本館「マジカ!?サイエンス」科学の雑学とニュースを論文でウラ取り読みに行く →
日本語のマジか!?ホント

壁の「コンセント」は和製英語。差込口とプラグを呼び分けたのは電力会社の社員とされる

壁の「コンセント」は和製英語。差込口とプラグを呼び分けたのは電力会社の社員とされる

読む前に予想してみよう!

壁の差込口を英語で consent と言えば、アメリカでもイギリスでも通じる

研究カード(どんな研究?)
対象
国語辞典・百科事典・英語辞典の記述
規模
辞典9種
研究の種類
辞書・文献調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

壁の差込口の「コンセント」は和製英語。日本国語大辞典によると、大正の終わりごろまでは、プラグと差込口のセットをまとめて「コンセントプラグ」と呼んでいた。東京電燈の小林勲が、差す側を「プラグ」、受ける側を「コンセント」と分けた。英語では outlet。

ひとことで言うと壁の「コンセント」は和製英語。英語では outlet って言うよ!

もくじ
  1. 「コンセント」は日本で生まれた言い方
  2. 差込口とプラグを「分けた」のは、電力会社の社員だった
  3. 英語では outlet、socket、そして plug
  4. どんでん返し①:英語でも plug と socket がまざっている
  5. どんでん返し②:言葉そのものの出どころは、はっきりしない
  6. まとめ

スマホの充電をするとき、壁の差込口に挿しますね。あの差込口、何と呼んでいますか?

「コンセント」。でもこれ、英語の consent とは別物です。英語の consent は「同意」という意味で、差込口のことではありません。差込口は、アメリカなら outlet、イギリスなら socket などと言います。

では、なぜ日本語では「コンセント」なのか。小学館の『日本国語大辞典』をひくと、ある人物の名前が出てきます。東京電燈という電力会社に勤めていた小林勲です。

01「コンセント」は日本で生まれた言い方

『日本国語大辞典』は、差込口の「コンセント」を和製英語としています。英語の単語のように見えて、実は日本でできた言い方だということです。

『デジタル大辞泉』も「日本語での用法」と書き、日本語のコンセントにあたる英語は、アメリカでは outlet、イギリスでは socket だと説明しています。ブリタニカ国際大百科事典も、英語の concent には日本語のような意味はない、としています(consent ではなく concent というつづりです。このつづりの話は、あとで出てきます)。

ちなみに日本語には、もう一つの「コンセント」もあります。病院で聞くインフォームド・コンセントの「コンセント」です。こちらは英語の consent(同意、承諾)そのもので、『デジタル大辞泉』は差込口とは別の見出しにしています。同じ音の言葉が、日本語の中に二つあるわけです。

02差込口とプラグを「分けた」のは、電力会社の社員だった

『日本国語大辞典』の「語誌」(言葉の歴史の説明)によると、話はこうです。

つまり、それまで「セット全体」の名前だったものを、差す側=プラグ、受ける側=コンセントと書き分けた。それが広まって、いまの言い方になったというのです。

東京電燈会社は、平凡社の『世界大百科事典』によると1883年に設立された日本で最初の電力会社で、いまの東京電力の前身にあたります。電気を家庭に届ける会社の工事の決まりだったからこそ、言葉が広く行きわたったのかもしれません(ここは想像で、辞書にはそこまで書かれていません)。

それまでプラグと差込口のセットを「コンセントプラグ」と呼んでいたのを、差す側「プラグ」と受ける側「コンセント」に分けた(日本国語大辞典)
それまでプラグと差込口のセットを「コンセントプラグ」と呼んでいたのを、差す側「プラグ」と受ける側「コンセント」に分けた(日本国語大辞典)

03英語では outlet、socket、そして plug

英語の言い方を、辞書で確かめておきましょう。

  • outlet(主にアメリカ):『American Heritage Dictionary』では「壁などに取り付けられ、電源につながり、プラグを差すソケットのある受け口」。Is there an outlet near the window?(窓の近くにコンセントある?)
  • socket(イギリスとアメリカ):オックスフォードの学習辞典では、イギリスでは power point、北米では outlet や receptacle とも言う。The charger is plugged into the wall socket.(充電器は壁のコンセントに挿してある)
  • plug:電気器具のコードの先に付いている差しこむ側。Pull out the plug before you clean the toaster.(トースターを掃除する前にプラグを抜いて)

outlet は、ふだんは「出口」「(お店の)アウトレット」の意味でおなじみの単語です。電気の「出口」と考えると覚えやすいでしょう。

04どんでん返し①:英語でも plug と socket がまざっている

『デジタル大辞泉』には、日本語では俗に、プラグと混同して「コンセントを抜く」と言うこともある、と書かれています。抜くのは本当はプラグのほうです。

ところが、英語にも似たことが起きています。オックスフォードの学習辞典は、plug の意味の一つとして、「(主にイギリス英語のくだけた言い方で)壁にある差込口」を挙げています。例文は Can I use this plug for my iron?(このコンセント、アイロンに使っていい?)。差す側と受ける側の名前がまざるのは、日本語だけではないのです。

05どんでん返し②:言葉そのものの出どころは、はっきりしない

小林勲の話は、「コンセント」が差込口だけを指すようになったきっかけです。では、そもそも「コンセント」という言葉はどこから来たのでしょう。ここは辞書によって説明がばらばらです。

  • 『世界大百科事典』『百科事典マイペディア』:concentric plug を略して「コンセント」と呼ぶようになった、といわれる
  • 『デジタル大辞泉』:つづりとして英語の concent(調和・一致)を挙げる
  • ブリタニカ国際大百科事典:語源はよくわからない

concentric は、アメリカの辞書で「中心が同じ(同心の)」という意味の形容詞です。ただ、どんな形のプラグを concentric plug と呼んでいたのかは、今回調べた辞典には書かれていませんでした。一方、concent はアメリカの辞書『American Heritage Dictionary』のサイトで引いても見つかりませんでした。

ですから、「コンセントは英語の consent(同意)から来た」と言い切るのは誤りです。そして「concentric plug の略」も、辞書が「といわれる」と書くとおり、確定した話ではありません。辞書に人の名前まで出てくるのは、「差込口だけを指す」という使い方のほうだ、と覚えておくのが正確です。

06まとめ

壁の「コンセント」は、英語に見えて日本で育った言葉でした。『日本国語大辞典』によれば、大正の終わりごろまでプラグとひとまとめだった「コンセントプラグ」という呼び名を、東京電燈の小林勲が「プラグ」と「コンセント」に分けたことで、差込口の名前になりました。

ただし言葉そのものの出どころは、辞書でも説が分かれています。海外では outlet か socket。旅行先のホテルで、Is there an outlet I can use? と聞いてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAsk for a "konsento" in a hotel abroad and you may get a puzzled look. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Ask for a "konsento" in a hotel abroad and you may get a puzzled look. In Japanese, the word means a wall outlet, but it was made in Japan. The English word "consent" means "agreement" and has nothing to do with electricity. According to a major Japanese dictionary, people in the 1920s used the name "konsento plug" for a plug and its socket together.

Then a man named Kobayashi, who worked for the Tokyo Electric Light Company, wrote a set of wiring rules and split the name in two. The part you push in became the "plug," and the part in the wall became the "konsento." In English, you would ask for an "outlet" in the US or a "socket" in Britain.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

海外のホテルで「コンセント」を頼むと、けげんな顔をされるかもしれない。日本語ではこの言葉は壁の差込口を意味するが、日本で作られた言葉だ。英語の consent は「同意」という意味で、電気とは関係がない。日本の大きな辞書によると、1920年代、人々はプラグと差込口をまとめて「コンセントプラグ」と呼んでいた。

その後、東京電燈に勤めていた小林勲が電気工事の規定を書き、その呼び名を二つに分けた。差しこむ部分が「プラグ」になり、壁の部分が「コンセント」になった。英語では、アメリカなら outlet、イギリスなら socket を頼むことになる。

4択リーディングクイズ

Q1. What did people call a plug and its socket together before the change?

Q2. What did Kobayashi do, according to the dictionary?

Q3. Why might a hotel worker abroad look puzzled?

重要単語

  • outletB2
    名詞(主に米)コンセント、差込口Is there an outlet near the window? もとの意味は「出口」。お店の「アウトレット」や、気持ちの「はけ口」の意味もある。
  • socketB2
    名詞(英・米)コンセント、差込口The charger is plugged into the wall socket. 電球の「ソケット」も同じ語。イギリスでは power point とも言う。
  • plugB1
    名詞(電気器具の)差込プラグPull out the plug before you clean the toaster. 動詞 plug in で「プラグを差す」、unplug で「プラグを抜く」。くだけたイギリス英語では壁の差込口を指すことも。
  • consentC1
    名詞同意、承諾You need your parents' consent to join the trip. con-(共に)+sent(感じる)。informed consent は「説明を受けたうえでの同意」。動詞なら consent to ~。
  • unplugB1
    動詞プラグを抜くUnplug the TV before the storm. un-(反対の動作)+plug。「コンセントを抜く」は英語では unplug で言える。
  • concentricC1
    形容詞中心が同じ、同心のThe rings form concentric circles. con-(共に)+center(中心)。「コンセント」の語源を concentric plug の略とする説がある。
  • agreementB1
    名詞同意、合意They reached an agreement after a long talk. agree(同意する)+-ment。consent より日常的に使う語。
壁の差込口「コンセント」は和製英語。日本国語大辞典によると、大正の終わりごろまで、プラグと差込口のセットは「コンセントプラグ」と呼ばれていた。東京電燈の社員・小林勲が電気工事の決まりを書くとき、差す側を「プラグ」、受ける側を「コンセント」と分けたのがきっかけ。英語ではアメリカが outlet、イギリスが socket。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・日本大百科全書(小学館)、改訂新版 世界大百科事典・百科事典マイペディア(平凡社)、ブリタニカ国際大百科事典「コンセント」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. 世界大百科事典(旧版、平凡社)「東京電灯会社」の言及(コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. consent(The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.)ahdictionary.com
  4. socket(Oxford Advanced Learner's Dictionary)oxfordlearnersdictionaries.com
  5. plug(Oxford Advanced Learner's Dictionary、名詞)oxfordlearnersdictionaries.com

本館

マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究

論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も

マジカ!?サイエンスのトップへ →