「パンダ」はもともとレッサーパンダの名前。白黒のパンダはあとから名前を借りた

読む前に予想してみよう!
「パンダ」という名前は、もともと白黒のジャイアントパンダにつけられたものだ
アメリカの辞書によると、panda はもともとレッサーパンダ(red panda)の名前。1825年にフランスのキュヴィエが動物学の名前として使い、のちにジャイアントパンダも指すようになった。
- 対象
- 英語・日本語の辞書と百科事典、レッサーパンダの遺伝子解析
- 規模
- 辞書・事典7種+DNA研究1件
- 研究の種類
- 辞書の語義・語源の比較+分子系統解析
- 確かさ
- ★★★★☆
panda は1825年、フランスのキュヴィエがレッサーパンダに使った名前。白黒のジャイアントパンダがヨーロッパに紹介されたのは44年後の1869年で、「パンダ」の名前はあとから借りたものだった。
ひとことで言うと「パンダ」は、もともと赤茶色のレッサーパンダの名前だったんだって!
動物園の人気者、白と黒のパンダ。正式にはジャイアントパンダです。そして、その横で「レッサー(小さいほうの)パンダ」と呼ばれている、赤茶色のしっぽのふさふさした動物。
名前だけ見ると、ジャイアントパンダが本家で、レッサーパンダはおまけのようです。でも、名前の由来をたどると実は逆。panda という名前は、もともとレッサーパンダの名前でした。
1825年に名前がつけられたとき、白黒のパンダはまだヨーロッパに知られてもいませんでした。ジャイアントパンダがヨーロッパに紹介されたのは1869年、44年もあとのことです。
01最初の「パンダ」は赤茶色だった
辞書で確かめてみましょう。
つまり、年表にするとこうなります。
- 1825年:レッサーパンダが panda と名づけられる
- 1869年:白黒の動物がヨーロッパに紹介される
- そのあと:白黒の動物が、英語で giant panda と呼ばれるようになる
白黒の動物は、すでにあった「パンダ」という名前に“giant(巨大な)”をつけて呼ばれるようになりました。元の持ち主のほうは、“lesser(小さいほうの)”をつけて区別されるようになりました。
02名前の元はネパールの言葉
では、panda という言葉はどこから来たのでしょうか。
AHD によると、もとはネパールで使われていたレッサーパンダの呼び名「nigálya-pónya(ニガーリヤ・ポーニャ)」で、それを短くして形を変えたものと考えられています。イギリス人が書いた初期の記録にこの呼び名が出てくるそうです。
前半の nigálya は、ある種類の竹に関係する言葉です。レッサーパンダは、その竹を食べます。日本の辞書も、パンダはネパールの言葉で「竹を食べる者」(デジタル大辞泉)、「笹を食うもの」(日本国語大辞典)の意味だと説明しています。
レッサーパンダがすむのは、ネパールやブータンからミャンマー、中国西部にかけての山の森や竹林です。体長は50〜60センチほど、しっぽは輪のもようがついていて40〜50センチ(ニッポニカ)。竹の葉のほか、果物や木の葉、卵や昆虫なども食べます。

03名前は同じでも、親せきではない
名前を分け合っている2種のパンダは、近い親せきではありません。
ジャイアントパンダの分類は、100年以上も「アライグマのなかまか、クマのなかまか、それとも独立したグループか」と議論されてきました。ニッポニカによると、1996年以降のDNA研究で、早い時期に分かれたクマのなかまとみなされるようになりました。
レッサーパンダのほうも、長く議論が続きました。2000年に学術誌『Molecular Phylogenetics and Evolution』に載った、アメリカのフィールド自然史博物館などの研究チームの論文では、細胞の中の「ミトコンドリア」にある3つの遺伝子と、「核」にあるDNAの一部を比べました。その結果、
- 「クマにいちばん近い」という説も、「アライグマにいちばん近い」という説も、どちらも否定された
- レッサーパンダは、スカンクのなかま、そしてアライグマとイタチのなかまと一緒に、「イタチ上科」という大きなグループ(イタチに近い動物をまとめたなかま)に入る
- ただし、この3つのグループのどれとどれが近いかは、はっきりしなかった
Dictionary.com の説明も、レッサーパンダは「今ではジャイアントパンダとは関係がないと考えられている」です。
体の色も大きさも、親せき関係もちがう。それでも、竹を食べるという共通点があり、名前は同じ「パンダ」。名前が同じでも、生き物として近いなかまとはかぎらないのです。
04英語の panda、こう使う
英語の panda も、ふつうはジャイアントパンダのことです。オックスフォードの学習辞典は、panda の1つ目の意味を「中国にすむ、クマに似た大きな白黒の動物」、2つ目を「アライグマに似たアジアの動物で、赤茶色の毛と長く太いしっぽ(red panda とも言う)」としています。
- We saw two giant pandas at the zoo.(動物園でジャイアントパンダを2頭見た)
- The red panda is also called the lesser panda.(レッサーパンダは lesser panda とも呼ばれる)
- Red pandas spend a lot of time in trees.(レッサーパンダは木の上で長い時間を過ごす)
オックスフォードの学習辞典によると、lesser は、「より少ない」という意味の less に、さらに「より〜」を表す -er を重ねた形(二重の比較級)で、「(大きさや重要さが)ほかより小さいほうの」という意味。生き物の名前では、似た種類より小さいものにつけます。the lesser of two evils(2つの悪いもののうち、ましなほう)という言い方もあります。
05どんでん返し:「竹を食べる者」は確かではない
日本の辞書は、パンダの語源を「竹を食べる者」と書いています。でも、英語の辞書をくらべると、そこまではっきりしていません。
- AHD:前半の nigálya は竹の一種に関係する言葉。でも後半の pónya は意味が不確かで、「(動物の)足」を意味するネパール語と関係があるかもしれない、という程度
- Dictionary.com:ヒマラヤ南東部の、チベット・ビルマ系の言語から来たかもしれない
- オックスフォードの学習辞典:「ネパール語から」とだけ書く
「竹」に関係するところまでは辞書がそろっていますが、「竹を食べる者」とまで言い切れるかは、辞書によって書き方がちがいます。
もう一つ。辞書は、生き物の研究の進み方に追いつかないこともあります。同じ Dictionary.com のページでも、イギリスの辞書(Collins English Dictionary)の説明では、ジャイアントパンダを今も「アライグマに関係がある」とし、アライグマ科に入れています。アメリカの辞書(Random House 系)の説明は、クマのなかまとしています。同じページの中で、2つの辞書の分類がちがっているのです。
06まとめ
panda は1825年、まずレッサーパンダの名前でした。44年後にヨーロッパに紹介された白黒の動物がその名前を借り、やがて「パンダ」といえばそちら、という時代になりました。しかも2種は、名前ほどには近い親せきではありません。
動物園で red panda を見かけたら、You were the first panda, weren't you? と心の中で声をかけてみてください。“小さいほう”どころか、こちらが元祖です。
よくある質問
パンダの語源は何ですか?
ネパールで使われていたレッサーパンダの呼び名 nigálya-pónya を短くして形を変えたもの、と考えられています(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)。1825年にフランスのキュヴィエが、動物学の名前として panda を使い始めました。
パンダはもともとレッサーパンダの名前だったのですか?
はい。panda はもとはレッサーパンダの名前で、今はジャイアントパンダも指します。『デジタル大辞泉』も、ジャイアントパンダの発見まではレッサーパンダを指した、と書いています。
ジャイアントパンダが知られるようになったのはいつですか?
1869年です。フランスの神父ダビッドがヨーロッパに紹介したのが初めてでした(日本大百科全書)。レッサーパンダが panda と名づけられた1825年の44年後で、白黒の動物はすでにあった名前に giant をつけて呼ばれるようになりました。
パンダは「竹を食べる者」という意味ですか?
日本の辞書はそう説明していますが、確かとは言えません。英語の辞書AHDは、前半の nigálya は竹の一種に関係する言葉とする一方、後半の pónya は意味が不確かだとしています。「竹に関係する」までは辞書がそろっています。
レッサーパンダとジャイアントパンダは親せきですか?
近い親せきではありません。ジャイアントパンダは早い時期に分かれたクマのなかまとされています。2000年のDNA研究では、レッサーパンダはスカンクやアライグマ・イタチのなかまと同じ「イタチ上科」に入りました。
レッサーパンダは英語で何と言いますか?
red panda です。lesser panda という呼び方も辞書に載っています。英語で panda とだけ言えば、ふつうは白黒のジャイアントパンダのことです。
レッサーパンダの「レッサー」とはどういう意味ですか?
英語の lesser で、「(大きさや重要さが)ほかより小さいほうの」という意味です。less に -er を重ねた形で、生き物の名前では似た種類より小さいものにつけます。the lesser of two evils(2つの悪いもののうち、ましなほう)という言い方もあります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe red panda lives in mountain forests from Nepal to western China.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Most people think of a black and white animal when they hear the word "panda." But the name first belonged to a different animal, the red panda. It is about the size of a big cat, with red-brown fur and a long tail.
In 1825, a French scientist named Cuvier used the name "panda" for it. The big black and white panda became known in Europe much later, in 1869.
70 words ・ CEFR A2
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多くの人は「パンダ」という言葉を聞くと、白黒の動物を思いうかべます。でも、この名前は最初、別の動物のものでした。レッサーパンダです。大きなネコくらいの大きさで、赤茶色の毛と長いしっぽをしています。
1825年、キュヴィエというフランスの科学者が、この動物に「パンダ」という名前を使いました。大きな白黒のパンダがヨーロッパで知られるようになったのは、ずっとあとの1869年のことです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
the name first belonged to a different animal, the red panda とあり、最初に「パンダ」と呼ばれた動物の話なので B。
Q2. When did Cuvier use the name "panda"?
In 1825, a French scientist named Cuvier used the name "panda" for it とあるので C。1869年は白黒のパンダがヨーロッパで知られた年。
Q3. In the passage, what does "belonged to" mean?
the name first belonged to a different animal は「その名前は最初、別の動物のものだった」という意味なので A。
The red panda lives in mountain forests from Nepal to western China. It has red-brown fur and a ringed tail, and it eats a lot of bamboo. In 1825, the French zoologist Cuvier gave it the name "panda," probably taking the word from a local name in Nepal. At that time, European scientists did not yet know about the large black and white animal from China. It was introduced to Europe in 1869, and in time people began to call it the "giant panda."
Today the original panda is called the red panda or the lesser panda. The two animals share a name and a taste for bamboo, but DNA studies show that they are not close relatives.
118 words ・ CEFR B1
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レッサーパンダは、ネパールから中国西部にかけての山の森にすんでいる。赤茶色の毛と輪のもようのしっぽを持ち、竹をたくさん食べる。1825年、フランスの動物学者キュヴィエは、おそらくネパールの地元の呼び名から取って、この動物に「panda」という名前をつけた。当時、ヨーロッパの学者たちは、中国にすむ大きな白黒の動物のことをまだ知らなかった。その動物がヨーロッパに紹介されたのは1869年で、やがて「giant panda」と呼ばれるようになった。
今日、元祖のパンダはレッサーパンダ(red panda、lesser panda)と呼ばれている。2種は名前と竹好きを分け合っているが、DNAの研究からは近い親せきではないことが分かっている。
4択リーディングクイズ
Q1. Where did Cuvier probably get the word "panda"?
probably taking the word from a local name in Nepal とあるので B。
Q2. When was the large black and white animal introduced to Europe?
It was introduced to Europe in 1869 とあるので B。1825年はキュヴィエがレッサーパンダに panda という名前を使った年。
Q3. What can we infer from the passage?
1825年に red panda が panda と名づけられ、白黒の動物がヨーロッパに知られたのは1869年。すでにあった名前を借りたと推測できるので D。
When the French zoologist Cuvier introduced the name "panda" in 1825, he was describing a reddish, raccoon-like animal from the Himalayas, not the black-and-white bear from China. That bear was introduced to Europe in 1869 by the French priest Armand David, and it later became known in English as the "giant panda." The animal that first carried the name is now known as the red panda or lesser panda.
According to the American Heritage Dictionary, "panda" is probably a shortened form of a local name used in Nepal, nigalya-ponya. The first part is linked to a kind of bamboo that red pandas eat. Japanese dictionaries go further and say the word means "bamboo eater," although the meaning of the second part is uncertain. The two pandas also turn out to be distant relatives.
DNA work since the 1990s places the giant panda among the bears. A study of the red panda published in 2000 rejected the idea that it is closest to either bears or raccoons. It belongs instead to a larger group that also includes skunks, raccoons and weasels. So the lesser panda is not a small copy of the giant one. It had the name first.
198 words ・ CEFR B2
和訳を見る
1825年にフランスの動物学者キュヴィエが「panda」という名前を使い始めたとき、彼が記述していたのはヒマラヤにすむ赤みがかったアライグマに似た動物であり、中国の白黒のクマではなかった。そのクマは1869年にフランスの神父アルマン・ダビッドによってヨーロッパに紹介され、のちに英語で「giant panda」と呼ばれるようになった。最初にその名前を持っていた動物は、今ではレッサーパンダ(red panda、lesser panda)として知られている。
アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、「panda」はおそらくネパールで使われていた地元の呼び名 nigalya-ponya を短くしたものだ。前半は、レッサーパンダが食べる竹の一種に関係している。日本の辞書はさらに踏みこんで「竹を食べる者」という意味だとしているが、後半の意味ははっきりしていない。2種のパンダは、遠い親せきだということも分かってきた。
1990年代以降のDNAの研究は、ジャイアントパンダをクマのなかまに位置づけている。2000年に発表されたレッサーパンダの研究は、クマかアライグマのどちらかにいちばん近いという考えを否定した。レッサーパンダはそのかわりに、スカンクやアライグマ、イタチもふくむ、より大きなグループに入る。つまりレッサーパンダは、ジャイアントパンダの小型版ではない。先にその名前を持っていたのだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
名前は red panda から始まり、2種は遠い親せきだというのが主旨なので B。D は本文の内容と逆。
Q2. According to the passage, what is uncertain about the word's origin?
although the meaning of the second part is uncertain とあるので C。
Q3. What does the 2000 study suggest about the red panda?
rejected the idea that it is closest to either bears or raccoons ... It belongs instead to a larger group that also includes skunks, raccoons and weasels とあるので D。
重要単語
- pandaA2名詞パンダ(ジャイアントパンダ、またはレッサーパンダ)We waited an hour to see the pandas at the zoo.
1825年、まずレッサーパンダの名前として使われた。今は panda だけならふつうジャイアントパンダのこと。 - lesserB2形容詞(大きさ・重要さが)小さいほうのThe lesser panda is about the size of a large house cat.
less+-er の二重の比較級。生き物の名前では「似た種類より小さいもの」につける。反対は greater。 - giantB1形容詞・名詞巨大な;巨人A giant wave hit the small boat.
giant panda、giant wave のように名詞の前について「巨大な」。発音は「ジャイアント」。 - raccoonB2名詞アライグマA raccoon was looking for food in our trash can.
red panda は辞書で "an Asian animal like a raccoon"(アライグマに似たアジアの動物)と説明される。 - bambooB1名詞竹Pandas can hold bamboo with their front paws.
数えられない名詞として使うことが多い。bamboo shoots は「タケノコ」。 - zoologistC1名詞動物学者The zoologist spent years studying red pandas in the mountains.
zoo-(動物)+-logist(学者)。zoo(動物園)は zoological garden の略。 - relativeB1名詞親せき;(生物の)近縁種The two pandas are not close relatives.
a close relative「近い親せき」、a distant relative「遠い親せき」。
公式・一次情報をチェック
- panda(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- lesser(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- giant panda(Dictionary.com)dictionary.com
- レッサーパンダ(日本国語大辞典・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典、コトバンク)kotobank.jp
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「パンダ」の名前の元祖は、白黒のほうではなくレッサーパンダ。1825年にフランスのキュヴィエが使った名前で、ジャイアントパンダがヨーロッパに紹介されたのは44年後。しかも2種は近い親せきですらない。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed., "panda"(HarperCollins)ahdictionary.com
- Dictionary.com「panda」「giant panda」(Random House Unabridged Dictionary・Collins English Dictionary)dictionary.com
- Flynn et al. (2000) Whence the Red Panda?, Molecular Phylogenetics and Evolution 17(2)doi.org
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・日本大百科全書(ニッポニカ)・世界大百科事典「パンダ」(小学館・平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 精選版 日本国語大辞典・ブリタニカ国際大百科事典「ジャイアントパンダ」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- ITIS(Integrated Taxonomic Information System)「Ailurus fulgens F. G. Cuvier, 1825」itis.gov
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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