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英語のマジか!?ホント

「i」の上の点には名前がある。tittle(ティトル)、本の「タイトル」と同じ語源

「i」の上の点には名前がある。tittle(ティトル)、本の「タイトル」と同じ語源

読む前に予想してみよう!

小文字の i の上の点には、英語で決まった名前がない

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の辞書・聖書の英訳と原文・中世の写本の研究
規模
12世紀〜現代の用例
研究の種類
語源調査(辞書・文献)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

小文字の i と j の点は、英語で tittle(ティトル)という。もとはラテン語の titulus で、title(タイトル)や ñ の「~」を指す tilde も同じ語から生まれた。

ひとことで言うと「i」の点には「ティトル」という名前があって、「タイトル」と同じことばから生まれたんだって!

もくじ
  1. i の点は「tittle」。辞書にちゃんと載っている
  2. tittle、title、tilde は「同じラテン語」の兄弟
  3. 聖書の「jot and tittle」。jot はギリシャ文字のイオタ
  4. メモする「jot down」も同じイオタ
  5. 点がないと、縦棒だらけで読めなかった
  6. おまけ:点が大文字になっても消えない言語
  7. どんでん返し:「to a T」の T は tittle? 辞書でも割れている
  8. まとめ

小文字の「i」と「j」の上にある、あの小さな点。名前があるのを知っていますか?

答えは tittle(ティトル)。英語の辞書にちゃんと載っている単語です。

しかもこの tittle、本や映画の「タイトル(title)」と、もとは同じラテン語です。スペイン語の ñ の上のニョロっとした「~」、チルダ(tilde)も同じ一族。小さな点と、題名と、波線。見た目はばらばらなのに、さかのぼると1つのラテン語に行き着きます。

01i の点は「tittle」。辞書にちゃんと載っている

まず辞書で確かめます。アメリカの辞書 Merriam-Webster(M-W)では、tittle の意味は2つです。

  1. 文字を書いたり印刷したりするときに使う、点や小さな記号
  2. ほんのわずかな部分

American Heritage Dictionary(AHD)は、1つ目の例として「アクセント記号、母音を表す記号、i の上の点」を挙げています。M-W が2026年10月3日の「今日の単語(Word of the Day)」で tittle を取り上げたときも、小文字の i と j の上の点が tittle だと説明していました。

M-W によると、tittle が英語で最初に使われたのは12世紀。少なくとも900年ほど前からある言葉です。Dictionary.com は、古英語の titul までふくめて「西暦900年より前」としています。

02tittle、title、tilde は「同じラテン語」の兄弟

では、なぜ点が「タイトル」なのでしょう。

もとの titulus は「上に書いたもの」「札・見出し」といった意味の語でした。そこから題名の意味も、文字の上につける記号の意味も生まれました。英語では、題名のほうが title、記号のほうが tittle という別々の単語になりました。M-W は、tittle がチルダなどいろいろな記号の呼び名として何百年も使われてきたと書いています。

本の「題名」も、文字の上の「点」も、もとはラテン語で「上に書いたもの」(titulus)だった
本の「題名」も、文字の上の「点」も、もとはラテン語で「上に書いたもの」(titulus)だった

03聖書の「jot and tittle」。jot はギリシャ文字のイオタ

tittle がよく出てくるのが、jot and tittle という組み合わせです。よく知られた例が、1611年に出た英語訳の聖書、いわゆる「欽定訳聖書(King James Version)」。マタイによる福音書5章18節に、律法(神が与えたおきて)から一つの jot も一つの tittle も消えることはない、という一節があります。

one jot or one tittle shall in no wise pass from the law(マタイ5章18節、欽定訳)

では、jot とは何でしょう。AHD によると、jot はラテン語を経て、ギリシャ文字の iota(イオタ)から来た語です。イオタはギリシャ文字の9番目で、縦棒1本で書く小さな文字。英語の i にあたります。

新約聖書のもとのギリシャ語を見ると、この部分は「イオタ1つ、またはκεραία(ケライア)1つ」。ギリシャ語の大辞典(Liddell–Scott–Jones)によると、ケライアのもとの意味は「角(つの)」。書き文字では「文字の先の小さな突き出た部分」を指し、この辞典はまさにマタイ5章18節を用例に挙げています。

つまり「jot and tittle」は、もとをたどると「縦棒1本の小さな文字と、文字の先のちょこんとした角」。どちらも「ほんのささいなもの」のたとえです。

04メモする「jot down」も同じイオタ

この jot、今の英語では動詞としておなじみです。

  • jot down:さっとメモする Let me jot down your address.(住所をメモさせて)

AHD の語源欄では、名詞の jot(ほんの少し)も動詞の jot(さっと書きとめる)も、同じ1つの見出しにまとめられ、ラテン語 iota、ギリシャ語 iota にさかのぼるとされています。

イオタはもっとさかのぼれます。AHD の巻末付録「セム語の語根」(アラビア語やヘブライ語などの仲間の、語のもとをまとめた一覧)によると、iota と jot は、フェニキア文字の yōd(ヨード)から来ていて、その意味は「手」。同じ「手」を表す語根から、オリオン座の赤い星 Betelgeuse(ベテルギウス)の名前も生まれています。もとはアラビア語の yad al-jawzāʾ(ジャウザーの手)。ジャウザーは、ふたご座、のちにオリオン座を指した名前です。AHD によると、今の Betelgeuse というつづりは、中世の写字生がアラビア文字の y を b と読みまちがえたことなどから生まれました。

英語の not an iota(これっぽっちも〜ない)も同じ文字から。There's not an iota of truth in it.(そこには真実のかけらもない)のように使います。

05点がないと、縦棒だらけで読めなかった

では、i に点がないと、何が困るのでしょう。

ブリタニカ百科事典の古文書学(パレオグラフィー)の項によると、中世後期のゴシック体の手書き文字は、minim(ミニム)と呼ばれる短い縦棒が森のように並ぶ書き方でした。u は縦棒2本、i は縦棒1本。そのうえ i には点がないか、あっても細い線がちょっとつくだけで、しかも位置がずれていることが多かったのです。

その結果、たとえば ium という文字の並びは、uim、uiui、niui、mui、miu……と、いくらでも読めてしまいました。縦棒の読みまちがいは「ミニムの崩れ」と呼ばれ、古文書の研究者の間でおなじみの悩みだといいます。

スコットランドの公的な記録サイト ScotlandsPeople の古文書の読み方ガイドも、点は i か j のしるし、u の上の小さな曲線は n と見分けるためのしるし、と説明しています。i の点は、縦棒だらけの文字の中で「ここが i ですよ」と知らせる目印として役立っていたのです。

06おまけ:点が大文字になっても消えない言語

英語では、i を大文字にすると点が消えて I になります。ところがトルコ語では違います。

文字コードの国際規格をつくるユニコード・コンソーシアムの資料によると、トルコ語とアゼルバイジャン語では、

  • 点のある i の大文字は、点つきの İ
  • 点のない ı の大文字が、ふつうの I

という組み合わせになっています。点のあるなしで別の文字なのです。同じ資料には、リトアニア語ではアクセント記号がつくときも小文字の i の点を残す、という決まりも載っています。

もう2つ。M-W の「今日の単語」によると、t や f の横棒は cross stroke(クロス・ストローク)、o の真ん中の穴のように線で囲まれたすき間は counter(カウンター)と呼ばれます。AHD によると、dot(点)のもとの古英語 dott は「できものの頭」という意味でした。

07どんでん返し:「to a T」の T は tittle? 辞書でも割れている

英語には to a T(ぴったり、完ぺきに)という熟語があります。That dress suits you to a T.(そのドレス、あなたにぴったり)

この T、じつは tittle の頭文字だという説があります。M-W は to a T を「to a tittle の短縮」と書いています。小さな点ひとつまで正確に、というわけです。

ところが Dictionary.com(アメリカン・ヘリテージの熟語辞典の説明)は別の書き方をしています。この表現は1600年代後半からあり、正確な線を引くT定規を指しているのかもしれない、t の横棒をきちんと引くことだと考える人もいる、という説明で、tittle にはふれていません。

つまり to a T の T の正体は、辞書によって答えが違うのです。もっともらしい語源ほど、一つに決めつけずに読むのがよさそうです。

08まとめ

i と j の上の小さな点の名前は tittle。もとをたどると、本の title や、ñ の tilde と同じラテン語 titulus(上に書いたもの)でした。聖書の「jot and tittle」は「縦棒1本の小さな文字と、文字の先の小さな角」、jot down の jot はギリシャ文字のイオタ、さらにさかのぼるとフェニキア文字の「手」です。

次に i の点を打つときは、「これは tittle」と心の中で言ってみてください。ノートの上の小さな点に、2,000年以上の文字の歴史が乗っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe dot over a small "i" or "j" has a name. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The dot over a small "i" or "j" has a name. It is called a "tittle." Merriam-Webster says the word was first used in the 12th century. It comes from the Latin "titulus," which meant something written above, like a heading.

That same Latin word gave English "title" and Spanish "tilde," the wavy mark you see in "ñ." The word appears in the phrase "jot and tittle" in the King James Bible of 1611.

In that verse, "jot" stands for iota, a Greek letter written as one short stroke. The same word lives on in "jot down," which means to write something quickly. So when you jot down a note, you are using the name of a Greek letter.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

小文字の「i」や「j」の上の点には名前がある。「tittle(ティトル)」と呼ばれる。メリアム・ウェブスターによると、この語が最初に使われたのは12世紀。ラテン語の「titulus」から来ていて、それは見出しのように「上に書いたもの」を意味していた。

同じラテン語から、英語の「title(タイトル)」や、「ñ」に見られる波形の記号であるスペイン語の「tilde(チルダ)」が生まれた。この語は、1611年の欽定訳聖書の「jot and tittle」という言い回しに出てくる。

その節で「jot」は、短い縦棒1本で書くギリシャ文字のイオタを表している。同じ語は、「さっと何かを書く」という意味の「jot down」に生き残っている。だから、メモを jot down するとき、あなたはギリシャ文字の名前を使っているのだ。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the Latin word "titulus" mean?

Q2. Where does the phrase "jot and tittle" appear?

Q3. What does the writer suggest in the last sentence?

重要単語

  • tittleC1
    名詞i や j の上の点;ほんのわずかThe tittle on the "i" is so small that many people forget it has a name. title(題名)と同じラテン語 titulus から。jot and tittle「ほんのささいな点」の形でよく出る。
  • jot downB2
    句動詞さっとメモするLet me jot down your phone number. jot はギリシャ文字 iota から。write down より「急いで短く」書く感じ。
  • iotaC1
    名詞ギリシャ文字のイオタ;ごくわずかThere isn't an iota of truth in that story. not an iota of ~「~が少しもない」。発音は「アイオウタ」。
  • titleA2
    名詞題名、肩書き、タイトルI can't remember the title of the song. スポーツの「タイトル(選手権)」もこの語。tittle と同じ祖先を持つ。
  • diacriticC1
    名詞発音区別符号(é の ´ や ñ の ~ など)The mark over the "n" in "señor" is a diacritic. 文字の上下につけて発音などを区別する記号。tittle の辞書の定義にも出てくる語。
  • to a TC1
    熟語ぴったり、完ぺきにThat jacket fits you to a T. suit/fit ~ to a T の形でよく使う。T の正体は辞書によって説明が分かれる。
  • strokeB2
    名詞(文字の)一画、線The letter "i" is just one short stroke and a dot. 「打つこと」「(水泳の)ひとかき」「脳卒中」など意味が多い。cross stroke は t の横棒。
小文字の i の上の点には名前がある。tittle(ティトル)。語源はラテン語の titulus で、本の title(タイトル)や、スペイン語 ñ の「~」を指す tilde(チルダ)も同じ語から生まれた。メモする jot down の jot も、ギリシャ文字の iota から来ている。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. American Heritage Dictionary「tittle」「title」「tilde」「jot」「iota」「dot」・Appendix of Semitic Roots「yd」ahdictionary.com
  2. Merriam-Webster「tittle」「to a T」・Word of the Day「tittle」(2026年10月3日。Internet Archive の保存版)web.archive.org
  3. Dictionary.com「to a T」「tittle」dictionary.com
  4. The King James Version of the Bible(1611年訳、Project Gutenberg 版)マタイ5章18節・ルカ16章17節gutenberg.org
  5. Liddell, Scott & Jones (1940) A Greek-English Lexicon「κεραία」(Perseus Digital Library, Tufts University)perseus.tufts.edu
  6. Encyclopaedia Britannica「paleography: Analysis of texts」(Internet Archive の保存版)web.archive.org

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