「ガッツポーズ」は、ガッツ石松の世界王座より前の1972年に雑誌に出ていた

読む前に予想してみよう!
「ガッツポーズ」という言葉は、ガッツ石松が世界チャンピオンになった1974年より前の使用例が辞書に載っている
日本国語大辞典は、1972年11月30日の『週刊ガッツボウル』の「長身・杉本勝子の〝ガッツポーズ〟」を最初の例として載せている。
- 対象
- 国語辞典の用例・人名辞典・プロボウリング協会の選手データ
- 規模
- 辞書・事典4種と協会の記録1件
- 研究の種類
- 辞書の初出例と経歴の年の照合
- 確かさ
- ★★★☆☆
日本国語大辞典が載せる「ガッツポーズ」の最も古い例は、1972年11月の『週刊ガッツボウル』。ガッツ石松の世界王座(1974年)より前。英語では fist pump と言う。
ひとことで言うと「ガッツポーズ」は、ガッツ石松さんが世界チャンピオンになる前から雑誌にのっていた!
もくじ
ゴールを決めた選手が、こぶしを握って「よっしゃ!」。テストで満点を取って、思わず小さくガッツポーズ。
「ガッツ」と聞いて、元ボクシング世界王者のガッツ石松さんを思い浮かべる人もいるでしょう。名前がそっくりなので、「ガッツ石松さんのポーズから生まれた言葉」と思っても不思議ではありません。
ところが、小学館の『日本国語大辞典』が「いちばん古い例」として載せているのは、『週刊ガッツボウル』という雑誌の一文。名前からして、ボクシングではなくボウリングの雑誌のようです。日付は1972年11月30日。ガッツ石松さんが世界チャンピオンになった1974年より前です。
01辞書の「最初の例」は「長身・杉本勝子」のポーズ
『日本国語大辞典』は、多くの言葉に、確かめられたいちばん古い使用例を「初出の実例」として載せています。「ガッツポーズ」の項に挙がっているのは、次の一文です。
「長身・杉本勝子の〝ガッツポーズ〟」(『週刊ガッツボウル』1972年11月30日)
雑誌の名前は『週刊ガッツボウル』。英語の bowl には、オックスフォードの学習辞典によると「ボウリングで球を転がす」という動詞の意味があります。
では「杉本勝子」とはだれでしょうか。日本プロボウリング協会の選手データを調べると、同じ名前の女子プロボウラーが載っていました。
1972年にプロになったばかりの、身長168cmの女子プロボウラー。辞書が引く一文の「長身・杉本勝子」と、名前も年も背の高さも合います。誌名と合わせて考えると、ボウリングの記事の中で、選手のポーズを「ガッツポーズ」と書いたとみるのが自然です(ただし、雑誌の現物は確かめられていません)。

02ガッツ石松さんの世界王座は1974年
一方、ガッツ石松さんの経歴を『日本人名大辞典』で確かめると、こうなっています。
- 1949年生まれ、栃木県出身。本名は鈴木有二
- 1966年(昭和41年)にプロボクサーになる
- 1974年(昭和49年)、メキシコのロドルホ・ゴンザレスをKOで破り、WBC世界ライト級チャンピオンに
- 「幻の右」と名づけたパンチで5度防衛し、1978年に引退。その後はタレントとして活躍
年を並べると、辞書に載るいちばん古い例(1972年)は、世界王座(1974年)より前です。少なくとも「ガッツ石松さんが王者になったとき、初めてこの言葉が生まれた」という順番ではなかったことになります。
03「ガッツ」は英語で「はらわた」
ところで、「ガッツ」そのものはどこから来たのでしょう。
国語辞典では、ガッツは英語の guts から来た言葉で、意味は「気力。根性」です。では英語の guts は、もともと何を指すのでしょうか。
アメリカの大きな辞書『American Heritage Dictionary』を引くと、gut の最初の意味は「消化管、とくに腸や胃」。複数形の guts は「はらわた、内臓」です。古英語の guttas(はらわた)にさかのぼる、とても古い単語です。
そのうえで、くだけた言い方として guts に「勇気、根性」の意味があります。
- It takes guts to be a rock climber.(ロッククライマーになるには根性がいる)=辞書の例文
- I had a gut feeling that something was wrong.(何かおかしいと直感で思った)
日本語でも「はらわたが煮えくり返る」「腹をくくる」のように、おなかを気持ちや覚悟の場所として語ります。英語の guts も、おなかの中身から「肝のすわった強さ」へと意味が広がりました。
04英語で「ガッツポーズ」は通じない
「ガッツポーズ」は和製英語です。デジタル大辞泉は語源を《〈和〉guts+pose》と書いています。英語の guts と pose を、日本でつないで作った言葉です。
ですから、英語で "guts pose" と言っても、まず通じません。英語ではこう言います。
- fist pump(名詞):オックスフォードの学習辞典によると、成功や勝利を喜ぶときなどに、こぶしをぎゅっと握って曲げた腕を上げ、体のほうへすばやく力強く引き下ろす動作
- She gave a little fist pump when she saw her score.(点数を見て、彼女は小さくガッツポーズをした)
- He pumped his fist after the strike.(ストライクのあと、彼はこぶしを振って喜んだ)
両手を高く上げるガッツポーズなら、She threw her arms up in the air.(彼女は両腕を突き上げた)のように、動作をそのまま言うのが自然です。
05どんでん返し:「広めた人」はまだ分からない
ここまで読むと、「ガッツ石松さんは関係なかった」と言いたくなるかもしれません。でも、そこまでは言えません。
辞書の「初出の実例」が教えてくれるのは、1972年にはもうこの言葉が活字になっていたということだけです。その後、この言葉がどうやって全国に広まったのか、だれのポーズがきっかけで多くの人が使うようになったのかは、この辞書の記述からは分かりません。雑誌の一文が世の中に広まったとは限らず、1974年の世界戦のあとで一気に知られるようになった可能性も残ります。
また、「最古の例」は、いまの辞書がたまたま見つけている範囲の話です。古い新聞や雑誌がもっと調べられれば、1972年より前の例が見つかるかもしれません。
06まとめ
ガッツポーズという言葉は、辞書がたどれる範囲では、ガッツ石松さんの世界王座より前、1972年の雑誌『週刊ガッツボウル』に出てきます。もとになった英語の guts は「はらわた」で、そこから「根性」の意味になりました。
英語で同じ動作を言うなら fist pump。次に思わずこぶしを握ったら、Yes! と言いながら fist pump してみてください。
よくある質問
ガッツポーズの語源はガッツ石松さんですか?
そうとは言い切れません。日本国語大辞典が載せる最も古い例は、1972年11月30日の『週刊ガッツボウル』の一文で、ガッツ石松さんの世界王座(1974年)より前です。ただし、だれがこの言葉を広めたのかは、辞書の記述からは分かりません。
「ガッツポーズ」という言葉はいつからありますか?
辞書がたどれる範囲では1972年からです。日本国語大辞典は「初出の実例」として、1972年11月30日の『週刊ガッツボウル』の「長身・杉本勝子の〝ガッツポーズ〟」を載せています。古い新聞や雑誌がもっと調べられれば、それより前の例が見つかるかもしれません。
辞書に出てくる「杉本勝子」とはだれですか?
日本プロボウリング協会の選手データに、同じ名前の女子プロボウラーが載っています。1972年にプロ入りし、身長168cm。辞書が引く「長身・杉本勝子」と、名前も年も背の高さも合います。ただし、雑誌の現物は確かめられていません。
ガッツ石松さんが世界チャンピオンになったのはいつですか?
1974年(昭和49年)です。日本人名大辞典によると、メキシコのロドルホ・ゴンザレスをKOで破り、WBC世界ライト級チャンピオンになりました。「幻の右」と名づけたパンチで5度防衛し、1978年に引退しています。
ガッツポーズは和製英語ですか?
はい。デジタル大辞泉は語源を《〈和〉guts+pose》と書いています。英語の guts と pose を日本でつないで作った言葉なので、英語で guts pose と言っても、まず通じません。
ガッツポーズは英語で何と言いますか?
名詞で fist pump、動詞なら pump one's fist と言います。オックスフォードの学習辞典によると、こぶしを握って曲げた腕を上げ、体のほうへすばやく力強く引き下ろす動作です。両手を上げるなら throw one's arms up のように動作で言います。
「ガッツ」とはどういう意味ですか?
国語辞典では「気力。根性」で、英語の guts から来た言葉です。英語の guts のもとの意味は「はらわた、内臓」。くだけた言い方で「勇気、根性」の意味があり、It takes guts to ~(~するには根性がいる)のように使います。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen a Japanese soccer player scores and clenches a fist, fans call it a "gattsu pōzu," or "guts pose."…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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In Japan, people call it a "guts pose" when a player makes a fist to celebrate. The name may make you think of Guts Ishimatsu, a boxer who became a world champion in 1974.
But a big Japanese dictionary has an older example of the word. It comes from a magazine called "Weekly Guts Bowl" from November 1972. In English, people don't say "guts pose." They say "fist pump," as in "She gave a fist pump after her strike."
79 words ・ CEFR A2
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日本では、選手が喜んでこぶしを握ると、それを「ガッツポーズ」と呼びます。この名前を聞くと、1974年に世界チャンピオンになったボクサーのガッツ石松さんを思い浮かべるかもしれません。
でも、日本の大きな辞書には、この言葉のもっと古い例が載っています。それは1972年11月の『週刊ガッツボウル』という雑誌からのものです。英語では「guts pose」とは言いません。「She gave a fist pump after her strike.(ストライクのあと、彼女はガッツポーズをした)」のように、「fist pump」と言います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「ガッツポーズ」という言葉の古い例がどこで見つかったかの話なので B。
Q2. When is the magazine example from?
It comes from a magazine called "Weekly Guts Bowl" from November 1972 とあるので A。1974年はガッツ石松さんが王者になった年。
Q3. In the passage, what does "fist pump" mean?
makes a fist to celebrate を英語で fist pump と言う、という流れなので C。
When a Japanese soccer player scores and clenches a fist, fans call it a "gattsu pōzu," or "guts pose." Because of the name, you might guess it comes from Guts Ishimatsu, the boxer who won a world title in 1974.
But the large dictionary Nihon Kokugo Daijiten gives an earlier example. It is a line from a magazine called Weekly Guts Bowl, dated November 30, 1972, about the pose of a tall woman named Katsuko Sugimoto. A bowler with the same name turned professional that year.
The word "guts" came into Japanese from English. In English it first meant the stomach and intestines, and in casual speech it also means courage. English speakers don't use "guts pose" for the move. They call it a "fist pump."
126 words ・ CEFR B1
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日本のサッカー選手が得点してこぶしを握ると、ファンはそれを「ガッツポーズ」と呼ぶ。その名前から、1974年に世界王座をとったボクサーのガッツ石松が由来だと思うかもしれない。
しかし、大きな辞書『日本国語大辞典』はもっと早い例を挙げている。それは1972年11月30日付けの『週刊ガッツボウル』という雑誌の一文で、杉本勝子という背の高い女性のポーズについてのものだ。同じ名前のボウラーが、その年にプロになっている。
「ガッツ」という語は英語から日本語に入った。英語ではもともと胃や腸を指し、くだけた言い方では勇気という意味もある。英語を話す人はこの動作に「guts pose」とは言わない。「fist pump」と呼ぶ。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the dictionary example show?
It is a line from a magazine called Weekly Guts Bowl, dated November 30, 1972 とあるので B。
Q2. What did the English word "guts" first mean?
In English it first meant the stomach and intestines とあるので C。「勇気」はくだけた言い方での意味。
Q3. Why does the writer mention a professional bowler with the same name?
1972年の用例に出てくる背の高い女性がだれなのかを示すために、同じ名前のプロボウラーを挙げているので A。
The Japanese word "gattsu pōzu" (guts pose) sounds as if it were named after Guts Ishimatsu, who won the WBC lightweight title in 1974. The dates do not fit that story. Nihon Kokugo Daijiten, a major dictionary of Japanese, lists its first known example from a magazine called Weekly Guts Bowl, dated November 30, 1972. The line describes the guts pose of a tall woman, Katsuko Sugimoto.
The Japan Professional Bowling Association lists a bowler of that name who turned pro in 1972 and is 168 centimeters tall, so she is probably the same person. The word itself was made in Japan by joining two English words, guts and pose. In English, guts first meant the intestines and later came to mean courage in casual speech.
A dictionary entry can only tell us so much, though. A first known example only shows that the word was in print by late 1972. It says nothing about how the word spread, and the boxer's 1974 win may well have helped. An older example could also turn up in some forgotten newspaper. In English, the same move is a "fist pump."
188 words ・ CEFR B2
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日本語の「ガッツポーズ」は、1974年にWBCライト級の王座をとったガッツ石松にちなんで名づけられたように聞こえる。だが、年が合わない。日本語の大きな辞書『日本国語大辞典』は、この語の最初の例として、1972年11月30日付けの『週刊ガッツボウル』という雑誌のものを載せている。その一文は、杉本勝子という背の高い女性のガッツポーズを書いたものだ。
日本プロボウリング協会には、1972年にプロになり、身長168cmのこの名前の選手が登録されているので、おそらく同じ人だろう。この語自体は、guts と pose という二つの英単語を日本でつないで作られた。英語の guts は、もともと腸を指し、のちにくだけた言い方で勇気を意味するようになった。
とはいえ、辞書の項目から分かることには限りがある。最初に知られている例が示すのは、1972年の終わりまでにこの語が活字になっていたということだけだ。この語がどう広まったかについては何も語っておらず、1974年のボクサーの勝利が広まるのを助けた可能性も十分ある。忘れられたどこかの新聞から、もっと古い例が見つかることもありうる。英語では、同じ動作を「fist pump」と言う。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
辞書の最初の例が1972年でガッツ石松の王座(1974年)より前、というのが中心なので B。
Q2. Why does the writer think the woman in the 1972 line is probably Katsuko Sugimoto the professional bowler?
a bowler of that name who turned pro in 1972 and is 168 centimeters tall とあり、名前・年・「長身」が合うので C。
Q3. What can be inferred about the boxer's role?
It says nothing about how the word spread, and the boxer's 1974 win may well have helped とあるので、広めた可能性はあると読める。B。
重要単語
- gutsB2名詞(くだけて)勇気、根性;内臓It takes guts to sing in front of the whole school.
もとは gut(腸)の複数形で「はらわた」。It takes guts to ~「~するには根性がいる」は会話の定番。 - fist pumpC1名詞ガッツポーズ(こぶしを握って振る動作)She gave a little fist pump when she saw her score.
give a fist pump の形でよく使う。動詞なら pump one's fist。"guts pose" は和製英語で通じない。 - celebrateA2動詞祝う、喜びを表すThe players celebrated the goal together.
名詞は celebration。celebrate a birthday「誕生日を祝う」。 - clenchC1動詞(こぶし・歯を)ぎゅっと握る、食いしばるHe clenched his fist and shouted, "Yes!"
clench one's fist「こぶしを握る」、clench one's teeth「歯を食いしばる」の2つで覚える。 - championA2名詞優勝者、王者She became the world champion at twenty-two.
championship は「選手権(大会)」。world title「世界タイトル」もあわせて。 - gut feelingB2名詞直感、勘I had a gut feeling that we would win.
gut(腹)で感じる気持ち=理屈ではない直感。go with your gut「直感に従う」。
公式・一次情報をチェック
- fist pump(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- gut(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- bowl(動詞, Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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「ガッツポーズ」の語源はガッツ石松さん? 日本国語大辞典が載せる最古の例は1972年11月の『週刊ガッツボウル』の「長身・杉本勝子の〝ガッツポーズ〟」。ガッツ石松さんの世界王座は1974年。ちなみに英語では fist pump と言う。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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