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英語のマジか!?ホント

「かわいい」の pretty、約1000年前は「ずる賢い」だった。smart のもとは「ズキズキ痛い」

「かわいい」の pretty、約1000年前は「ずる賢い」だった。smart のもとは「ズキズキ痛い」

読む前に予想してみよう!

英語の pretty は、生まれたときから「かわいい」という意味だった

研究カード(どんな研究?)
対象
古英語・中世英語の文献と辞書
規模
古英語辞典の用例と現代の辞書の語源欄
研究の種類
歴史言語学(文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「かわいい」の pretty は、1000年ほど前の英語では prættig と書き、「ずる賢い」という意味だった。もとは「たくらみ」を表す語。そこから「巧みな」「りっぱな」を経て「きれいな」に変わった。smart も最初は「ズキズキ痛い」だった。

ひとことで言うと「かわいい」の pretty は、昔は「ずるい」という意味だったんだって!

もくじ
  1. pretty の語源は「たくらみ」
  2. 「ずる賢い」から「きれい」へ
  3. 今も残る pretty の“昔の顔”
  4. 「かしこい」を表す英単語も、意味が変わってきた:cunning・crafty・shrewd・smart
  5. どんでん返し:「たくらみ」の出どころは分かっていない
  6. まとめ

「She's so pretty!」

英語を習いはじめてすぐに覚える「かわいい」「きれい」の pretty。ところがこの単語、1000年ほど前のイングランドでは、ほめ言葉ではありませんでした。

意味は「ずる賢い、抜け目ない」。ラテン語の賛美歌に当時の英語の訳を書きこんだ写本では、「あのずる賢い蛇(serpens ille callidus)」の「ずる賢い」に、pretty の祖先の語が使われています。

01pretty の語源は「たくらみ」

pretty の祖先は、古英語(おおよそ1100年ごろまでの英語)の prættig です。19世紀に編まれた古英語の大辞典『Bosworth-Toller 古英語辞典』(いまはプラハのカレル大学がオンラインで公開)を引くと、意味は「Wily, crafty, astute」。「悪知恵が働く、ずる賢い、抜け目ない」という意味の英語です。

さらにその元になったのが、名詞の prætt。意味は「たくらみ、策略、悪知恵」です。辞書にのっている用例の一つは、ラテン語の「千の害をなすたくらみ(mille nocendi artes)」の「たくらみ」に、この prætt を当てたものでした。

つまり pretty は、「たくらみ」に「〜っぽい」をつけた「たくらみの多い」という語から始まったのです。

02「ずる賢い」から「きれい」へ

では、どうして「かわいい」になったのでしょう。

Dictionary.com の語源欄によると、中世の英語(1100〜1500年ごろ)の prati(e)・prettie は「cunning, gallant, fine, handsome, pretty」。つまり「ずる賢い」「勇ましい」「りっぱな」「見た目がいい」「かわいい」が、同じ時代の一つの単語に並んでいました。American Heritage Dictionary(AHD)も、中世の英語の意味を「clever, fine, handsome(巧みな、りっぱな、見た目がいい)」と書いています。

1440年ごろにまとめられた英語・ラテン語の単語集『プロンプトリウム・パルウロールム(Promptorium Parvulorum)』を19世紀の校訂版(アルバート・ウェイ編)で引くと、「Praty(=pretty)」のラテン語訳は elegans, formosus(優雅な、美しい)。『Bosworth-Toller 古英語辞典』の語源欄も、この訳を挙げています。15世紀には、もう「美しい」の意味ではっきり使われていたことになります。

「悪知恵が働く」→「腕がいい、巧みな」→「見事な、りっぱな」→「見た目がいい」。このように、ほめる向きへ少しずつずれていったと考えると、辞書に並ぶ意味がつながります。

pretty の祖先 prættig は、ラテン語の写本に書きこまれた古英語の訳語などに残っている(Bosworth-Toller 古英語辞典)
pretty の祖先 prættig は、ラテン語の写本に書きこまれた古英語の訳語などに残っている(Bosworth-Toller 古英語辞典)

03今も残る pretty の“昔の顔”

pretty には、今も「かわいい」以外の意味がちゃんと残っています。AHD と Dictionary.com で確かめると、こうです。

  • 巧みな、見事な:a pretty maneuver(見事な作戦)
  • (皮肉で)ひどい:This is a pretty mess!(こりゃまた、ひどいありさまだ!)
  • かなりの(額・量):a pretty sum(ちょっとした大金)
  • (副詞)かなり、ある程度:a pretty good student(なかなかいい生徒)
  • (古い用法・スコットランド)勇ましい、たくましい

「a pretty maneuver」の pretty は「巧みな」という意味。「たくらみ上手」だったころに近い使い方です。

04「かしこい」を表す英単語も、意味が変わってきた:cunning・crafty・shrewd・smart

「かしこさ」を表す英単語には、「腕がいい」と「ずるい」の間を行き来したものがほかにもあります。AHD と Dictionary.com の語源欄で確かめた4語を並べます。

cunning(ずる賢い):古英語の cunnan(知っている)から。助動詞の can も同じ動詞から来ています。「知っている」→「腕がいい」→「ずる賢い」と、ほめ言葉から悪口のほうへ下りてきました。ところが AHD には「かわいらしい」の意味ものっていて、例は a cunning pet(かわいいペット)。pretty と同じゴールにたどりついた意味もあるのです。

crafty(ずるい):古英語の cræftig は「強い、腕がいい」。craft(技術、手芸)の形容詞です。今は「悪知恵が働く」がふつうの意味で、「腕がいい」は AHD で「古い用法」の扱いになっています。

shrewd(抜け目ない、鋭い):もとは動物の shrew(トガリネズミ)。古英語の scrēawa はトガリネズミのことで、中世の英語の shrewe は「ならず者、悪魔、悪いやつ」。そこから shrewed(性悪な)が生まれ、今は「頭が切れる、目のつけどころが鋭い」というほめ言葉にもなりました。

smart(頭がいい、おしゃれな):Dictionary.com によると、古英語では fyrsmeortende(火のように痛い)という長い単語の一部としてだけ出てくる、「痛む」という動詞でした。形容詞は「ひりひりする」から「すばやい、鋭い」へ。ドイツ語の schmerzen(痛む)と親せきです。今でも動詞の smart は「ずきずき痛む」で、My eyes smarted from the smoke.(煙で目がひりひりした)のように使います。

05どんでん返し:「たくらみ」の出どころは分かっていない

pretty の祖先が「たくらみ」だったことまでは、辞書の記述がそろっています。でも、その prætt がどこから来たのかは、はっきりしません。

Dictionary.com は、オランダ語の part・pret(たくらみ、いたずら)や古ノルド語(バイキングの言葉)の prettr(たくらみ)を親せきの語として挙げています。いっぽう『Bosworth-Toller 古英語辞典』は、アイスランド語の prettr(たくらみ)や prettugr(ずるい)などを並べたうえで「Perhaps of Celtic origin(ケルト系の言葉から来たのかもしれない)」と書いています。Dictionary.com は親せきの語を並べるだけで、もとがどこの言葉かまでは書いていません。Bosworth-Toller の説明も「かもしれない」止まりです。

また、「ずる賢い→巧みな→りっぱな→かわいい」という順番も、辞書に残った意味をつなげた見取り図です。どの時期に、だれが、なぜ「かわいい」の意味で使い始めたのかまでを示した記録は、今回調べた辞書にはありませんでした。

06まとめ

pretty の出発点は「たくらみ」でした。そこから「ずる賢い」「巧みな」「りっぱな」を経て、今の「かわいい」にたどりついています。いっぽう cunning や crafty は「腕がいい」から「ずるい」へ下りていき、smart は「痛い」から「かしこい」へ上ってきました。

次に pretty good と言うときは、その pretty が1000年前には「ずる賢い」だったことを思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you called someone "pretty" in England around the year 1000, you were probably not paying them a… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you called someone "pretty" in England around the year 1000, you were probably not paying them a compliment. The Old English word "prættig" meant "crafty" or "cunning," and it came from "prætt," which meant a trick. Writers often used it to translate Latin words for "sly." In one Latin hymn, the words "that cunning snake" were translated with it.

During the Middle Ages, the meaning moved toward "clever," "fine" and "handsome." By about 1440, an English-Latin word list explained it with the Latin words for "elegant" and "beautiful." Some of the older senses are still around. A "pretty maneuver" is a clever one, and "a pretty mess" is a very bad situation.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

もし西暦1000年ごろのイングランドで誰かを「pretty」と呼んだら、たぶん、ほめたことにはならなかった。古英語の「prættig」は「悪知恵の働く」「ずる賢い」という意味で、「たくらみ」を意味する「prætt」から来ていた。書き手たちは、「ずる賢い」を表すラテン語を訳すのによくこの語を使った。あるラテン語の賛美歌では、「あのずる賢い蛇」という言葉がこの語で訳されていた。

中世のうちに、意味は「巧みな」「りっぱな」「見た目がいい」の方向へ移っていった。1440年ごろには、ある英語・ラテン語の単語集が、この語を「優雅な」「美しい」を表すラテン語で説明していた。古い意味の一部は今も残っている。「pretty maneuver」は巧みな作戦のことで、「a pretty mess」はとてもひどい状況のことだ。

4択リーディングクイズ

Q1. Which is the best title for the passage?

Q2. According to the passage, what happened by about 1440?

Q3. What does the example "a pretty mess" show?

重要単語

  • cunningB2
    形容詞ずる賢い、悪知恵の働くThe cunning fox tricked the crow into dropping its cheese. can と同じ古英語 cunnan(知っている)から。名詞で「ずる賢さ」。日本語の「カンニング」の英語は cheating。
  • craftyB2
    形容詞悪知恵の働く、ずるいHe came up with a crafty plan to get out of cleaning. craft(技術)+-y。もとは「腕がいい」。今は悪い意味がふつう。
  • shrewdC1
    形容詞抜け目のない、鋭いShe made a shrewd guess about the ending of the movie. shrew(トガリネズミ)から。a shrewd businessman「やり手の実業家」のように、ほめ言葉にも使う。
  • smartC1
    動詞ずきずき痛む、ひりひりするMy eyes smarted from the smoke. 形容詞の smart(頭がいい)と同じ語。もとの意味はこちらの「痛む」。
  • trickA2
    名詞たくらみ、いたずら;手品The word "pretty" comes from an old word for a trick. play a trick on ~「~にいたずらをする」。magic trick は「手品」。
  • manuscriptB2
    名詞写本、手書きの原稿The scribe wrote small notes between the lines of the manuscript. manu-(手)+script(書いたもの)。manual(手の、手引き)と同じ manu-。
  • complimentB2
    名詞ほめ言葉Calling someone pretty is usually a compliment today. pay someone a compliment「人をほめる」。complement(補うもの)とつづりを混同しないこと。
英語の pretty(かわいい)、1000年ほど前は「ずる賢い」という意味だった。もとは prætt=「たくらみ」。smart も最初は「ズキズキ痛い」で、ドイツ語の schmerzen(痛む)と親せき。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Bosworth & Toller, An Anglo-Saxon Dictionary「prættig」(カレル大学オンライン版)bosworthtoller.com
  2. Bosworth & Toller, An Anglo-Saxon Dictionary「prætt」(カレル大学オンライン版)bosworthtoller.com
  3. The American Heritage Dictionary of the English Language「pretty」ahdictionary.com
  4. Dictionary.com「pretty」「smart」(Origin)dictionary.com
  5. The American Heritage Dictionary of the English Language「shrewd」「shrew」ahdictionary.com
  6. Albert Way 編, Promptorium Parvulorum sive Clericorum(Camden Society, 1843–1865)「Praty」archive.org

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