「i」の上の点には名前がある。tittle(ティトル)、本の「タイトル」と同じ語源

読む前に予想してみよう!
小文字の i の上の点には、英語で決まった名前がない
tittle(ティトル)という名前がある。アメリカの辞書 American Heritage は tittle の例に i の点を挙げ、Merriam-Webster の「今日の単語」も i と j の点を tittle と説明している。
- 対象
- 英語の辞書・聖書の英訳と原文・中世の写本の研究
- 規模
- 12世紀〜現代の用例
- 研究の種類
- 語源調査(辞書・文献)
- 確かさ
- ★★★☆☆
小文字の i と j の点は、英語で tittle(ティトル)という。もとはラテン語の titulus で、title(タイトル)や ñ の「~」を指す tilde も同じ語から生まれた。
ひとことで言うと「i」の点には「ティトル」という名前があって、「タイトル」と同じことばから生まれたんだって!
もくじ
小文字の「i」と「j」の上にある、あの小さな点。名前があるのを知っていますか?
答えは tittle(ティトル)。英語の辞書にちゃんと載っている単語です。
しかもこの tittle、本や映画の「タイトル(title)」と、もとは同じラテン語です。スペイン語の ñ の上のニョロっとした「~」、チルダ(tilde)も同じ一族。小さな点と、題名と、波線。見た目はばらばらなのに、さかのぼると1つのラテン語に行き着きます。
01i の点は「tittle」。辞書にちゃんと載っている
まず辞書で確かめます。アメリカの辞書 Merriam-Webster(M-W)では、tittle の意味は2つです。
- 文字を書いたり印刷したりするときに使う、点や小さな記号
- ほんのわずかな部分
American Heritage Dictionary(AHD)は、1つ目の例として「アクセント記号、母音を表す記号、i の上の点」を挙げています。M-W が2026年10月3日の「今日の単語(Word of the Day)」で tittle を取り上げたときも、小文字の i と j の上の点が tittle だと説明していました。
M-W によると、tittle が英語で最初に使われたのは12世紀。少なくとも900年ほど前からある言葉です。Dictionary.com は、古英語の titul までふくめて「西暦900年より前」としています。
02tittle、title、tilde は「同じラテン語」の兄弟
では、なぜ点が「タイトル」なのでしょう。
もとの titulus は「上に書いたもの」「札・見出し」といった意味の語でした。そこから題名の意味も、文字の上につける記号の意味も生まれました。英語では、題名のほうが title、記号のほうが tittle という別々の単語になりました。M-W は、tittle がチルダなどいろいろな記号の呼び名として何百年も使われてきたと書いています。

03聖書の「jot and tittle」。jot はギリシャ文字のイオタ
tittle がよく出てくるのが、jot and tittle という組み合わせです。よく知られた例が、1611年に出た英語訳の聖書、いわゆる「欽定訳聖書(King James Version)」。マタイによる福音書5章18節に、律法(神が与えたおきて)から一つの jot も一つの tittle も消えることはない、という一節があります。
one jot or one tittle shall in no wise pass from the law(マタイ5章18節、欽定訳)
では、jot とは何でしょう。AHD によると、jot はラテン語を経て、ギリシャ文字の iota(イオタ)から来た語です。イオタはギリシャ文字の9番目で、縦棒1本で書く小さな文字。英語の i にあたります。
新約聖書のもとのギリシャ語を見ると、この部分は「イオタ1つ、またはκεραία(ケライア)1つ」。ギリシャ語の大辞典(Liddell–Scott–Jones)によると、ケライアのもとの意味は「角(つの)」。書き文字では「文字の先の小さな突き出た部分」を指し、この辞典はまさにマタイ5章18節を用例に挙げています。
つまり「jot and tittle」は、もとをたどると「縦棒1本の小さな文字と、文字の先のちょこんとした角」。どちらも「ほんのささいなもの」のたとえです。
04メモする「jot down」も同じイオタ
この jot、今の英語では動詞としておなじみです。
- jot down:さっとメモする Let me jot down your address.(住所をメモさせて)
AHD の語源欄では、名詞の jot(ほんの少し)も動詞の jot(さっと書きとめる)も、同じ1つの見出しにまとめられ、ラテン語 iota、ギリシャ語 iota にさかのぼるとされています。
イオタはもっとさかのぼれます。AHD の巻末付録「セム語の語根」(アラビア語やヘブライ語などの仲間の、語のもとをまとめた一覧)によると、iota と jot は、フェニキア文字の yōd(ヨード)から来ていて、その意味は「手」。同じ「手」を表す語根から、オリオン座の赤い星 Betelgeuse(ベテルギウス)の名前も生まれています。もとはアラビア語の yad al-jawzāʾ(ジャウザーの手)。ジャウザーは、ふたご座、のちにオリオン座を指した名前です。AHD によると、今の Betelgeuse というつづりは、中世の写字生がアラビア文字の y を b と読みまちがえたことなどから生まれました。
英語の not an iota(これっぽっちも〜ない)も同じ文字から。There's not an iota of truth in it.(そこには真実のかけらもない)のように使います。
05点がないと、縦棒だらけで読めなかった
では、i に点がないと、何が困るのでしょう。
ブリタニカ百科事典の古文書学(パレオグラフィー)の項によると、中世後期のゴシック体の手書き文字は、minim(ミニム)と呼ばれる短い縦棒が森のように並ぶ書き方でした。u は縦棒2本、i は縦棒1本。そのうえ i には点がないか、あっても細い線がちょっとつくだけで、しかも位置がずれていることが多かったのです。
その結果、たとえば ium という文字の並びは、uim、uiui、niui、mui、miu……と、いくらでも読めてしまいました。縦棒の読みまちがいは「ミニムの崩れ」と呼ばれ、古文書の研究者の間でおなじみの悩みだといいます。
スコットランドの公的な記録サイト ScotlandsPeople の古文書の読み方ガイドも、点は i か j のしるし、u の上の小さな曲線は n と見分けるためのしるし、と説明しています。i の点は、縦棒だらけの文字の中で「ここが i ですよ」と知らせる目印として役立っていたのです。
06おまけ:点が大文字になっても消えない言語
英語では、i を大文字にすると点が消えて I になります。ところがトルコ語では違います。
文字コードの国際規格をつくるユニコード・コンソーシアムの資料によると、トルコ語とアゼルバイジャン語では、
- 点のある i の大文字は、点つきの İ
- 点のない ı の大文字が、ふつうの I
という組み合わせになっています。点のあるなしで別の文字なのです。同じ資料には、リトアニア語ではアクセント記号がつくときも小文字の i の点を残す、という決まりも載っています。
もう2つ。M-W の「今日の単語」によると、t や f の横棒は cross stroke(クロス・ストローク)、o の真ん中の穴のように線で囲まれたすき間は counter(カウンター)と呼ばれます。AHD によると、dot(点)のもとの古英語 dott は「できものの頭」という意味でした。
07どんでん返し:「to a T」の T は tittle? 辞書でも割れている
英語には to a T(ぴったり、完ぺきに)という熟語があります。That dress suits you to a T.(そのドレス、あなたにぴったり)
この T、じつは tittle の頭文字だという説があります。M-W は to a T を「to a tittle の短縮」と書いています。小さな点ひとつまで正確に、というわけです。
ところが Dictionary.com(アメリカン・ヘリテージの熟語辞典の説明)は別の書き方をしています。この表現は1600年代後半からあり、正確な線を引くT定規を指しているのかもしれない、t の横棒をきちんと引くことだと考える人もいる、という説明で、tittle にはふれていません。
つまり to a T の T の正体は、辞書によって答えが違うのです。もっともらしい語源ほど、一つに決めつけずに読むのがよさそうです。
08まとめ
i と j の上の小さな点の名前は tittle。もとをたどると、本の title や、ñ の tilde と同じラテン語 titulus(上に書いたもの)でした。聖書の「jot and tittle」は「縦棒1本の小さな文字と、文字の先の小さな角」、jot down の jot はギリシャ文字のイオタ、さらにさかのぼるとフェニキア文字の「手」です。
次に i の点を打つときは、「これは tittle」と心の中で言ってみてください。ノートの上の小さな点に、2,000年以上の文字の歴史が乗っています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe dot over a small "i" or "j" has a name.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Look at the small letter "i." Do you know the name of the dot on top? It is called a "tittle." The small "j" has one too. The word is very old.
People used it in English about 900 years ago. It comes from the Latin word "titulus," and the English word "title" comes from the same Latin word. So the dot on the "i" and the title of your favorite book are word cousins.
75 words ・ CEFR A2
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小文字の「i」を見てください。上にある点の名前を知っていますか?それは「tittle(ティトル)」と呼ばれます。小文字の「j」にもあります。
この言葉はとても古く、英語ではおよそ900年前に使われていました。ラテン語の「titulus」から来ていて、英語の「title(タイトル)」も同じラテン語から来ています。だから、i の上の点と、あなたの好きな本のタイトルは、言葉のいとこどうしなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
i の上の点の名前(tittle)と、その語源の話なので B。
Q2. Which English word comes from the same Latin word as "tittle"?
the English word "title" comes from the same Latin word とあるので C。
Q3. In the passage, what does "word cousins" mean?
tittle と title が同じラテン語から来ていることを「いとこ」にたとえているので A。
The dot over a small "i" or "j" has a name. It is called a "tittle." Merriam-Webster says the word was first used in the 12th century. It comes from the Latin "titulus," which meant something written above, like a heading.
That same Latin word gave English "title" and Spanish "tilde," the wavy mark you see in "ñ." The word appears in the phrase "jot and tittle" in the King James Bible of 1611.
In that verse, "jot" stands for iota, a Greek letter written as one short stroke. The same word lives on in "jot down," which means to write something quickly. So when you jot down a note, you are using the name of a Greek letter.
119 words ・ CEFR B1
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小文字の「i」や「j」の上の点には名前がある。「tittle(ティトル)」と呼ばれる。メリアム・ウェブスターによると、この語が最初に使われたのは12世紀。ラテン語の「titulus」から来ていて、それは見出しのように「上に書いたもの」を意味していた。
同じラテン語から、英語の「title(タイトル)」や、「ñ」に見られる波形の記号であるスペイン語の「tilde(チルダ)」が生まれた。この語は、1611年の欽定訳聖書の「jot and tittle」という言い回しに出てくる。
その節で「jot」は、短い縦棒1本で書くギリシャ文字のイオタを表している。同じ語は、「さっと何かを書く」という意味の「jot down」に生き残っている。だから、メモを jot down するとき、あなたはギリシャ文字の名前を使っているのだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the Latin word "titulus" mean?
which meant something written above, like a heading とあるので B。
Q2. Where does the phrase "jot and tittle" appear?
the phrase "jot and tittle" in the King James Bible of 1611 とあるので C。
Q3. What does the writer suggest in the last sentence?
jot down の jot がギリシャ文字イオタの名前だ、と言っているので D。
Most people dot their i's without thinking, but that little mark has a name in English: "tittle." Dictionaries trace it to the Medieval Latin "titulus," a mark placed over a letter, and further back to the Latin word for a title. Spanish "tilde" comes from the same source, so the dot, the wavy line in "ñ," and the title of a book all share one ancestor.
The word also appears in the King James Bible, where not "one jot or one tittle" will pass from the law. In the Greek original, those two items are an iota and a "keraia," a word whose basic meaning was "horn." In writing, it meant the tiny point at the tip of a letter. Old handwriting shows why the dot is useful.
Late medieval Gothic handwriting was full of short vertical strokes, and the i often had no dot, so a group like "ium" could be misread as "mui" or "niui." The phrase "to a T" is less settled. Merriam-Webster calls it a shortening of "to a tittle," but another major dictionary says it may refer to the T-square.
185 words ・ CEFR B2
和訳を見る
たいていの人は何も考えずに i の点を打つが、その小さな印には英語で名前がある。「tittle」だ。辞書はこれを、文字の上につける印を表す中世ラテン語の「titulus」に、さらにさかのぼって題名を表すラテン語にたどっている。
スペイン語の「tilde」も同じところから来ているので、点と、「ñ」の波線と、本の題名は、みな1つの祖先を持っている。この語は欽定訳聖書にも出てきて、そこでは律法から「一つの jot も一つの tittle も」消えることはないとされる。ギリシャ語の原文では、この2つはイオタと「ケライア」で、ケライアのもとの意味は「角(つの)」だった。書き文字では、文字の先の小さな突起を指した。昔の手書き文字を見ると、点が役に立つ理由が分かる。
中世後期のゴシック体の手書き文字は短い縦棒だらけで、i にはしばしば点がなかったため、「ium」のような並びは「mui」や「niui」と読みまちがえられることがあった。「to a T」という言い回しは、はっきりしていない。メリアム・ウェブスターはこれを「to a tittle」の短縮だとするが、別の大手の辞書はT定規を指すのかもしれないとしている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
i の点の名前 tittle と、その語源・聖書・点が必要になった理由をたどる文章なので A。
Q2. According to the passage, what did "keraia" originally mean?
a word whose basic meaning was "horn" とあるので C。
Q3. What can be inferred about the origin of "to a T"?
M-W は to a tittle の短縮とし、別の辞書は T定規を指すのかもしれないとしている、とあるので D。
重要単語
- tittleC1名詞i や j の上の点;ほんのわずかThe tittle on the "i" is so small that many people forget it has a name.
title(題名)と同じラテン語 titulus から。jot and tittle「ほんのささいな点」の形でよく出る。 - jot downB2句動詞さっとメモするLet me jot down your phone number.
jot はギリシャ文字 iota から。write down より「急いで短く」書く感じ。 - iotaC1名詞ギリシャ文字のイオタ;ごくわずかThere isn't an iota of truth in that story.
not an iota of ~「~が少しもない」。発音は「アイオウタ」。 - titleA2名詞題名、肩書き、タイトルI can't remember the title of the song.
スポーツの「タイトル(選手権)」もこの語。tittle と同じ祖先を持つ。 - diacriticC1名詞発音区別符号(é の ´ や ñ の ~ など)The mark over the "n" in "señor" is a diacritic.
文字の上下につけて発音などを区別する記号。tittle の辞書の定義にも出てくる語。 - to a TC1熟語ぴったり、完ぺきにThat jacket fits you to a T.
suit/fit ~ to a T の形でよく使う。T の正体は辞書によって説明が分かれる。 - strokeB2名詞(文字の)一画、線The letter "i" is just one short stroke and a dot.
「打つこと」「(水泳の)ひとかき」「脳卒中」など意味が多い。cross stroke は t の横棒。
公式・一次情報をチェック
- Superscript marks(ScotlandsPeople/スコットランド国立記録局など)scotlandspeople.gov.uk
- SpecialCasing.txt(Unicode Consortium・トルコ語の i と İ・ı の対応)unicode.org
- T(Oxford Learner's Dictionaries・dot your i's and cross your t's/to a T)oxfordlearnersdictionaries.com
このネタ、誰かに教えたくなった?
小文字の i の上の点には名前がある。tittle(ティトル)。語源はラテン語の titulus で、本の title(タイトル)や、スペイン語 ñ の「~」を指す tilde(チルダ)も同じ語から生まれた。メモする jot down の jot も、ギリシャ文字の iota から来ている。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- American Heritage Dictionary「tittle」「title」「tilde」「jot」「iota」「dot」・Appendix of Semitic Roots「yd」ahdictionary.com
- Merriam-Webster「tittle」「to a T」・Word of the Day「tittle」(2026年10月3日。Internet Archive の保存版)web.archive.org
- Dictionary.com「to a T」「tittle」dictionary.com
- The King James Version of the Bible(1611年訳、Project Gutenberg 版)マタイ5章18節・ルカ16章17節gutenberg.org
- Liddell, Scott & Jones (1940) A Greek-English Lexicon「κεραία」(Perseus Digital Library, Tufts University)perseus.tufts.edu
- Encyclopaedia Britannica「paleography: Analysis of texts」(Internet Archive の保存版)web.archive.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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