money(お金)の語源はローマの女神。monitor(モニター)とも親戚かも

読む前に予想してみよう!
英語の money(お金)は、古代ローマの女神の呼び名から来ている
アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、money はラテン語 monēta(造幣所、貨幣)から。もとは女神ユノの呼び名 Monēta で、その神殿でお金が作られた。
- 対象
- ラテン語の文献と英語辞典
- 規模
- キケロ(紀元前1世紀)・リウィウス・スーダ辞典(10世紀)ほか
- 研究の種類
- 歴史言語学(辞書の語源記述)+古典の原文
- 確かさ
- ★★★☆☆
money の語源は、ローマの女神ユノの呼び名モネータ。その神殿でお金を作っていた。ローマ人はモネータを「忠告する」monere から来た名前と説明した。monitor もこの monere から来ている。
ひとことで言うとお金の money は、ローマの女神の名前から来たんだって! パソコンの monitor とも親戚かも
もくじ
財布の中の money(お金)。パソコンの monitor(モニター)。ゲームの monster(モンスター)。
どれも「モン」で始まりますが、偶然ではないかもしれません。辞書をたどると、3つとも古代ローマの 「忠告する、警告する」 という言葉にたどり着きます。
しかも money の場合、そのあいだに一人の女神と、子をはらんだブタのいけにえの話がはさまっているのです。
01money の語源は「女神の呼び名」
『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』によると、money は古いフランス語を通して、ラテン語の monēta(造幣所、貨幣) から来ています。そしてこの monēta は、ローマの女神 ユノ(Juno)の呼び名「モネータ(Monēta)」 でした。ローマにあったユノの神殿で、お金が作られていたからです。
ユノは、ローマの神々の中心となる女神で、ユピテルの妻。女性や結婚、出産を守り、国の守り神ともされました。英語の June(6月) も、この女神の名前から来ています(同辞典)。
神殿のことは、ローマの歴史家リウィウス(紀元前59年〜紀元17年)が書き残しています。タフツ大学の Perseus に載る英訳で確かめると、こんな話です。
- ローマ軍がアウルンキ人と戦ったとき、独裁官(非常時に置かれた最高指揮官)ルキウス・フリウス・カミルスが、戦いのさなかに 「ユノ・モネータの神殿を建てます」と神に誓った(『ローマ建国史』7巻28章)
- 神殿は、ローマの丘の上の城塞の、かつてマンリウスという人物の家があった場所に建てられ、誓いの翌年に奉納された(同)
- リウィウスは別の巻で、その場所には 「今、モネータの神殿と造幣所がある」 と書いている(6巻20章)
02mint と money は、同じ言葉が英語に2回入ったもの
ここで、英語の歴史をのぞいてみます。
monēta は、英語に2回入ってきました。1回目はずっと昔で、古英語の mynet(硬貨) になり、今の mint(造幣局) になりました。2回目は中世にフランス語を通って入り、money になりました。もとは同じ言葉なのに、別の道を通ったので、見た目も意味もちがう2つの単語になったのです。
mint からは、こんな表現も生まれています。
- in mint condition:「造幣局から出てきたばかりのような」=新品同様の
- mint a word:硬貨を作るように、新しい言葉を作る
ただし、ガムやお菓子の ミント(mint) は別の言葉です。こちらはハッカの仲間の植物を表すラテン語 menta から来ていて、お金とは関係がありません(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)。つづりも発音も同じ「ミント」が、英語には2つあるのです。

03なぜ「モネータ」? 地震とブタの話
では、ユノはなぜ「モネータ」と呼ばれたのでしょう。古代のローマ人自身が、その理由を説明しています。
1つ目は、地震の話。 紀元前1世紀の政治家キケロは、『予言について』という本の中で、弟クィントゥスにこう語らせています。地震が起きたとき、丘の上のユノの神殿から声がして、子をはらんだ雌ブタをいけにえにしておわびをせよと命じた。そのためユノはモネータと呼ばれるようになった――。シカゴ大学のサイト LacusCurtius に載る英訳(1923年)は、この呼び名を「Juno the Adviser(忠告者ユノ)」と訳しています。
2つ目は、戦争のお金の話。 10世紀にビザンツ帝国(東ローマ帝国)で作られた大きな事典『スーダ』には、別の話があります。ローマがピュロス王などと戦っていたとき、戦費に困ってユノ(スーダはギリシャ語の事典なので、ギリシャの女神の名ヘラで書いている)に祈ると、「正しく戦えば、お金に困ることはない」という答えが返ってきた。願いがかなったローマ人は、ユノを「モネータ、つまり忠告者」としてあがめ、その神殿で硬貨を作ることに決めた、というのです。
話の中身はちがっても、どちらも「モネータ=忠告してくれる女神」という説明です。ラテン語で「忠告する、警告する、思い出させる」は monēre(モネーレ)。この動詞から、英語の単語がたくさん生まれています。
04monitor も monster も「忠告」の親戚
アメリカン・ヘリテージ英語辞典で、monēre の子孫を確かめてみます。
- monitor(モニター):ラテン語では「警告する人、注意する人」。この辞書では今でも、1番目の意味は「忠告したり、注意したり、思い出させたりする人」。2番目は、先生を手伝う「係の生徒」。画面や装置の意味は、そのあとに並んでいます
- monster(モンスター):ラテン語の mōnstrum(神々が示す前ぶれ、しるし)から。もとは「神さまからの警告」だったのです
- demonstrate(実演する、デモをする):mōnstrum から生まれた mōnstrāre(見せる)が入っています。日本語の「デモ」は demonstration を縮めた言葉です
- monument(記念碑):monumentum(思い出させるもの)
- summon(呼び出す):summonēre(こっそり思い出させる)
- premonition(虫の知らせ、予感):praemonēre(前もって警告する)
- admonish(さとす、注意する):admonēre
お金、画面、怪物、デモ、記念碑。 バラバラに見える単語が、「忠告する」という1つの動詞でつながっていました。
05どんでん返し:キケロ本人が「ブタのことしか忠告してない」
ここまでの話には、大事な注意点があります。
monitor や monster が monēre から来たことは、辞書がはっきり書いています。ところが money と monēre のあいだには、「女神の呼び名モネータは monēre から来た」という一段がはさまっています。そしてその一段は、ローマ人自身の「説明の話」にもとづいているのです。
まず、地震の話を紹介したキケロ本人が、同じ本の第2巻で、弟の話にこう切り返しています。「モネータが私たちに忠告してくれたことなんて、身ごもったブタのこと以外に何かあったかね?」 キケロはその直前で、声を出して名前をもらった別の神(アイウス・ロクエンス=「語る神」)が、その後は黙りこんでいると皮肉っています。モネータも同じだ、というわけです。
『スーダ』の英訳に付いた研究者の注も、「忠告する」から説明するのはモネータという呼び名の説明の1つにすぎないと書いています。この女神をまつる習わしは、ピュロス王との戦争よりずっと前からあったとする話もある、というのです。
英語の辞書も慎重です。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は money の項で「女神ユノの呼び名 Monēta から」「その神殿でお金が作られた」、Dictionary.com も「(ユノと同一視されることが多い)女神モネータの神殿で硬貨が作られた」と書くだけで、モネータという名前そのものの由来には踏みこんでいません。
神殿があった正確な場所でさえ、研究者のあいだで議論が続いています。ローマ史家ワイズマン(2009年)は、ユノ・モネータの神殿の場所について新しい候補地を提案しています。
06まとめ
money は、ローマの女神ユノの呼び名「モネータ」から。その神殿で硬貨が作られたので、モネータが「造幣所」「お金」を指すようになりました。同じ言葉が古英語に入って mint にもなっています。
モネータは「忠告する」monēre から来たと、ローマ人は説明しました。その monēre からは monitor も monster も monument も生まれています。ただし money と monēre をつなぐ部分は、「ブタのいけにえを命じた女神」というローマの言い伝えが頼り。言い伝えを紹介したキケロ本人が皮肉を言っているのも、ローマ人らしいところです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn ancient Rome, the goddess Juno had a temple on one of Rome's hills, and she was known there as Juno Moneta.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The English word "money" comes from the name of a Roman goddess. People in ancient Rome called the goddess Juno "Moneta," and they made coins at her temple.
Later, "moneta" came to mean a place for making coins, and then money. The Romans said the name meant "the one who warns." The Latin word for "warn" is "monere." It also gave English the words "monitor" and "monster."
67 words ・ CEFR A2
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英語の「money」という言葉は、ローマの女神の名前から来ています。古代ローマの人々は女神ユノを「モネータ」と呼び、その神殿で硬貨を作りました。
のちに「moneta」は、硬貨を作る場所、そしてお金を意味するようになりました。ローマ人は、この名前は「警告する者」という意味だと言いました。「警告する」を表すラテン語は「monere」です。この言葉から、英語の「monitor」や「monster」という単語も生まれました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
money という語がどこから来たかの話なので B。
Q2. What did the Romans make at Juno's temple?
they made coins at her temple とあるので A。
Q3. In the passage, what does "warn" mean?
warn は「(危険などを)前もって知らせる、警告する」という意味なので B。
In ancient Rome, the goddess Juno had a temple on one of Rome's hills, and she was known there as Juno Moneta. The historian Livy wrote that in his day the site held "the temple and mint of Juno Moneta."
Because coins were made there, "moneta" came to mean a mint and then money itself. English took the word twice. It came in early as "mynet" in Old English, which became "mint," and later through French as "money."
But why was Juno called Moneta? The Romans explained it with stories. In one, a voice from her temple warned the people during an earthquake. So they linked the name to "monere," a verb meaning to warn or remind. That verb also gave us "monitor" and "monument."
125 words ・ CEFR B1
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古代ローマでは、女神ユノはローマの丘の一つに神殿を持ち、そこではユノ・モネータとして知られていた。歴史家リウィウスは、自分の時代にその場所には「ユノ・モネータの神殿と造幣所」があったと書いた。
そこで硬貨が作られたので、「moneta」は造幣所、そしてお金そのものを意味するようになった。英語はこの言葉を2回取り入れた。早い時期に古英語の「mynet」として入って「mint」になり、のちにフランス語を通って「money」になった。
では、なぜユノはモネータと呼ばれたのか。ローマ人はそれを物語で説明した。その一つでは、地震のときに神殿から声がして人々に警告した。そこで彼らはこの名前を、「警告する・思い出させる」という意味の動詞「monere」と結びつけた。この動詞からは「monitor」や「monument」も生まれた。
4択リーディングクイズ
Q1. According to Livy, what was on the site in his day?
in his day the site held "the temple and mint of Juno Moneta" とあるので B。
Q2. How did the word "moneta" enter English?
English took the word twice. … became "mint," and later through French as "money" とあるので C。
Q3. What does the passage suggest about the link between Moneta and "monere"?
The Romans explained it with stories. … So they linked the name to "monere" から、ローマ人の説明に由来するつながりだと分かるので C。
Every time you say "money," you are using the title of a Roman goddess. Juno Moneta had a temple on the citadel of Rome, and the historian Livy said the spot held "the temple and mint of Juno Moneta." From there the Latin "moneta" came to mean a mint and coinage. English picked it up twice: early on as Old English "mynet," today's "mint," and centuries later through French as "money." The mint you find in chewing gum is a different word altogether.
Why the goddess was called Moneta is harder to say. In a dialogue by Cicero, his brother Quintus tells of a voice from her temple that ordered the sacrifice of a pregnant sow during an earthquake. The Suda, a Greek encyclopedia from much later, links the title to advice she gave about paying for a war. Both stories tie the name to "monere," to warn or advise, the verb behind "monitor," "monster" and "monument." Cicero himself was not impressed.
Later in the same work he asks what Moneta ever warned the Romans about apart from the sow. Dictionary entries for "money" trace the word back to the goddess and stop there.
194 words ・ CEFR B2
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「money」と言うたびに、あなたはローマの女神の呼び名を使っている。ユノ・モネータはローマの城塞に神殿を持っており、歴史家リウィウスは、その場所に「ユノ・モネータの神殿と造幣所」があると述べた。そこからラテン語の「moneta」は造幣所や貨幣を意味するようになった。英語はこれを2回取り入れた。早い時期に古英語の「mynet」、つまり今の「mint」として、そして何世紀もあとにフランス語を通して「money」として。
チューインガムに入っているミントは、まったく別の語である。女神がなぜモネータと呼ばれたのかは、もっと答えにくい。キケロが書いた対話の中で、弟のクィントゥスは、地震のときに神殿から声がして、身ごもった雌ブタをいけにえにするよう命じたと語っている。ずっと後の時代のギリシャ語の事典『スーダ』は、この呼び名を、戦費についての彼女の忠告と結びつけている。どちらの話も、この名前を「monitor」「monster」「monument」のもとになった「警告する・忠告する」という動詞「monere」と結びつけている。キケロ本人は感心していなかった。
同じ作品の後のほうで彼は、モネータがあのブタのこと以外にローマ人に何を警告したのかと問いかけている。辞書の「money」の項は、この語を女神までさかのぼったところで止まっている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
money は女神の呼び名から来たが、その呼び名の由来ははっきりしない、という流れなので B。
Q2. According to the passage, what did the voice from the temple order?
ordered the sacrifice of a pregnant sow とあるので C。
Q3. Why does the writer mention Cicero's question about the sow?
Cicero himself was not impressed. の後に置かれ、キケロがこの言い伝えを疑っていたことを示すためなので A。
重要単語
- mintB2名詞・動詞造幣局;硬貨を作るThe coins were made at the national mint.
ラテン語 moneta から。in mint condition「新品同様の」。植物のミントは別の語(ラテン語 menta)。 - monitorB2動詞・名詞見守る、監視する;画面、監視装置The nurse monitored his heart rate all night.
ラテン語 monere(警告する)から。「画面」より動詞の「監視する」が長文でよく出る。 - warnB1動詞警告する、注意するThe sign warns drivers about falling rocks.
warn A about/of B「AにBについて警告する」、warn A to do「Aに~するよう注意する」。 - templeB1名詞神殿、寺院The temple stood on top of the hill.
「こめかみ」も temple だが、別の語源。 - monetaryC1形容詞通貨の、金融のThe central bank changed its monetary policy.
monetary policy「金融政策」はニュース英語の定番。money と同じ moneta から。 - admonishC1動詞(穏やかに)注意する、さとすThe teacher admonished him for being late.
ad-(〜に)+monere(警告する)。admonish A for B「BのことでAを注意する」。 - sacrificeB2名詞・動詞いけにえ(にする);犠牲The Romans offered a sacrifice to the goddess.
make a sacrifice「犠牲を払う」。古代の宗教の話にも、日常の「犠牲」にも使う。
公式・一次情報をチェック
- mint(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- monster(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- Livy, History of Rome 7.28(Perseus Digital Library, タフツ大学)perseus.tufts.edu
このネタ、誰かに教えたくなった?
money(お金)の語源は、女神ユノの呼び名「モネータ」。神殿でお金を作っていたから。モネータは「忠告する」monere からとされ、monitor・monster とも親戚かもしれない。地震でブタのいけにえを命じたと伝わる女神だ。
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出典・参考文献(7件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「money」「mint」「monitor」「monster」「demonstrate」「monument」「summon」「June」ahdictionary.com
- The American Heritage Dictionary, Appendix I: Indo-European Roots「men-1」ahdictionary.com
- Cicero, De Divinatione 1.101, 2.69(W. A. Falconer 英訳, Loeb 1923, LacusCurtius, シカゴ大学)penelope.uchicago.edu
- Livy, History of Rome 6.20(Rev. Canon Roberts 英訳, Perseus Digital Library, タフツ大学)perseus.tufts.edu
- Suda On Line「Moneta」mu 1220(D. Whitehead 英訳・注, Stoa Consortium)cs.uky.edu
- Dictionary.com「money」「mint」(語源欄)dictionary.com
- Wiseman, T. P. (2009) Licinius Macer, Juno Moneta, and Veiovis. In: Remembering the Roman People. Oxford University Pressdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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