「@」の呼び名はイタリアで「カタツムリ」。「アットマーク」は日本語の言い方

読む前に予想してみよう!
「アットマーク」は、英語圏でも@の呼び名としてふつうに使われている
デジタル大辞泉は、「@」を「マーク」をつけて「アットマーク」と呼ぶのは日本語での言い方だと書いている。英語では at sign や at symbol と言う。
- 対象
- 8言語の辞書と、美術館の学芸員の解説
- 規模
- 辞書9種+Unicodeのコード表+MoMAの記事
- 研究の種類
- 辞書の記述の比較・文献
- 確かさ
- ★★★★☆
「@」はイタリア語でカタツムリ、韓国語で巻き貝、デンマーク語で「ゾウの鼻のa」と辞書にある。「アットマーク」は日本語の言い方。@はメールより前、商人が単価を書く記号だった。
ひとことで言うと「@」は国によってカタツムリや巻き貝、ゾウの鼻にたとえられている!
もくじ
メールアドレスにも、SNSの名前にも出てくる「@」。日本ではふつう「アットマーク」と呼びます。
ところがイタリアでは「カタツムリ」、韓国では「巻き貝」、デンマークでは「ゾウの鼻のa」。冗談ではなく、それぞれの国の辞書にそう書いてあります。
そして、英語っぽく聞こえる「アットマーク」のほうは、小学館の『デジタル大辞泉』によると、「マーク」をつけて呼ぶのは日本語での言い方。英語ではふつう at sign と呼びます。
01辞書に載っている「動物の@」
@の形は、小文字の a のまわりを線がぐるりと回っています。このうずまきを、各国の人は身近な生き物に見立てました。辞書で一つずつ確かめてみます。
カタツムリと巻き貝は「うずまきの殻」、ゾウの鼻とサルのしっぽは「くるりと巻いた長いもの」。どれも、a から外に回り込む線の形に目をつけています。
イタリア語の chiocciola は、らせん階段(scala a chiocciola)の「らせん」にも使われる語です。デンマーク語の辞書の例文には、デンマーク放送協会(DR)の子ども向けラジオ番組(1996年)がメールアドレスを読み上げるとき「snabel-a」と言う場面が載っています。メールアドレスを声に出すときにも、この呼び名が使われているのです。

02英語では「at sign」。Unicode での名前は COMMERCIAL AT
では英語では何と呼ぶのでしょう。Cambridge Dictionary では at sign(または at symbol)。メールアドレスを読み上げるときは、ふつう at とだけ言います。
- My email is taro at example dot com.(私のメールは [email protected] です)
- Your username starts with the at sign.(ユーザー名は@で始まります)
文字の国際規格 Unicode のコード表では、@の正式名は COMMERCIAL AT(商業用の at)。別名として at sign と並んで、arroba(スペインの古い重さの単位)が挙げられています。
「商業用」という名前には理由があります。『デジタル大辞泉』の「アット(@)」の項目は、1番目の意味を「単価で、…につきの意を表す記号。単価記号」とし、メールの区切りの意味は2番目です。英語の 5 pencils @ 30 yen(鉛筆5本、1本30円で)のように、「1つ〜の値段で」を表す記号として使われてきました。
03スペイン語の arroba は「重さの単位」
スペイン語の名前 arroba は、動物ではありません。スペイン王立アカデミー(RAE)の辞書によると、語源はアラビア語の「4分の1」。1番目の意味は「11.502kgにあたる重さ」で、液体の量の単位の意味もあり、@記号の意味は最後の5番目に出てきます。
重さの単位の名前が、なぜ@の呼び名になったのか。はっきりした答えは今回の資料にはありませんが、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員パオラ・アントネッリさんは、@が商売の記号だった歴史をこう紹介しています。
オランダ語の辞書 ANW も、@はもともと請求書で使われていた記号で、今はおもにメールアドレスに使う、と説明しています。メールの記号になったのは、長い歴史のうち最後の50年あまりのことです。
04中国はネズミ、フィンランドは猫?
アントネッリさんの記事は、各国のあだ名も紹介しています。ドイツ人・ポーランド人・南アフリカの人は「サルのしっぽ」、中国では小さなネズミ、イタリアとフランスではカタツムリ、ロシアでは犬。フィンランドでは「ニャーの記号」と呼び、丸まって眠る猫に見立てる、といいます。
このうち辞書で確かめられたのは、イタリア語のカタツムリだけです。ほかの呼び名は各国の辞書では確かめていません。たとえばドイツ語の辞書 Duden に載っているのは、上で見た「しがみつくサル」(Klammeraffe)で、「サルのしっぽ」ではありません。美術館の学芸員による紹介として読んでください。
05どんでん返し:動物の名前は「正式名」でも「永遠」でもない
動物の名前は、どこの国でも唯一の呼び名というわけではありません。
ドイツ語の Klammeraffe には、Duden で「コンピューター業界の俗語」で「古びつつある」という注意書きがついています。オランダ語の ANW も、apenstaartje の言い換えとして at-teken(at の記号)や英語そのままの at-sign を挙げています。デンマーク語の snabel-a も、辞書が確かめた例は1984年からで、比較的新しい名前です。
@がどうやって生まれたのかも、はっきりしていません。デンマーク語の辞書は「ラテン語の ad(〜のところに)の文字をつなげたもの」と書きます。一方、MoMAの記事は、6〜7世紀に ad をひと筆で書いたのが始まりだという説を「一部の言語学者はそう考えている」と紹介するだけです。『デジタル大辞泉』も、アットの語源に英語の at とラテン語の ad を並べています。
06まとめ
同じ「@」でも、イタリアではカタツムリ、韓国では巻き貝、デンマークではゾウの鼻、オランダではサルのしっぽ。日本語の「アットマーク」も、英語ではなく日本語の言い方でした。
メールより前は、商人が帳簿や請求書に書く「1つ〜の値段で」の記号でした。キーボードの隅で余っていた商売の記号を、1971年にメールが拾い上げた。そう思って次の@を打つと、うずまきが少し違って見えるかもしれません。
よくある質問
アットマーク(@)は英語で何と言いますか?
at sign(または at symbol)です。メールアドレスを読み上げるときは、taro at example dot com のように at とだけ言います。Unicode での正式名は COMMERCIAL AT(商業用の at)です。
「アットマーク」は英語ではないのですか?
「マーク」をつけて呼ぶのは日本語での言い方です。小学館の『デジタル大辞泉』がそう説明していて、英語ではふつう at sign と呼びます。英語で話すときは at sign と言いましょう。
イタリアでは@を何と呼びますか?
chiocciola(キオッチョラ)、カタツムリです。イタリア語の辞書 Treccani に、形が似ていることから記号@の呼び名になったと載っています。chiocciolina(小さなカタツムリ)とも言います。
ほかの国では@を何と呼びますか?
各国の辞書では、韓国語は골뱅이(コルベンイ、巻き貝)、デンマーク語は snabel-a(ゾウの鼻のa)、オランダ語は apenstaartje(サルの小さなしっぽ)、ドイツ語は Klammeraffe(しがみつくサル)、スペイン語は arroba(重さの単位)です。
@はメールより前は何に使われていたのですか?
商人が帳簿や請求書に書く、「1つ〜の値段で」を表す単価の記号です。『デジタル大辞泉』の「アット(@)」は1番目の意味を単価記号とし、メールの区切りは2番目です。英語の 5 pencils @ 30 yen は「鉛筆5本、1本30円で」という意味です。
なぜメールアドレスに@が使われるのですか?
1971年、技術者レイ・トムリンソンがユーザー名と機械の名前の区切りに選んだからです。MoMAの記事によると、「その場所に(at)いる」という意味が合ううえ、キーボードにあるのにほとんど誰も使っていなかったのが理由です。
@はどうやって生まれた記号ですか?
はっきりしていません。デンマーク語の辞書はラテン語の ad(〜のところに)の文字をつなげたものと書き、MoMAの記事は ad をひと筆で書いたのが始まりという説を「一部の言語学者はそう考えている」と紹介するだけです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLong before email, the @ sign was a tool for business.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
People all over the world type the @ sign every day, but they give it different names. In Italy, it is called "chiocciola," which means "snail." In Korea, people call it "golbaengi," a kind of sea snail.
In Denmark, it is "snabel-a," or "elephant's trunk a." The line around the small "a" looks like a shell or a long nose. Japanese people say "atto maaku," but English speakers say "at sign."
71 words ・ CEFR A2
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世界中の人が毎日@を打っていますが、呼び名はさまざまです。イタリアでは「chiocciola」と呼ばれ、「カタツムリ」という意味です。韓国では「コルベンイ」と呼び、巻き貝の一種のことです。
デンマークでは「snabel-a」、つまり「ゾウの鼻のa」です。小さな「a」のまわりの線が、貝がらや長い鼻のように見えるのです。日本人は「アットマーク」と言いますが、英語を話す人は「at sign」と言います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
@が国によって違う名前で呼ばれている話なので B。
Q2. What does the Italian word "chiocciola" mean?
"chiocciola," which means "snail" とあるので C。
Q3. In the passage, what is an elephant's "trunk"?
「ゾウの鼻のa」の説明のあとに a long nose とあるので、trunk はゾウの長い鼻。A。
Long before email, the @ sign was a tool for business. Merchants wrote it on bills to mean "at the price of," so "3 @ $2" meant three items at two dollars each. In 1971, an engineer named Ray Tomlinson needed a mark to separate a user's name from the name of a computer. He picked @ because it meant "at" and almost nobody used it.
Today, dictionaries in many countries list animal names for it. Italians call it a snail, Koreans call it a kind of sea snail, and the Dutch call it a little monkey's tail. In Spanish, it is called "arroba," which is also the name of an old unit of weight. In English, people usually call it the "at sign," not the "at mark."
128 words ・ CEFR B1
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メールのずっと前から、@は商売の道具だった。商人は請求書に「〜の値段で」という意味でこれを書き、「3 @ $2」は1個2ドルの品が3個という意味だった。1971年、レイ・トムリンソンという技術者は、利用者の名前とコンピューターの名前を区切る記号を必要としていた。彼が@を選んだのは、「〜に(at)」という意味があり、ほとんど誰も使っていなかったからだ。
今日、多くの国の辞書がこの記号に動物の名前を載せている。イタリア人はカタツムリ、韓国人は巻き貝の一種、オランダ人はサルの小さなしっぽと呼ぶ。スペイン語では「arroba」と呼ばれ、これは古い重さの単位の名前でもある。英語ではふつう「at mark(アットマーク)」ではなく「at sign」と呼ぶ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
商売の記号だった@がメールに使われ、各国でさまざまな名前を持つようになった話なので A。
Q2. Why did Ray Tomlinson choose the @ sign?
He picked @ because it meant "at" and almost nobody used it とあるので C。
Q3. What can be inferred about the Spanish name for @?
arroba は an old unit of weight(古い重さの単位)の名前とあるので、動物にちなんだ名前ではないと推測できる。B。
Ask people in different countries what they call @, and you may hear about animals. Italian dictionaries list "chiocciola," a snail. The Korean national dictionary gives "golbaengi," a sea snail, and says the name copies the shape. Danish has "snabel-a," the "elephant's trunk a," recorded since 1984, and Dutch has "apenstaartje," a little monkey's tail. These names are not fixed forever, though.
The German Duden labels "Klammeraffe," a clinging monkey, as computer slang that is going out of date, and Dutch speakers can also simply say "at-teken." The Japanese "atto maaku" sounds English, but a major Japanese dictionary notes that adding "mark" is the Japanese way of naming it. The sign itself is much older than any of these names.
A curator at the Museum of Modern Art in New York places it in sixteenth-century Venetian trade, where it stood for a clay jar used as a unit of measure, and her article shows it in a merchant's letter from 1536. Where the shape first came from is less certain. Some linguists think it began as a quick way of writing the Latin word "ad," but the curator offers that only as one theory.
194 words ・ CEFR B2
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いろいろな国の人に@を何と呼ぶかたずねると、動物の話が出てくるかもしれない。イタリア語の辞書には「chiocciola」(カタツムリ)が載っている。韓国の国の辞書は「コルベンイ」(巻き貝の一種)を挙げ、その名は形をまねたものだと書いている。デンマーク語には1984年から記録のある「snabel-a」(ゾウの鼻のa)があり、オランダ語には「apenstaartje」(サルの小さなしっぽ)がある。ただし、これらの名前がずっと変わらないわけではない。ドイツの Duden は「Klammeraffe」(しがみつくサル)を、古くなりつつあるコンピューターの俗語としている。
オランダ語を話す人は、単に「at-teken」と言うこともできる。日本語の「アットマーク」は英語に聞こえるが、日本の主要な辞書は、「マーク」をつけるのは日本語での呼び方だと記している。記号そのものは、これらのどの名前よりもずっと古い。
ニューヨーク近代美術館の学芸員は、@を16世紀のベネチアの交易の中に位置づけている。そこでは量の単位として使われた素焼きのつぼを表しており、彼女の記事は1536年の商人の手紙に書かれた@を示している。その形がもともとどこから来たのかは、それほどはっきりしていない。一部の言語学者は、ラテン語の「ad」を素早く書く方法として始まったと考えているが、学芸員はそれを一つの説として紹介しているだけだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
各国の動物の呼び名と、16世紀にさかのぼる@の歴史を述べているので A。
Q2. According to the passage, what does Duden say about "Klammeraffe"?
labels "Klammeraffe" ... as computer slang that is going out of date とあるので B。1984年はデンマーク語の snabel-a。
Q3. What does the writer suggest about the idea that @ came from the Latin "ad"?
Where the shape first came from is less certain、the curator offers that only as one theory とあるので、可能性はあるが証明されていない、という意味。C。
重要単語
- symbolB1名詞記号、しるし、象徴The @ symbol is on every keyboard.
the at symbol / the at sign はどちらも@のこと。「象徴」の意味では a symbol of peace のように使う。 - snailA2名詞カタツムリA snail carries its shell on its back.
イタリア語では@を chiocciola(カタツムリ)と呼ぶ。at a snail's pace は「のろのろと」。 - trunkB1名詞(ゾウの)鼻;木の幹;(車の)トランクThe elephant picked up the apple with its trunk.
デンマーク語の snabel-a は「ゾウの鼻のa」。nose ではなく trunk を使うのがポイント。 - tailA2名詞しっぽThe monkey wrapped its tail around a branch.
オランダ語では@を「サルの小さなしっぽ」と呼ぶ。同じ発音の tale(お話)と区別。 - merchantB2名詞商人、貿易商Merchants in Venice traded wine and grain.
シェイクスピアの The Merchant of Venice(ベニスの商人)でおなじみ。merchandise は「商品」。 - unitB1名詞単位The kilogram is a unit of weight.
a unit of weight(重さの単位)、a unit of measure(量の単位)。スペイン語の arroba はもともと重さの単位。 - separateB1動詞分ける、区切るThe @ separates your name from the rest of the address.
separate A from B「AをBと分ける」。形容詞(別々の)では発音が「セパレット」に近くなる。
公式・一次情報をチェック
- at sign(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
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毎日打つ「@」、イタリアでは「カタツムリ」、韓国では「巻き貝」、デンマークでは「ゾウの鼻のa」と各国の辞書に載っている。しかも「アットマーク」と呼ぶのは日本語での言い方(デジタル大辞泉)。英語では at sign。
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出典・参考文献(10件)タップで表示
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「アットマーク」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- デジタル大辞泉「アット(@)」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- Treccani, Vocabolario on line「chiocciola」treccani.it
- 국립국어원『표준국어대사전』「골뱅이」stdict.korean.go.kr
- Den Danske Ordbog「snabel-a」(Det Danske Sprog- og Litteraturselskab)ordnet.dk
- Instituut voor de Nederlandse Taal, Algemeen Nederlands Woordenboek「apenstaartje」anw.ivdnt.org
- Duden online「Klammeraffe」duden.de
- Real Academia Española, Diccionario de la lengua española「arroba」dle.rae.es
- The Unicode Standard, Code Chart C0 Controls and Basic Latin(U+0000–007F)unicode.org
- Antonelli, P. (2023; 初出2010) @ at MoMA, MoMA Magazine(ニューヨーク近代美術館)moma.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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