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英語のマジか!?ビミョー

money(お金)の語源はローマの女神。monitor(モニター)とも親戚かも

money(お金)の語源はローマの女神。monitor(モニター)とも親戚かも

読む前に予想してみよう!

英語の money(お金)は、古代ローマの女神の呼び名から来ている

研究カード(どんな研究?)
対象
ラテン語の文献と英語辞典
規模
キケロ(紀元前1世紀)・リウィウス・スーダ辞典(10世紀)ほか
研究の種類
歴史言語学(辞書の語源記述)+古典の原文
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

money の語源は、ローマの女神ユノの呼び名モネータ。その神殿でお金を作っていた。ローマ人はモネータを「忠告する」monere から来た名前と説明した。monitor もこの monere から来ている。

ひとことで言うとお金の money は、ローマの女神の名前から来たんだって! パソコンの monitor とも親戚かも

もくじ
  1. money の語源は「女神の呼び名」
  2. mint と money は、同じ言葉が英語に2回入ったもの
  3. なぜ「モネータ」? 地震とブタの話
  4. monitor も monster も「忠告」の親戚
  5. どんでん返し:キケロ本人が「ブタのことしか忠告してない」
  6. まとめ

財布の中の money(お金)。パソコンの monitor(モニター)。ゲームの monster(モンスター)。

どれも「モン」で始まりますが、偶然ではないかもしれません。辞書をたどると、3つとも古代ローマの 「忠告する、警告する」 という言葉にたどり着きます。

しかも money の場合、そのあいだに一人の女神と、子をはらんだブタのいけにえの話がはさまっているのです。

01money の語源は「女神の呼び名」

『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』によると、money は古いフランス語を通して、ラテン語の monēta(造幣所、貨幣) から来ています。そしてこの monēta は、ローマの女神 ユノ(Juno)の呼び名「モネータ(Monēta)」 でした。ローマにあったユノの神殿で、お金が作られていたからです。

ユノは、ローマの神々の中心となる女神で、ユピテルの妻。女性や結婚、出産を守り、国の守り神ともされました。英語の June(6月) も、この女神の名前から来ています(同辞典)。

神殿のことは、ローマの歴史家リウィウス(紀元前59年〜紀元17年)が書き残しています。タフツ大学の Perseus に載る英訳で確かめると、こんな話です。

  • ローマ軍がアウルンキ人と戦ったとき、独裁官(非常時に置かれた最高指揮官)ルキウス・フリウス・カミルスが、戦いのさなかに 「ユノ・モネータの神殿を建てます」と神に誓った(『ローマ建国史』7巻28章)
  • 神殿は、ローマの丘の上の城塞の、かつてマンリウスという人物の家があった場所に建てられ、誓いの翌年に奉納された(同)
  • リウィウスは別の巻で、その場所には 「今、モネータの神殿と造幣所がある」 と書いている(6巻20章)

02mint と money は、同じ言葉が英語に2回入ったもの

ここで、英語の歴史をのぞいてみます。

monēta は、英語に2回入ってきました。1回目はずっと昔で、古英語の mynet(硬貨) になり、今の mint(造幣局) になりました。2回目は中世にフランス語を通って入り、money になりました。もとは同じ言葉なのに、別の道を通ったので、見た目も意味もちがう2つの単語になったのです。

mint からは、こんな表現も生まれています。

  • in mint condition:「造幣局から出てきたばかりのような」=新品同様の
  • mint a word:硬貨を作るように、新しい言葉を作る

ただし、ガムやお菓子の ミント(mint) は別の言葉です。こちらはハッカの仲間の植物を表すラテン語 menta から来ていて、お金とは関係がありません(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)。つづりも発音も同じ「ミント」が、英語には2つあるのです。

リウィウスは、丘の上には「今、モネータの神殿と造幣所がある」と書いた。money も mint も、この「モネータ」から来ている
リウィウスは、丘の上には「今、モネータの神殿と造幣所がある」と書いた。money も mint も、この「モネータ」から来ている

03なぜ「モネータ」? 地震とブタの話

では、ユノはなぜ「モネータ」と呼ばれたのでしょう。古代のローマ人自身が、その理由を説明しています。

1つ目は、地震の話。 紀元前1世紀の政治家キケロは、『予言について』という本の中で、弟クィントゥスにこう語らせています。地震が起きたとき、丘の上のユノの神殿から声がして、子をはらんだ雌ブタをいけにえにしておわびをせよと命じた。そのためユノはモネータと呼ばれるようになった――。シカゴ大学のサイト LacusCurtius に載る英訳(1923年)は、この呼び名を「Juno the Adviser(忠告者ユノ)」と訳しています。

2つ目は、戦争のお金の話。 10世紀にビザンツ帝国(東ローマ帝国)で作られた大きな事典『スーダ』には、別の話があります。ローマがピュロス王などと戦っていたとき、戦費に困ってユノ(スーダはギリシャ語の事典なので、ギリシャの女神の名ヘラで書いている)に祈ると、「正しく戦えば、お金に困ることはない」という答えが返ってきた。願いがかなったローマ人は、ユノを「モネータ、つまり忠告者」としてあがめ、その神殿で硬貨を作ることに決めた、というのです。

話の中身はちがっても、どちらも「モネータ=忠告してくれる女神」という説明です。ラテン語で「忠告する、警告する、思い出させる」は monēre(モネーレ)。この動詞から、英語の単語がたくさん生まれています。

04monitor も monster も「忠告」の親戚

アメリカン・ヘリテージ英語辞典で、monēre の子孫を確かめてみます。

  • monitor(モニター):ラテン語では「警告する人、注意する人」。この辞書では今でも、1番目の意味は「忠告したり、注意したり、思い出させたりする人」。2番目は、先生を手伝う「係の生徒」。画面や装置の意味は、そのあとに並んでいます
  • monster(モンスター):ラテン語の mōnstrum(神々が示す前ぶれ、しるし)から。もとは「神さまからの警告」だったのです
  • demonstrate(実演する、デモをする):mōnstrum から生まれた mōnstrāre(見せる)が入っています。日本語の「デモ」は demonstration を縮めた言葉です
  • monument(記念碑):monumentum(思い出させるもの)
  • summon(呼び出す):summonēre(こっそり思い出させる)
  • premonition(虫の知らせ、予感):praemonēre(前もって警告する)
  • admonish(さとす、注意する):admonēre

お金、画面、怪物、デモ、記念碑。 バラバラに見える単語が、「忠告する」という1つの動詞でつながっていました。

05どんでん返し:キケロ本人が「ブタのことしか忠告してない」

ここまでの話には、大事な注意点があります。

monitor や monster が monēre から来たことは、辞書がはっきり書いています。ところが money と monēre のあいだには、「女神の呼び名モネータは monēre から来た」という一段がはさまっています。そしてその一段は、ローマ人自身の「説明の話」にもとづいているのです。

まず、地震の話を紹介したキケロ本人が、同じ本の第2巻で、弟の話にこう切り返しています。「モネータが私たちに忠告してくれたことなんて、身ごもったブタのこと以外に何かあったかね?」 キケロはその直前で、声を出して名前をもらった別の神(アイウス・ロクエンス=「語る神」)が、その後は黙りこんでいると皮肉っています。モネータも同じだ、というわけです。

『スーダ』の英訳に付いた研究者の注も、「忠告する」から説明するのはモネータという呼び名の説明の1つにすぎないと書いています。この女神をまつる習わしは、ピュロス王との戦争よりずっと前からあったとする話もある、というのです。

英語の辞書も慎重です。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は money の項で「女神ユノの呼び名 Monēta から」「その神殿でお金が作られた」、Dictionary.com も「(ユノと同一視されることが多い)女神モネータの神殿で硬貨が作られた」と書くだけで、モネータという名前そのものの由来には踏みこんでいません。

神殿があった正確な場所でさえ、研究者のあいだで議論が続いています。ローマ史家ワイズマン(2009年)は、ユノ・モネータの神殿の場所について新しい候補地を提案しています。

06まとめ

money は、ローマの女神ユノの呼び名「モネータ」から。その神殿で硬貨が作られたので、モネータが「造幣所」「お金」を指すようになりました。同じ言葉が古英語に入って mint にもなっています。

モネータは「忠告する」monēre から来たと、ローマ人は説明しました。その monēre からは monitor も monster も monument も生まれています。ただし money と monēre をつなぐ部分は、「ブタのいけにえを命じた女神」というローマの言い伝えが頼り。言い伝えを紹介したキケロ本人が皮肉を言っているのも、ローマ人らしいところです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn ancient Rome, the goddess Juno had a temple on one of Rome's hills, and she was known there as Juno Moneta. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In ancient Rome, the goddess Juno had a temple on one of Rome's hills, and she was known there as Juno Moneta. The historian Livy wrote that in his day the site held "the temple and mint of Juno Moneta."

Because coins were made there, "moneta" came to mean a mint and then money itself. English took the word twice. It came in early as "mynet" in Old English, which became "mint," and later through French as "money."

But why was Juno called Moneta? The Romans explained it with stories. In one, a voice from her temple warned the people during an earthquake. So they linked the name to "monere," a verb meaning to warn or remind. That verb also gave us "monitor" and "monument."

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

古代ローマでは、女神ユノはローマの丘の一つに神殿を持ち、そこではユノ・モネータとして知られていた。歴史家リウィウスは、自分の時代にその場所には「ユノ・モネータの神殿と造幣所」があったと書いた。

そこで硬貨が作られたので、「moneta」は造幣所、そしてお金そのものを意味するようになった。英語はこの言葉を2回取り入れた。早い時期に古英語の「mynet」として入って「mint」になり、のちにフランス語を通って「money」になった。

では、なぜユノはモネータと呼ばれたのか。ローマ人はそれを物語で説明した。その一つでは、地震のときに神殿から声がして人々に警告した。そこで彼らはこの名前を、「警告する・思い出させる」という意味の動詞「monere」と結びつけた。この動詞からは「monitor」や「monument」も生まれた。

4択リーディングクイズ

Q1. According to Livy, what was on the site in his day?

Q2. How did the word "moneta" enter English?

Q3. What does the passage suggest about the link between Moneta and "monere"?

重要単語

  • mintB2
    名詞・動詞造幣局;硬貨を作るThe coins were made at the national mint. ラテン語 moneta から。in mint condition「新品同様の」。植物のミントは別の語(ラテン語 menta)。
  • monitorB2
    動詞・名詞見守る、監視する;画面、監視装置The nurse monitored his heart rate all night. ラテン語 monere(警告する)から。「画面」より動詞の「監視する」が長文でよく出る。
  • warnB1
    動詞警告する、注意するThe sign warns drivers about falling rocks. warn A about/of B「AにBについて警告する」、warn A to do「Aに~するよう注意する」。
  • templeB1
    名詞神殿、寺院The temple stood on top of the hill. 「こめかみ」も temple だが、別の語源。
  • monetaryC1
    形容詞通貨の、金融のThe central bank changed its monetary policy. monetary policy「金融政策」はニュース英語の定番。money と同じ moneta から。
  • admonishC1
    動詞(穏やかに)注意する、さとすThe teacher admonished him for being late. ad-(〜に)+monere(警告する)。admonish A for B「BのことでAを注意する」。
  • sacrificeB2
    名詞・動詞いけにえ(にする);犠牲The Romans offered a sacrifice to the goddess. make a sacrifice「犠牲を払う」。古代の宗教の話にも、日常の「犠牲」にも使う。
money(お金)の語源は、女神ユノの呼び名「モネータ」。神殿でお金を作っていたから。モネータは「忠告する」monere からとされ、monitor・monster とも親戚かもしれない。地震でブタのいけにえを命じたと伝わる女神だ。

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出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「money」「mint」「monitor」「monster」「demonstrate」「monument」「summon」「June」ahdictionary.com
  2. The American Heritage Dictionary, Appendix I: Indo-European Roots「men-1」ahdictionary.com
  3. Cicero, De Divinatione 1.101, 2.69(W. A. Falconer 英訳, Loeb 1923, LacusCurtius, シカゴ大学)penelope.uchicago.edu
  4. Livy, History of Rome 6.20(Rev. Canon Roberts 英訳, Perseus Digital Library, タフツ大学)perseus.tufts.edu
  5. Suda On Line「Moneta」mu 1220(D. Whitehead 英訳・注, Stoa Consortium)cs.uky.edu
  6. Dictionary.com「money」「mint」(語源欄)dictionary.com
  7. Wiseman, T. P. (2009) Licinius Macer, Juno Moneta, and Veiovis. In: Remembering the Roman People. Oxford University Pressdoi.org

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