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「数えられる名詞は fewer」の出どころは1770年の1人の“好み”とされる。英国スーパーはレジ表示まで変更へ

「数えられる名詞は fewer」の出どころは1770年の1人の“好み”とされる。英国スーパーはレジ表示まで変更へ

読む前に予想してみよう!

数えられる名詞に less を使うのは、最近になって広まったまちがいだ

研究カード(どんな研究?)
対象
1770年の語法書と現代の辞書・用法辞典
規模
辞書の用法パネル(2006年調査で「less crowds」を認めたのは5%)
研究の種類
歴史資料の確認+辞書の用法調査
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「数えられる名詞には fewer」は、1770年に1人の書き手が書いた好みから。less を数に使う英語は千年以上前からある。2008年には英国のスーパーがレジ表示を変えると報じられた。

ひとことで言うと「less people」はダメ? ルールの始まりは1770年の1人の好みだった!

もくじ
  1. 1770年、「私は〜と思う」から始まった
  2. less は千年以上前から「数」にも使われていた
  3. 2008年、スーパーがレジ表示の書き換えを決めた
  4. おまけ:ベイカーは「different to」にも文句をつけていた
  5. 「less が正解」になる場面もある
  6. どんでん返し:書き言葉では、今も fewer が強い
  7. テストや英作文ではどうする?
  8. まとめ
  9. よくある質問

There were less people than I expected.(思ったより人が少なかった)

英作文でこう書いて、赤ペンで less に×をつけられた人もいるはずです。「people は数えられるから fewer。less は数えられないものだけ」。学校の英語で、何度も聞くルールです。

ところが、辞書の出版社が調べたこのルールの出どころは、1770年に1人の書き手が「fewer のほうがよいと私は思う」と書いた一言 でした。しかもその本人が、同じ文の中で 「数を言うときは less がいちばんよく使われている」 と認めていました。

011770年、「私は〜と思う」から始まった

アメリカの辞書出版社メリアム・ウェブスターの『英語用法辞典』は、less と fewer の項目で、このルールの出どころを「調べたかぎりでは1770年」としています。ロンドンで出た、ロバート・ベイカーという人の『英語についての考察(Reflections on the English Language)』です。

その本は Internet Archive で誌面が読めます。55ページ、「LESS」という短い項目に、こう書かれています。

「この語は、数について話すときにいちばんよく使われている。そこは fewer のほうがよいと私は思う」

続けてベイカーは、No fewer than a hundred(100もの)のほうが No less than a hundred より上品で、より正しく思える、と書きました。項目はそれで終わりです。理由の説明はありません。

用法辞典は、ベイカーの書き方が「私は思う」「私には〜に思える」という 控えめな、自分の好みの表明 だと指摘しています。それが、のちの文法の手引きでは例外のない決まりとして書かれ、「実際は less がよく使われている」という部分は消えていきました。どうやって絶対のルールになったのかは 分からない、とも書いています。

古典語も満足に読めず、誰にも相談しなかったと自分で書いた人の「好み」が、250年後の教室の赤ペンにつながっていたのです。

02less は千年以上前から「数」にも使われていた

では、ベイカーより前の英語はどうだったのでしょうか。

同じ用法辞典によると、オックスフォード英語辞典(OED)には、less を数えられるものに使った例が アルフレッド大王の時代、888年ごろ からあります。大王が自分でラテン語から訳した本の中の例です。用法辞典は、less は 英語が文字で書かれるようになったころから、ずっと数にも使われてきた と書いています。ベイカーが意見を書いたのは、その約900年後でした。

メリアム・ウェブスターのウェブサイトの解説も同じ立場です。less を数に使うのは「英語がダメになってきた例」ではなく、千年をはるかに超える歴史がある。それなのに、200年以上にわたって、ほとんどの語法の本と英語の先生がまちがいだと言ってきた、と書いています。

1770年のベイカーは、学校を15歳でやめ、本もほとんど持っていなかったと序文に書いた
1770年のベイカーは、学校を15歳でやめ、本もほとんど持っていなかったと序文に書いた

032008年、スーパーがレジ表示の書き換えを決めた

このルールは、本の中だけの話ではありません。

英国やアメリカのスーパーには、少ない買い物の人のための速いレジがあり、10 items or less(10点以下)のような表示が出ています。これが「fewer の誤りだ」と言われ続けてきました。

BBC ニュースは2008年8月31日、英国最大のスーパーチェーンのテスコが、この表示を Up to 10 items(10点まで)に変えると報じました。「less か fewer か」の言い争いを避けるためで、新しい言い方を提案したのは、分かりやすい英語を広める団体「プレイン・イングリッシュ・キャンペーン」です。団体の担当者は、この言い方なら分かりやすく、議論にもならないと話した、と報じられています。

ところが、メリアム・ウェブスターの答えは逆です。レジの items or less は、むしろ less のほうが好まれる言い方 だとしています。「items or fewer」に変えた店もあるが、少数派だそうです。1770年の1人の好みが、2008年の看板の書き換えの決定にまでつながったわけです。

04おまけ:ベイカーは「different to」にも文句をつけていた

ベイカーの本には、ほかにも今の学校英語につながる項目があります。7〜8ページの different to(〜と違う)です。

ベイカーは、different to は 良い書き手もよく使う と認めたうえで、「This differs to that とは言わないのだから、形容詞でも from がよい。私は different from に1票を入れる」と書きました。日本の学校で be different from とセットで習う形は、ここで「1票」をもらっていたのです。

今の辞書を見ると、どちらも生きています。

  • ケンブリッジ英語辞典の文法解説:ふつうは from。different to も、とくに話し言葉で使う。アメリカ英語では different than もよく使う
  • アメリカン・ヘリテージ英語辞典:different from と different than は英米どちらでもよく使われ、イギリスでは different to も使う

Your bag is different from mine.(あなたのかばんは私のと違う)は、いつでも安全な形です。

05「less が正解」になる場面もある

less を数に使うのが、むしろ自然な場面もあります。アメリカン・ヘリテージ英語辞典の用法解説やシカゴ・マニュアル(アメリカの代表的な文章の手引き)が挙げている例です。

  • 時間・お金・距離:less than three weeks(3週間足らず)、less than $400(400ドル未満)、less than 50 miles(50マイル未満)。数よりも「量」として考えているから
  • or less:Give your reasons in 25 words or less.(理由を25語以内で書きなさい)
  • one less:There is one less food group in the new pyramid.(新しい図では食品グループが1つ少ない)。2つ以上なら two fewer food groups
  • more or less:I have two dozen apples, more or less.(りんごはだいたい24個ある)

アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、こうした場面で fewer を使うと 細かすぎる感じに聞こえる ので、ルールを守る人も気をつけたほうがいい、と書いています。

06どんでん返し:書き言葉では、今も fewer が強い

では「less people」も気にしなくていいのでしょうか。ここは話が別です。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典が2006年に、作家や学者などの協力者(用法パネル)にたずねた結果がこれです。

  • There are less crowds at the mall these days.(最近ショッピングモールの人出が少ない):認めたのは 5% だけ
  • The region needs more jobs, not less jobs.(その地域に必要なのは、仕事を減らすことではなく増やすこと):28%
  • レジの 10 or less items:上の2つよりは少し受け入れられたが、それでも賛成は多数ではなかった(割合の数字は書かれていない)

メリアム・ウェブスターも、made less mistakes(まちがいが少なかった)のような言い方は、話し言葉ではよく聞くが 書き言葉ではめずらしく、避けたほうがよい としています。ケンブリッジの文法解説も、We've got less pizzas than we need.(ピザが足りない)は、くだけた会話ではよく聞くが、伝統的には正しくないとされる、と書いています。

ルールの始まりは1人の好みでした。それでも250年たった今、書き言葉では多くの読み手が fewer を期待している のも事実です。

07テストや英作文ではどうする?

学校のルールが「入門の目安」として教えられるのには、理由があります。メリアム・ウェブスターも、英語が母語でない人には まずは単純なルールから始めるのがよい、ただし例外も知っておくこと とすすめています。

  • ふつうの複数形には fewer:There were fewer people than I expected.(思ったより人が少なかった)。テストではこれが正解
  • 数えられない名詞には less:I drink less coffee these days.(最近はコーヒーを飲む量が減った)
  • less than + 時間・お金・距離 はそのままでよい:It took less than an hour.(1時間かからなかった)
  • one less ~ もそのままでよい:That's one less thing to worry about.(心配ごとが1つ減った)
  • 映画や歌、看板で less people、10 items or less を見ても、「まちがった英語」と決めつけない

08まとめ

「数えられる名詞には fewer」というルールは、1770年にロバート・ベイカーが「私はそう思う」と書いた好みから始まりました。本人は「数には less がいちばんよく使われている」と認めていましたし、less を数に使う英語はアルフレッド大王の時代からありました。その好みをめぐる言い争いを避けるため、2008年には英国のスーパーがレジ表示の書き換えを決めました。

ただ、今の書き言葉では fewer people を期待する読み手が多いのも本当です。テストでは fewer、less than three weeks や one less はそのまま。ルールがいつ、誰の好みから始まったかを知っておくと、赤ペンの×も、看板の less も、落ち着いて読めます。

よくある質問

fewer と less の違いは何ですか?

学校では、数えられる名詞の複数形には fewer、数えられない名詞には less と習います。fewer people(より少ない人)、less coffee(より少ないコーヒー)のように使い分けます。テストではこのルールで書けば正解です。

「less people」は間違いですか?

話し言葉ではよく聞きますが、書き言葉では避けるのが無難です。メリアム・ウェブスターも、made less mistakes は書き言葉では避けたほうがよいとしています。アメリカン・ヘリテージ英語辞典が2006年に作家や学者などにたずねると、less crowds を認めたのは5%だけでした。

「数えられる名詞には fewer」というルールは誰が言い出したのですか?

メリアム・ウェブスター社の『英語用法辞典』は、調べたかぎりでは1770年のロバート・ベイカー『英語についての考察』が出どころとしています。ベイカーは less の項目に「この語は、数について話すときにいちばんよく使われている。そこは fewer のほうがよいと私は思う」と書きました。

数えられるものに less を使うのはいつからですか?

888年ごろの例があるとされます。メリアム・ウェブスター社の『英語用法辞典』によると、オックスフォード英語辞典(OED)には、アルフレッド大王の時代、888年ごろからの例があります。ベイカーが fewer のほうがよいと書いたのは、その約900年後でした。

「10 items or less」は間違いですか?

まちがいとは言えません。メリアム・ウェブスターは、レジの items or less は、むしろ less のほうが好まれる言い方だとしています。一方、英国のスーパーのテスコは2008年、言い争いを避けるため表示を Up to 10 items(10点まで)に変えると BBC が報じました。

数えられるものでも less を使ってよいのはどんなときですか?

時間・お金・距離では less than three weeks(3週間足らず)のように less を使います。or less、one less、more or less も less のままです。アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、ここで fewer を使うと細かすぎる感じに聞こえると書いています。

different from と to はどちらが正しいですか?

どちらも使われます。ケンブリッジ英語辞典の文法解説では、ふつうは from で、different to もとくに話し言葉で使い、アメリカ英語では different than もよく使います。いつでも安全なのは different from です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTeachers often mark "less people" as a mistake, because "people" can be counted. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Teachers often mark "less people" as a mistake, because "people" can be counted. But where does this rule come from? Merriam-Webster's dictionary of usage traces it to 1770. That year, a writer named Robert Baker said that "fewer" would "do better" with numbers, and that "no fewer than a hundred" seemed more elegant to him than "no less than a hundred."

He was only giving his personal opinion. He even admitted that "less" was the word usually used for numbers. In 2008, the British supermarket chain Tesco said it would change its "10 items or less" checkout signs to "Up to 10 items" to avoid the argument. But Merriam-Webster says "items or less" is the preferred choice.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

先生はよく「less people」をまちがいとして直します。people は数えられるからです。でも、このルールはどこから来たのでしょうか。メリアム・ウェブスターの用法辞典は、その出どころを1770年としています。その年、ロバート・ベイカーという書き手が、数には「fewer」のほうが「よい」だろうと書き、「no less than a hundred」より「no fewer than a hundred」のほうが上品に思えると述べました。

彼は自分の意見を言っただけでした。数にはふつう「less」が使われていると認めてさえいました。2008年、イギリスのスーパーチェーンのテスコは、この議論を避けるため、レジの「10 items or less」の表示を「Up to 10 items」に変えると発表しました。しかしメリアム・ウェブスターは、「items or less」のほうが好まれる言い方だとしています。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the passage, why do teachers mark "less people" as wrong?

Q2. What did Tesco do in 2008?

Q3. What does the writer suggest about Baker's rule?

重要単語

  • fewerA2
    形容詞・代名詞(数が)より少ないThere are fewer cars on the road on Sundays. few(少しの)の比較級。テストでは「ふつうの複数名詞には fewer」が安全。最上級は fewest。
  • countableB1
    形容詞数えられる"Chair" is countable, but "furniture" is not. count(数える)+-able(〜できる)。辞書では C(countable)・U(uncountable)の記号で示される。
  • checkoutB1
    名詞(スーパーなどの)レジI waited ten minutes at the checkout. 日本語の「レジ」は register から。スーパーの会計所は英語では checkout と言うことが多い。
  • preferenceB2
    名詞好みTea or coffee? I have no preference. prefer(〜のほうを好む)の名詞形。a matter of personal preference「個人の好みの問題」。
  • admitB1
    動詞(しぶしぶ)認めるHe admitted that he had never read the book. admit that ~「~だと認める」。admit doing「~したことを認める」も入試頻出。
  • itemA2
    名詞品物、(一つ一つの)品You can borrow up to five items from the library. up to ~「~まで」と組みあわせると、less も fewer も使わずに上限を言える。
  • elegantB2
    形容詞上品な、洗練されたShe wrote the letter in elegant English. ベイカーは no fewer than a hundred のほうが elegant だと書いた。服装にも文章にも使う。
「数えられる名詞には fewer」の出どころとされるのは、1770年の本の「fewer のほうがよいと私は思う」。しかも本人が「数には less がいちばんよく使われている」と書いていた。less を数に使う例は888年ごろからある。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Baker, R. (1770) Reflections on the English Language, London: J. Bell, Preface pp. ii, iv–v・IX "Different to" pp. 7–8・XLVII "Less" p. 55(Internet Archive)archive.org
  2. Merriam-Webster's Dictionary of English Usage (1994)「less, fewer」pp. 592–594(Internet Archive)archive.org
  3. Merriam-Webster「Fewer vs. Less」merriam-webster.com
  4. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「less」「different」(Usage Note)ahdictionary.com
  5. BBC News (2008年8月31日) Tesco checks out wording changenews.bbc.co.uk

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