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英語のマジか!?ホント

deer は昔「動物」という意味だった。中英語ではアリも魚も deer

deer は昔「動物」という意味だった。中英語ではアリも魚も deer

読む前に予想してみよう!

英語の deer は、千年前から「シカ」だけを指す言葉だった

研究カード(どんな研究?)
対象
古英語・中英語の文献
規模
辞書の語源欄と用例
研究の種類
歴史言語学(辞書・文献にもとづく)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

deer の祖先、古英語の dēor は「けもの・動物」。中英語ではアリや魚も der と呼ばれ、1500年ごろシカだけに。meat も昔は「食べ物」だった。

ひとことで言うとdeer は昔「動物」という意味。アリも魚も deer と呼ばれたことがあるよ!

もくじ
  1. deer の語源は? 古英語の dēor は「けもの」のこと
  2. 1500年ごろ、シカだけが残った
  3. ドイツ語ではいまも「動物」
  4. meat も「肉」ではなく「食べ物」だった
  5. どんでん返し:「動物ぜんぶ」とまでは言い切れない?
  6. まとめ

deer と聞いたら、だれでもシカを思いうかべますよね。

ところが昔の英語では、アリも、魚も、キツネも deer でした。アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)』の語源コラムには、中英語(だいたい1500年ごろまでの英語)の文章で、魚やアリやキツネが der(deer の祖先)と呼ばれている、と書かれています。

語源をたどると、deer は、もとは「動物」という意味の言葉だったのです。

01deer の語源は? 古英語の dēor は「けもの」のこと

deer の歴史は古く、Dictionary.com(ランダムハウス辞典)によると、900年より前から記録があります。古英語のつづりは dēor。

古英語の辞書として知られる『ボズワース=トラー古英語辞典』(チェコのカレル大学がネットで公開)を引くと、dēor の意味は「動物、あらゆる種類の野生の動物、けもの」。用例を見ると、シカ以外の動物にもふつうに使われています。

  • 古英語の詩に「その dēor はパンサーと呼ばれる」という一節がある
  • 古英語の単語集では、「一本角の dēor」がユニコーンやサイを指している
  • 聖書の創世記の古英語訳では、神がつくった「地の獣」が dēor

角の生えたシカに限らず、森や野にすむ「けもの」なら何でも dēor だったわけです。

021500年ごろ、シカだけが残った

中英語の時代に入っても、der は広い「動物」の意味で使われ続けました。AHD によると、このころ同時に「シカ」というせまい意味も加わります。そして中英語の時代が終わる1500年ごろまでに、広い意味はほとんど消えました。

それでも、昔の意味はところどころに残っています。シェイクスピアの作品では、deer はたいてい今と同じシカの意味です。ところが『リア王』(1603〜1606年のあいだに書かれた)に、こんな場面があります。狂人のふりをして荒れ野で暮らすエドガーが、ヒキガエルやオタマジャクシなど、捕まえられるものは何でも食べて生きてきたと語るのです。

「But mice and rats, and such small deer / Have been Tom's food for seven long year.」(ハツカネズミやドブネズミ、そんな小さな deer が、長い7年のあいだトムの食べものだった。トムはエドガーが名乗る偽名)

ネズミが deer。ここでの such small deer は「そういう小さな動物たち」という意味だと AHD は説明しています。イギリスの Oxford Learner's Dictionaries も、small deer を「小さな生き物たちをまとめて言う、いまは古い言い方」として紹介しています。

『リア王』では、ネズミも small deer(小さな動物たち)と呼ばれている
『リア王』では、ネズミも small deer(小さな動物たち)と呼ばれている

03ドイツ語ではいまも「動物」

英語では意味がせまくなりましたが、親戚の言語ではそうなりませんでした。

  • ドイツ語の Tier:いまも「動物」の意味(AHD)
  • オランダ語の dier:deer と同じ語から来た親戚(Oxford Learner's Dictionaries)

もうひとつ、英語の中にも「動物」の deer の名残があると考えられています。wilderness(荒野)です。AHD によると、この語はおそらく古英語の wilddēor(野生の動物)に、名詞をつくる -ness がついたもの。wilderness は「野生動物がいるところ」のような成り立ちの言葉だったと考えられているのです。

04meat も「肉」ではなく「食べ物」だった

同じように意味がせまくなった基本語に、meat があります。

Oxford Learner's Dictionaries によると、古英語の mete は「食べ物」「ひとつの食べ物」の意味でした。ボズワース=トラー辞典でも、mete の意味は「食べ物」です。

聖書の創世記1章29節を見てみましょう。神が人間に、種のある草と実のなる木を「食べ物」として与える場面です。古英語訳ではここに mete が使われています。そして1611年に出た英語の聖書『欽定訳聖書』でも、この「食べ物」は for meat と訳されています。草や木の実なのに meat なのです。

いまの英語にも、その名残があります。

  • sweetmeat:お菓子や砂糖漬けの食べ物(古い言い方)。Oxford Learner's Dictionaries は、meat の「食べ物」の意味が残った例としてこの語をあげています
  • AHD の meat の項目には、いまも「栄養、食べ物」という意味や、「果物やナッツの食べられる部分」という意味が載っています

deer は「動物」から「シカ」へ、meat は「食べ物」から「肉」へ。どちらも、広い意味の言葉が、そのなかの代表的なひとつを指すようになった例です。

05どんでん返し:「動物ぜんぶ」とまでは言い切れない?

ここまで「deer は昔、動物という意味だった」と書いてきましたが、どんな動物まで含んだのかは、辞書によって説明が少しずつ違います。

  • AHD:古英語の dēor は「どんな動物も」指した
  • Oxford Learner's Dictionaries:もとは「四本足の動物」を指した
  • ボズワース=トラー辞典:「あらゆる野生の動物」で、多くは家畜と区別して使われた

つまり、古英語の dēor は「とくに野生のけもの」を指すことが多かったようです。創世記の古英語訳でも、「地の獣(dēor)」は「家畜(nīten)」と並べて別々に書かれています。それでも中英語ではアリや魚まで der と呼んだ例があるので、意味の幅はかなり広かったことになります。

また、「1500年ごろ」というのも、AHD の「中英語の時代の終わりまでに、広い意味はほとんど消えた」という説明にもとづく大まかな目安です。『リア王』のように、その後も古い意味が顔を出す例はありました。

06まとめ

deer はもともと「けもの・動物」。中英語ではアリや魚まで der と呼ばれ、1500年ごろにシカだけを指す言葉になりました。meat も「食べ物」から「肉」へと意味がせまくなっています。

毎日使う基本の単語ほど、千年のあいだに意味が大きく動いていることがあります。ドイツ語の Tier や、英語の wilderness や sweetmeat には、そうした昔の意味が今も残っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAsk an English speaker what a deer is, and they will describe an animal with long legs and antlers. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Ask an English speaker what a deer is, and they will describe an animal with long legs and antlers. A thousand years ago, the answer would have been different. In Old English, "deor" was the word for a wild animal of almost any kind.

Middle English writers sometimes used it for an ant, a fish, or a fox. By about 1500, this wide meaning had nearly disappeared. You can still find a trace of it in Shakespeare's King Lear, where a character calls mice and rats "small deer."

German kept the old meaning. Its word "Tier," which is related to "deer," still means "animal." The English word "meat" narrowed too. In Old English, "mete" meant food in general.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

英語を話す人に deer とは何かと聞けば、脚が長くて枝角のある動物だと説明するでしょう。千年前なら、答えは違っていたはずです。古英語では、「deor」はほとんどあらゆる種類の野生動物を表す語でした。

中英語の書き手は、アリや魚やキツネにこの語を使うこともありました。1500年ごろまでに、この広い意味はほとんど消えました。シェイクスピアの『リア王』には、まだその名残が見られます。登場人物がハツカネズミやドブネズミを「small deer(小さな動物たち)」と呼ぶのです。

ドイツ語は古い意味を残しました。deer と親戚にあたるドイツ語の「Tier」は、いまも「動物」という意味です。英語の「meat」も意味がせまくなりました。古英語の「mete」は、食べ物全般を意味していたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. What does the German word "Tier" mean today?

Q3. Why does the writer mention King Lear?

重要単語

  • deerA2
    名詞シカ(複数形も deer)We saw three deer near the river this morning. 複数形も deer。同じ発音の dear(親愛な)とつづりを区別する
  • antlerB2
    名詞(シカの)枝角A male deer grows new antlers every year. ふつう複数形 antlers で使う。牛やヤギの角は horn
  • wildA2
    形容詞野生のPlease don't feed the wild animals. wilderness(荒野)は wild を含む語
  • narrowB1
    動詞狭まる、狭めるOver the years, the meaning of the word narrowed. 形容詞では「狭い」。narrow down(しぼりこむ)もよく使う
  • generalB1
    形容詞一般的な、全般のIn Old English, "mete" meant food in general. in general(全般に、ふつうは)の形で入試頻出
  • traceB2
    名詞名残、あとThe old meaning left a trace in a few words. 動詞では「たどる」。trace back to ~(~にさかのぼる)
  • sweetmeatC1
    名詞お菓子、砂糖漬けの食べ物(古い言い方)The old book mentions a plate of sweetmeats. meat が「食べ物」の意味だったころの名残
deer(シカ)は昔「動物」という意味だった。アメリカの辞書によると、中英語の文章では魚やアリやキツネが der と呼ばれることもあった。ドイツ語の Tier(動物)は親戚。meat も昔は肉ではなく「食べ物」だった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「deer」(Word History)ahdictionary.com
  2. Oxford Learner's Dictionaries「deer」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  3. Bosworth, J. & Toller, T. N. An Anglo-Saxon Dictionary Online(カレル大学)「DEÓR」bosworthtoller.com
  4. Oxford Learner's Dictionaries「meat」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  5. Bosworth, J. & Toller, T. N. An Anglo-Saxon Dictionary Online(カレル大学)「METE」bosworthtoller.com

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