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「デジタル」はもとは“指”、「クラウド」は“岩や丘”の意味だった

「デジタル」はもとは“指”、「クラウド」は“岩や丘”の意味だった

読む前に予想してみよう!

パソコンの「ファイル」は、もともと書類を通してまとめておく糸や針金のことだった

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の辞書3種の語源欄と用例記録
規模
4語(digital・file・browse・cloud)+関連語
研究の種類
辞書・用例の調査
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

digitalはラテン語の「指」、fileは「糸」、browseは「動物が若葉を食べる」、cloudは古英語の「岩、丘」から。IT用語は昔の暮らしの言葉だった。

ひとことで言うと「デジタル」は指、「クラウド」は岩や丘。パソコンの言葉は昔の言葉だった!

もくじ
  1. 「デジタル」の語源は「指」
  2. 「ファイル」は、書類を通した「糸」
  3. 「ブラウザ」の browse は、牛や鹿の食事
  4. 「クラウド」は、空ではなく地面にあった
  5. 日本語の「ファイル」「デジタル」はいつから?
  6. どんでん返し:IT用語の名付け親が「指」や「岩」を思い浮かべたわけではない
  7. まとめ
  8. よくある質問

デジタル、ファイル、ブラウザ、クラウド。スマホやパソコンを使えば、毎日のように出てくる言葉です。

どれも最新の技術の言葉に聞こえますが、英語の辞書で語源を調べると、デジタルは「指」、ファイルは「糸」、ブラウザは「牛や鹿が若葉を食べること」、クラウドは「岩や丘」にたどり着きます。

4つとも、もとをたどると、手でさわれる物を表す言葉に行き着きます。

01「デジタル」の語源は「指」

アメリカの辞書メリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)によると、digital のもとはラテン語の digitus(ディギトゥス)。意味は「手の指、足の指」、そして長さの単位としての「指1本分の幅」です。そこから digitalis(指の幅をはかる)という形容詞ができました。

中世の英語の digitalle は「(整数が)10より小さい」、つまり0〜9のような1けたの数を表す言葉で、15世紀から記録があります。digit(数字)も、中世の英語と中世のラテン語で「10より小さい整数」を指しました。「指」の言葉が、中世のうちに「数」の言葉になっていたのです。

今でも、アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)で digital を引くと、最初の意味は「指に関する」「指で操作する」です。digit も1番目の意味は「手の指、足の指」で、「0から9の数字」は3番目です。

「ビット」も指の子孫

コンピューターの情報の最小単位 bit(ビット) は、AHD によると binary digit(2進数の桁)を縮めた言葉です。b(inary) と (dig)it をくっつけて bit。Dictionary.com によると、記録に出てくるのは1945〜50年ごろからです。

0と1の「ビット」の中にも、ラテン語の「指」がかくれています。

02「ファイル」は、書類を通した「糸」

メリアム・ウェブスターのコラム「Tech-y Terms Are Older Than You Think(IT用語は思ったより古い)」によると、昔の file は、書類を通しておくための針金やひものことでした。この習慣は16世紀初めにさかのぼります。

コラムが紹介する1525年の本には、薬屋は扱った書きつけ(bills)を fyle に通して保管すること、とあります。1666年には、サミュエル・ピープスが、file に通しておいた4〜5年分の不要な手紙を燃やした、と日記に書いています。

語源は、フランス語の fil、ラテン語の filum(糸)です。AHD によると、古いフランス語の filer には「糸をつむぐ」と「書類を糸に通す」の両方の意味がありました。

その後 file は、フォルダーやキャビネットなど書類を整理する物全体を指すようになり、今ではコンピューターの中のデータの名前です。

AHD では、同じ項目の file に「前後に一列に並んだ人や動物の列」という意味もあります。in single file(一列に並んで)の file です。AHD の語源の説明によると、もとの後期ラテン語の動詞には「糸をつむぐ」のほかに「長い線に引きのばす」という意味もありました。

昔の file は、書類を通しておく糸や針金のことだった。1525年の文献には、薬屋は書きつけを fyle に通して保管すること、とある(Merriam-Webster)
昔の file は、書類を通しておく糸や針金のことだった。1525年の文献には、薬屋は書きつけを fyle に通して保管すること、とある(Merriam-Webster)

03「ブラウザ」の browse は、牛や鹿の食事

ネットを見るアプリの「ブラウザ(browser)」。もとの動詞 browse は、動物が木の葉を食べることでした。

メリアム・ウェブスターのコラムによると、browse はアングロ・フランス語(中世のイギリスで使われたフランス語)の brouts「新芽」から来ていて、19世紀までは、エサを探して食べる動物や、エサを集める人についてだけ使う言葉でした。昔は人が野山で、冬の家畜のエサにする若い枝や葉を集めていました。1578年のラテン語と英語の辞書は、木の枝を刈る人(woodlopper)を browser と言いかえています。

19世紀になると、図書館や本屋で、何を読むか決めずに本を見て回ることも browse と言うようになりました。1818年の雑誌は、図書館で本を読み歩くことを、村の共有地で牛に草を食べさせることにたとえています。世紀の終わりには、店をぶらぶら見て回ることも browse になりました。

コラムによると、本の中身をざっと見る使い方から、1960年代にはコンピューターで情報を見ることも browse と言うようになったとみられます。そこから、そのためのソフトが browser になりました。

古い意味は今も辞書に残っています。AHD の browse には「葉や若い芽などを食べる」という意味があり、名詞では「動物が食べるのにちょうどいい若い枝や葉、芽」です。

04「クラウド」は、空ではなく地面にあった

データを保存する「クラウド(cloud)」は、英語で「雲」。でも、古い英語では違いました。

AHD と Dictionary.com によると、古英語(いちばん古い時代の英語)の clūd の意味は「岩、丘」。Dictionary.com は、clod(土くれ、土のかたまり)と同じ系統の言葉だとしています。

メリアム・ウェブスターのコラムによると、中世の cloud は、空の白や灰色のかたまりではなく、丘や、土・粘土のかたまりを指していました。1325年ごろの詩には、「虫は cloude の下で恋をする」という一行があり、この cloude は「土」の意味です。

14世紀の初めごろから、人々は空に浮かぶものを「浮かぶ岩のかたまり」のように考えはじめ、「土のかたまり」の言葉が空のかたまりにも使われるようになりました。15世紀の終わりまでに、陸の意味はすっかり消えたそうです。

今の AHD には、cloud の7番目の意味として「インターネットを通して使えるデータやサービスの集まり」が載っています。I keep all my photos in the cloud.(写真は全部クラウドに置いている)のように使います。

05日本語の「ファイル」「デジタル」はいつから?

小学館の『日本国語大辞典』によると、カタカナの「ファイル」は、まず書類をとじておくこと、とじこみの意味で1928年の新語辞典に載り、「書類ばさみ」の意味が1931年の辞典に出てきます。コンピューターの意味は3番目です。

「デジタル」は「ディジタル」とも書きます。同じ辞典が挙げる最初の例は1957年の科学の本で、そこでも「ディジタル式」と書かれています。

06どんでん返し:IT用語の名付け親が「指」や「岩」を思い浮かべたわけではない

ただし、「コンピューターの言葉は、指や岩から名付けられた」と言うのは言いすぎです。

コンピューターの digital が直接もとにしたのは「指」ではなく、すでに何百年も使われていた「数字」の意味です。cloud computing の cloud も、メリアム・ウェブスターのコラムによれば、空の雲を、広いインターネットのたとえにしたもの。岩や丘の意味は、そのずっと前に消えています。

それに、語源の説明には辞書によって差があります。

  • なぜ「指」が「10より小さい数」になったのか:Dictionary.com のページに付いている解説(Vocabulary.com)は、指で10まで数える習慣から来たと書いています。一方、メリアム・ウェブスターと AHD の語源の説明には、その理由は書かれていません
  • browse のもと:メリアム・ウェブスターはアングロ・フランス語の brouts「新芽」、AHD は古いフランス語の broust「若芽」で、どちらも「おそらく」と書いています。Dictionary.com は「もしかすると」アングロ・フランス語の broz から。「若い芽」という点は共通です
  • cloud の古い意味:「岩」「丘」「土・粘土のかたまり」と、辞書によって表現が少しずつ違います

07まとめ

デジタルは「指」、ファイルは「糸」、ブラウザは「牛や鹿の食事」、クラウドは「岩や丘」。画面の中の言葉も、たどると、ひもで書類をとじ、家畜にエサをやっていた昔の暮らしに行き着きます。

次にファイルをクラウドに保存するときは、I'm saving the file to the cloud. と英語でも言ってみてください。英語の文の中に、糸と岩がかくれています。

よくある質問

デジタルの語源は何ですか?

ラテン語の digitus(ディギトゥス)で、意味は「手の指、足の指」です。メリアム・ウェブスターによると、中世の英語の digitalle は「(整数が)10より小さい」、つまり1けたの数を表す言葉で、15世紀から記録があります。

なぜ「指」が「数字」の意味になったのですか?

辞書によって書き方が違います。Dictionary.com のページに付いている解説(Vocabulary.com)は、指で10まで数える習慣から来たと書いています。一方、メリアム・ウェブスターと American Heritage の語源の説明には、その理由は書かれていません。

ファイルの語源は何ですか?

ラテン語の filum(糸)です。メリアム・ウェブスターによると、昔の file は書類を通しておくための針金やひものことで、この習慣は16世紀初めにさかのぼります。1525年の本には、薬屋は書きつけを fyle に通して保管すること、とあります。

ブラウザの browse はもともとどういう意味ですか?

動物が木の葉や若い芽を食べることです。メリアム・ウェブスターによると、browse は19世紀までは、エサを探して食べる動物や、エサを集める人についてだけ使う言葉でした。その後、本や店を見て回る意味になり、1960年代にはコンピューターにも使われたとみられます。

クラウドの語源は何ですか?

古英語の clūd で、意味は「岩、丘」です(American Heritage・Dictionary.com)。メリアム・ウェブスターによると、14世紀の初めごろから空のかたまりにも使われるようになり、15世紀の終わりまでに陸の意味はすっかり消えたそうです。

クラウドサービスの「クラウド」は岩のことですか?

いいえ。メリアム・ウェブスターによると、cloud computing の cloud は、空の雲を広いインターネットのたとえにしたものです。岩や丘の意味は、そのずっと前に消えています。

ビット(bit)の語源は何ですか?

binary digit(2進数の桁)を縮めた言葉です(American Heritage)。b(inary) と (dig)it をくっつけて bit。Dictionary.com によると、記録に出てくるのは1945〜50年ごろからです。digit を通して、ラテン語の「指」とつながっています。

日本語の「デジタル」はいつから使われていますか?

日本国語大辞典が挙げる最初の例は1957年の科学の本で、「ディジタル式」と書かれています。「ファイル」は、書類をとじておくこと、とじこみの意味で1928年の新語辞典に載っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn English, a "file" was once a piece of string or wire. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In English, a "file" was once a piece of string or wire. From the early 1500s, people pushed papers onto it so they could keep them in order and find them later. The word comes from the Latin "filum," meaning "thread."

"Digital" has an even older story. The Latin word "digitus" meant "finger," and in the 1400s English used "digital" for whole numbers under ten. The computer word "bit" is short for "binary digit." "Browser" comes from "browse," which first described animals eating young leaves and shoots.

In the 1800s people began to browse in libraries and shops. In the 1960s, the word was probably first used for looking at information on a computer. The old animal meaning is still in dictionaries today.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

英語で「file」は、かつては1本のひもや針金のことだった。1500年代の初めから、人々は書類をそれに通して、順番に整理し、あとで見つけられるようにした。この語は「糸」を意味するラテン語の「filum」から来ている。

「digital」には、もっと古い歴史がある。ラテン語の「digitus」は「指」という意味で、1400年代の英語では「digital」は10より小さい整数に使われた。コンピューターの言葉「bit」は「binary digit(2進数の桁)」を縮めたものだ。「browser」は「browse」から来ていて、この語はもともと動物が若い葉や芽を食べることを表した。

1800年代に人々は図書館や店で「browse(見て回る)」するようになった。1960年代には、この語がおそらく初めて、コンピューターで情報を見ることにも使われた。動物についての古い意味は、今も辞書に載っている。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What is "bit" short for?

Q3. What can we learn from the last sentence?

重要単語

  • digitB2
    名詞(0〜9の1けたの)数字;指The code has four digits. a four-digit number「4けたの数」。ラテン語 digitus(指)から。
  • fileA2
    名詞ファイル;書類とじ;(縦の)列I saved the file on my laptop. in single file「一列に並んで」。やすりの file は語源が別の言葉。
  • browseB2
    動詞見て回る;(動物が)若葉を食べるI'm just browsing, thanks. 店で「見ているだけです」と言うときの定番。browser「ブラウザ」はここから。
  • cloudA2
    名詞雲;クラウド(ネット上の保存場所)All my photos are in the cloud. in the cloud「クラウド上に」。古英語では「岩、丘」の意味だった。
  • threadB1
    名詞糸She tied the papers together with a piece of thread. SNS の「スレッド(話の流れ)」も同じ語。file のもとのラテン語 filum の意味。
  • etymologyC1
    名詞語源The etymology of "file" goes back to a Latin word for thread. 辞書の語源欄は Etymology や Word Origin と書かれている。
  • binaryC1
    形容詞2進法の(0と1で表す)Computers store data in binary form. bit は binary digit を縮めた語。bi- は「2つの」(bicycle の bi- と同じ)。
「デジタル」の語源はラテン語の“指”。「ファイル」は書類を通した“糸”、「ブラウザ」のbrowseは牛や鹿が若葉を食べること、「クラウド」は古英語で“岩、丘”。パソコンの言葉は、手でさわれる物の名前から来ていた。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Merriam-Webster「Tech-y Terms Are Older Than You Think」(Wordplay)merriam-webster.com
  2. Merriam-Webster.com Dictionary「digital」「digit」「file」「cloud」merriam-webster.com
  3. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「digit」「digital」「bit」「file」「browse」「cloud」ahdictionary.com
  4. Dictionary.com「digital」「file」「browse」「cloud」「bit」(Random House Unabridged Dictionary ほか)dictionary.com
  5. 精選版 日本国語大辞典「ファイル」「デジタル」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp

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