「5文型」の元祖は1889年のイギリスの文法書。本場では広まらず、日本で100年以上

読む前に予想してみよう!
5文型は、日本の英語学者が考え出した分け方だ
原型はイギリスの学校文法書(1889年)の「述部の5形式」。1904年のオニオンズの本を経て、細江逸記が1917年に日本に紹介した。
- 対象
- 英文法書・学習指導要領・英語教育の論文
- 規模
- 文法書・公的資料・論文 9点
- 研究の種類
- 文献調査(英文法史)+中学生の調査
- 確かさ
- ★★★☆☆
5文型の原型は、1889年にイギリスの学校文法書が使った「述部の5形式」。本場では広まらなかったが、1917年に日本へ入り、今も日本や韓国の教材で使われる。
ひとことで言うと英語の「5文型」の元祖はイギリスの文法書。でも本場イギリスでは広まらず、日本で100年以上使われているんだって!
もくじ
「The news made us happy. は第5文型、SVOC」。英語の授業でこう習った人は多いでしょう。主語(S)・動詞(V)・目的語(O)・補語(C)の組み合わせで、英語の文を5つの型に分ける「5文型」です。「日本でしか教えていない」という話も耳にします。
5文型の起源をたどると、1889年にイギリスで出た学校向けの文法書に行き着きます。しかも本場イギリスでは広まらず、海を渡った日本で100年以上使われ続けてきたのです。
015文型のおさらい
- 第1文型 SV:The baby smiled.(赤ちゃんがほほえんだ)
- 第2文型 SVC:This soup tastes good.(このスープはおいしい)。「スープ=おいしい」のように S と C がイコールの関係
- 第3文型 SVO:I like baseball.(私は野球が好きだ)
- 第4文型 SVOO:My aunt sent me a postcard.(おばが私にはがきを送ってくれた)
- 第5文型 SVOC:The news made us happy.(その知らせで私たちはうれしくなった)。「私たち=うれしい」のように O と C がイコールの関係
分け方のポイントは、動詞のうしろに「何が」「いくつ」続くかです。in the park のような場所や時を表す語句は、ふつう型には数えません。
025文型の起源は?「元祖はオニオンズ」が定説だった
日本の英語学や英語教育の事典は、イギリスの C. T. オニオンズ(Onions)が1904年に出した『An Advanced English Syntax』を5文型の元祖としてきました(宮脇 2012)。
オニオンズは、のちに『オックスフォード英語辞典』(OED)の編者の一人になる人です。この本は、述部(動詞とそのうしろの部分)は「5つの主な形」をとるとし、第1形式の Day dawns.(夜が明ける)から第5形式の Nothing makes a Stoic angry.(ストア派の人は何があっても怒らない)までを挙げています。今の第1〜第5文型とそのまま重なります。
03ところが、15年前の本に同じ5分類があった
専修大学の宮脇正孝さんは、オニオンズより前に、同じ「述部の5形式」を使った英文法書があることを突き止めました。1889年にロンドンで出た、A. J. クーパーと E. A. ゾンネンシャインの『An English Grammar for Schools』の第2部です。
04目的は「何語でも同じ文法用語で」
当時のイギリスの学校では、ラテン語・ギリシャ語・フランス語・ドイツ語なども教えていましたが、言語ごとに文法用語がばらばらで、生徒は混乱していました。そこで古典語学者のゾンネンシャインが中心になり、1886年にバーミンガムで「文法協会(Grammatical Society)」がつくられました。
めざしたのは、どの言語の文法も同じ用語と同じ枠組みで教えることです。その土台が「述部の5形式」で、同じシリーズのラテン語やドイツ語の文法書でも使われました。
川嶋正士さんの博士論文(専修大学、2023年)によると、この運動の裏には、学校には要らないと言われ始めていたラテン語やギリシャ語を守りたいという、ゾンネンシャインの思いもありました。

05本場イギリスでは広まらなかった
ところが、この5形式はイギリスでは長続きしませんでした。ゾンネンシャインが8つの学会の委員を集めてつくった委員会は、1911年に文法用語の統一案を報告書にまとめますが、そこに「述部の5形式」は出てきません。彼自身が1916年に書いた英文法書でも、5形式はひとそろいの分析法としては使われませんでした(宮脇 2012)。
川嶋さんは、ラテン語の文法の枠にほかの言語を無理に当てはめる試みは失敗に終わり、その後、海外では5文型と同じ分析をする英文法書は見られなくなった、とまとめています。
06日本へ:細江逸記の「文の公式」
一方、日本では1917年、英語学者の細江逸記が『最新英文法汎論』(のちの『英文法汎論』)を出しました。英語の文を「第一公式の文」から「第五公式の文」に分けたもので、オニオンズの5形式がもとだと早くから指摘されてきました。川嶋さんによると、それより前の日本の文法書にも順番のちがう型や4つの型はありましたが、今と同じ5つの型は細江が最初でした。
1958年の中学校学習指導要領は、「主語+動詞」から「主語+動詞+目的語+補語」までの5つの文型を挙げています。「5文型」という言葉こそありませんが、中身は5文型そのものです。
2008年の改訂で、文部科学省は「文型」を「文構造」という言葉に替えました。文を型で分類するだけの指導にならないように、という理由です。それでも今の中学校学習指導要領(2017年告示)にも[主語+動詞+補語]などの形が並びます。宮脇さんによれば、高校生や受験生向けの英文法書は、ほぼ例外なく最初のほうで5文型を説明しています(2011年時点)。
075文型は日本だけ?海外ではどうなっている?
川嶋さんは博士論文の要旨で「現在海外でこれを用いた英語教育を行っている国はない」と書いています。ところが2016年の韓国の論文は、韓国の多くの英文法教材に5文型(韓国語で「5형식」)が載り、英語教育に強い影響を与えてきたと述べています。「日本式の文法」と受け止められることもあるそうです。「日本だけ」とまでは言えないのです。中国や台湾などのようすは、今回の資料では確かめられませんでした。
08英語圏の文法書はどう分けている?
拓殖大学の渡辺勉さんの論文(2018年)をもとに見てみましょう。クワーク(Quirk)らの『A Comprehensive Grammar of the English Language』(1985年)は、5つの型に SVA と SVOA を足した7つの型を立てました。A は「なくてはならない副詞的な語句」です。
- My grandma lives in Kobe.(祖母は神戸に住んでいる)。in Kobe を取って My grandma lives. にすると、「祖母は生きている」という別の意味になってしまう
- Ken put his bag on the desk.(ケンはかばんを机に置いた)。Ken put his bag. だけでは文が成り立たない
5文型ではこうした語句を型の外の「修飾語」として扱うので、なくてもいい語句に見えてしまいます。日本の研究者もここを5文型の弱点としてきました。
型の見分け方そのものが割れる文もあります。I told him to wait.(私は彼に待つように言った)の to wait を、日本の高校向けの文法書は、目的語と見て第4文型とするものと、補語と見て第5文型とするものに分かれていました(渡辺 2018)。
いっぽう、ハドルストンとプラムの『The Cambridge Grammar of the English Language』(2002年)は、5文型とよく似た5つの型を基本にしています。ただし、It depends on the weather.(天気しだいだ)の on the weather のような前置詞句も、動詞に欠かせない要素として数える考え方をあわせて使っています。
09どんでん返し:5文型は意味がない?中学生の調査
静岡大学の矢野淳さんは、2010年に中学3年生114人と中学2年生80人に、12の短い英文を和訳させ、それぞれの文が5つの型のどれに近いかを選ばせました。
すると、意味は分かるのに文型は当てられない生徒が多くいました。John gave an interesting book to Mary.(第3文型)では、中学3年生の67.6%が「和訳は正しいのに文型は間違えた」グループでした。
ただ、過去の高校生や大学生のデータもあわせて見ると、要素の多い第4・第5文型の文では、「意味が正しく取れているかどうか」と「文型を当てられるかどうか」の間に、統計で確かめられるつながりが見られることが比較的多くありました。矢野さんは、中学3年生に5文型を紹介するのは適切で、中学2年生にはまだ早いとしたうえで、文型を当てること自体が目的にならないようにと注意しています。
10まとめ
5文型の原型は、1889年のイギリスで「何語でも同じ用語で文法を教えよう」という運動から生まれました。本場では広まりませんでしたが、細江逸記が1917年に日本に紹介し、今も日本の英語学習の入口にあります。韓国の教材でも使われています。
完ぺきな分け方ではありません。でも、動詞のうしろに何が続くかを見る「ものさし」として使えば、今でも役に立つ道具です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor years, Japanese reference books said the five sentence patterns came from C.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many students in Japan learn the "five sentence patterns" of English, like SVO and SVOC. But the patterns did not start in Japan. A school grammar book from Britain used them in 1889.
Its writers wanted to use the same grammar words for English, Latin, French, and other languages. In Britain, the five patterns did not last long. In 1917, a Japanese scholar named Itsuki Hosoe wrote about them, and Japanese grammar books still use them today.
77 words ・ CEFR A2
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日本の多くの生徒は、SVO や SVOC のような英語の「5文型」を習います。でも、この型は日本で始まったものではありません。1889年に、イギリスの学校向けの文法書がこれを使っていました。
その本の書き手たちは、英語、ラテン語、フランス語などの言語で、同じ文法用語を使いたいと考えていました。イギリスでは、5文型は長続きしませんでした。1917年に、細江逸記という日本の学者がこれについて書き、日本の文法書は今もこれを使っています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
5文型が日本ではなくイギリスの文法書から始まったことを説明しているので A。
Q2. When did a school grammar book from Britain use the five patterns?
A school grammar book from Britain used them in 1889. とあるので B。1917年は細江逸記が書いた年。
Q3. In the passage, what is a "scholar"?
scholar は「学者」。ある分野を深く研究する人なので C。
For years, Japanese reference books said the five sentence patterns came from C. T. Onions, a British scholar who later became one of the editors of the Oxford English Dictionary. His grammar came out in 1904.
But in 2012, a researcher at Senshu University pointed to an older book. In 1889, A. J. Cooper and E. A. Sonnenschein published a school grammar that sorted sentences into the same five forms. Both books were part of a series that tried to teach English, Latin, Greek, French, and German with one set of grammar terms. The idea did not last long in Britain. In Japan, Itsuki Hosoe introduced the five forms in 1917, and they became a standard part of English classes. Many grammar books in South Korea use them too.
129 words ・ CEFR B1
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長年、日本の事典類は、5文型はイギリスの学者 C. T. オニオンズから来たと書いてきた。オニオンズは、のちに『オックスフォード英語辞典』の編者の一人になった人物だ。
彼の文法書は1904年に出た。しかし2012年、専修大学の研究者が、もっと古い本を示した。1889年に A. J. クーパーと E. A. ゾンネンシャインが出した学校向けの文法書が、文を同じ5つの形に分けていたのだ。2冊はどちらも、英語・ラテン語・ギリシャ語・フランス語・ドイツ語を1組の文法用語で教えようとしたシリーズの一部だった。この考えはイギリスでは長続きしなかった。日本では細江逸記が1917年に5つの形を紹介し、それは英語の授業の定番になった。韓国の多くの文法書でも使われている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
5文型がどこで生まれ、日本や韓国にどう残ったかという歴史の話なので B。
Q2. What was the goal of the series that both books belonged to?
a series that tried to teach English, Latin, Greek, French, and German with one set of grammar terms とあるので C。
Q3. What can we infer about Onions's book from 1904?
1889年の本がすでに同じ5つの形を使っていたので、1904年のオニオンズの本は最初ではなかったと推測できる。A。
Show a Japanese high school student the sentence "The news made us happy," and you will probably hear "SVOC, the fifth pattern." The system is usually traced to C. T. Onions's grammar of 1904, but the same five "forms of the predicate" appear in a British school grammar from 1889. Its authors belonged to the Grammatical Society, a group in Birmingham that wanted English, Latin, Greek, French, and German taught with shared terms.
A 2023 doctoral thesis from a Japanese university argues that the classical scholar E. A. Sonnenschein also hoped the plan would keep Latin and Greek in schools. In Britain, the five forms did not last. A 1911 report on grammar terms left them out, and Sonnenschein's own grammar of 1916 did not use them as a set.
Japan was different. Itsuki Hosoe adopted them in 1917, and the 1958 national curriculum for junior high schools listed all five. Some large grammars of English sort clauses differently. Randolph Quirk and his colleagues use seven types, adding patterns like "She put the keys on the table," which sounds unfinished without "on the table."
184 words ・ CEFR B2
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日本の高校生に "The news made us happy" という文を見せれば、たぶん「SVOC、第5文型」という答えが返ってくる。この体系はふつう1904年のオニオンズの文法書にさかのぼるとされるが、同じ5つの「述部の形式」は、1889年のイギリスの学校向け文法書にすでに出てくる。その著者たちは、英語・ラテン語・ギリシャ語・フランス語・ドイツ語を共通の用語で教えることをめざしたバーミンガムの団体「文法協会」の会員だった。
2023年に日本の大学に提出された博士論文は、古典学者の E. A. ゾンネンシャインがこの計画でラテン語とギリシャ語を学校に残したいとも考えていたと論じている。イギリスでは5つの形式は長続きしなかった。1911年の文法用語の報告書はそれを入れず、ゾンネンシャイン自身の1916年の文法書もひとそろいとしては使わなかった。
日本はちがった。細江逸記が1917年に取り入れ、1958年の中学校の学習指導要領は5つすべてを挙げた。英語の大型の文法書の中には、節を別の方法で分類するものもある。ランドルフ・クワークらは7つの型を使い、"She put the keys on the table"(彼女は鍵をテーブルに置いた)のように、"on the table" がないと言いかけのように聞こえる文の型を加えている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
5文型がイギリスで生まれ、イギリスではすたれ、日本では残った経緯を述べているので B。
Q2. According to the passage, what did the 1911 report on grammar terms do?
A 1911 report on grammar terms left them out とあるので C。
Q3. Why does the writer mention "She put the keys on the table"?
which sounds unfinished without "on the table" とあり、場所の語句がないと文が完成しない型の例として挙げているので A。
重要単語
- subjectA2名詞主語In "Cats catch mice," the subject is "cats."
5文型の S。「教科」「話題」の意味もある。What's your favorite subject?(好きな教科は?) - objectB1名詞目的語In "I like baseball," "baseball" is the object.
5文型の O。ふだんは「物、物体」の意味。動詞の object は「反対する」で、アクセントが後ろに移る。 - complementC1名詞補語In "She looks tired," "tired" is the complement.
5文型の C。「足りないところを補うもの」。つづりの似た compliment(ほめ言葉)と混同しないこと。 - transitiveC1形容詞他動詞の(目的語をとる)"Enjoy" is transitive, so you need an object after it.
辞書の [T] は transitive、[I] は intransitive(自動詞の)。I enjoyed. だけでは文が終わらない。 - patternB1名詞型、パターンCan you see the pattern in these three sentences?
発音は「パタン」に近い。sentence pattern で「文型」。 - grammarA2名詞文法My grammar book starts with the five sentence patterns.
つづりは -ar で終わる(grammer は誤り)。grammar book で「文法書」。 - scholarB2名詞学者Hosoe was a scholar of English grammar.
発音は「スカラー」に近い。scholarship は「奨学金」。 - curriculumB2名詞教育課程、カリキュラムThe five patterns were part of the national curriculum.
複数形は curricula または curriculums。日本の学習指導要領は英語で the Course of Study と訳されることが多い。
公式・一次情報をチェック
- C. T. Onions, An Advanced English Syntax(第3版 1911年、Internet Archive の全文)archive.org
- 中学校学習指導要領(平成29年告示)(文部科学省)mext.go.jp
- 細江逸記『最新英文法汎論』(文会堂、1917年)の書誌(国立国会図書館サーチ)ndlsearch.ndl.go.jp
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英語の授業でおなじみの「5文型」。元祖は1904年のオニオンズとされてきたが、1889年のイギリスの学校文法書に同じ5分類があった。本場では広まらず、日本では1917年から100年以上。韓国の教材でも使われている。
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出典・参考文献(9件)タップで表示
- 宮脇正孝 (2012) 5文型の源流を辿る―C. T. Onions, An Advanced English Syntax(1904)を越えて―, 専修人文論集 90doi.org
- 川嶋正士 (2023) 5文型の史的研究―統語分析が誕生してから文の公式が提唱されるまで(博士論文・専修大学)senshu-u.repo.nii.ac.jp
- Um Tae-Kyung (2016) On the Notion of 5 Sentence Patterns in English Grammar Learning Materials, The Journal of the Korea Contents Association 16(6)doi.org
- 渡辺勉 (2018) 日本の学習文法で使われる5文型について(上), 拓殖大学論集 人文・自然・人間科学研究 39takushoku-u.repo.nii.ac.jp
- 渡辺勉 (2018) 日本の学習文法で使われる5文型について(下), 拓殖大学論集 人文・自然・人間科学研究 40takushoku-u.repo.nii.ac.jp
- 文部省 (1958) 中学校学習指導要領 第9節 外国語(国立教育政策研究所 学習指導要領データベース)erid.nier.go.jp
- 文部科学省 (2008) 中学校学習指導要領解説 外国語編mext.go.jp
- Huddleston, R. & Pullum, G. K. (2002) The clause: complements, The Cambridge Grammar of the English Language(Cambridge University Press)doi.org
- 矢野淳 (2014) 日本の中学生EFL学習者に5文型導入は適切か?, 静岡大学教育学部研究報告(教科教育学篇)45doi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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