうです。

国立公園局は、大統領が縛られたクマを撃つのを「extremely unsportsmanlike(まったくスポーツマンらしくない)」と考えた、と書いています。狩りは、動物にも逃げるチャンスがある公平な勝負でなければならない。そういう考え方です。

02撃たなかった。でも、助けもしなかった

問題は、その先です。新聞記事は、こう続きます。

大統領は同行していたパーカー氏に「Put it out of its misery(楽にしてやれ)」と言い、パーカー氏がナイフでクマの命を絶った。

国立公園局の子ども向けページにも、クマは犬にひどくかまれて傷ついており、大統領が楽にしてやるよう頼み、クマは狩猟用ナイフで殺された、とはっきり書かれています。

つまり大統領が断ったのは、「縛られたクマを自分の手柄として撃つこと」でした。クマを森へ帰したわけではありません。

大統領が断ったのは「縛られたクマを撃つこと」。クマは同行者の手でとどめを刺された(1902年11月の新聞記事による)
大統領が断ったのは「縛られたクマを撃つこと」。クマは同行者の手でとどめを刺された(1902年11月の新聞記事による)

03漫画家が「年寄りのクマ」を「かわいいクマ」に描きかえた

この話が、どうして「かわいいぬいぐるみ」になったのでしょう。

カギは新聞の漫画でした。アメリカ国立公文書館によると、漫画家クリフォード・ベリーマンが1902年11月16日の『ワシントン・ポスト』紙に描いた風刺漫画「Drawing the Line in Mississippi(ミシシッピで一線を引く)」が、のちのテディベアの姿を初めて描いたものです。draw the line は「ここから先はしない」と、けじめをつけることを言う英語の言い回しです。

公文書館の説明では、本当は年寄りのクマ(an old bear)だったのに、ベリーマンはそれを小さくてかわいいクマに描きかえました。そのクマはベリーマンの漫画のおなじみのキャラクターになります。アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)も teddy bear の語源を「子グマ(a bear cub)の命を助ける姿を漫画に描かれたルーズベルトのあだ名 Teddy から」と説明しています。辞書の中でも、235ポンドのクマは「子グマ」になっているのです。

この漫画を見たのが、ニューヨークのブルックリンでお菓子屋を営むモリス・ミクトムと妻のローズでした。2人はぬいぐるみも作っていて、大統領にささげるクマのぬいぐるみを作り、「Teddy's Bear(テディのクマ)」と名づけて売り出します。大人気になり、ミクトムはのちにおもちゃ会社(アイデアル・トイ社)を立ち上げました。

なお、大統領に手紙を書いて名前を使う許可をもらった、という話は、国立公園局の子ども向けページでは「ミクトム家がそう語っている」という書き方です。セオドア・ルーズベルト大統領図書館は、その手紙は見つかっておらず、裏づけられないとしています。

04同じころドイツでも:シュタイフの「55 PB」

ほぼ同じころ、海の向こうのドイツでもクマのぬいぐるみが生まれていました。ドイツのおもちゃ会社シュタイフ(Steiff)の公式サイト(社史と、代表的なクマの解説ページ)によると、

  • 1902年、リヒャルト・シュタイフが「Bär 55 PB」をデザイン。腕と脚が動くクマのぬいぐるみ
  • 55は立った高さ55センチ、P は Plüsch(ぬいぐるみに使う、毛足の長い布)、B は beweglich(動く)
  • 1903年のライプツィヒの見本市で、アメリカの業者が3,000体を注文
  • ただし、その最初の55 PB は、いま残っているものが1体も確認されていない

シュタイフの社史は、1906年の項目に「シュタイフのクマがテディベアになる」と書き、あだ名が「テディ」だった大統領が、名前と人気に大きな役割を果たしたとしています。ドイツ生まれのクマに、あとからアメリカ大統領のあだ名がついたわけです。

05おまけ:次の大統領は「ビリー・ポッサム」で大失敗

テディベアがあまりに売れたので、「次の大統領でも同じことを」と考えた人たちがいました。

1909年1月、ジョージア州アトランタで、次の大統領ウィリアム・タフトを招いた晩さん会が開かれます。料理の目玉は、なんとオポッサム(フクロネズミ)の肉でした。当時の新聞(『エッジフィールド・アドバタイザー』1909年1月20日)によると、食事のあとタフトには、テディベアにならって作ったオポッサムのぬいぐるみ「ビリー・ポッサム(Billy Possum)」が、新しい政権のシンボルとして贈られました。Billy は William(ウィリアム)の愛称です。

同じ日の別の新聞は、タフトが演説で「オポッサムを食べないでくれという手紙が届いていたが、おいしくいただいた」と話したことも伝えています。自分が食べた動物が、自分のシンボルのぬいぐるみになったのです。

ぬいぐるみは1月末にアトランタで発売されました。新聞によると、あまりにそっくりで、店で犬が飛びかかったほどでした。でも、売れませんでした。スミソニアン協会の雑誌『スミソニアン』(2025年)によると、1909年7月には新聞に「ビリー・ポッサムは失敗、テディベアは今も子どもたちの人気者」という見出しが出ます。シュタイフ社もしぶしぶ作りましたが、リヒャルト・シュタイフは後に業界誌で「動物が醜すぎた」と振り返っています。

06おまけ2:くまのプーさんの最初の名前は「エドワード・ベア」

クマのぬいぐるみの名前は、もう1つ有名なものがあります。A・A・ミルンの『クマのプーさん(Winnie-the-Pooh)』(1926年)の前書きによると、プーは、もとは Edward Bear(エドワード・ベア) という名前でした。オックスフォードの学習辞典によると、Teddy は Edward の愛称でもあります。

「わくわくする自分だけの名前がほしい」と言われたクリストファー・ロビン少年が、その場で付けたのが Winnie-the-Pooh。Pooh は少年が白鳥に付けていた名前、Winnie はロンドン動物園にいた本物のクマの名前です。

カナダ退役軍人省の戦争記念碑データベースの解説によると、このクマは1914年8月24日、カナダ軍の獣医ハリー・コールボーン(Harry Colebourn)が、列車が止まったオンタリオ州ホワイトリバーで、猟師から20ドルで買った子グマでした。名前は彼の故郷の町ウィニペグ(Winnipeg)から取った Winnie。同じ年の12月9日にロンドン動物園に預けられました。しかもメスでした。ミルンの本にも、Winnie という名前を聞いた語り手が「でも、彼は男の子だと思ってたけど?」と聞き返す場面があります。

07どんでん返し:大統領は「テディ」と呼ばれるのが大嫌いだった

ここまで「テディ」と書いてきましたが、本人はこの呼び名をひどく嫌っていました。

テキサス大学名誉教授の歴史家ルイス・グールドは、オックスフォード大学出版局のブログ(2012年)で、ルーズベルトは自分の世間でのあだ名を「abhorred(ひどく嫌った)」と書いています。親しい人でさえ「テディ」とは呼びませんでした。新聞の見出しは目を引く「Teddy」を好み、政敵は子どもっぽい人物に見せるためにこのあだ名を使った、といいます。

世界中の子どもが抱いて眠るぬいぐるみに、本人が嫌がった呼び名が付いている。テディベアの名前は、大統領本人ではなく、新聞と漫画とおもちゃ屋が作ったものだったのです。

08まとめ

テディベアの「テディ」は、セオドア・ルーズベルト大統領のあだ名。もとになったのは1902年、縛られたクマを撃たなかった狩りの話です。ただ、クマはそのあとナイフでとどめを刺され、漫画の中で「かわいい子グマ」に生まれ変わりました。

おもちゃ屋が名前を付け、ドイツのぬいぐるみにもその名が付き、次の大統領はオポッサムのぬいぐるみで同じ人気を狙って失敗。そして本人は「テディ」と呼ばれるのが大嫌い。手もとのクマのぬいぐるみを見たら、ちょっと複雑な気持ちになるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn November 1902, President Theodore Roosevelt joined a bear hunt in Mississippi. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In November 1902, President Theodore Roosevelt joined a bear hunt in Mississippi. The other hunters found bears, but he did not. So his guide caught a large black bear, tied it to a tree and sent for the president. Roosevelt refused to shoot an animal that could not get away.

Two days later, a cartoon in The Washington Post showed the scene, and the big old bear was drawn as a small, cute one. A candy shop owner in Brooklyn saw it, made a soft toy bear and called it "Teddy's Bear." The real story has a sad ending, though. A few days later, a newspaper reported that the bear had been killed with a knife.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1902年11月、セオドア・ルーズベルト大統領はミシシッピ州でのクマ狩りに参加した。ほかの猟師たちはクマを見つけたが、彼は見つけられなかった。そこで案内役が大きな黒いクマをつかまえ、木に縛り、大統領を呼びにやった。ルーズベルトは、逃げられない動物を撃つことを断った。

2日後、『ワシントン・ポスト』紙の漫画がその場面を描き、大きな年寄りのクマは小さくてかわいいクマとして描かれた。ブルックリンのお菓子屋の店主がそれを見て、やわらかいクマのおもちゃを作り、「テディのクマ」と名づけた。ただし、本当の話には悲しい結末がある。数日後の新聞は、クマがナイフで殺されていたと伝えた。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did the guide tie the bear to a tree?

Q2. How was the bear shown in the cartoon?

Q3. What does the writer suggest in the last two sentences?

重要単語

  • teddy bearA2
    名詞クマのぬいぐるみMy little sister can't sleep without her teddy bear. 短く teddy とも言う。複数形は teddies。Teddy は Theodore や Edward の愛称。
  • nicknameB1
    名詞あだ名、愛称"Teddy" was a nickname, not his real name. もとは an eke name(追加の名前)で、an の n がくっついて a nekename になった語。
  • cartoonB1
    名詞(新聞の)風刺漫画、一コマ漫画;アニメThe cartoon made the president look kind. political cartoon は「政治風刺漫画」。cartoonist は「漫画家」。
  • refuseB1
    動詞断る、拒むHe refused to shoot the bear. refuse to do で「〜するのを断る」。名詞は refusal。入試頻出。
  • put ... out of its miseryC1
    熟語(苦しむ動物を)楽にしてやるThe vet put the injured horse out of its misery. 人に使うと、くだけて「早く答えを教えて安心させる」。Put me out of my misery! = もったいぶらずに教えて!
  • stuffed toyB1
    名詞ぬいぐるみShe keeps all her stuffed toys on the bed. stuff は「詰める」。アメリカでは stuffed animal、イギリスでは soft toy とも言う。
  • headlineB1
    名詞(新聞の)見出しThe name was short enough to fit in a headline. make headlines で「大きく報道される」。
  • flopB2
    動詞・名詞(商品・映画などが)大失敗する;大失敗The opossum toy was a flop. くだけた語。反対は hit(大ヒット)。
「テディベア」のテディは、ルーズベルト大統領のあだ名。1902年、木に縛られたクマを撃たなかった話から生まれた。ところが当時の新聞を読むと、そのクマは大統領の指示でナイフでとどめを刺されていた。しかも本人は「テディ」と呼ばれるのが大嫌いだった。

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出典・参考文献(8件)タップで表示
  1. Fort Mill Times (1902-11-19) President After Bears(Historic Newspapers of South Carolina)historicnewspapers.sc.edu
  2. National Park Service「The Story of the Teddy Bear」(セオドア・ルーズベルト生家国定史跡)nps.gov
  3. National Archives「Clifford K. Berryman: Political Cartoonist Extraordinaire」(米国国立公文書館)archives.gov
  4. Gould (2012) Teddy, Teddy, enough already, OUPblog(オックスフォード大学出版局)blog.oup.com
  5. Theodore Roosevelt Presidential Library「Did Roosevelt Like Being Called "Teddy"?」trlibrary.com
  6. Steiff「History」(シュタイフ社の公式社史)corporate.steiff.com
  7. Steiff「Iconic teddy bears」(55 PB の解説)steiff.com
  8. Dorre (2025) How a Stuffed Animal Named Billy Possum Tried—and Failed—to Replace the Teddy Bear, Smithsonian Magazinesmithsonianmag.com

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