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丸い形は「ブーバ」、とがった形は「キキ」。25言語917人の約7割がそう答えた

丸い形は「ブーバ」、とがった形は「キキ」。25言語917人の約7割がそう答えた

読む前に予想してみよう!

丸い形を「ブーバ」と呼びたくなるのは、アルファベットの B が丸く、K がとがっているからにすぎない

研究カード(どんな研究?)
対象
25言語(9語族・10種類の文字)の話し手917人のオンライン実験と、先行研究のメタ分析など
規模
917人(2018年の調査)
研究の種類
実験(2つの形からどちらかを選ぶ)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

丸い形ととがった形、どちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」か。25言語917人に聞くと、約7割が丸=ブーバ、とがった形=キキと答えた。アルファベットの形のせいだけではない。ただし、この結びつきが見られなかった言語もある。

ひとことで言うと「ブーバ」は丸っこい、「キキ」はとげとげ。世界の多くの人がそう感じる!

もくじ
  1. よく挙げられる始まりは、1929年の「タケテ」
  2. 25の言語、917人に同じテスト
  3. 「Bが丸くてKがとがっているから」では?
  4. ネパールの山の村では、答えが半々に割れた
  5. なぜ「ブーバ」は丸いのか
  6. もっと知りたい人へ
  7. まとめ
  8. よくある質問

ふわっと丸い形と、ぎざぎざにとがった形。片方の名前が「ブーバ」、もう片方が「キキ」だとしたら、どちらがどちらだと思いますか?

たぶん、丸いほうが「ブーバ」、とがったほうが「キキ」と答えたでしょう。どちらも、どの言語にもない作り言葉です。それなのに、25の言語を話す917人に聞いたところ、約7割が同じ組み合わせを選びました。

「言葉の音と意味のあいだに、決まったつながりはない」。言語学の入門書でよく出てくるこの考えに、疑問を投げかける現象です。

01よく挙げられる始まりは、1929年の「タケテ」

この現象の始まりとしてよく挙げられるのが、心理学者ヴォルフガング・ケーラーです。1929年の著書『ゲシュタルト心理学』で、丸い線の図ととがった線の図を示し、作り言葉の「タケテ(takete)」と、丸い図向けのもう1つの作り言葉のどちらがどちらの名前かを問いかけました。1947年の改訂版では、丸いほうの言葉を「マルマ(maluma)」にしています。ケーラーは、たいていの人はためらわずに答える、と書いただけで、くわしい人数や割合は示していません。

2001年、神経科学者のラマチャンドランとハバードが、同じことを「ブーバ(bouba)」と「キキ(kiki)」でやってみせ、この組み合わせで広く知られるようになりました。2人は、こうした音と形の自然な結びつきが、ことばの起源を考える手がかりになるのではないかと考えました。

いまでは「ブーバ・キキ効果」と呼ばれます。言語学では、音そのものが意味やイメージを感じさせることを音象徴(おんしょうちょう)と言い、この効果はその代表例です。世界の言語の単語に音の偏りがあるかを調べた研究は、本館の記事で紹介しています。

0225の言語、917人に同じテスト

本当に世界中で同じなのか。2022年、ドイツ・ベルリンのライプニッツ一般言語学センターのアレクサンドラ・チフィエク(Ćwiek)さんたちが、25の言語の話し手を対象にしたテストを報告しました。論文は、この結果を「ブーバ・キキ効果が文化や文字をこえて起きることの、これまでで最も強い証拠」と位置づけています。

25言語のうち17言語では、50%をはっきり上回りました。一方、ルーマニア語・中国語(普通話)・トルコ語の3つは、一致した人の割合が50%を下回りました(ただし、偶然の範囲とも区別できない値です)。論文は理由を確かめていませんが、ルーマニア語については、小さな子どもに使う「けが、傷」という意味の言葉 bubă が「ブーバ」に似ているので、痛い・とがったイメージが勝ったのかもしれない、と書いています。

ブーバとキキでは、ブーバのほうが効果が強く出ました。1回目の答えだけで比べると、「ブーバを聞いて丸い形」を選んだ割合は、「キキを聞いてとがった形」を選んだ割合より高かったのです。

03「Bが丸くてKがとがっているから」では?

ここで、だれもが思いつく疑問があります。アルファベットの B はふくらんだ形、K はとがった形です。ローマ字を知っている人は、文字の形につられているだけではないか。

この疑いには根拠もあります。チフィエクさんたちの論文によると、英語話者を調べた2017年の研究では、書いた言葉を見せたときは文字のとがり具合が答えを決め、音で聞かせたときも、音そのものに加えて文字の形が影響していました。また2017年の別の研究では、知らない文字を2つ見せて、どちらが「イー」でどちらが「ウー」の音かを当ててもらうと、あてずっぽうより高い割合で当たりました(56種類の文字を使った研究)。文字の形そのものにも、音のイメージがこめられていることがあるのです。

では、25言語の実験ではどうだったか。

  • ローマ字を主に使う言語の話し手は平均75%、それ以外の文字の話し手は63%。差はあったが、統計的にははっきりしない弱い傾向だった
  • ローマ字を使わない言語の話し手のうち、ローマ字を使う外国語を話せる人とそうでない人の間に、違いは見つからなかった
  • 別の参加者に、9種類の文字で書いた「ブーバ」「キキ」を見た目だけで形と組み合わせてもらった。文字ごとの「丸さ・とがり」の差は、本番の答えとは関係が見つからなかった

ローマ字を使わない言語の話し手でも、平均63%が「丸=ブーバ、とがった=キキ」と答えた。文字の影響はあっても、それだけでは説明できない、というのが論文の結論です。ただし、参加者の86%は外国語を話し、80%は英語を話せました。インターネットの調査なので、ローマ字にまったくふれたことのない人はほとんどいなかったはずだ、と論文自身も断っています。

文字を使えない人たちの研究も、同じ方向を指しています。

  • 幼いころから目の見えない人(2019年、イタリアとベルギーの研究):手で丸い形ととがった形にさわる課題で、目の見える人と同じように強い結びつきが出た。目の見える人では文字の形の影響もあったが、点字を使う目の見えない人には、その影響が見られなかった
  • 2歳半の子ども(2006年の研究):2歳半の子20人と大人20人に4組の形と言葉を見せると、どちらも、くちびるを丸める母音の作り言葉を丸い形に、丸めない母音の作り言葉をとがった形に結びつけた。年齢による差はなかった
  • 日本の11か月の赤ちゃん(2015年、浅野倫子さん・今井むつみさんらの研究):丸い形を見せてから「もま」、とがった形のあとに「きぴ」を聞かせるなど、合う組み合わせと合わない組み合わせで脳波を比べた。分析できた19人では、合わない組み合わせのときに、大人が意味のずれに気づいたときと似た脳の反応が出た

04ネパールの山の村では、答えが半々に割れた

ところが、この効果が出なかった例もあります。

2017年、シンガポールの南洋理工大学の心理学者スージー・スタイルズさんと、言語学者ローレン・ゴーンさん(ロンドン大学SOASなど)は、自分たちの「失敗」をあえて論文にしました。ネパールのヒマラヤに住む、シュバ語(Syuba)の話し手24人に「キキ」と「ブブ」を聞かせ、フェルトを貼った丸い形ととがった形の板から選んでもらったのです。結果は、期待どおりの答えが11人、逆が13人。ほぼ半々でした。

それまで、言葉の発達に問題のない人たちでこの効果が出なかった報告は、1975年のパプアニューギニアの研究だけでした。フンジャラ語(Hunjara)の方言を話す20人に「マルマ」と「タケテ」を聞かせたところ、答えは9対11に割れました。

2人は、2つの失敗に共通点を見つけました。テストの言葉が、その言語の単語らしくないのです。

  • フンジャラ語には、「マルマ」の l の音も、「タケテ」の強い息をともなう t の音もない
  • シュバ語では、「キキ」の2つ目の k のような、息の強い k の音は単語の途中に来ない。「ブブ」のように2音節の単語が u で終わることもない。高低の調子も、ふだんの単語とは違う形になった

では、文字を使わない暮らしをしているナミビアのヒンバの人たちの実験(2013年)では、なぜ効果が出たのか。ヒンバの人たちの言語には b と p の区別がないのに、です。2人は、そちらの実験では参加者が言葉を自分で声に出してから選んでいた点に注目しました。外国の言葉を口にすると、人は自分の言語の音に置きかえて発音しがちです。2人が出す例は、日本語と英語です。日本語には「トゥ」の組み合わせがないので、英語の tuna は「ツナ」になる。英語には ts で始まる単語がないので、日本語の「津波」は英語で「スナミ」のように発音される。こうして置きかえられた言葉は、その言語の単語らしく聞こえるようになります。シュバ語とフンジャラ語の実験では、参加者は言葉を声に出すようには言われていませんでした。2人は、この手順の違いも結果を分けたのではないか、と考えています。

2人が、これまでの研究のうち単語らしい言葉を使った13の実験データを合わせて分析すると、期待どおりの答えは平均89%(およそ558人分)でした。ただし2人は、うまくいかなかった実験が発表されずに眠っている可能性もあると書いています。

ネパールの村での実験では、フェルトを貼った板を使った。期待どおりに答えた人は半分ほどだった
ネパールの村での実験では、フェルトを貼った板を使った。期待どおりに答えた人は半分ほどだった

05なぜ「ブーバ」は丸いのか

では、音のどこが「丸さ」や「とがり」を感じさせるのでしょう。これはまだ確かめられていません。チフィエクさんたちは、2つの言葉しか使っていないので推測しかできない、と断ったうえで、こう考えています。

  • 「ブーバ」は、b・u・b・a のすべてで声帯がふるえ続ける。音の途切れがなく、全体に低めの響きになる。u はくちびるを丸める母音で、b もくちびるで出す音
  • 「キキ」は、声帯がふるえる母音と、ふるえない k が交互に来る。音が途切れ途切れになる

くちびるを丸めて、途切れずになめらかに出す音が「丸」、途切れて鋭い音が「とがった形」に結びつくのではないか、という考えです。ただし、人はそもそも曲線の形を好む傾向がある、という別の説明もありうると論文は書いています。

06もっと知りたい人へ

  • 音象徴(sound symbolism)、ブーバ・キキ効果(bouba/kiki effect)、マルマ・タケテ(maluma/takete)、感覚間対応(crossmodal correspondence)、言語記号の恣意性(arbitrariness of the sign)、類像性(iconicity)
  • Wolfgang Köhler (1947) Gestalt Psychology. Liveright.
  • V. S. Ramachandran & E. M. Hubbard (2001) "Synaesthesia — a window into perception, thought and language." Journal of Consciousness Studies 8(12).
  • Aleksandra Ćwiek et al. (2022) "The bouba/kiki effect is robust across cultures and writing systems." Philosophical Transactions of the Royal Society B 377.
  • Suzy J. Styles & Lauren Gawne (2017) "When does maluma/takete fail?" i-Perception 8(4).

07まとめ

「ブーバ」と「キキ」。意味のない2つの言葉なのに、言語も文字も違う多くの人が、同じ形を選びました。文字を知らない赤ちゃんや、目の見えない人にも似た傾向があります。

それでも、どこでも必ず起きるわけではありません。その言語の単語らしくない音だと、効果は消えてしまうこともあります。音と形の結びつきは、人に共通する感覚と、それぞれの言語の音のしくみの両方の上に成り立っているようです。

よくある質問

ブーバ・キキ効果とは何ですか?

丸い形を「ブーバ」、とがった形を「キキ」と結びつける人が多い、という現象です。どちらも意味のない作り言葉なのに、2022年の研究では25の言語を話す917人の約7割が、この組み合わせを選びました。

なぜ「ブーバ」は丸く感じるのですか?

まだ確かめられていません。研究者の推測は、ブーバは声帯がふるえ続けるなめらかな音で、くちびるを丸める u や、くちびるで出す b を使うから丸、キキは途切れ途切れの鋭い音だからとがった形、というものです。人が曲線の形を好むという別の説明もありえます。

ブーバ・キキ効果は世界中で起きるのですか?

多くの言語で起きますが、どこでも必ずではありません。25言語の調査では17言語で一致した人が50%をはっきり上回りましたが、ルーマニア語・中国語(普通話)・トルコ語は50%を下回り、ネパールのシュバ語の話し手24人では答えが半々に割れました。

アルファベットのBが丸く、Kがとがっているからではないのですか?

文字の影響はあっても、それだけでは説明できない、と2022年の論文は結論づけています。ローマ字を使わない言語の話し手でも平均63%が同じ組み合わせを選び、点字を使う目の見えない人や2歳半の子どもにも似た傾向が出ました。

日本語の話し手でもブーバ・キキ効果は出ますか?

2022年の25言語の調査には日本語の話し手55人が参加しています。また2015年の研究では、日本の11か月の赤ちゃん19人で、形と言葉が合わない組み合わせのときに、大人が意味のずれに気づいたときと似た脳の反応が出ました。

ブーバ・キキ効果はいつ、だれが見つけたのですか?

始まりとしてよく挙げられるのは、心理学者ケーラーの1929年の本で、作り言葉「タケテ」を使っていました。2001年に神経科学者のラマチャンドランとハバードが「ブーバ」「キキ」で示し、この組み合わせで広く知られるようになりました。

音象徴とは何ですか?

音そのものが、意味やイメージを感じさせることです。ブーバ・キキ効果はその代表例です。「言葉の音と意味のあいだに決まったつながりはない」という言語学の考えに、疑問を投げかける現象とされています。

効果が出なかったのはなぜですか?

テストの言葉が、その言語の単語らしくなかったからではないか、と研究者は考えています。ネパールのシュバ語では、「キキ」の2つ目の k のような息の強い k の音は単語の途中に来ず、2音節の単語が「ブブ」のように u で終わることもありません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1929, the psychologist Wolfgang Köhler showed people two drawings, one with curved lines and one with… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1929, the psychologist Wolfgang Köhler showed people two drawings, one with curved lines and one with sharp points, and asked them to match each drawing with a made-up word. Most people gave the same answer. Today this is known as the bouba/kiki effect. A team led by researchers in Berlin tested it online with 917 people who speak 25 languages and use 10 different writing systems.

Each person heard bouba and kiki and chose a shape for each word. About 72 percent matched both words in the expected way. Some people think the effect comes from letters, because B looks round and K looks sharp. But among speakers of languages that do not use the Roman alphabet, 63 percent still matched both words in the expected way.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1929年、心理学者のヴォルフガング・ケーラーは、曲線でできた絵ととがった角のある絵の2枚を人々に見せ、それぞれの絵を作り言葉と組み合わせるよう頼んだ。ほとんどの人が同じ答えをした。今日、これはブーバ・キキ効果として知られている。ベルリンの研究者が率いるチームは、25の言語を話し、10種類の文字を使う917人を対象に、オンラインでこれを試した。

それぞれの人がブーバとキキを聞き、それぞれの言葉に合う形を選んだ。約72%が、両方の言葉を期待どおりに組み合わせた。B は丸く見え、K はとがって見えるので、この効果は文字から来ていると考える人もいる。しかし、ローマ字を使わない言語の話し手でも、63%が両方の言葉を期待どおりに組み合わせた。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the research team do?

Q2. What percentage of the people matched both words in the expected way?

Q3. Why does the writer mention the 63 percent result?

重要単語

  • shapeA2
    名詞形The cookie was in the shape of a star. in good shape で「調子がよい」。動詞で「形づくる」の意味もある。
  • roundA2
    形容詞丸いWe sat at a round table. 名詞では「(試合の)1回戦」、前置詞では「~のまわりに」。
  • spikyB2
    形容詞とげとげした、とがったThe fish had a spiky fin on its back. spike(とげ、くぎ)+-y。髪の「ツンツン頭」も spiky hair。
  • matchB1
    動詞組み合わせる、一致させるMatch each word with its picture. match A with B で「AをBと組み合わせる」。テストの「線で結びなさい」の指示によく出る。
  • scriptB2
    名詞文字、文字体系Japanese uses more than one script. 「台本」の意味もある。the Roman script は「ローマ字」。
  • nonsense wordB2
    名詞意味のない作り言葉"Bouba" is a nonsense word. 研究では made-up word、pseudoword とも言う。nonsense だけなら「ばかげたこと」。
  • arbitraryC1
    形容詞恣意的な、決まった理由がないThe order of the names on the list was arbitrary. 言語学では「音と意味の結びつきに必然性がない」ことを言う。入試の評論文でも出る。
丸い形ととがった形、どちらが「ブーバ」? 25言語917人に聞くと、「丸=ブーバ、とがった=キキ」と答えた人が約7割。日本の11か月の赤ちゃんの脳も、合わない組み合わせに反応した。ただしネパールの山の村の実験では、答えがほぼ半々に割れた。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Ćwiek A., Fuchs S., Draxler C. et al. (2022) The bouba/kiki effect is robust across cultures and writing systems, Philosophical Transactions of the Royal Society B 377(1841)doi.org
  2. Styles S.J., Gawne L. (2017) When Does Maluma/Takete Fail? Two Key Failures and a Meta-Analysis Suggest That Phonology and Phonotactics Matter, i-Perception 8(4)doi.org
  3. Maurer D., Pathman T., Mondloch C.J. (2006) The shape of boubas: sound-shape correspondences in toddlers and adults, Developmental Science 9(3)doi.org
  4. Asano M., Imai M., Kita S. et al. (2015) Sound symbolism scaffolds language development in preverbal infants, Cortex 63doi.org
  5. Bottini R., Barilari M., Collignon O. (2019) Sound symbolism in sighted and blind. The role of vision and orthography in sound-shape correspondences, Cognition 185doi.org
  6. Turoman N., Styles S.J. (2017) Glyph guessing for 'oo' and 'ee': spatial frequency information in sound symbolic matching for ancient and unfamiliar scripts, Royal Society Open Science 4(9)doi.org
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