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「I'm sorry」は謝罪?同情? 米国39州は医師の「お気の毒に」を裁判の証拠にしない

「I'm sorry」は謝罪?同情? 米国39州は医師の「お気の毒に」を裁判の証拠にしない

読む前に予想してみよう!

英語の I'm sorry は、いつも「自分が悪かった」と謝るときの言葉だ

研究カード(どんな研究?)
対象
米国の州法と医療ミスの賠償請求
規模
39州とDCの法律、大手保険会社の8年分の請求データ
研究の種類
法律の比較+賠償請求データの分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

2019年の論文によると、米国の39州とワシントンDCに、医師の「お気の毒に」などを、責任を認めた証拠として裁判で使わせない法律がある。ただし多くの州では「私のミスです」は守られない。

ひとことで言うとアメリカには、お医者さんの「I'm sorry」を裁判で使わせない法律がある!

もくじ
  1. sorry の意味は「ごめんなさい」だけではない
  2. 謝罪法は1986年、マサチューセッツ州から始まった
  3. 「お気の毒に」はセーフ、「私のミスです」はアウト
  4. 境目は、裁判官でも迷う
  5. どんでん返し:謝罪法で訴えは減ったのか
  6. なぜ学校では「sorry=ごめんなさい」と教えるのか
  7. テストや英作文ではどうする?
  8. まとめ
  9. よくある質問

I'm sorry.(ごめんなさい)

英語の授業で、まっ先に習うあやまり方です。遅刻したら I'm sorry I'm late.、ぶつかったら Oh, I'm sorry.。

でも、家族を亡くした人に英語圏の人がかける I'm sorry for your loss. は、「ご愁傷さまです」。だれも自分の非を認めてはいません。I'm sorry には「ごめんなさい」と「お気の毒に」の2つの顔があるのです。

アメリカでは、この2つの顔を 法律が分けて扱っています。2019年に発表された法学の論文によると、39の州とワシントンDCに、お医者さんの「I'm sorry」を、責任を認めた証拠として裁判で使わせない法律 があります。英語では apology law(謝罪法)と呼ばれます。

01sorry の意味は「ごめんなさい」だけではない

まず辞書を見ておきましょう。オックスフォードの学習英英辞典で形容詞の sorry を引くと、最初の意味は「してしまったことについて、悲しく恥ずかしく思う」。これが「ごめんなさい」の sorry です。

すぐ次に、「悲しく思い、同情を示す」 という意味が出てきます。例文はこうです。

  • I'm very sorry for your loss.(ご愁傷さまです)……人が亡くなったときに同情を表す
  • I'm sorry that your husband lost his job.(ご主人がお仕事を失われたなんて、お気の毒に)

ほかにも、断るとき(I'm sorry, I don't agree. すみませんが、賛成できません)や、悪い知らせを切り出すとき(I'm sorry to have to tell you you've failed. 残念ですが不合格です)にも使います。

02謝罪法は1986年、マサチューセッツ州から始まった

では、なぜアメリカで「sorry の法律」が必要になったのでしょうか。

医療ミスをめぐる裁判では、医師が患者や家族に言った言葉が、「責任を認めた」証拠として使われるおそれがありました。そのため、裁判で訴えられた側の弁護士は、依頼人に「謝るな」と助言することが多い、と論文は書いています。

でも、謝られた患者は怒りがやわらぎ、話し合いで解決しやすくなる、という研究もあります。そこで各州が、謝りやすくなるように作ったのが謝罪法です。ほとんどは医療の場面にしぼった法律ですが、マサチューセッツ州などいくつかの州の法律は、医療に限らず使えます。

03「お気の毒に」はセーフ、「私のミスです」はアウト

実際の条文を見てみましょう。バージニア州の法律は、医療の結果が思わぬものになったときの裁判について、こう定めています。

  • 医療者が患者や家族に示した 同情・お悔やみ・思いやりの言葉やしぐさ、そして謝罪 は、責任を認めた証拠として使えない
  • ただし、同情や謝罪の言葉の中にある、またはそれに続けて言った 「非を認める言葉」は守らない

つまり、こういうことです。

  • I'm so sorry this happened.(こんなことになって、本当にお気の毒です)→ 守られる
  • I'm sorry. It was my mistake.(すみません、私のミスです)→ 後半は守られない

アメリカの多くの州では、お医者さんの「お気の毒に」は、責任を認めた証拠として裁判で使えない。でも「私のミスです」は証拠になりうる。 sorry の2つの顔を、法律がはっきり分けているのです。

34州とワシントンDCの謝罪法が守るのは、同情やお悔やみの言葉だけ(マクマイケルらの論文、2019年)
34州とワシントンDCの謝罪法が守るのは、同情やお悔やみの言葉だけ(マクマイケルらの論文、2019年)

04境目は、裁判官でも迷う

どこまでが「お悔やみ」で、どこからが「非を認めた」なのか。論文は、この線引きが実際の裁判でもめた例を紹介しています。

  • オハイオ州(2011年):患者が亡くなったあと、外科医が家族に「動脈を傷つけてしまった。すべて私の責任だ」と伝えた。州の控訴裁判所は、これはお悔やみではなく非を認めた言葉なので、謝罪法では守られないと判断した。ところが2017年、同じ州の最高裁判所は別の事件で、謝罪法の「謝罪」には、医療が基準に届かなかったと認める言葉もふくまれうる、と述べた
  • ユタ州(2014年):薬の投与のまちがいでけがをした患者の事件で、裁判所は、同情とお悔やみの言葉は守られるが、医療者側の落ち度をにおわせる言葉は守られない、と判断した

論文の著者たちは、謝罪法は「何を、いつ言えばよいか」を教えてくれない、と書いています。

05どんでん返し:謝罪法で訴えは減ったのか

ここが一番の問題です。研究の答えは分かれています。

  • ホーとリウ(2011年):謝罪法は、医療ミスの賠償の話し合い(示談)を早める可能性があり、患者の被害が重い事件ほど、支払い額と解決までの時間が大きく減った。別の論文では、謝ることで、支払いの平均が 3万2,000ドル 減ると見積もった。ただし2019年の論文は、ホーとリウの研究には支払いのある請求の件数が増えたという結果もあり、全体としては「まちまち」だったと紹介している
  • マクマイケルら(2019年):医師の医療ミスの賠償に備える大手保険会社から得た8年分のデータで、ある専門分野の医師の約9割について調べた。手術をする医師 では、訴えられる確率にも支払い額にも大きな変化はなかった。手術をしない医師 では、謝罪法のあとむしろ 訴えられる確率も支払い額も上がった

なぜ増えたのか。著者たちが考える理由はこうです。謝られたことで、患者は「何かミスがあったのかもしれない」と気づく。謝罪そのものは証拠にできなくても、訴える気持ちは強まりうる。2019年の論文の題名は 「“Sorry” Is Never Enough(ごめんなさいだけでは決して足りない)」 です。

06なぜ学校では「sorry=ごめんなさい」と教えるのか

学校の教え方はまちがいではありません。辞書でも最初に出てくるのは「ごめんなさい」の意味で、ふだんの生活でいちばんよく使う場面です。最初の1つとして覚えるのは理にかなっています。

ただ、英語を使う人は、相手の不幸を聞いたときにも、断るときにも、自然に I'm sorry と言います。日本語に訳すときは、場面で訳し分ける必要があります。

07テストや英作文ではどうする?

08まとめ

I'm sorry には「ごめんなさい」と「お気の毒に」の2つの顔があります。アメリカでは1986年のマサチューセッツ州から、医師の sorry を裁判の証拠にしない法律が広がり、2019年の論文の時点で39州とワシントンDCにありました。ただし多くの州が守るのは 「お気の毒に」の sorry だけ です。

そして、法律で sorry を言いやすくしても、訴えが減るとは限らない、という研究もあります。たった1語の sorry に、それだけの重みがあるのです。

よくある質問

I'm sorry の意味は「ごめんなさい」だけですか?

いいえ。オックスフォードの学習英英辞典には、謝る意味のすぐ次に「悲しく思い、同情を示す」という意味が載っています。断るときや、悪い知らせを切り出すときにも使います。

I'm sorry for your loss. はどういう意味ですか?

「ご愁傷さまです」という意味です。人が亡くなったときに同情を表す言い方で、オックスフォードの学習英英辞典にも例文があります。sorry と言っても、自分の非を認めているわけではありません。

I'm sorry to hear that. はどういう意味ですか?

「それはお気の毒に」という意味です。悪い知らせを聞いたときの決まり文句で、謝っているわけではありません。英語を使う人は、相手の不幸を聞いたときにも自然に I'm sorry と言います。

謝罪法(apology law)とは何ですか?

医師などの「お気の毒に」といった言葉を、責任を認めた証拠として裁判で使わせない法律です。2019年の論文によると、アメリカの39州とワシントンDCにあります。最初の謝罪法は1986年のマサチューセッツ州です。

アメリカの医師が sorry と言うと責任を認めたことになりますか?

多くの州では、同情やお悔やみの言葉は証拠として使えません。ただし「私のミスです」のような非を認める言葉まで守る法律は、アリゾナ・コロラドなど5州だけです。34州とワシントンDCは同情の言葉だけを守ります。

謝罪法で医療の訴えは減りましたか?

研究によって答えが分かれています。2011年の研究は示談が早まる可能性を示しました。一方2019年の研究では、手術をしない医師は、謝罪法のあとむしろ訴えられる確率も支払い額も上がっていました。

feel sorry for はどういう意味ですか?

「(人を)かわいそうに思う」という意味です。I feel sorry for him.(彼がかわいそうだ)のように、feel sorry for のあとに人を置きます。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"I'm sorry" has two jobs in English. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"I'm sorry" has two jobs in English. It can be an apology, and it can also show sympathy, as in "I'm sorry for your loss." American law has had to deal with this difference. Doctors have long been taught to avoid apologizing to patients, because their words could be used in court as proof of fault.

So states began passing apology laws, starting with Massachusetts in 1986. A 2019 study counted 39 states, plus Washington, D.C., with such laws. In 34 of those states and D.C., the law protects only words of sympathy. If a doctor says, "It was my mistake," that part can still be used as evidence.

109 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「I'm sorry」には英語で2つの役目がある。謝罪にもなるし、「I'm sorry for your loss.(ご愁傷さまです)」のように同情を表すこともできる。アメリカの法律は、この違いに向き合わなければならなかった。医師は長い間、患者に謝るのを避けるよう教えられてきた。その言葉が裁判で責任の証拠として使われかねないからだ。

そこで各州は、1986年のマサチューセッツ州を皮切りに、謝罪法を作りはじめた。2019年の研究では、そうした法律がある州は39あり、ほかにワシントンDCにもあると数えた。そのうち34州とDCでは、法律が守るのは同情の言葉だけだ。医師が「私のミスでした」と言えば、その部分は今でも証拠として使われうる。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Which state passed the first apology law?

Q3. Why might a doctor in most of these states be careful about saying "It was my mistake"?

重要単語

  • apologyB1
    名詞謝罪、おわびHe made an apology for his mistake. 動詞は apologize(米)/ apologise(英)。apologize to 人 for 事 の形で使う。make an apology / owe 人 an apology。
  • sympathyB2
    名詞同情、お悔やみYou have my deepest sympathy. sym-(ともに)+path(感情)。お悔やみのカードは sympathy card。sorry の「お気の毒に」はこの気持ち。
  • evidenceB1
    名詞証拠The letter was used as evidence in court. 数えられない名詞。a piece of evidence で「1つの証拠」。evidences とはふつう言わない。
  • faultB1
    名詞(失敗の)責任、落ち度It wasn't your fault. It's my fault.「私のせいだ」。謝罪法の多くは、この fault を認める言葉は守らない。
  • lawsuitB2
    名詞訴訟The family filed a lawsuit against the hospital. file a lawsuit「訴えを起こす」。動詞なら sue(訴える)。be sued「訴えられる」。
  • settlementC1
    名詞(裁判の)和解;解決The two sides reached a settlement before the trial. settle(落ち着かせる、解決する)の名詞形。reach a settlement「和解に達する」。
  • lossB1
    名詞(人を)亡くすこと;失うことI'm so sorry for your loss. 動詞 lose の名詞形。お悔やみの決まり文句では、だれかを亡くしたことを遠回しに言う。
米国の39州とDCには、医師の「I'm sorry(お気の毒に)」を、責任を認めた証拠として裁判で使わせない法律がある(2019年の論文)。でも論文の分類では、そのうち34州とDCの法律が守るのは同情の言葉だけ。「私のミスです」は対象外。sorry の2つの顔を法律が分けている。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. McMichael, B. J., Van Horn, R. L. & Viscusi, W. K. (2019) 'Sorry' Is Never Enough: How State Apology Laws Fail to Reduce Medical Malpractice Liability Risk, Stanford Law Review 71(2) 341stanfordlawreview.org
  2. Ho, B. & Liu, E. (2011) Does sorry work? The impact of apology laws on medical malpractice, Journal of Risk and Uncertainty 43(2)doi.org
  3. Ho, B. & Liu, E. (2011) What's an Apology Worth? Decomposing the Effect of Apologies on Medical Malpractice Payments Using State Apology Laws, Journal of Empirical Legal Studies 8(s1)doi.org
  4. Code of Virginia § 8.01-581.20:1 Admissibility of expressions of sympathy(Virginia Legislative Information System)law.lis.virginia.gov
  5. Oxford Advanced Learner's Dictionary「sorry」oxfordlearnersdictionaries.com

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