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英語のマジか!?ホント

sad の元の意味は「満腹」。1000年以上前の英語では“もうおなかいっぱい”だった

sad の元の意味は「満腹」。1000年以上前の英語では“もうおなかいっぱい”だった

読む前に予想してみよう!

sad は、古英語の時代から「悲しい」という意味で使われていた

研究カード(どんな研究?)
対象
古英語・中英語の文献と英独の辞書
規模
900年代以降の用例
研究の種類
辞書の語源・意味の記述(文献にもとづく調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

古英語(1000年以上前の英語)の sæd は「満腹の、もう十分な」。「うんざり、疲れた」の意味も持ち、中英語(中世の英語)で「悲しい」の意味が現れた。ドイツ語の satt(満腹)や satisfy と親戚。

ひとことで言うとsad は昔「おなかいっぱい」という意味だった!

もくじ
  1. sad の語源は? 古英語の sæd は「満腹の」
  2. 「満腹」から「悲しい」への道のり
  3. ドイツ語では今も「満腹」の satt
  4. satisfy も saturate も sad の親戚
  5. どんでん返し:「満腹だから悲しい」わけではない
  6. まとめ

I'm sad.(悲しい)

英語を習って最初のころに覚える、いちばん基本の気持ちの言葉です。

ところが、この sad。1000年以上前の英語では、「おなかいっぱい」「もう十分」という意味でした。古英語に訳された旧約聖書の詩編には、人々が「たっぷり食べて sade(sad のご先祖)になった」という一節まであります。もちろん「悲しくなった」ではありません。「満腹になった」です。

01sad の語源は? 古英語の sæd は「満腹の」

1000年以上前の英語を古英語(Old English)といいます。sad のご先祖は、古英語の sæd です。

チェコのカレル大学が公開している『ボズワース&トラー古英語辞典』は、sæd の意味を「満腹した、疲れた(うんざりした)、満たされた、もう十分に味わった(having had one's fill)」としています。そして、わざわざこう注記しています。「いまの sad の意味では使われない」。

「戦いに sæd」は、「戦いはもうたくさんだ」という感じです。おなかいっぱいの「満ち足りた」から、もうこれ以上はいらない「うんざり」までが、この一語に入っていたのです。

02「満腹」から「悲しい」への道のり

では、どうやって「悲しい」になったのでしょうか。辞書に載っている意味を時代順に並べると、こうなります。

  • 古英語:満腹の、十分に満たされた(Dictionary.com は「もともとは sated, full」とする)
  • 古英語:うんざりした、疲れた、重い、重々しい(AHD・Dictionary.com)
  • 中英語:疲れた、悲しい(AHD)

「満腹」が先で「悲しい」があと、という順番は辞書の記録で確かめられます。ただ、意味どうしがどうつながったのかは、辞書にも書かれていません(くわしくは後半の「どんでん返し」で)。

アメリカの辞書メリアム・ウェブスターによると、「悲しみや不幸を感じている」という今の意味の最初の記録は1200年代です。

途中には、もう使われなくなった意味もあります。Dictionary.com には、廃れた意味として「しっかりした、ゆるがない(firm or steadfast)」が載っています。いつごろの意味かは書かれていませんが、これも今は消えた意味のひとつです。

「満腹」→「うんざり・疲れた」→「悲しい」。sad は何百年もかけて意味を移した(AHD・Dictionary.com)
「満腹」→「うんざり・疲れた」→「悲しい」。sad は何百年もかけて意味を移した(AHD・Dictionary.com)

03ドイツ語では今も「満腹」の satt

sad の親戚は、ほかの言葉にもいます。メリアム・ウェブスターは古高ドイツ語の sat(満腹の)とラテン語の satis(十分な)を、Dictionary.com はドイツ語の satt やゴート語の saths(満腹の、満足した)を挙げています。

ドイツの辞書ドゥーデンで satt を引くと、最初の意味は「もうおなかがすいていない」。ドイツ語では、いまも sad の親戚が「満腹」の意味で現役なのです。

ドゥーデンには etwas satt sein(何かに満腹である)という言い方も載っていて、その意味は「それにうんざりしている」です。例文は sie war den Ärger satt(彼女はもめごとにうんざりしていた)。英語の sad に記録されている「満腹」と「うんざり」の両方の意味を、ドイツ語の satt は今も持っているのです。

日本語にも似た言葉があります。食傷(しょくしょう)です。デジタル大辞泉によると、1番目の意味は「同じ食べ物が続いて食べ飽きること」、2番目は「同じことに何度も接して、飽き飽きして嫌になること」。食べ物の「もう十分」が、気持ちの「もうたくさん」に広がるのは、言葉をこえてよくあることなのかもしれません。

04satisfy も saturate も sad の親戚

AHD の巻末にある「印欧祖語の語根」の一覧では、sad は sā-(満たす) という語根の仲間に入っています。同じ語根の子孫には、こんな英単語が並びます。

  • satisfy(満足させる):ラテン語の satis(十分)+ facere(する)
  • satiate(満腹にさせる):ラテン語の satis(十分)から
  • saturate(しみこませる、飽和させる):ラテン語の satur(満腹の)から
  • asset(財産、強み):中世イングランドのフランス語(アングロ・ノルマン語)の asez(十分に)から。もとは、亡くなった人の借金や遺贈を払うのに足りるだけの財産のこと

「悲しい」と「満足」が同じ家族とは、ちょっと意外ですね。

05どんでん返し:「満腹だから悲しい」わけではない

ここで気をつけたいのは、「おなかいっぱいになると悲しくなるから sad になった」わけではないということです。

辞書が示しているのは、「満腹」「うんざり」「疲れた」「重い」「悲しい」といった意味が、時代ごとに記録されているという事実です。それぞれの意味がどの順番で、どんな気持ちの動きでつながったのかを、一つひとつ証明した記録があるわけではありません。「満腹→もうたくさん→うんざり→沈んだ気分」という流れは、記録された意味から考えられる、もっともらしい道すじです。

また、sad の「悲しい」以外の意味も、完全には消えていません。メリアム・ウェブスターには「くすんだ、地味な色の」という意味が今も載っています。a sad excuse(お粗末な言いわけ)のように、「情けない、なっていない」の意味でも使われます(AHD の例。Dictionary.com も「deplorably bad; sorry」の意味を載せています)。

06まとめ

sad は、1000年以上前には「満腹の、もう十分な」という意味でした。古英語のころから「うんざり」「疲れた」の意味もあり、1200年代には「悲しい」の記録が現れます。ドイツ語の satt は今も「満腹」、英語の satisfy も同じ家族です。

次に I'm full. と言うとき、思い出してみてください。1000年以上前の英語なら、そこで使えたのは sad のご先祖 sæd だったのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you say "I'm sad" after a big dinner, people will think something is wrong. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you say "I'm sad" after a big dinner, people will think something is wrong. But more than a thousand years ago, it would have made sense. In Old English, "sæd," the ancestor of "sad," meant "full" or "having had enough."

An Old English version of the Psalms describes people who ate a great deal and became "sade." Here the word simply means "full." Even in Old English, it could also mean "weary" or "tired of something."

By the 1200s, it was being used for sorrow. The German word "satt," a relative of "sad," still means "full." And the English verb "satisfy" belongs to the same family.

107 words ・ CEFR B1

和訳を見る

大きな夕食のあとに「I'm sad」と言えば、人は何かあったのかと思うだろう。しかし1000年以上前なら、それで意味が通っていた。古英語では、「sad」の祖先である「sæd」は「満腹の」「もう十分な」という意味だった。

古英語に訳された詩編には、人々がたくさん食べて「sade」になったという場面がある。ここでは、この語は単に「満腹の」という意味だ。古英語の時代にも、この語は「疲れた」「何かにうんざりした」という意味を持っていた。

1200年代までには、悲しみを表すのに使われるようになっていた。「sad」の親戚であるドイツ語の「satt」は、今も「満腹の」という意味だ。そして英語の動詞「satisfy」も同じ一族に属している。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. By when was "sad" being used for sorrow?

Q3. Why would "I'm sad" after dinner have made sense long ago?

重要単語

  • fullA2
    形容詞満腹の;いっぱいのNo more cake for me, thanks. I'm full. 「おなかいっぱい」は I'm full. が基本。古英語ならここで sæd(sad の祖先)を使えた。
  • satisfyB1
    動詞満足させる、満たすThe small lunch didn't satisfy my hunger. ラテン語 satis(十分)+ facere(する)。形容詞 satisfied は「満足した」。sad と同じ語根。
  • wearyB2
    形容詞疲れきった;うんざりしたAfter the long trip, we were all weary. be weary of 〜「〜にうんざりしている」。古英語の wērig から。937年の詩では wérig, wíges sæd(疲れはて、戦いに満腹した)と sad の祖先と並んで出てくる。
  • fed upB2
    形容詞うんざりして、飽き飽きしてI'm fed up with this rainy weather. be fed up with 〜 の形で使う。会話でよく使うくだけた言い方。
  • feastB2
    名詞ごちそう、宴会The whole village came to the feast. 動詞では feast on 〜「〜をたらふく食べる」。
  • sorrowB2
    名詞(深い)悲しみShe could not hide her sorrow at the news. sad より改まった語。形容詞は sorrowful(悲しげな)。
  • excuseB1
    名詞言いわけThat's a sad excuse for being late. 名詞は「イクスキュース」、動詞は「イクスキューズ」と s の音が変わる。a sad excuse は「お粗末な言いわけ」。

4コマでわかる

sad の元の意味は「満腹」。1000年以上前の英語では“もうおなかいっぱい”だったの4コマ漫画
英語の sad、1000年以上前は「満腹の」という意味だった。古英語の詩編には、ご先祖の sæd を使って「たっぷり食べて満腹になった」と書いた一節がある。「うんざり・疲れた」の意味もあり、「悲しい」は1200年代から。ドイツ語の satt(満腹)や satisfy も親戚。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Bosworth & Toller, An Anglo-Saxon Dictionary Online(カレル大学)「sæd」bosworthtoller.com
  2. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「sad」ahdictionary.com
  3. Dictionary.com(Random House Unabridged)「sad」dictionary.com
  4. Merriam-Webster「sad」(Etymology / First Known Use)merriam-webster.com
  5. Duden「satt」(Bedeutungen / Herkunft)duden.de

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