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「ママ」と mammal(哺乳類)は同じ根っこ。世界の“ママ”が似ているワケと、「ママ」が父を指す言語

「ママ」と mammal(哺乳類)は同じ根っこ。世界の“ママ”が似ているワケと、「ママ」が父を指す言語

読む前に予想してみよう!

「ママ」に似た言葉は、どの言語でも必ず「お母さん」の意味になる

研究カード(どんな研究?)
対象
世界の言語の親族名称・基礎語彙
規模
6,447の単語リスト(4,298言語)ほか
研究の種類
言語比較(大規模データ分析)+文献研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「母」を m、「父」を p や t の音で呼ぶ言語は世界に多い。英語の mammal(哺乳類)も「ママ」と同じ根っこ。でもジョージア語では mama が「父」。

ひとことで言うと「哺乳類(mammal)」と「ママ」は、もとは同じ言葉なんだって!

もくじ
  1. 「ママ」はほぼ世界共通?
  2. なぜ似る? ヒントは赤ちゃんの口
  3. 英語にひそむ「ママ」と「パパ」
  4. どんでん返し:ジョージア語では「ママ」はお父さん
  5. まとめ

英語は mama、フランス語は maman、スワヒリ語も mama、中国語は ma。

国も文化もまるで違うのに、「お母さん」を呼ぶ言葉はなぜかよく似ています。そして英語の mammal(マムル、哺乳類) も、じつは「ママ」と同じ根っこから生まれた言葉です。

一方で、ジョージア語では mama が「お父さん」。今回は、世界の「ママ」と「パパ」をめぐる話です。

01「ママ」はほぼ世界共通?

「母」と「父」の言葉が、関係のない言語どうしでも似ている。この現象は、昔から言語学者の関心を集めてきました。

2021年の論文で、言語学者のゼルディン(Zeldin)は、この研究の流れを整理しています。それによると、

  • 人類学者のマードック(Murdock)は、さまざまな言語から親を表す言葉を1,072語(「母」531語、「父」541語)集めた。この数字は、言語学者ヤコブソン(Jakobson)の1960年の論文「なぜママとパパなのか?」に出てくるもので、ゼルディンはそこから引いている
  • 言語学者クリスタル(Crystal)は『ケンブリッジ言語百科事典』で、「母」を鼻に抜ける音(m や n)で、「父」を口の前のほうで出す音(p や t など)で表す傾向がある、と書いている
  • ゼルディン自身の以前の調査では、86の語族などにまたがる163の言語で、「ママ(母)」の言葉の95.1%が m か n の音だった

日本の子どもも「ママ」「パパ」と言いますね。英語なら mom / mommy、dad / daddy も同じ仲間の音です。

02なぜ似る? ヒントは赤ちゃんの口

なぜ「ママ」はこんなに似ているのでしょう。よく挙げられる説明は、赤ちゃんが最初に出しやすい音だから、というものです。

ゼルディンの論文が引用している言語学者コムリー(Comrie)の説明はこうです。「ma」は、赤ちゃんがはっきり発音できるようになる最初の音節のひとつ。それを大人が「お母さんを呼んでいる」と受け取るから、多くの言語で「母」の言葉に ma が入る。

つまり、赤ちゃんが「ママ」という単語を覚えるというより、赤ちゃんの「ま」を大人が言葉にした、という順番です。

もう1つの手がかりが、2016年に発表されたブラシ(Blasi)たちの研究です。世界の単語リストのうち、人工言語などを除いた4,298の言語(6,447の単語リスト)を調べたところ、「乳房」を表す言葉には m の音が入りやすいことが分かりました。論文は、乳を吸う赤ちゃんの口の形や、飲むときに赤ちゃんが出す音が、この結びつきの理由かもしれないと紹介しています。

m は、唇を閉じたまま、鼻に声を通して出す音です。乳を吸う赤ちゃんも、唇で乳首をくわえています。

03英語にひそむ「ママ」と「パパ」

ここからが英語の話です。アメリカの辞書『アメリカン・ヘリテージ』(AHD)の付録「印欧祖語の語根」には、mā- という語根が載っています。意味は「母」。説明には「世界の多くの言語に見られる、ほぼ普遍的な言葉。くり返しの形をとることが多い」とあります。

この mā- から生まれた英語が、意外なところにあります。

  • mammal(哺乳類):ラテン語 mamma(乳房)から。「乳房の」という意味の言葉から来た
  • mama:同じように赤ちゃん言葉の mā- から、のちに新しく作られた言葉

そして mother も無関係ではありません。AHD によると、mother の祖先にあたる語根 māter- は、赤ちゃん言葉の mā- に、親族を表す語尾 -ter がついたもの。ラテン語の māter(母)から、英語の maternal(母の)、maternity(母であること)も生まれました。

「パパ」も負けていません。AHD は papa を「子どもが父を呼ぶ言葉で、多くの言語に見られるほぼ普遍的な言葉」としています。そしてここから生まれたのが、なんと pope(ローマ教皇)。ギリシャ語の pappās(父)が、ラテン語で「父」、そして司教の呼び名になり、英語の pope になりました。

哺乳類はママの仲間、ローマ教皇はパパの仲間。英語の辞書をたどると、こんなつながりが見えてきます。

英語の mammal(哺乳類)は、ラテン語 mamma(乳房)から。AHD はその元を、赤ちゃん言葉の mā-(母)としている
英語の mammal(哺乳類)は、ラテン語 mamma(乳房)から。AHD はその元を、赤ちゃん言葉の mā-(母)としている

04どんでん返し:ジョージア語では「ママ」はお父さん

ここまで読むと、「ママ=お母さん」は人類共通に思えます。でも、そうとは限りません。

ゼルディンの論文が引用するコムリーとクリスタルによると、ジョージア語では mama が「父」で、「母」は deda。また、クリスタルは、タミル語やテルグ語など南アジアのいくつかの言語では mama が「母方のおじ」を意味する、と書いています。

ゼルディンによると、こうした例はジョージア語だけではありません。アミ語やルカイ語など、オーストロネシア語族の多くの言語で、mama や ama が「父」を意味するそうです。

この例は、「赤ちゃんの『ま』を大人が言葉にした」という先ほどの説明とよく合います。コムリーも、ジョージア語の例を挙げて「赤ちゃんの最初の声には、別の受け取り方もある」と書いています。赤ちゃんの「ま」を「母」と受け取るか「父」と受け取るかは、大人の側が決めている。だから、「ママ」が父になる言語もありうるのです。

似ている理由についても、決着がついたわけではありません。「乳を吸う口の形」説も「最初に出しやすい音」説も、直接確かめるのは難しく、ブラシたちの論文も「〜と考えられてきた」という紹介にとどめています。

05まとめ

世界中の「ママ」が似ているのは、赤ちゃんが最初に出しやすい「ま」の音を、大人が「お母さん」と受け取ってきたから――というのが有力な説明です。英語の mammal(哺乳類)や mother、そしてパパの仲間の pope(ローマ教皇)にも、その赤ちゃん言葉の名残があります。

でも、ジョージア語では mama がお父さん。言葉を決めているのは赤ちゃんではなく、それを聞く大人のほうなのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWords for "mother" often have an "m" sound, even in languages that are not related at all. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Words for "mother" often have an "m" sound, even in languages that are not related at all. English has "mama," French has "maman," and Swahili has "mama." Words for "father" often use sounds like "p" or "t." One common explanation points to babies. "Ma" is one of the first syllables a baby can say clearly, and parents take it as a call for the mother.

A 2016 study of more than 6,000 word lists found that words for "breast" are also likely to contain an "m." English shows this link too. The word "mammal" comes from Latin "mamma," or "breast," which goes back to the same baby-talk root as "mama."

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「母」を表す言葉は、互いにまったく関係のない言語どうしでも、m の音を含むことが多い。英語には mama、フランス語には maman、スワヒリ語には mama がある。「父」を表す言葉は p や t のような音を使うことが多い。よくある説明は、赤ちゃんに理由を求めるものだ。「ma」は赤ちゃんがはっきり言える最初の音節のひとつで、親はそれを母親を呼ぶ声として受け取るのだ。

2016年に6,000を超える単語リストを調べた研究では、「乳房」を表す言葉にも m が入りやすいことが分かった。英語にもこのつながりが見られる。mammal(哺乳類)という語はラテン語の mamma(乳房)から来ており、それは mama と同じ赤ちゃん言葉の語根にさかのぼる。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What did the 2016 study find?

Q3. Why does the writer mention the word "mammal"?

重要単語

  • mammalB1
    名詞哺乳類Whales are mammals, not fish. ラテン語 mamma(乳房)から。「お乳で子を育てる動物」と覚えると忘れにくい。
  • maternalC1
    形容詞母の;母方のMy maternal grandmother lives in Nagoya. ラテン語 māter(母)から。反対は paternal(父の、父方の)。maternity leave は「産休」。
  • babbleC1
    動詞(赤ちゃんが)意味のない声を出す;ぺちゃくちゃしゃべるThe baby babbled "ba-ba-ba" all morning. 名詞 babbling は「喃語(なんご)」。赤ちゃんの「ばぶばぶ」に近い響きの語。
  • syllableB2
    名詞音節"Mama" has two syllables. 母音を中心にした音のひとかたまり。英語のアクセントは音節単位で置かれる。
  • universalB2
    形容詞すべてに共通の、普遍的なSmiling is almost universal. universe(宇宙、全体)の形容詞。a universal language「世界共通語」。
  • popeB2
    名詞ローマ教皇The Pope gave a speech in Rome. ギリシャ語 pappās(父)から。papa と同じ根っこ。特定の人を指すときは the Pope と大文字。
  • nasalC1
    形容詞鼻の;鼻にかかった(音)M and n are nasal sounds. nose(鼻)と同じ語源。a nasal voice は「鼻声」。
英語の mammal(哺乳類)は、ラテン語 mamma(乳房)から。その元は赤ちゃん言葉の「マ」で、mother も同じ根っこ。「母」を m の音で呼ぶ言語は世界中に多いが、ジョージア語では mama が「お父さん」。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Blasi, Wichmann, Hammarström, Stadler, Christiansen (2016) Sound–meaning association biases evidenced across thousands of languages, PNAS 113(39)doi.org
  2. Zeldin (2021) R. Jakobson revisited or why mama and…mama?, Philology and Culture (1)doi.org
  3. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins)Appendix I: Indo-European Roots(mā- 2・māter-・papa)ahdictionary.com
  4. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins)"pope"(語源欄)ahdictionary.com

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