スカートの語源は、バイキングの言葉で「シャツ」。shirt と skirt はもとは同じ単語

読む前に予想してみよう!
英語の skirt(スカート)は、もとは北欧の言葉で「シャツ」という意味だった
アメリカの辞書 American Heritage によると、skirt は古ノルド語の skyrta(シャツ)から。英語生まれの shirt とは同じ語の兄弟。
- 対象
- 英語の辞書の語源欄・借用語データベース・英語史の研究書
- 規模
- 古英語〜現代英語の語彙
- 研究の種類
- 歴史言語学(語源・借用語の調査)
- 確かさ
- ★★★★☆
英語の skirt は、バイキングの言葉(古ノルド語)で「シャツ」を意味した skyrta から。英語生まれの shirt とはもとは同じ語で、short(短い)も仲間。3語とも「切る」という意味の古い言葉にさかのぼる。
ひとことで言うとスカートの語源は、バイキングの言葉で「シャツ」だった!
もくじ
制服の「スカート」に「シャツ」。毎日のように着ている、上と下の服です。
この2つ、英語では shirt と skirt。1文字ちがいでよく似ていますよね。
じつはこれ、もとは同じ単語です。しかも skirt は、バイキングの言葉で「シャツ」という意味でした。日本語の「スカート」の語源をさかのぼると、北欧の「シャツ」にたどり着くのです。
01skirt の語源は、バイキングの「シャツ」
アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)の語源欄を見てみましょう。
- shirt:古英語(1000年ほど前の英語)の scyrte(短い衣服)から
- skirt:古ノルド語(バイキングが話した北欧の言葉)の skyrta(シャツ)から
つまり、英語にはもともと「短い衣服」を指す shirt(古英語では scyrte)がありました。そこへバイキングが、同じ語の北欧版 skyrta(シャツ)を持ちこみます。英語の中に、もとは同じ語が2つ並んだわけです。2つは消し合わずに役割を分け、英語の shirt は上の服、北欧から来た skirt は腰から下の服の名前になりました。
02英語は「シュ」、北欧は「スク」
では、なぜ形がちがうのでしょうか。カギは sk の音です。
英語学者 A・A・プリンスが書いた英語史の研究書『A History of English Phonemes』(ライデン大学出版局、1974年)によると、英語・ドイツ語・北欧の言葉の共通の祖先(ゲルマン語)の sk は、古英語の時代に別の音へ変わりはじめ、のちに「シュ」になりました。今の英語でもこうなっています。
- 古英語の sceap → sheep(羊)
- 古英語の scield → shield(盾)
- 古英語の disc → dish(皿)
ところが、古英語の終わりごろに北欧から借りた単語は、sk の音のままです。研究書が挙げる例は skin(皮ふ)と skill(技術)。
つまり、古英語から続く単語は頭が sh- に、古英語の終わりごろ以降に北欧から入った単語は sk- のまま、という傾向があります。shirt と skirt は、この2つの読み方の差がそのまま残った兄弟なのです。
03「短い」の short も兄弟。根っこは「切る」
AHD の巻末には、英語の単語を大昔の祖先の言葉(印欧祖語)の「根っこ」ごとにまとめた付録があります。そこで shirt と skirt は、sker-(切る)という根っこの仲間に入っています。
- short(短い):古英語の scort から。もとの意味は「切られた」
- shirt:古英語の scyrte から(「切った布」)
- skirt:古ノルド語の skyrta(シャツ)から
この3語は、さらに一つ前の同じゲルマン語の形にさかのぼる、とされています。「切った短い布」がシャツにもスカートにもなり、「切られた」がそのまま short(短い)になったわけです。
同じ「切る」の根っこには、ほかにも身近な単語が並んでいます。shear(羊の毛を刈る)、share(分け合う)、sharp(鋭い)、shard(かけら)。どれも「切る・分ける」とつながる意味です。

04おまけ:英語には“英語版と北欧版”の兄弟がほかにも
shirt と skirt のように、同じ語の英語版と北欧版が両方残った例は、ほかにもあります。AHD の語源欄で確かめました。
- rear と raise:どちらも「育てる・上げる」。rear は古英語の rǣran から、raise は古ノルド語の reisa から。AHD によると、昔は「作物や家畜は raise、子どもは rear」という使い分けのルールがありました。でも実際には1700年代から raise children と言われていて、少なくともアメリカ英語では今これがふつうの言い方です
- ditch と dike:ditch(溝)は古英語の dīc から。dike について AHD は、語源として古英語の dīc と古ノルド語の dīki(溝)の両方を挙げています。今の dike のおもな意味は「堤防」。同じ語から、地面を掘った溝と、土を盛り上げた土手の両方の名前ができました
- church と kirk:スコットランドの言葉(スコッツ語)では、教会を kirk と言います。これは古ノルド語の kirkja から。ところが kirkja のもとは、古英語の cirice(=church)でした。英語の単語が北欧に渡り、形を変えて戻ってきたのです
もう一つ。「切る」の根っこの仲間には、北欧から来た score もあります。もとは古ノルド語の skor で、意味は「刻み目」「数を刻んで記録する棒」、そして「20」。古英語の scoru は「20」の意味でしか記録が残っていません。リンカーンのゲティスバーグ演説は Four score and seven years ago(20×4+7=87年前)で始まります。
05どんでん返し:昔の shirt は「スカート」だった?
ここまで「英語の shirt は上の服、北欧の skirt は下の服」と書いてきました。でも、話はそう単純ではありません。
AHD の付録では、古英語の scyrte に「skirt」という訳をつけています。一方で、shirt の項目では「short garment(短い衣服)」としか書いていません。古英語の scyrte が、上の服だったのか、腰から下をおおう服だったのかは、辞書の説明だけでははっきりしないのです。古ノルド語の skyrta も、北欧では「シャツ」でした。それなのに英語に入ったあと、なぜ skirt が「腰から下の服」の担当になったのか。今回調べた辞書やデータベースには、その理由は書かれていませんでした。
もう一つ。古英語を読むときは、sc をふつう「シュ」と読みます。ところが、プリンスの研究書は、それが中英語より前に「シュ」だったという確かな証拠はないと書いています。古英語の終わりごろに北欧から入った skin や skill が sk のままだったので、当時の英語の sc はもう「スク」ではなかったはずです。かといって「シュ」だった確証もなく、オランダ語の schip(船)のような「スフ」に近い音だったかもしれない、という見方です。
06まとめ
日本語の「スカート」は英語の skirt から来ました。その skirt は、バイキングの言葉で「シャツ」。英語生まれの shirt とはもとは同じ単語で、「短い」の short も同じ「切る」の根っこから生まれた兄弟です。
sh- は英語流、sk- は北欧流。この目安を知っていると、shirt と skirt、そして skin や skill を見る目が少し変わります。1000年前、海を渡ってきたバイキングの言葉が、今もあなたのクローゼットの中に残っているのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe English words "shirt" and "skirt" look alike for a good reason.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japanese, a skirt is called "sukāto," from the English word "skirt." But where does the English word come from? About a thousand years ago, Vikings from northern Europe came to England. In their language, "skyrta" meant "shirt."
English already had a very similar word of its own, "shirt." English ended up keeping both words. Today, a shirt is worn on the top half of the body, and a skirt hangs from the waist.
74 words ・ CEFR A2
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日本語ではスカートを「スカート」と呼び、これは英語の「skirt」から来ています。では、その英語の単語はどこから来たのでしょう。約1000年前、北ヨーロッパのバイキングがイングランドにやって来ました。彼らの言葉では「skyrta」は「シャツ」という意味でした。
英語にはすでに、とてもよく似た自分たちの単語「shirt」がありました。結局、英語は両方の単語を残しました。今ではシャツは体の上半分に着るもので、スカートは腰から下にさがる服です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
But where does the English word come from? と問いかけて、skirt の由来を説明しているので C。
Q2. What did "skyrta" mean in the Vikings' language?
In their language, "skyrta" meant "shirt." とあるので B。
Q3. In the passage, what does "waist" mean?
a skirt hangs from the waist(スカートは腰からさがる)の waist は「腰、ウエスト」なので A。
The English words "shirt" and "skirt" look alike for a good reason. They started out as the same word. "Shirt" comes from Old English, the language spoken in England about a thousand years ago.
"Skirt" was borrowed from Old Norse, the language of the Vikings, who raided England and later settled in the north and east. In Old Norse, "skyrta" meant "shirt." The two words sound different because of an early change in English.
Old English turned the "sk" sound into something close to "sh," as in "sheep" and "dish." Words that came from the Vikings later kept their "sk," like "skin" and "skill." The word "short" belongs to the same family. All three go back to an old root meaning "to cut."
123 words ・ CEFR B1
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英語の「shirt」と「skirt」が似ているのには、ちゃんとした理由がある。もとは同じ単語だったのだ。「shirt」は古英語、つまり約1000年前にイングランドで話されていた言葉から来ている。
「skirt」は、イングランドを襲い、のちにその北部と東部に住みついたバイキングの言葉、古ノルド語から借りた語だ。古ノルド語では「skyrta」は「シャツ」を意味した。2つの語の音が違うのは、英語で早い時期に起きた変化のせいだ。
古英語は「sk」の音を「sheep」や「dish」のように「sh」に近い音に変えた。後になってバイキングから来た単語は、「skin」や「skill」のように「sk」を残した。「short」という単語も同じ仲間だ。3つとも「切る」という意味の古い語根にさかのぼる。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
They started out as the same word. のあと、shirt は古英語、skirt は古ノルド語経由と説明しているので A。
Q2. According to the passage, which word kept its "sk" sound because it came from the Vikings?
Words that came from the Vikings later kept their "sk," like "skin" and "skill." とあるので D。sheep と dish は古英語で sh に変わった例。
Q3. What can be inferred about the word "skirt"?
英語の sk は古英語の時代に sh へ変わり、そのあとバイキングから来た語は sk のまま残った。skirt は sk を残しているので、変化のあとに入ったと推測できる。B。
Old English had a word, "scyrte," for a short piece of clothing, and it became the modern "shirt." When Vikings settled in northern and eastern England in the late ninth century, they brought their own version of the word, "skyrta," which in their language meant "shirt." English took it in as "skirt," and the World Loanword Database lists it as clearly borrowed before 1300.
The gap in spelling reflects a sound change. At the start of a word, Old English "sk" had already moved toward "sh," which is why we say "sheep" and "shield." Norse loans such as "skin" and "skill" came in after that and kept the older sound. What happened next is harder to trace.
The two words ended up naming different parts of an outfit, but the dictionaries used for this article do not say why the borrowed one went to the lower half. Even the Old English word is hard to pin down. One American dictionary glosses "scyrte" as "skirt" in one place and as "short garment" in another. All three words, "shirt," "skirt" and "short," are traced back to a root meaning "to cut."
189 words ・ CEFR B2
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古英語には、短い衣服を表す「scyrte」という語があり、それが今の「shirt」になった。9世紀後半、バイキングがイングランドの北部と東部に住みつくと、彼らはこの語の自分たちの版「skyrta」を持ちこんだ。彼らの言葉ではそれは「シャツ」を意味した。英語はそれを「skirt」として取り入れ、世界借用語データベースはこの語を1300年より前に入ったはっきりした借用語としている。
つづりの違いは、音の変化を映している。語の頭では、古英語の「sk」はすでに「sh」の方向へ変わっていた。だから私たちは「sheep」や「shield」と言う。「skin」や「skill」のような北欧からの借用語は、その後に入ってきたので古い音を残した。
その先に何が起きたのかは、たどるのが難しい。2つの語は服の別の部分を指すようになったが、この記事で使った辞書には、なぜ借りてきたほうが下半身の服になったのかは書かれていない。古英語の語でさえ、意味をはっきり決めにくい。あるアメリカの辞書は、ある箇所では「scyrte」に「skirt」という訳をつけ、別の箇所では「短い衣服」としている。「shirt」「skirt」「short」の3語はどれも、「切る」という意味の語根にさかのぼるとされている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
shirt と skirt が1つの語から分かれた経緯と、なぜ skirt が下半身の服になったか分からない点を述べているので B。
Q2. According to the passage, why do "skin" and "skill" begin with "sk"?
Norse loans such as "skin" and "skill" came in after that and kept the older sound. とあるので C。
Q3. What does the writer suggest about the Old English word "scyrte"?
One American dictionary glosses "scyrte" as "skirt" in one place and as "short garment" in another. から、辞書だけでは意味を決めきれないと示しているので A。
重要単語
- skirtA2名詞・動詞スカート;(動詞で)〜のふちを通る、〜を避けて通るThe path skirts the lake.
動詞では skirt the issue「問題をはぐらかす」もよく使う。名詞にも「へり、ふち」の意味がある。 - borrowA2動詞借りる;(言葉を)借り入れるEnglish has borrowed many words from other languages.
言語学では、よその言語から入った語を loanword(借用語)と呼ぶ。borrow A from B「B から A を借りる」。 - nativeB1形容詞その土地生まれの、もとからある"Shirt" is a native English word.
native speaker「母語話者」、native plant「在来の植物」など。 - garmentB2名詞衣服(1枚の服)A skirt is a garment that hangs from the waist.
clothes より改まった語で、1着ずつ数えられる。the garment industry「衣料産業」。 - settleB1動詞住みつく、定住する;解決するMany Vikings settled in the north of England.
settle in / settle down「落ち着く」。settlement は「入植地、解決」。 - raiseA2動詞上げる;育てるMy grandparents raised five children.
古ノルド語の reisa から。英語生まれの兄弟は rear(育てる)。raise は他動詞、rise(上がる)は自動詞。 - scoreB1名詞得点;(古い言い方で)20"Four score" means eighty.
古ノルド語の skor(刻み目、20)から。scores of 〜「何十もの〜」は今もよく使う。
公式・一次情報をチェック
- ゲティスバーグ演説の原稿(ニコライ版)の書き起こし(米国議会図書館)loc.gov
- raise(American Heritage Dictionary・Usage Note)ahdictionary.com
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日本語の「スカート」は英語の skirt から。その skirt をさかのぼると、バイキングの言葉で「シャツ」を意味した skyrta。英語生まれの shirt とはもとは同じ単語で、「短い」の short も兄弟。sh は英語流、sk は北欧流の読み方だった。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- American Heritage Dictionary「skirt」「shirt」「short」ahdictionary.com
- American Heritage Dictionary, Appendix I: Indo-European Roots「sker-1」ahdictionary.com
- Grant (2009) English vocabulary「skirt」, World Loanword Database(マックス・プランク進化人類学研究所)wold.clld.org
- Schmidt (2009) Japanese vocabulary「sukāto」, World Loanword Databasewold.clld.org
- Prins, A. A. (1974) A History of English Phonemes, 2nd ed., Leiden University Press, pp. 203–04(該当箇所の原文引用を hellog #5626 で確認)user.keio.ac.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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