「ペンギン」は、もとは北の海の別の鳥の名前。その鳥は狩りつくされて絶滅した

読む前に予想してみよう!
英語の penguin という名前は、最初から南半球のペンギンにつけられたものだ
オックスフォードやアメリカの辞書によると、penguin はもともと北大西洋のオオウミガラス(great auk)の名前。のちに南半球の鳥に使われるようになった。
- 対象
- 英語・日本語の辞書と百科事典、絶滅鳥の古代DNA研究
- 規模
- 辞書・事典8種、41羽分のDNA
- 研究の種類
- 辞書の意味・語源の比較+遺伝子解析
- 確かさ
- ★★★★☆
英語の penguin は16世紀、北大西洋の飛べない鳥オオウミガラスの名前だった。のちに南の鳥に名前が移り、元の持ち主は1844年を最後に確かな記録が消えた。
ひとことで言うと「ペンギン」は昔、北の海にいた別の鳥の名前だったんだって!
「ペンギン」と聞いたら、南極の氷の上をよちよち歩く白黒の鳥を思いうかべますよね。
ところが、ペンギンという名前の由来をたどると、英語の penguin は最初、南極の鳥の名前ではありませんでした。16世紀に penguin と呼ばれていたのは、地球の反対側、北大西洋にいた別の飛べない鳥。日本語でオオウミガラス、英語で great auk(グレイト・オーク)という鳥です。
そして、その“元祖ペンギン”はもういません。人間に狩りつくされ、1844年にアイスランド沖で殺された2羽が、確かな記録の残る最後になりました。
01最初の「ペンギン」は北大西洋にいた
まず辞書で確かめてみましょう。
つまり、今のペンギンは、ほかの鳥から名前をゆずり受けたことになります。
02オオウミガラスってどんな鳥?
『ブリタニカ国際大百科事典』と『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、オオウミガラスは全長75センチほど。頭から背中は黒っぽく、おなかは白。目の前に白い斑点があります。翼は短くて飛べず、外見も行動もペンギンに似ていたそうです。
すんでいたのは北大西洋の島々です。スコットランドのセント・キルダ島から、アイスランド、グリーンランド、カナダのニューファンドランド島のまわりまで。飛べないので上陸できる島は多くなく、子育てのために島へ上がったところを、人間につかまえられました。
学名は Pinguinus impennis(ピングイヌス・インペンニス)。学名の前半に、「ペンギン」とよく似たつづりが入っています。

03似ているのに、親せきではない
ペンギンとオオウミガラスは、とてもよく似ています。でも、生き物としては遠い関係です。
『世界大百科事典』によると、ペンギンにいちばん近い仲間はミズナギドリのなかま。一方、オオウミガラスはウミスズメ科で、eLife の論文によると、今生きている中でいちばん近い親せきはオオハシウミガラス(英語で razorbill)という、空を飛べる鳥です。
同じ事典は、ペンギンとウミスズメのなかまが似ているのは、海での暮らし方が似ているからだと説明しています。暮らし方が似ると、近い親せきでなくても体つきが似てくる。生物学で「収れん」と呼ばれる現象です。
だからこそ、南の海で白黒の飛べない鳥を見たヨーロッパの人たちは、「ペンギンだ」と思ったのかもしれません。辞書にあるのは「誤って当てはめた」「混同した」という説明までで、だれがいつ最初にそう呼んだかは書かれていません。
ちなみに、英語の great auk という呼び名のほうは、Dictionary.com によると1820〜30年ごろからの記録です。penguin のほうが、200年以上も古いのです。
041844年、アイスランド沖の小島で
オオウミガラスは、かつては数百万羽いたと考えられています。2019年に eLife に載った研究では、北大西洋の各地に残る41羽分の試料からDNAを読み取り、昔の数の変化を調べました。
結果は次のとおりです。
- 16世紀初めに人間の激しい狩りが始まる前、絶滅に向かっていたしるしは見つからなかった
- 環境の変化がなかったとしても、人間の狩りだけで絶滅しうることが計算で示された
数が減ると、今度は博物館や収集家がオオウミガラスの標本や卵をほしがるようになりました。記録の確かな最後のつがいは、1844年6月、アイスランドのエルデイ島で、博物館の標本にするために殺されました。
その後も、1848年のノルウェー、1852年のニューファンドランドで見たという記録はあります。でも、確かめられた記録は1844年が最後です。
05どんでん返し:「白い頭」が語源…とは言い切れない
penguin の語源としてよく出てくるのが、ウェールズ語の pen gwyn(ペン・グウィン)=「白い頭」という説です。AHD も Dictionary.com も、この説を挙げています。
でも、どちらも「かもしれない」という書き方です。しかも、オオウミガラスの頭は黒っぽく、夏の羽で目立つ白は目の前の大きな斑点です。頭全体が白い鳥ではありません。
辞書によって、説明も分かれています。
- Dictionary.com:「白い頭」は、冬の羽のオオウミガラスのことを指したのだろう
- AHD:「白い頭(White Head)」は、ニューファンドランドにある島の名前で、そこからオオウミガラスの呼び名になったのかもしれない
- オックスフォードの学習辞典・『世界大百科事典』:語源は不明
「ペンギン=白い頭」とクイズで出たら、「一つの説」と答えるのが正確です。
日本語の「ペンギン」は英語から入りました。『日本国語大辞典』が挙げる例は、1912年の『舶来語便覧』。『デジタル大辞泉』には「人鳥(じんちょう)」という別名も載っています。
06まとめ
南極の鳥が名乗っている「ペンギン」は、もとは北大西洋のオオウミガラスの名前でした。よく似た姿の鳥が南の海で見つかり、名前だけが南へ渡ったのです。そして元の持ち主は、人間の狩りで1844年を最後に確かな記録が途絶えました。
水族館でペンギンを見たら、It was named after a bird that no longer exists.(もういない鳥から名前をもらったんだよ)と、ひとこと添えてみてください。
よくある質問
ペンギンの名前の由来は何ですか?
もとは北大西洋にいた別の飛べない鳥、オオウミガラス(great auk)の名前です。オックスフォードの学習辞典によると、penguin は16世紀後半からの言葉で、もとはオオウミガラスを指していました。その名前が、のちに南半球の鳥に移りました。
ペンギンの語源はウェールズ語の「白い頭」ですか?
一つの説にすぎません。American Heritage Dictionary と Dictionary.com は、ウェールズ語の pen gwyn(白い頭)を「かもしれない」という書き方で挙げています。オックスフォードの学習辞典と『世界大百科事典』は、語源を不明としています。
なぜ南の鳥が「ペンギン」と呼ばれるようになったのですか?
オオウミガラスの名前が、よく似た南半球の鳥に当てはめられたためです。Dictionary.com は「誤って当てはめられた」、『世界大百科事典』は「混同された」と説明しています。だれがいつ最初にそう呼んだかは、辞書には書かれていません。
オオウミガラスとはどんな鳥ですか?
北大西洋の島々にいた、飛べない海鳥です。全長75センチほどで、頭から背中は黒っぽく、おなかは白。外見も行動もペンギンに似ていました(ブリタニカ国際大百科事典・ニッポニカ)。学名は Pinguinus impennis です。
オオウミガラスはなぜ絶滅したのですか?
人間の狩りが原因です。卵・肉・羽毛を目当てに狩られました。2019年の学術誌 eLife の研究は、環境の変化がなくても人間の狩りだけで絶滅しうることを計算で示しています。確かな記録の最後は1844年6月、アイスランドのエルデイ島です。
ペンギンとオオウミガラスは親せきですか?
いいえ。『世界大百科事典』によると、ペンギンにいちばん近い仲間はミズナギドリのなかまで、オオウミガラスはウミスズメ科です。姿が似ているのは海での暮らし方が似ているためで、生物学で「収れん」と呼ばれる現象です。
ペンギンは英語で何と言いますか?
penguin です。「ペンギンは飛べない」は Penguins can't fly.、「飛べない鳥」は a flightless bird と言います。日本語の「ペンギン」は英語から入った言葉で、『デジタル大辞泉』には「人鳥(じんちょう)」という別名も載っています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the late 1500s, "penguin" was the English name of a large seabird in the North Atlantic.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Most people think of penguins as birds of the Antarctic. But the English word "penguin" first named a different bird. It lived far to the north, in the North Atlantic.
Its English name today is the great auk. It was big and black and white, and it could not fly. People hunted it for its eggs, meat and feathers. The last two that we know of for sure were killed in 1844.
72 words ・ CEFR A2
和訳を見る
多くの人は、ペンギンを南極の鳥だと思っています。でも、英語の「penguin」という言葉は、最初は別の鳥の名前でした。その鳥は、ずっと北の北大西洋にすんでいました。
今の英語での名前は great auk(オオウミガラス)です。大きくて白黒で、飛ぶことができませんでした。人々は卵や肉、羽毛を目当てにこの鳥を狩りました。確かな記録が残る最後の2羽は、1844年に殺されました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
the English word "penguin" first named a different bird とあり、最初に penguin と呼ばれた鳥の話なので C。
Q2. Where did the great auk live?
It lived far to the north, in the North Atlantic とあるので A。
Q3. In the passage, what does "hunted" mean?
hunt は「狩る」。卵や肉、羽毛のために追いかけて殺した、という意味なので B。
In the late 1500s, "penguin" was the English name of a large seabird in the North Atlantic. Today we call that bird the great auk. It had a black back and a white belly, and it could not fly. It looked a lot like the penguins of the south.
Later, the name moved to the birds of the Southern Hemisphere. One dictionary says the word was "misapplied" to them. The two groups of birds are not close relatives. They look alike because they live in similar ways in the sea.
The great auk was hunted for its eggs, meat and feathers until it died out. The last reliably recorded pair was killed near Iceland in 1844.
116 words ・ CEFR B1
和訳を見る
1500年代後半、「penguin」は北大西洋にすむ大きな海鳥の英語の名前だった。今日、私たちはその鳥をオオウミガラスと呼んでいる。背中は黒、おなかは白で、飛べなかった。南のペンギンにとてもよく似ていた。
のちに、この名前は南半球の鳥に移った。ある辞書は、この語が南の鳥に「誤って当てはめられた」と書いている。2つのグループの鳥は近い親せきではない。似ているのは、海で似た暮らし方をしているからだ。
オオウミガラスは卵や肉、羽毛を目当てに狩られ、ついに絶滅した。確かな記録の残る最後のつがいは、1844年にアイスランドの近くで殺された。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the word "penguin" mean in the late 1500s?
In the late 1500s, "penguin" was the English name of a large seabird in the North Atlantic とあるので B。
Q2. Why do the great auk and southern penguins look alike?
They look alike because they live in similar ways in the sea とあり、近い親せきではないとも書かれているので C。
Q3. What does "misapplied" suggest about how southern penguins got their name?
mis-(誤って)+applied(当てはめられた)。もともと北の鳥の名前を、南の鳥に誤って使ったという意味なので C。
The word "penguin" has been in English since the late 16th century, but it did not begin with the birds of Antarctica. It first referred to the great auk, a flightless seabird that bred on rocky islands from Scotland to Newfoundland. The name later passed to the similar-looking birds of the Southern Hemisphere, which are not closely related to it.
The great auk's nearest living relative is the razorbill, a bird that can fly. Where the word itself came from is less certain. Some dictionaries mention the Welsh "pen gwyn," meaning "white head," but the great auk's head was mostly dark, with a white patch in front of each eye. One dictionary suggests that White Head was the name of an island, and Oxford calls the origin unknown.
The bird's end is better documented. A 2019 study read DNA from 41 great auks and found no sign that the species was in trouble before heavy hunting began in the early 1500s. As the birds grew rare, collectors wanted them even more. The last reliably recorded pair was killed in June 1844 on Eldey Island, off Iceland, for a museum.
189 words ・ CEFR B2
和訳を見る
「penguin」という語は16世紀後半から英語にあるが、南極の鳥から始まったわけではない。最初に指していたのはオオウミガラスで、スコットランドからニューファンドランドまでの岩の島で繁殖していた飛べない海鳥だった。この名前はのちに、姿の似た南半球の鳥に移ったが、その鳥たちはオオウミガラスと近い関係にはない。
オオウミガラスにいちばん近い現生の親せきはオオハシウミガラスで、空を飛べる鳥だ。語そのものの由来はもっとはっきりしない。ウェールズ語の「pen gwyn」(白い頭)を挙げる辞書もあるが、オオウミガラスの頭はほとんど黒っぽく、目の前に白い斑点があるだけだった。ある辞書は、White Head は島の名前だったのではないかと書き、オックスフォードは語源を不明としている。
この鳥の最期のほうが、記録がしっかりしている。2019年の研究は41羽のオオウミガラスのDNAを読み取り、激しい狩りが1500年代初めに始まる前には、この種が危機にあったしるしは見つからなかった。鳥が珍しくなるにつれて、収集家はいっそう欲しがった。確かな記録の残る最後のつがいは、1844年6月、アイスランド沖のエルデイ島で、博物館のために殺された。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
penguin の名前がオオウミガラスから南の鳥へ移ったことと、オオウミガラスの絶滅の話なので A。
Q2. What did the 2019 study find?
found no sign that the species was in trouble before heavy hunting began in the early 1500s とあるので B。
Q3. Why does the writer mention the color of the great auk's head?
the great auk's head was mostly dark とあり、「白い頭」説に疑問があることを示すためなので D。
重要単語
- penguinA2名詞ペンギン;(古い意味で)オオウミガラスPenguins can't fly, but they're great swimmers.
16世紀後半から英語にある語。最初はオオウミガラスを指した。発音は「ペングウィン」に近い。 - great aukC1名詞オオウミガラス(絶滅した北大西洋の海鳥)The great auk lived on rocky islands in the North Atlantic.
auk はウミスズメ科の鳥のこと。北欧の言葉から来た語で、古ノルド語の alka と同じ系統。great auk という呼び名は1820年代ごろからの記録。 - flightlessC1形容詞飛べないThe ostrich is the largest flightless bird alive today.
flight(飛ぶこと)+-less(〜のない)。homeless, careless と同じ作り。 - extinctB2形容詞絶滅したThe great auk has been extinct for more than 150 years.
go extinct / become extinct で「絶滅する」。名詞は extinction。 - huntB1動詞狩る、狩りをするSailors hunted the birds for their meat and eggs.
hunt for 〜 は「〜を探し回る」の意味でも使う。job hunting は「職探し」。 - relativeB1名詞親せき;(生物の)近縁種The razorbill is the closest living relative of the great auk.
人にも生き物にも使う。a close relative「近い親せき」。 - originB1名詞起源、由来Nobody knows the origin of the word for sure.
of unknown origin「由来不明の」は辞書の語源欄によく出る言い方。
公式・一次情報をチェック
- penguin(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- great auk(Dictionary.com)dictionary.com
- great auk(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- ペンギン(日本国語大辞典・デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか、コトバンク)kotobank.jp
このネタ、誰かに教えたくなった?
英語の penguin は、最初は北大西洋の飛べない鳥オオウミガラス(great auk)の名前だった。のちに南の鳥に名前が移り、元の持ち主は乱獲で絶滅。1844年にアイスランド沖で殺された2羽が確かな記録の最後だ。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed., "penguin" "great auk" "razorbill"(HarperCollins)ahdictionary.com
- Dictionary.com「penguin」「great auk」(Random House Unabridged Dictionary ほか)dictionary.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary, "penguin"(Oxford University Press)oxfordlearnersdictionaries.com
- Thomas et al. (2019) Demographic reconstruction from ancient DNA supports rapid extinction of the great auk, eLife 8doi.org
- ブリタニカ国際大百科事典・日本大百科全書(ニッポニカ)・世界大百科事典「オオウミガラス」「ペンギン」(コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
本館
マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究
論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も





