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英語のマジか!?ホント

英語のクマ bear は「茶色いの」というあだ名らしい。本当の名前は Arctic(北極)に残る

英語のクマ bear は「茶色いの」というあだ名らしい。本当の名前は Arctic(北極)に残る

読む前に予想してみよう!

「Arctic(北極)」という言葉は、北極にシロクマがいることから名づけられた

研究カード(どんな研究?)
対象
インド・ヨーロッパ語族の諸言語のクマの呼び名
規模
英語・ロシア語・ギリシャ語・ラテン語など
研究の種類
比較言語学(語源の比較)・辞書
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

bear のもとは「茶色いもの」という説が有力。古い本当の呼び名はギリシャ語 arktos として Arctic(北極)に残る。怖くて名前を呼べなかったというタブー説もあるが、確定ではない。

ひとことで言うと英語の bear は「茶色いの」というあだ名だったらしい。昔の名前は「北極」に残ってるよ!

もくじ
  1. bear のもとの意味は「茶色いもの」
  2. クマの“本名”は Arctic に残っていた
  3. なぜ北の言葉だけ“あだ名”になったのか
  4. 日本の猟師は、クマを「クロゲ」と呼んだ
  5. どんでん返し:「茶色」も「タブー」も、確かではない
  6. まとめ

英語でクマは bear。英語を習い始めてすぐに出会う単語です。

でもこの bear、もとをたどると「クマ」という意味ではなかったようです。有力な説では、意味は「茶色いやつ」。つまり、あだ名です。

では、クマの“本当の名前”はどこへ行ったのか。じつは、ニュースや地図でおなじみの言葉に残っています。Arctic(北極)です。

01bear のもとの意味は「茶色いもの」

英語・ドイツ語・ギリシャ語・ラテン語・ロシア語・ヒンディー語などは、もとは1つの言葉から分かれた親戚で、まとめて「インド・ヨーロッパ語族」と呼ばれます。アメリカン・ヘリテージ英語辞典には、この親戚の言葉に共通する古い“言葉のもと”(語根)をまとめた付録があります。

その付録は、bear のもとを、英語やドイツ語の祖先にあたるゲルマン語の berō( は記録に残っておらず、学者が復元した形の印)とし、その意味を "the brown animal"(茶色い動物) と説明しています。同じ「茶色・光る」を表す“言葉のもと”からは、次の語も生まれました。

  • brown(茶色)
  • bruin(クマ):中世の動物物語『狐のレナード(Reynard the Fox)』に出てくるクマの名前。オランダ語の bruun(茶色)から(同じ辞典の「bruin」の項)
  • beaver(ビーバー):こちらも "the brown animal"。オックスフォードの学習辞典も「“茶色”を意味する語根から」としています

英語では、クマもビーバーも「茶色いの」と呼ばれていたことになります。

02クマの“本名”は Arctic に残っていた

では、あだ名に置きかえられる前の名前は何だったのでしょうか。

ギリシャ語の arktos から生まれた英語が Arctic です。オックスフォードの学習辞典によると、Arctic はギリシャ語 arktikos から来ていて、もとの arktos の意味は「クマ、おおぐま座、北極星」。

Arctic が指していたのは、北極にすむシロクマではなく、北の空に見える星座の「おおぐま座」でした。「クマ(の星座)が見える方角」=北、というわけです。

  • Antarctic(南極):ant-(反対)+arktikos。もとの意味は「北の反対」(オックスフォード学習辞典)
  • Arcturus(アークトゥルス):うしかい座の明るい星。「クマの番人」の意味で、おおぐま座の後ろにいる位置から(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)
  • ursine(クマの、クマのような):ラテン語 ursus から。おおぐま座のラテン語の名前 Ursa Major(英語でもこう呼ぶ)は「大きな雌グマ」

03なぜ北の言葉だけ“あだ名”になったのか

論文がくらべた、ほかの言語のクマの呼び名も見てみましょう。

  • ロシア語 медведь:「ハチミツを食べるもの」。「ハチミツ」と「食べる」を組み合わせた古いスラブ語から(ポーランド語の niedźwiedź も同じ語)
  • リトアニア語 lokys:「なめるもの」
  • アイルランド語 mathúin:「よい子牛」
  • ウェールズ語 mochyn mêl:「ハチミツのブタ」

本名ではなく、色や好物、ほめ言葉で呼んでいます。

そこで出てくるのがタブー説です。危険な動物の名前を口にすると、本当にやって来てしまう。だから遠回しに呼んだ、という考え方です。

オックスフォード大学出版局のブログで、英語の語源辞典の著者でもある語源学者アナトリー・リバーマンは、こう説明しています。クマは名前を呼ばれると「招かれた」と思って来るかもしれない。そこでゲルマン語の世界では名前を変えた。「茶色いの」と言っていれば、クマは自分の話だと気づかない――。一方、北欧で男の子に Björn(ビョルン=クマ) と名づけるのは、強さを授けることだった、とも書いています。

クマやオオカミの名前が置きかえられたのは、主にゲルマン語とバルト・スラブ語の地域でした。論文は、この地域でこれらの動物がより大事な信仰の対象だったからかもしれない、と考えています。そして、昔のインド・ヨーロッパ語の話し手は、その土地でいちばん重要な肉食の獣の名前を避けた、とまとめています。北ヨーロッパではそれがクマで、もっと南ではオオカミだった、というわけです。

「名前を呼ぶと来てしまう」。クマを「茶色いの」「ハチミツを食べるもの」と呼んだのは、恐れからだったという説がある
「名前を呼ぶと来てしまう」。クマを「茶色いの」「ハチミツを食べるもの」と呼んだのは、恐れからだったという説がある

04日本の猟師は、クマを「クロゲ」と呼んだ

これ、遠い国の話だけではありません。

日本の東北地方などの猟師(マタギなど)は、山の中だけで使う特別な言葉「山言葉(やまことば)」を持っていました。平凡社の『百科事典マイペディア』によると、山言葉は70〜80語が知られ、仲間以外には秘密にされていました。

その中で、クマは「くろげ(黒毛)」「山の人」。オオカミは「やせ」、米は「くさのみ」です。理由は、本当の名前で呼ぶと獲物に感づかれるから、と同じ事典は説明しています。

英語のご先祖は「茶色いの」、日本の猟師は「黒毛」。色で呼んでごまかすという発想が、遠く離れた2つの文化で重なっています。

05どんでん返し:「茶色」も「タブー」も、確かではない

ここまでの話には、はっきりした証拠がない部分があります。

まず、「bear=茶色いもの」自体が説です。論文は、ゲルマン語の bear のもとは 「はっきりせず、議論がある」 としたうえで、「ふつうは“茶色”の語根から来たとされる」と書いています。オックスフォードの学習辞典の bear の語源欄も、オランダ語 beer やドイツ語 Bär と同じ系統だと書くだけで、「茶色」には触れていません。

タブー説も、ゲルマン語やバルト・スラブ語に古い語が「ない」ことから逆算した推測です。論文自身はタブー説に立っていますが、置きかえがあったことは「想定(assumption)」だと書いています。論文によると、古代インドのサンスクリット語にも madhvád(ハチミツを食べるもの)という呼び名がありました。古い名前が残っている言語でも、あだ名は使われていたのです。リバーマンも、タブーで言葉がわざとゆがめられると語源はたどりにくくなり、「正しく言い当てた保証はない」と認めています。

さらに論文は、古い名前の *h₂ŕ̥tḱo- そのものも、のどを鳴らすような音から「うなるもの」を表した遠回しの呼び名だったかもしれない、という見方にも触れています。もしそうなら、クマの“本名”さえ、あだ名だったことになります。

06まとめ

英語の bear は、有力な説では「茶色いもの」というあだ名でした。クマの古い“本名”は、ギリシャ語の arktos として、星座を通って Arctic(北極)に残っています。

名前を呼ぶと来てしまうから、あだ名で呼んだ――このタブー説はまだ推測の段階です。ただ、日本の猟師がクマを「黒毛」と呼んだことを思うと、怖いものの名前を口にしない気持ちは、時代も場所もこえて似ているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAsk an English speaker what "bear" means and they will say "a big furry animal." Ask a historian of… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Ask an English speaker what "bear" means and they will say "a big furry animal." Ask a historian of language and you may hear "the brown one." The word probably comes from an old Germanic name for the animal that described its color.

The beaver got its name in the same way. Many other old languages in Europe and Asia kept an older word for bear. Greek had "arktos," which later gave English "Arctic," and Latin had "ursus."

But this old word is missing from the Germanic and Slavic languages. Russians call the bear "medved," or "honey eater." Some scholars think people in the north were afraid to say the real name, in case the bear heard it and came.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

英語を話す人に「bear」の意味をたずねると、「毛の生えた大きな動物」と答えるだろう。ことばの歴史の研究者にたずねると、「茶色いもの」という答えが返ってくるかもしれない。この語はおそらく、その動物の色を言い表した古いゲルマン語の呼び名から来ている。

ビーバーも同じようにして名前がついた。ヨーロッパやアジアのほかの古い言語の多くは、クマを表すもっと古い語を残していた。ギリシャ語には「arktos」があり、これがのちに英語の「Arctic(北極)」になった。ラテン語には「ursus」があった。

ところが、この古い語はゲルマン語やスラブ語には見当たらない。ロシア人はクマを「medved(ハチミツを食べるもの)」と呼ぶ。北方の人々は、クマが聞きつけてやって来ないように、本当の名前を口にするのを恐れたのだと考える研究者もいる。

4択リーディングクイズ

Q1. Which animal got its name in the same way as the bear?

Q2. Which language group does NOT have the old word for bear?

Q3. Why might people in the north have avoided the real name?

重要単語

  • bearA1
    名詞クマA bear was looking for food near the cabin. 動詞の bear(耐える、運ぶ)とは別の語。発音は bare(はだかの)と同じ。like a bear with a sore head「ひどく機嫌が悪い」。
  • ArcticB1
    名詞・形容詞北極(地方);北極のPolar bears live in the Arctic. 名詞は the Arctic と the をつける。南極は the Antarctic(ant-「反対」+arctic)。発音は「アークティック」。最初の c を読まない「アーティック」も辞書に載っている。
  • tabooB2
    名詞・形容詞禁忌、口にしてはいけないこと;禁じられたIn some places, there was a taboo on saying the animal's name. トンガ語から英語に入った語。a taboo on ~ で「~に対する禁忌」。break a taboo「タブーを破る」。
  • euphemismC1
    名詞遠回しな言い方、婉曲語"Pass away" is a euphemism for "die." eu-(よい)+pheme(言うこと)。言いにくいことをやわらげる言い方。
  • beaverB2
    名詞ビーバーThe beaver built a dam across the stream. bear と同じく「茶色」を表す語根から。動詞 beaver away は「せっせと働く」。
  • constellationB2
    名詞星座The Great Bear is one of the best-known constellations. con-(いっしょに)+stella(星)。おおぐま座は the Great Bear または Ursa Major。
  • nicknameB1
    名詞あだ名、愛称His real name is Robert, but his nickname is Bob. give someone a nickname「あだ名をつける」。
英語の bear(クマ)は、もとは「茶色いもの」という意味のあだ名とされる。クマの古い“本名”はギリシャ語 arktos で、これが Arctic(北極)の語源。ロシア語のクマは「ハチミツを食べるもの」。名前を呼ぶと来てしまうから避けた、というタブー説がある。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Wacewicz-Chorosz (2024) Taboo zoonyms: What do 'bear', 'lynx' and 'wolf' have in common?, Beyond Philology 20(4)doi.org
  2. American Heritage Dictionary「Appendix I: Indo-European Roots」(bher-² ・ r̥tko-)ahdictionary.com
  3. Oxford Advanced Learner's Dictionary「Arctic」「Antarctic」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  4. Liberman (2016) "Vulpes vulpes," or foxes have holes. Part 1, OUPblog(オックスフォード大学出版局)blog.oup.com
  5. 世界大百科事典・百科事典マイペディア(平凡社)・ブリタニカ国際大百科事典「山言葉」(コトバンク掲載)kotobank.jp

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