本館「マジカ!?サイエンス」科学の雑学とニュースを論文でウラ取り読みに行く →
英語のマジか!?ホント

「だれを」は whom と習うのに、英米の辞書は「会話ではまれ」

「だれを」は whom と習うのに、英米の辞書は「会話ではまれ」

読む前に予想してみよう!

英語の会話では、目的語の「だれを」は必ず whom を使う

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の辞書・文法解説の記述
規模
英米の辞書3冊(American Heritage・Cambridge・Oxford)の使い方の解説
研究の種類
辞書の使い方の注意書き・ラベルの比較
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「だれを」のときは whom と習うが、英米の辞書は「話し言葉ではまれ」と書く。会話は Who did you invite? が自然。ただし for whom のように前置詞のすぐ後ろでは whom が残る。

ひとことで言うとwhom は、ふだんの会話ではあまり使われないんだって!

もくじ
  1. whom の本来のルールは「目的語なら whom」
  2. 英米の辞書は「whom は会話ではまれ」
  3. 関係代名詞の whom は「省略」か「that」に
  4. どんでん返し:前置詞の直後では whom が「正解」のまま
  5. whom の使いすぎにも落とし穴
  6. まとめ
  7. よくある質問

Whom did you invite to the party?(パーティーにだれを招待したの?)

「招待する」の目的語だから who ではなく whom。英語の授業や文法問題で、こう習った人は多いはずです。

ところがイギリスのオックスフォード学習辞典は、whom は話し言葉ではあまり使われないと説明し、会話の例として Who did you invite to the party? をあげています。アメリカの辞書も「話し言葉や日常の書き言葉では、whom はまれ」と書いています。テストで選ばされた whom は、ふだんの会話ではむしろ少数派なのです。

01whom の本来のルールは「目的語なら whom」

まず、伝統的な文法のルールを確認しましょう。アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』(AHD)の使い方の注意書きによると、

  • who は主語になる形:Who supports the governor?(だれが知事を支持しているの?)
  • whom は目的語になる形:Whom does the actor support?(その俳優はだれを支持しているの?)
  • 前置詞の目的語も whom:the governor for whom the actor campaigned(その俳優が応援した知事)

he と him の関係と同じです。AHDは whom も him も「目的格(objective case)」、つまり目的語になるときの形だと説明しています。語源欄によると、whom は古英語の hwǣm・hwām から、him は古英語の hē(he)の変化形から来ています。

ここまでは学校の文法そのもの。問題は「実際にどれくらい使われているか」です。

02英米の辞書は「whom は会話ではまれ」

英米の代表的な辞書3冊を引くと、そろって同じ方向のことを書いていました。

ケンブリッジの文法解説は、who の使い方の例に He shared a flat with Anne Bolton, who he married(彼はアン・ボルトンと部屋をシェアし、彼女と結婚した)という文をのせています。married の目的語なのに who。辞書の文法解説そのものが、目的語に who を使った文を例にしているわけです。

会話では Who did you invite? が自然。whom は改まった文や書き言葉で使われることが多い
会話では Who did you invite? が自然。whom は改まった文や書き言葉で使われることが多い

03関係代名詞の whom は「省略」か「that」に

関係代名詞でも同じです。AHDは、the governor whom the actor supports(その俳優が支持する知事)のような文について、くだけた場面では who が whom の代わりに使われると書いています。そして、改まった whom と、文法的に疑問の残る who のどちらを選ぶか迷うときの「よくある逃げ道」として、次の2つを紹介しています。

  • that に変える:the governor that the actor supports
  • 関係代名詞を省く:the governor the actor supports

オックスフォードも、コンマを使わずに名詞を後ろから説明する形(「空港で会った家族」の「空港で会った」の部分)では、目的語の whom はあまり使われないと説明しています。例は The family (who/that/whom) I met at the airport were very kind.(空港で会ったその家族は、とても親切だった)。who・that・whom のどれを使っても、何も入れなくてもよい、というわけです。

ただし、コンマで区切って説明を足す形では事情がちがいます。オックスフォードによると、ここでは who か、より改まった whom を使い、that は使えず、関係代名詞を省くこともできません。

  • Our doctor, who/whom we all liked very much, retired last week.(みんなが大好きだったうちの先生が、先週引退した)

この形自体が、話し言葉ではあまり使われないとも書かれています。

04どんでん返し:前置詞の直後では whom が「正解」のまま

では whom は消えかけているのかというと、そうではありません。前置詞のすぐ後ろでは、今も whom が標準です。

AHDは、whom はすぐ前に前置詞があってその目的語になるとき、標準の形として残っていると説明し、the governor for whom(for who ではなく)the actor campaigned を例にしています。

ケンブリッジの例はこうです。

  • Over 200 people attended the ceremony, many of whom had known Harry as their teacher.(200人以上が式に出席し、その多くはハリーに教わったことがあった)
  • He told me where he went and with whom.(彼はどこへだれと行ったかを話してくれた)

ビジネスの手紙でおなじみの To whom it may concern も、この形です。ケンブリッジの辞書は、だれに宛てればいいか正確に分からないときに、改まった手紙や通知の書き出しに使う言葉だと説明しています。日本語の「関係各位」に近い使い方です。

ただし前置詞+whom は、オックスフォードによると「とても改まった」言い方です。To whom should I address the letter?(この手紙はどなた宛てにすればよいでしょうか)は、会話なら Who should I address the letter to? と、前置詞を文の最後に回すほうがずっと自然だとしています。

05whom の使いすぎにも落とし穴

whom を「改まった感じがするから」と使いすぎるのも危険です。AHDは、whom を使うのは動詞や前置詞の目的語になるときで、単に動詞や前置詞の後ろに来ただけのときではない、と注意しています。

  • ○ I wonder who supports the governor.(だれが知事を支持しているのだろう)
  • × I wonder whom supports the governor.

who は supports の主語です。wonder の目的語になっているのは who 1語ではなく「who supports the governor」という節全体なので、ここで whom を使うのは誤りだ、とAHDは説明しています。

06まとめ

「目的語なら whom」は文法のルールとして正しく、テストではこれが答えです。でも英米の辞書は、whom は改まった響きがあり、ふだんの会話や日常の文ではあまり使われないと説明しています。Who did you invite? で十分通じますし、そのほうが自然です。

一方で、for whom や To whom it may concern のように前置詞の直後では、whom は今も現役。「会話は who、前置詞の直後と改まった文は whom」と覚えておけば、どちらの場面でも困りません。

よくある質問

whom は会話では使わないのですか?

あまり使いません。アメリカの辞書 AHD は、whom は改まった響きがあるため、話し言葉や日常の書き言葉ではまれだと説明しています。オックスフォードの学習辞典も、会話の例に Who did you invite to the party? をあげています。

who と whom の違いは何ですか?

伝統的な文法では、who は主語、whom は目的語になる形です。he と him の関係と同じです。例:Who supports the governor?(だれが知事を支持しているの?)、Whom does the actor support?(その俳優はだれを支持しているの?)

whom を使うべきなのはどんなときですか?

おもに前置詞のすぐ後ろです。for whom、with whom、many of whom のように、前置詞の直後では今も whom が標準の形です。ただしオックスフォードは前置詞+whom を「とても改まった」言い方とし、会話では前置詞を文の最後に回すほうが自然だとしています。

「To whom it may concern」とはどういう意味ですか?

だれに宛てればよいか正確に分からないときに、改まった手紙や通知の書き出しに使う言葉です(ケンブリッジ英語辞典)。日本語の「関係各位」に近い使い方です。

関係代名詞の whom は省略できますか?

コンマを使わない形なら、省いても、who や that にしてもかまいません。オックスフォードは、The family I met at the airport were very kind. のように何も入れなくてもよい、と説明しています。ただしコンマで区切る形では省けず、that も使えません。

テストでは who と whom のどちらを選べばいいですか?

「目的格を選べ」と聞かれたら whom です。「目的語なら whom」は文法のルールとして正しく、テストではこれが答えになります。ルールを知ったうえで、会話では who を使えば十分です。

whom はもう死語なのですか?

いいえ。英米の辞書は、whom を改まった文体や書き言葉で使う語として載せています。for whom や To whom it may concern のように、前置詞の直後では今も現役です。

動詞の後ろなら、いつでも whom を使えますか?

いいえ。AHD は、whom を使うのは動詞や前置詞の目的語になるときで、単に後ろに来ただけのときではない、と注意しています。I wonder who supports the governor. の who は supports の主語なので、whom にすると誤りです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe traditional rule is simple. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The traditional rule is simple. "Who" is the subject, and "whom" is the object, just like "he" and "him." Three major dictionaries say real English works a little differently. The American Heritage Dictionary says "whom" is uncommon in speech and everyday writing because it sounds formal.

Cambridge notes that it is not used very often and shows up more in writing than in speech. Oxford gives "Who did you invite to the party?" as the usual spoken form. In relative clauses, you can often leave the pronoun out, as in "the family I met at the airport."

But "whom" has not disappeared. It is still the standard form right after a preposition, as in "for whom" or "with whom."

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

伝統的なルールはかんたんだ。「he」と「him」と同じように、「who」は主語、「whom」は目的語になる。英米の主要な辞書3冊は、実際の英語は少しちがうと言う。アメリカン・ヘリテージ英語辞典によると、「whom」は改まった響きがあるため、話し言葉や日常の書き言葉ではまれだ。

ケンブリッジは、whom はあまり頻繁には使われず、話し言葉より書き言葉に多く出てくると説明する。オックスフォードは、ふつうの話し言葉の形として「Who did you invite to the party?」をあげている。関係詞節では、「the family I met at the airport(空港で会った家族)」のように、代名詞を省くこともできる。

でも「whom」が消えたわけではない。「for whom」や「with whom」のように前置詞のすぐ後では、今も標準の形だ。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the American Heritage Dictionary, why is "whom" uncommon in speech?

Q2. Where is "whom" still the standard form?

Q3. Which question would a friend most likely use in casual conversation?

重要単語

  • whomB2
    代名詞だれを、だれに(who の目的格)To whom should I send the form? 改まった言い方。会話では Who should I send the form to? が自然。前置詞の直後では whom を使う。
  • objectB1
    名詞目的語In "I met Ken," the word "Ken" is the object. 「物体」「目的」の意味もある。文法では subject(主語)と対になる語。
  • subjectB1
    名詞主語In "Ken met me," the word "Ken" is the subject. 「教科」「話題」の意味でもよく使う。who は主語の形。
  • formalB1
    形容詞改まった、正式の"Whom" sounds formal in everyday conversation. 反対語は informal / casual。辞書の (formal) ラベルは「改まった場面向き」の印。
  • prepositionB2
    名詞前置詞"For," "with," and "to" are prepositions. pre-(前に)+position(位置)。名詞の前に置く語。for whom の for がこれ。
  • relative clauseB2
    名詞関係詞節In "the man who lives next door," "who lives next door" is a relative clause. 目的語の関係代名詞は who・that のほか、省くこともできる:the people I met。
  • concernB2
    動詞関係する、かかわるThis rule concerns everyone in the class. To whom it may concern は「関係する方へ」→ 宛先不明の改まった手紙の書き出し。
「だれを」は whom と習ったのに、米国の辞書 American Heritage は「whom は話し言葉ではまれ」。英オックスフォードの辞書の会話例は Who did you invite?。でも for whom など前置詞のすぐ後ろでは whom が標準。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「who」(Usage Note)ahdictionary.com
  2. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「whom」(語源)ahdictionary.com
  3. Cambridge Dictionary, Grammar「Who, whom」(English Grammar Today)dictionary.cambridge.org
  4. Oxford Advanced Learner's Dictionary「whom」(Grammar Point)oxfordlearnersdictionaries.com

本館

マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究

論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も

マジカ!?サイエンスのトップへ →