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英語のマジか!?ホント

「ファン」の語源は“神殿”。ピアノも zoo も taxi も、長い単語の略だった

「ファン」の語源は“神殿”。ピアノも zoo も taxi も、長い単語の略だった

読む前に予想してみよう!

英語の fan(ファン)と、扇風機の fan は、同じ語源の言葉だ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の略語(短くした単語)
規模
1500年代〜20世紀初めの用例
研究の種類
辞書の語源記述+1710年の雑誌記事の原文
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

fan は fanatic(熱狂的な信者)の略で、1880年代後半のアメリカ野球から広まった。もとはラテン語の「神殿」。zoo・mob・piano・taxi も略語だった。

ひとことで言うと「ファン」のもとをたどると、ラテン語の「神殿」に行き着く!

もくじ
  1. 「ファン」の語源は? fanatic の略で、最初は野球好き
  2. 「神を汚す」の profane も親戚
  3. zoo は zoological garden の略。発音まで変わった
  4. mob は「移り気な群衆」。スウィフトが嫌った言葉
  5. ピアノは「弱い」、タクシーは「料金メーター+はね跳び」
  6. どんでん返し:扇風機の「ファン」は他人
  7. まとめ

「推しのライブに行く」「サッカーのファン」。毎日のように使う「ファン(fan)」。

これは英語の fanatic(ファナティック=熱狂的な信者、狂信者)を短くした言葉です。そして fanatic をさらにさかのぼると、ラテン語の fanum(神殿) に行き着きます。

つまりファンは、もとをたどれば「神殿の人」。英語には、このように長い単語の頭だけを切りとって生まれた単語がたくさんあります。動物園の zoo、群衆の mob、楽器の piano、乗り物の taxi も、その仲間です。

01「ファン」の語源は? fanatic の略で、最初は野球好き

アメリカの辞書 Dictionary.com(ランダムハウス英語辞典)によると、応援する人という意味の fan は、1885〜90年ごろのアメリカ英語で初めて記録されました。初期の例は、熱心な野球ファンを指すものだったそうです。それが、スポーツや音楽などあらゆる分野の熱心な人に広がりました。

オックスフォードの学習辞典(OALD)も、この fan を「19世紀後半、もとはアメリカで。fanatic の略」と説明しています。

では、その fanatic はどこから来たのか。

神殿でわれを忘れて熱狂する人を指したことばが、スタジアムで声をからす人の呼び名になったわけです。fan は、fanatic にあった「行きすぎ」の感じが薄い、と Dictionary.com は説明しています。

02「神を汚す」の profane も親戚

fanum(神殿)からは、もう一つ、意外な英単語が生まれています。profane(プロフェイン=神を汚す、冒涜的な) です。

AHD によると、profane はラテン語の profanus から。pro-(前に、外に)+ fanum(神殿) で、「神殿の前で」、つまり神聖な場所の外にあるもの、という意味でした。そこから「神聖でない」「神を汚す」の意味になったのです。

熱狂的な fan と、神を汚す profane。正反対のような2つの単語は、同じ「神殿」から生まれた兄弟です。

03zoo は zoological garden の略。発音まで変わった

動物園の zoo も略語です。

OALD によると、zoo は19世紀半ばに zoological garden(動物園) を短くしてできた語で、はじめはロンドンのリージェンツ・パークの動物園だけを指していました。

ここで発音に注目してください。AHD によると、zoological は「ゾウアロジカル」のように、zo-o を2つの音節に分けて読みます。ところが略した zoo は「ズー」(OALD)。切りとったら、もとの単語にはない音になったのです。

しかも今は、逆のことも起きています。AHD の zoology(動物学)の項によると、本来は「ゾウ」と読む最初の部分を、zoo につられて「ズー」と読む人も多く、2017年の調査では、AHD が言葉の使い方について意見を聞いている専門家たちの45%が、自分は「ズー」と読むと答えました。略した zoo が、親戚の単語 zoology の発音まで変えはじめているのです。

zoo- は、ギリシャ語の zōion(生き物)から来た部分です(AHD)。

04mob は「移り気な群衆」。スウィフトが嫌った言葉

mob(モブ) は「乱暴な群衆、暴徒」。日本語でも、群衆が出てくる場面を「モブシーン」と言います(デジタル大辞泉)。

OALD によると、mob は17世紀後半に生まれた語で、ラテン語の mobile vulgus(すぐに興奮する群衆) を短くした、古い英語の mobile の略です。AHD は mobile vulgus を「移り気な群衆」と説明しています。AHD によると、この mobile はラテン語の mobilis(動きやすい)から。スマホの「モバイル」と「モブ」は、同じラテン語から来た親戚なのです。

1710年、作家のスウィフトは雑誌に手紙を寄せ、mob のような「単語のちょん切り」を批判した(The Tatler, No. 230)
1710年、作家のスウィフトは雑誌に手紙を寄せ、mob のような「単語のちょん切り」を批判した(The Tatler, No. 230)

この「ちょん切り」に本気で怒った人がいます。『ガリバー旅行記』の作者、ジョナサン・スウィフトです。

1710年9月の雑誌『The Tatler(タトラー)』230号に、スウィフトは英語の乱れを嘆く手紙を寄せました。その中で彼は、長い単語の最初の音節だけを残して後ろを捨てる流行を批判し、例として phizz、hipps、mobb、poz、rep を挙げています。phiz は physiognomy(顔つき)の略です(Dictionary.com)。

スウィフトは、言葉を短く切ることを、フクロウがネズミの脚をかみ切って逃げられないようにしてから太らせるのにたとえました。そして、こう書いています。

「ここ数年、mobb と banter(からかい)が広まるのを止めようと手をつくしてきたが、数に押し切られた」(The Tatler, No. 230)

結果はごらんのとおり。mob は、いまでは学習辞典にもふつうに載る単語です。

この本の編集者の注には、晩年まで mob を許さなかったスウィフトの話も紹介されています。知り合いの女性が mob と言ったところ、スウィフトは怒って「二度とその言葉を使うな」と言い、「では何と言えば?」と聞かれると「rabble(騒がしい群衆)に決まっている」と答えた、というものです。あくまで後の時代に伝えられた話として読んでください。

05ピアノは「弱い」、タクシーは「料金メーター+はね跳び」

略語の正体は、ほかにもあります。

piano(ピアノ)OALD によると、piano は19世紀初めにイタリア語から入った語で、pianoforte の略です。AHD によると、pianoforte のもとは「piano(弱い)と forte(強い)が出せるチェンバロ」という意味のイタリア語。「弱い音も強い音も出せる」という長い名前から「強い」が落ちて、「弱い」だけが残ったのです。楽譜の p(ピアノ=弱く)と同じ言葉です。

taxi(タクシー)OALD によると、taxi は20世紀初めに taxi-cab(taximeter cab) を短くした語。taximeter はフランス語の taximètre で、taxe(料金)+ mètre(はかる道具)、つまり料金メーターです。

後ろ半分の cab も略語です。OALD によると19世紀初めに cabriolet を短くしたもの。AHD によると、cabriolet は1頭の馬が引く、折りたたみの幌がついた二輪の馬車で、いまは折りたたみ屋根の車(カブリオレ)も指します。語源はフランス語の「小さなはね跳び」で、さかのぼるとイタリア語の「ノロジカ」、ラテン語の caper(雄ヤギ) に行き着きます。

taxicab は、2つの部分の両方が略語。直訳すれば「料金メーター付きの、小さなはね跳び」。これが、いまの「タクシー」です。

ちなみに、乗り物の bus も omnibus の略です(くわしくは語源ずかんの「bus」)。

06どんでん返し:扇風機の「ファン」は他人

ここで注意。扇風機や換気扇の「ファン(fan)」は、応援する fan とはまったく別の言葉です。

Dictionary.com によると、風を送る fan は900年より前から英語にある古い言葉で、ラテン語の vannus(箕〔み〕=穀物をあおってゴミを飛ばす平たいかご) から来ています。OALD も、古英語の fann(穀物をあおる道具)から来たと説明しています。

つづりも発音も同じなのに、片方は「神殿」、片方は「農具」から来た他人どうし。Dictionary.com は、どちらも空気をたくさん動かすけれど、と冗談まじりに書いたうえで、関係はないとはっきり書いています。

mob についても、スウィフトのように「略語は言葉の乱れだ」と考える人が18世紀にもいました。それでも mob は生き残り、いまでは誰も略語だと気にしません。短くした言葉が定着するかどうかは、使う人の数で決まるのかもしれません。

07まとめ

ファンは fanatic の略で、もとはラテン語の「神殿」。zoo は zoological garden、mob は「移り気な群衆」、piano は「弱い(と強い)」、taxi は「料金メーター付きの馬車(cab)」。

英語の身近な単語には、長い名前の頭だけが生き残ったものがたくさんあります。次に「大ファンです」と言うときは、心の中で「神殿の人です」と言いかえてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen Americans began calling baseball lovers "fans" in the late 1880s, they were shortening the word… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When Americans began calling baseball lovers "fans" in the late 1880s, they were shortening the word "fanatic." That older word entered English in the early 1500s and goes back to the Latin "fanum," meaning "temple." A fanatic was first someone who seemed carried away by a god. The same Latin word gave English "profane," from a Latin phrase meaning "in front of the temple."

Shortening long words is an old habit in English. "Mob" comes from the Latin "mobile vulgus," or "excitable crowd," and in 1710 the writer Jonathan Swift complained that he had tried for years to stop people from using it. He failed. "Zoo" was cut from "zoological garden" in the 1800s, and "taxi" from "taximeter cab" in the early 1900s.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1880年代の終わりにアメリカ人が野球好きを「fan」と呼び始めたとき、彼らは「fanatic」という語を短くしていた。この古いほうの語は1500年代の初めに英語に入り、「神殿」を意味するラテン語の「fanum」にさかのぼる。fanatic は、最初は神にとりつかれたように見える人のことだった。同じラテン語から英語の「profane」も生まれた。もとは「神殿の前で」という意味のラテン語の言い方だ。

長い語を短くするのは、英語の古い習慣だ。「mob」はラテン語の「mobile vulgus(すぐ興奮する群衆)」から来ていて、作家のジョナサン・スウィフトは1710年、人々にこの語を使わせまいと何年も努力してきたと嘆いた。彼は失敗した。「zoo」は1800年代に「zoological garden」から、「taxi」は1900年代の初めに「taximeter cab」から切りとられた。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What did the Latin phrase behind "profane" mean?

Q3. What does "He failed" tell us about the word "mob"?

重要単語

  • fanA2
    名詞ファン、熱心な愛好者I'm a big fan of this band. fanatic の略。a big fan of ~「~の大ファン」。扇風機の fan とは語源が別。
  • fanaticC1
    名詞熱狂的な人、狂信者He is a fitness fanatic who runs every morning. ラテン語 fanum(神殿)から。形容詞は fanatical。fan より「行きすぎ」の感じが強い。
  • profaneC1
    形容詞神を汚す、冒涜的な;世俗のThe movie was criticized for its profane language. pro-(外に)+ fanum(神殿)。fanatic と同じ「神殿」から。
  • mobB2
    名詞(乱暴な)群衆、暴徒A mob of fans waited outside the hotel. ラテン語 mobile vulgus(すぐ興奮する群衆)の略。mobile(動きやすい)と同じラテン語 mobilis から。
  • abbreviationB2
    名詞略語、省略形"Zoo" started as an abbreviation of "zoological garden." an abbreviation of/for ~「~の略語」。動詞は abbreviate。
  • zoologicalC1
    形容詞動物(学)のThe city has a zoological garden. 発音は「ゾウアロジカル」。略した zoo は「ズー」と読みが変わった。
  • syllableB2
    名詞音節The word "piano" has three syllables. スウィフトは「最初の音節だけ残して後ろを捨てる」流行を批判した。
推しの「ファン(fan)」は fanatic(熱狂的な信者)の略。1880年代後半のアメリカで野球好きに使われ始めた。もとはラテン語の fanum(神殿)。zoo は zoological garden、mob はラテン語の mobile vulgus(移り気な群衆)、piano は pianoforte(弱い・強い)の「弱い」だけ。英語には、長い単語を短くした言葉がたくさんある。

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出典・参考文献(9件)タップで表示
  1. Dictionary.com(Random House Unabridged)「fan」(Origin)dictionary.com
  2. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「fanatic」「profane」ahdictionary.com
  3. Oxford Advanced Learner's Dictionary「mob」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  4. Swift (1710) The Tatler, No. 230(The Prose Works of Jonathan Swift, Vol. 9, Project Gutenberg)gutenberg.org
  5. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「pianoforte」ahdictionary.com
  6. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「zoology」(Usage Note)「zoological」「mob」「cabriolet」ahdictionary.com
  7. Oxford Advanced Learner's Dictionary「fan」「zoo」「piano」「taxi」「cab」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  8. Dictionary.com(Collins English Dictionary)「phiz」dictionary.com
  9. デジタル大辞泉「モブ」(コトバンク)kotobank.jp

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